尖閣発砲事件(また手直ししました)

※この作品は作者の独断と偏見によるシミュレーション戦記です。実際の人物、国、民族は関係ありません。

※日本の首相の人物モデルを変更しました。

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■202×年 尖閣発砲事件(日中東シナ海紛争)

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(出典:Google Earthより尖閣諸島魚釣島

 事件発生

 ある年、沖縄県石垣市周辺の台風通過中に中国の漁民が尖閣諸島魚釣島に上陸避難。台風明けに海保の巡視船が救出を試みたところ、彼らは「ここは中国の領土だ」と主張して救助を拒絶、陸揚げさせた漁船をバリケードのようにして事実上の籠城を始める。強制退去を意図して隊員が近づけば漁民は鈍器を構えて抵抗してきた。その正体は訓練を受けた武装漁民であり、陸軍の特殊部隊並みに屈強な彼らに隊員たちは対応に苦戦する。

 そこに中国海警局の大型船が接近し、巡視船に対し漁民への有害行為をやめて退去しなければ攻撃を行うと警告してきた。「ここは日本の施政下だ」と海保隊員が反論するも、海警船は一方的な機関砲射撃を浴びせて巡視船を攻撃した。この攻撃により海保の隊員数名が殉職、損傷を受けた船は拿捕され残りの隊員たちが身柄拘束される。(尖閣諸島近海における中国公船発砲事件。尖閣発砲事件と略される。だが中国側は海保の巡視船が銃撃してきたと主張した)。

 日中緊張

 事件を受けて日本政府は隊員達の解放を求めるも中国政府は「日本は我が国固有の領土である釣魚群島(中国が主張する尖閣諸島の呼称)へ不当に侵入し、我が同胞の拉致を試み攻撃を加えてきた」として謝罪を要求。応じない場合は対抗手段をとると恫喝してきた。日本政府が対応を決めあぐねているうちに、日本国内に大規模なサイバー攻撃が行われ、マイナンバーが漏洩する事件が発生。日中間の輸出入がストップされて物流の一部が滞る。

 日本は隊員の安全を優先させて外交的解決を試みるも、中国政府は態度を硬化させるばかりで、要求を受け入れないなら安保理で訴え、国際的な圧力の下で解決を図ると主張してきた。島では愛国心に燃えた漁民たちが24時間尖閣に“駐留”し、それを守るように複数の海警船(実質海軍の駆逐艦)が入れ代わり立ち代わり領海内に居座り続けた。

 日本の妥協

 世界中で日中戦争の危機が叫ばれるが日本政府は事態の悪化を恐れて中国側の要求をのみ、尖閣諸島とその周辺の島々について共同開発を志向した交渉に応じることに同意した(日中東シナ海合意)。結果、海保の隊員は解放されたが中国人が尖閣諸島から引き上げることはなかった(中国による事実上の国境書き換え)。
 それ以降開発目的の中国工船が魚釣島に行き来し、海岸を埋め立てて大きな“漁港”と広大な滑走路を備えた”空港”が建設される(後に対空・対艦火器も設置され事実上の軍事施設となった)。これが後の台湾武力統一への重要な布石となる。

 米国

 リベラル派であるバルデン大統領は米国財政赤字の解消及び、医療と福祉、自然エネルギーを充実させるために軍事費の削減を断行する。その結果、インド太平洋地域において米軍は段階的な縮小を余儀なくされ、同盟国への負担を多く求めるようになっていた。順当に軍事費を増やしていた韓国に対しては、戦時作戦統制権の移管を前倒しで決定し、在韓米軍の大幅な削減ないし将来的な撤収が決定される。尖閣諸島に関しては日米安保の5条の適応対象と表明していたが、事件当時に自衛隊が動かなかったため静観せざるを得なかった。
 当初中国に対しては人権問題などで強い姿勢を示していたが、地球温暖化対策への協調や米国産穀物の輸出増加の為に、ポーカー氏が設けていた対中関税を段階的に廃止し、半導体を除いた多くの製品を解禁した。ハイテク製品が含まれないことから、技術的優位性は保たれると識者は豪語していたが、技術流出は日本や韓国を通して継続しており、その後の人工知能(AI)の研究は中国に先行され、格安のAIによる業務自動化ソフトが米国を含む多くの国々へ輸出されるようになる。

