ウクライナに憲法9条があったら?

 皆さんこんにちは今日は憲法記念日ですね。このような日こそ日々当たり前と思っている常識を覆し、自分の頭で考えてみる必要があります。すると思わぬ発見が見つかることでしょう。仏教では「諸行無常」という言葉があります。これは今日ある事が明日もあるとは限らないという理を表したものです。今世界を騒がしているロシアのウクライナ戦争も、誰も予想した者はおらず、「侵攻はない」とか「せいぜいちょっとした紛争だろう」と考えが大勢を占めていました。今日の平和が明日あるとは限らない。それはこれからも起こりうることです。

 「9条」に縋りつく人々

 さてこの戦争について面白い議論がありました。それは「ウクライナに日本の憲法9条があったら、ロシアは侵略しなかったのか?」という議題です。これまで散々「憲法9条があるから日本は平和なんだ」という主張がまかり通ってきただけに、保守派から猛攻撃を浴びることになったのですね。それに対する護憲派は「憲法9条は日本が侵略しないようにするものだから(震え声)」と事実を認めざるを得ない状況になっています。中には「ああそうだよ、外国の侵略は防がないよ!なんか文句ある?」と開き直っているブロガーさんもいらっしゃるようですが、アンタ偉そうに言ってるんじゃないよ!今の世界情勢で日本が侵略する可能性は政治的にも軍事的にも思想的にもあり得ない状況で、専ら戦争を起こすのは中国や北朝鮮、そして既にやらかしているロシアだって言っているのに、防衛強化を妨害してきたのは何処のどいつじゃ!と言われても仕方がない状況です。

 ならば国防強化や憲法改正にもう文句は言わないのかといえばそうではなく、むしろ原理主義化して護憲主義(自称)に血道をあげる有様です。自称護憲政党日本共産党の志位さんはこんなアクロバティックな物言いをしております。

 日本にプーチンのような指導者が生まれた時の備えだそうです。そんな仮の話をする前に現実のプーチンはどうすんのよと言いたくなります。ロシアは極東で日本と隣同士であり、北海道に侵攻してくる可能性は十分にあります。この人たちは1940年代の日本の世界を夢想して「反戦」を訴える「英雄」を気取ってそこから抜け出せなくなっているのでしょう。まぁ、日本共産党の場合は敗戦当初アメリカを「解放者」と呼んでいたけど、レッドパージされてむしろソ連に「解放」してほしかった人達ですから、ロシアのプーチンになら大歓迎なのかもしれません。実際ロシア擁護で勇名になったれいわ新撰組のブレーンは「ロシア軍に大阪から上陸してほしい」なんて言っていますから。

 きっと気に入らないものを壊して欲しい、殺して欲しい「破滅願望」があるのでしょう。人はそれを「革命」と呼びます。

 ウクライナ憲法平和憲法

 ま、自称護憲論者は置いといて「ウクライナに日本の憲法9条があったら、ロシアは侵略しなかったのか?」の正確な答えですが、それは「関係ない」です。そもそもウクライナ憲法ウクライナ人が護るものであって、プーチンは何も気にする必要がないからです。もちろん憲法が原因でウクライナの国防が揺らいでしまうなら話は別ですが、現状のウクライナ憲法でそんなことはありません。

 他方でロシア擁護派の中には「ウクライナが悪い」といった主張がありますが、ウクライナはちゃんとした平和憲法を持つ平和国家なのです。その内容を抜粋して見てみましょう。

Стаття 17. Захист суверенітету і територіальної цілісності України, забезпечення її економічної та інформаційної безпеки є найважливішими функціями держави, справою всього Українського народу.
(第17条ウクライナの主権と領土保全の保護、経済と情報安全保障の確保は、国家の最も重要な機能であり、ウクライナ国民全体の仕事である。)


Оборона України, захист її суверенітету, територіальної цілісності і недоторканності покладаються на Збройні Сили України.
ウクライナの防衛、その主権の保護、領土保全及び不可侵性は、ウクライナ国軍に委ねられている。)


Забезпечення державної безпеки і захист державного кордону України покладаються на відповідні військові формування та правоохоронні органи держави, організація і порядок діяльності яких визначаються законом.
(国家の安全を確保し、ウクライナの国境の保護は、関連する軍事組織と国家の法執行機関に委ねられており、その組織と手続きは法律で定められている。)


Збройні Сили України та інші військові формування ніким не можуть бути використані для обмеження прав і свобод громадян або з метою повалення конституційного ладу, усунення органів влади чи перешкоджання їх діяльності.
ウクライナ国軍やその他の軍隊は、市民の権利と自由を制限したり、憲法秩序を打倒したり、当局を罷免したり、それらの活動を妨害したりするために、誰によっても実力を行使することはできません。)


Держава забезпечує соціальний захист громадян України, які перебувають на службі у Збройних Силах України та в інших військових формуваннях, а також членів їхніх сімей.
(国家は、ウクライナ国軍や他の軍隊で奉仕しているウクライナ市民とその家族に社会的保護を提供しています。)


На території України забороняється створення і функціонування будь-яких збройних формувань, не передбачених законом.
ウクライナの領土では、法律で定められていない武装組織を創設し、運営することは禁じられている。)


На території України не допускається розташування іноземних військових баз.
ウクライナの領土では、外国の軍事基地の設置を許可されていません。)


Стаття 18. Зовнішньополітична діяльність України спрямована на забезпечення її національних інтересів і безпеки шляхом підтримання мирного і взаємовигідного співробітництва з членами міжнародного співтовариства за загальновизнаними принципами і нормами міжнародного права.
(第18条ウクライナ外交政策は、一般的に認められた国際法の原則と規範に従って、国際社会のメンバーとの平和的かつ互恵的な協力を維持することによって、その国益と安全を確保することを目的としている。)

──ウクライナ最高議会HP(https://zakon.rada.gov.ua/cgi-bin/laws/main.cgi?nreg=254%EA%2F96-%E2%F0#Text)より

 ここには国際協調や軍の行動に対する規制即ちシビリアンコントロールが明記されている他、何と外国軍基地の非設置までもが書かれております。9条2項の戦力不保持を超絶拡大解釈して日米安保破棄を主張している方や、日夜「米軍出てけ」とシュプレヒコールを上げている方々にとっては垂涎物の条文ではないでしょうか?逆をいえば日本国憲法戦争放棄武装解除以外は何もなく、せいぜい前文に国際協調があるかな程度で、自衛隊の行動規制も、外国軍基地について具体的な記述が何もないのです。そしてどうやって国を護るかについての方法も責任も日本国憲法にはありません。安保闘争で「日本は個別的自衛権のみが認められる」と言っていた皆さん。ウクライナ憲法を参考にしてはいかがでしょうか?米軍も追い出すことができますよ?

 日本共産党の裏口的な「自衛隊活用」論

 尚、改憲の話になったら脊髄反射で「戦争できる国になる」と主張する人が後を絶ちませんが、現在の自由民主党の9条改正案は既存の条文をそのままに「自衛の措置は妨げない」を加憲するものとなっております。これを知ろうとしていない人が多すぎる。中には今更のように「9条第一項は国連憲章を引用したもので……」と言って護憲の意義を説明しようとする人もいますが、だから加憲ですよ!と言っているんです。今までは自衛が認められていると解釈して運用していましたが、国民の中で一定数以上「自衛も認められない」「自衛隊違憲」という認識がある以上、そのひずみが日本の防衛に暗い影を落としてきたのです。

  1.  ポジティブリスト(他国はネガティブリスト)
  2.  捕虜条約の対象外(自衛隊が捕虜になった時、捕虜として扱ってもらえない)
  3.  攻撃能力の制約(昔は空中給油機もダメだった)
  4.  交戦規定の不在(武器使用は警察と同じ)
  5.  軍法会議の不在(敵兵士を殺害した場合、殺人罪で裁かれる)