 バルデン氏は環境対策におけるノーベル平和賞を狙っていたが実現せず、任期終盤は米軍縮小と業務自動化によって生じた大勢の失業者に悩まされることになり、二期目に臨むこともなく任期満了の数日後に亡くなった(この時、テカムセの呪いが話題になり、任期満了且つ暗殺でないことから安らかなる呪いと呼ばれた)。

 なお、米国各地では韓国系団体が中国系団体の支援を受けながら、所謂徴用工問題について日本企業を訴えその資産を次々と差し押さえる。また、ハリウッドでは徴用工を題材にした作品が制作され話題を呼ぶ(作中で徴用工は戦時奴隷:Wartime Slaveと称された)。これに日本政府は遺憾の意を表明するも、実務者レベルでは何もしなかった。しかし、それがかえってやましい印象を米国民に広めてしまい、慰安婦問題の先例もあって韓国側の主張が受け入れられるようになっていく。その結果、一部の市では韓国系団体の後押しを受けて徴用工像が立てられた。

 日本

 大宏池会体制によって党内で確固たる基盤を築くことに成功した沖畑首相は参院選議席を減らしつつも、長期政権を見据えた人事を繰り返し、高部氏の派閥を完封し、彼が支援していた安一女史の総裁選への道も封じることに成功する。そして一時は強硬に傾きかけていた外交を中庸に戻すため、2022年冬に日中国交正常化50周年にかこつけた慣遠鋭国賓来日を周囲の反対を押し切って強行させる。そして一時は断交寸前に至ったロシア外交も西側に先駆けて修繕し、領土問題を事実上棚上げにした日露平和条約締結交渉を再開させた。当然中露から歓迎される反面、国内と西側諸国から批判を呼んだが、政局が安定していた沖畑にとって誰にも敵対しない「中庸」は彼にとってのアイデンティティだったのだ。

 そんな長期政権が確実視されていた沖畑政権だったが、翌年に起こった尖閣事件に大きく揺るがされる。事件当時、沖畑首相は最後まで海上警備行動を発令することはなかった。理由としては先方があくまで警察としての肩書を持っていたため、警察力としての出動であっても「警察相手に軍を出す」という悪印象を世界に晒し、国際世論戦で不利になる可能性があったからである。さらに国民のマイナンバーが不正に流出する事案(中国のサイバー攻撃によるものである)が多発しており、その対応にも追われていたのである。
 あまりの後手後手の対応と不甲斐なさに多くの有権者は心底落胆し、内閣支持率政党支持率が過去最低を記録する。しかし事件内容そのものは「たかが無人島」とばかりに重要視されず、ほとんどの人はマイナンバーの流出ばかりを問題視して国防に関心を示さなかった(その背景として中国の主張を鵜呑みにした日本の主要メディアの報道姿勢が挙げられる)。保守派も「島が奪われた責任は政権にある」と主張しながらも、今後の戦略については具体的な議論すらせず、憲法改正への議論が深まることさえなかった。

 東京と北京の二年連続の五輪後、日本全体の経済は武漢熱渦と1割消費税による購買力低下から抜け出せず、2018年の入管法改正以降に人手不足を理由に大勢受け入れていた中国系外国人労働者の不法滞在が社会問題となっていた。中国の制裁によってそれまで安く流通していた中国製品の多くが品薄になり、高値で転売する事例も発生していた。沖畑政権は事件後の経済の立て直しと日中関係正常化のために中国の環太平洋パートナーシップ(TPP)加入を容認し、同国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)と一帯一路に参加して国家間の経済統合に走った(その結果対中冷戦を睨んで高倍首相が作り上げた自由貿易構想は元の木阿弥となってしまう)。

 一方、沖縄本島では日中対立の影響で観光客が急減して経済的打撃を被っており、2018年から県知事の座にいたドニー氏はそれをネタに日本政府を批判して三期目に当選する事に成功した。他方で中国軍に不法占拠された島を管轄に置く石垣市や台湾に近い与那国島では中国の脅威を訴えたが、本島では相手にされず、日本政府には遠回しに移住を進められたのだった(しかし移住した者は殆どいなかった)。

 米国での日本企業資産差し押さえと反日映画、徴用工像の設立を受けて日本中で同国への不信感が募る。また事件当時の静観姿勢も問題視され、同盟関係を見直す声が保守派の識者からも上がった。

 防衛面では就任当初盛んに話題になっていた「敵基地攻撃」について「中韓を刺激する」という理由からトークダウンしており、慣主席の国賓来日時の共同声明「日中両国は争わず共存する」の名目の元、長距離射程の対艦・対空攻撃を可能にするスタンドオフ兵器の殆どが試作品の段階で中止される。ミサイル防衛(MD)に関しても米国の中距離弾道ミサイル配備を拒絶し、イージス艦も新造二隻の代わりにこんごう型二隻を控えにする八隻体制の継続を決定した。唯一MDの目玉として強調したのが電磁砲の開発だったが、米国との共同開発が難航(米国側が予算を削ったのが原因)し、先に中国により実戦配備されたことで優位性を殆ど示せなかった。

 また独自の早期警戒衛星の開発や、いずも型DDHのヘリ空母の改修も進められていたが、日本の国防を歪曲して解釈したメディアの扇動によって、防衛費の増額にブレーキがかかり計画が遅れに遅れる。そして事件後に行われた衆参両院選挙によって自民党が下野した時にすべてが白紙に戻されることとなった。そのためアジアの軍事バランスはどんどん中国優勢になっていった。

 中国

 国内では日本に外交的勝利したことに国中が沸き記念日が設けられ、慣遠鋭国家主席の神格化が加速する。一方、台湾に対しては民進党が対中軟化したことにより一時的に緊張緩和を演出する。しかし、水面下では海峡両岸サービス貿易協定の進展を要求するなど、統一へ向けた政治圧力をかけ過ぎたためにまたしても台湾内での反発を呼んでしまった。
 慣首席がより一層の海軍発展を命じたことで軍艦建造が盛んになった他、本格的な宇宙ステーション建設が計画される。また、超低高度を飛ぶ極めて高性能な光学偵察衛星「神眼」の開発に成功し一号機が打ち上げられた。
 経済ではAIによる業務自動化(一部のシステムは米国企業から産業スパイで得られたとされている)が世界中に輸出された為、関連企業は好景気となる。だが自動化を国内の企業が取り入れた場合、人民の雇用環境が脅かされる可能性があった。そこで当局は人民雇用法を改定し、外資系を含めた全企業に対し毎年の新卒者採用を厳命する(この頃、外資系の企業関係者は当局の監視を受け事実上の軟禁状態に置かれていた)。
 だが、自動化を率先して取り入れたのは他ならぬ国営企業であり、こちらは法律の抜け穴を利用して工場のオートメーション化はもとより農場のロボット化をどんどん推し進めていく。結果、人民の雇用環境は悪化の一途をたどりあぶれた労働力は日本へと向かっていた。