 こうした状況を放置して有事に至った場合、どんな混乱が起こるかわかりません。是正しようにも「憲法9条」が障壁になってできないのです。

 

 ところで先月、護憲を標榜し自衛隊を「違憲」と主張する日本共産党についてこんなことがありました。同党の党首、志位和夫委員長が「自衛隊を活用する」と発言して保守層から「ご都合主義だ」と批判されるなど物議をかもしました。

急迫不正の事態に「自衛隊を活用する」とした共産党志位和夫委員長の発言が波紋を広げている。党綱領では「憲法9条の完全実施(自衛隊の解消)」「日米安保条約の廃棄」を目指すとしており、「ご都合主義だ」などと批判的な意見が多く聞かれる。志位氏は近く、自衛隊への見解などを記した最新の党綱領解説本を発表するが、国民の理解をえられるかどうかは不透明だ。(出典:志位氏の自衛隊「活用」発言に「ご都合主義」批判,産経ニュース電子版,2022.4.9.,https://www.sankei.com/article/20220409-4P2HLQPMUVMW7I4EUPWCPZWFE4/

 この「活用論」ですが本人が釈明しているように今に始まった話ではなく2000年の党大会で既に言及しているんですね。曰はく「憲法9条の完全実施の為に自衛隊を段階的に解消していく」とのこと。その“過渡期”に必要に迫られた場合は自衛隊を活用すると。志位さんはしきりに「9条の理想に向け、自衛隊の現実を変えよう」と主張しております。

www.jcp.or.jp

 

www.jcp.or.jp

 言うなれば「憲法9条は理想」という論理ですが、これ……結構危ない考え方なんです。例えば国会議員選挙で「一票の格差」が問題になって裁判所で「違憲状態」と判決が下されたことがあります。違憲状態は違憲の一歩手前の状態ですから、選挙結果やその後成立した法律が無効になる事はないものの、早急な是正が議論されるわけです。でも、もしここで「憲法は理想」と言ってしまったらどうなるでしょう?格差是正への切迫度がかなりマイルドなものになってしまいます。

 憲法は理想の経典でもなければ日本版毛沢東語録でもありません。日本国の国の形を決める最高法規です。これに反した法律は成立せず、行政も司法もこれを犯すことはできません。それを「理想」と言ってぼやかし、自ら「違憲」と断ずる自衛隊を使ってしまっては、安倍さんの安保法制どころじゃすまない本当の意味での「立憲主義の破壊」になってしまいます。

 さらに恐ろしいのはこの「理想」論は応用が利くということです。例えば党に都合が悪い発言をする人を処断する時、言論や表現の自由(第21条)、思想の自由(第19条)を侵すことになりますが、これも「理想だから」で解決できます。また中国の属国になった場合、同国の都合で軍事作戦に協力を求められた時も「理想だから」と言って応じることになるでしょう。外国人参政権も第15条の「国民固有の権利」に抵触しますが、これも「理想」の一言で片付きます。つまりことごとく、当代の内閣や与党の恣意的な判断でゆがめられるのです。もはや人治国家です。

 これが実際に行われているのが中華人民共和国です。同国は「党の指導性」を前面に押し出しているために、宗教の自由も、言論の自由もみんな「事実上の禁止」になってしまっているのです。それでも「党の指導性」の一言で解決できるから「合憲」であり、「中国は民主主義」ということになっているのです。

 もちろん志位さんがそんな腹積もりだと言うつもりはありません(そうでないと思いたいです)。けれどあまりに現実から離れた主張ばかりしていると、実際に権力を握った時に国家運営の為止む無くそうなる可能性もあるということです。ま、実際は中国やロシアの侵略を食らってパニックになったまま終わる気がしますが。

hatoyabu01.hatenablog.com さあ、表玄関からの憲法改正と、裏口からの憲法「理想」論。あなたはどちらを取りますか?