 朝鮮半島

 日本が中国に敗北したことでお祭り騒ぎ。特に韓国では猿(日本)が虎(中国)にお仕置きされる絵が大ヒットとなり「暴日膺懲(暴虐な日本を懲らしめよ)」が合言葉になる。
 前政権と違って保守派と言われた新韓国大統領は米国や日本との関係重視を謳いながらも、米国に対しては中国やロシアとの等距離外交を堅持し、日本に対しては徴用工問題について裏合意による譲歩を求め、通貨スワップの再開も実現した。
 だが国内でエスカレートした反日機運は制御できず、政治家の間では与野党関係なく強硬論が浮上し、竹島上陸が頻発した他、日本に対して天皇訪韓謝罪要求の決議を採択し、日本の親韓派を愕然とさせた。結果、官民合わせた日韓関係はむしろ悪化していき外交ルートでは外務次官級の対話でも常に平行線だった。
 下野した前政権政党はさらに強硬派になり、中には日韓基本条約の破棄を訴えたり、対馬侵攻を訴える者も居た。
 経済では日韓通貨スワップ再開で持ち直し、半導体産業スマホ市場で優位を保ち、EV産業にも乗り出した。この事業は米国の思惑と裏腹に中国市場にも手を広げており、輸出規制していた他の国を横目に大きな利益を得ていた。また新しく設立された資源開拓企業が竹島周辺でメタンハイドレートの試験的採取を行う(日本の抗議を受けるが当然無視する)。
 対日本を念頭に置いた軍拡が左右関係なく支持され、潤った経済をてこに軍事費が日本を上回るほどに増大し、空母や原潜等が積極的に建造される。その努力が認められ米国から戦時作戦統制権の移管が前倒しで決定された。

 台湾

 世論は日本が中国に譲歩したことに大いに失望し中国に対する警戒が強くなる一方、殺されるよりは恭順すべきという主張もより多く聞かれるようになった。それに押される形で民進党は対中自立路線を維持するも表面上は軟化した姿勢を示さざるを得なくなる。

 しかし、外交筋での海峡両岸サービス貿易協定(2014年以降批准していなかった協定)の批准や「一国二制度」受け入れの要求など露骨な統一攻勢により台湾市民の反発がいよいよ高まっていく。その上「間もなく祖国(中国)に統一できる」という国民党党員の失言がSNSで波紋を広げてしまい、学生運動が再加熱した。
 その民意を無視できない民進党では制憲・正名を公約に掲げた党員が党首に選ばれ、次期総統選に出馬することが決定する。当然これは中台間の緊張を高める要因となり、後の台湾侵攻の発端になる。

 ロシア

 ウクライナ侵略に対する欧米から強烈な経済制裁によって経済は大きく低迷していた。しかし一方でジーミル大統領への支持率は高い状態を維持しており、軍事費への国費の投入に歯止めがかからなかった。一方、ジーミル政権の強権的体質や過剰な軍事費増大に反対しデモを行う国民も一定数居たが、ジーミル支持派の攻撃や不審な事故死によって徐々に数を減らしていった。その結果、大統領選では圧倒多数の支持を得て5期目に突入した。
 ウクライナ戦争は依然として継続しているが部分的には休戦状態に近かった。チャイナマネーに影響されたウクライナ大統領の親中発言によって同国への支持が減り、ロシアの国際社会での地位が回復する。これを契機にジーミルは経済を復活させ、ジョージアモルドバを征服ウクライナ泥沼による汚名を返上する。

 

 

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(2019/9/3 項目及び事件名修正「石垣事件→石垣島上陸事件」、9/13 記事を分離、本文一部修正、10/2 本文一部加筆修正、11/1 再び事件名を改め内容を修正「石垣島上陸事件→尖閣発砲事件」、11/22、11/27 台湾に関して内容を修正、12/3 リンク添付)

(2020/1/11 見やすく修正、2/14 台湾総統選を前の記事へ前倒し、6/24 事件内容や日本国内状況について加筆修正・誤字修正、2020/0710 リンク追加、2020/8/9 リンク追加・米民主党大統領のモデルを変更、同日 画像追加)

(2021/2/18 中国海警法の真意に基づくシナリオに修正。バルデン政権の対中政策を修正。日本の内情に自衛隊を出せない理由を明記,3/3 防衛出動を海上警備行動に変更)

(2022/2/4 韓国大統領の描写を変更、台湾世論に関する記述を修正、2/5 米国と日本に関する記述を大幅修正、2/18 ロシアに関しての記述を追加、3/5 日本の外交について追記、4/3 ロシアの北欧政策について記述を修正、5/16 韓国やロシアについての記述を変更、2022/6/8 メインシナリオと韓国に関する記述を一部修正、6/9 ロシアに関する記述を修正、6/15 ロシアに関してフィンランドの記述を取り下げ)