勇気を持とう岸田首相

 皆さんこんにちは、もうすぐ年末ですがいかがお過ごしでしょうか。

 24日、北京五輪について岸田政権は外交団派遣を見送り、日本オリンピック委員会JOC)会長の山下泰裕氏に東京五輪組織委員会会長である橋本聖子氏、そして日本パラリンピック委員会(JPC)会長の森和之氏を派遣することにしたそうです。二週間前に産経がすっぱ抜いた内容と大筋で同じであり、国内メディアは「事実上の外交的ボイコット」と書きました。

 政府は24日、来年2月から中国で開かれる北京冬季五輪パラリンピックへの政府代表団の派遣を見送ると発表した。事実上の「外交的ボイコット」で米国などと足並みをそろえる。東京五輪パラリンピック組織委員会橋本聖子会長と日本オリンピック委員会山下泰裕会長、日本パラリンピック委員会の森和之会長が出席する。(出典:首相「自ら判断」 政府代表団派遣見送り,産経ニュース電子版,2021/12/24,

https://www.sankei.com/article/20211224-C3ECY52AJJILVIW6JZZ5VYCOHM/

 かねてからも自民党の「護る会」からや安倍元首相、意識の高い国民の皆さんから「外交ボイコットすべき」の声が上がっていただけに「よくやった」と感じている方もいらっしゃるでしょう。安倍さんも「中国の人権状況に懸念を表明する同志国の戦列に加わることができた」と評価する声を上げています。

 しかし私は諸手を挙げて万歳できるような状況ではありません。その理由を私的考察を踏まえて皆さんと考えていこうと思います。

中国が怒らない三大理由

 外交団派遣見送りに際して私が引っ掛かったのは中国の反応です。米国や英国、オーストラリアやカナダの場合は「断固たる措置をとる」など、「教師面するな」など狂犬のように噛みついているわけですが、岸田政権の表明後は妙に穏やかなのです。 

www.jiji.com  別に相手が日本だから甘い対応をしたのではありません。今月初め、安倍さんが台湾の民間研究機関へのオンライン講演で「台湾有事は日本有事」と発言した時は猛抗議していますから。最近は戦略国家としての「ほほえみ戦略」を捨てているわけですから、割と正直になっている節があります。

 ならなぜ反発がないのか。理由を推察してみました。

  • 実質ダメージがないから
  • 橋本聖子氏が出席するから
  • 北京五輪支持を言わせる作戦がある

 以上の三つについて考察を述べます。

実質ダメージがない

 12月6日にバイデン政権が宣言した「外交的ボイコット」について当ブログでは見かけに反してマイルドな政策であると申してきました。過去に行われたボイコットは選手団も派遣しない「完全ボイコット」です。五輪の主役は選手であり、政治家が来るかどうかなどは開催にほとんど影響を及ぼしません。また「ボイコット」の表明も早すぎると、五輪開催時期が目前になるにつれて矮小化されていき、隅に追いやられてしまいます。

 

hatoyabu01.hatenablog.com

 米英の「ボイコット」表明に中国が反発したのは、大国であるゆえの影響力を警戒していたことと、「強い中国」を内外に示すための「戦狼姿勢」によるものであって、「外交的ボイコット」自体には「招待していない」と言って切り捨てています。したがって日本が事実上の「外交的ボイコット」をしてもダメージがないのです。

 しかも岸田さんは派遣見送りの理由について「中国の人権問題」をにおわせながらも、「総合的に判断した」とぼかし、「ボイコット」の表現を意図的に避ける発言をしました。これでは正真正銘「事前予約キャンセル」以外の何物でもなく、同じく武漢熱対策を理由に外交使節団派遣を見送ったニュージーランドと同じです。

 さらに岸田さんは今回の表明と並行して「護る会」から申し入れられていた「中国の人権問題に関する非難決議」を見送りました。これではますますボイコットの意義が薄れていき、「二股外交」「対中宥和」と言われても仕方がない状況です(ニュージーランドでさえ「重大な懸念」決議はできています)。

www.sankei.com  たとえ実態が如何にナイーブであっても、「中国の人権状況を鑑みて閣僚級の派遣を見合わせる」と理由をはっきり言うべきではないでしょうか。「いうべきをいう」という言葉が看板詐欺になっていると感じるのは私だけでしょうか。

橋本聖子氏が出席するから

 岸田政権の表明後、各メディアは揃って「ボイコット」と称していますが、米英と違って派遣する人間は前述のとおりいます。そのうちの橋本聖子東京五輪組織委員会会長の派遣について「護る会」青山さんは反対を表明しておられます。

松野官房長官が、ようやくにして、北京五輪の外交ボイコット問題をめぐって政府の方針を発表されました。
 橋本さんは、主権者・国民に選ばれた国会議員です。
 国会議員は、政府の一員ではありませんから「政府の代表団は派遣しない」という方針に矛盾しないという政府の判断だろうと考えます。
 しかし、わたしは従前から申しているとおり、政府だけではなく国会議員の派遣も反対です。

青山繁晴の個人ブログ(書き加えました) 橋本聖子五輪組織委員会会長の派遣には反対します|青山繁晴の道すがらエッセイ/On the Road より引用)

「閣僚級を送らなければ米英と歩調を合わせられる」とした岸田さんのアリバイ政策に抜け穴があったのです。むしろ意図的に穴をあけたのでしょう。というのも今年の夏に日本が開催した東京五輪に出席した苟仲文氏は閣僚級と呼ばれていますが、それは日本における「閣僚」とは違うのです。前掲の時事通信にはこうあります。

 日中は政治体制が異なり、苟氏は政府の閣僚級とはいえ、政府を指導する共産党では上位約200人を占める中央委員の一人という位置付け。一方、北京五輪に出席する日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長は五輪組織トップとして苟氏と同格で、橋本氏は参院議員も務める。中国側のメンツはほぼ保たれた格好だ。(出典:中国、橋本会長らを「歓迎」 対日批判は抑制―北京五輪時事通信電子版,2021.12.24.,

https://www.jiji.com/jc/article?k=2021122400884&g=int

 苟氏が局長を務める国家体育総局は中国の国務院(日本でいう内閣)の直下の特設機構です。つまり大臣格よりは下ということですね。

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中国国務院の組織図


そして国家体育総局局長は中国オリンピック委員会主席を兼任しており、事実上五輪開催の責任者としてカウンターパートを成立させているんですね。だから中国側は「歓迎」という言葉を使えたわけです。

北京五輪支持を言わせる作戦がある

 ワシントンの顔を立て、北京のメンツも保つ。日本的外交ここに極まれり。これで万々歳で済めばいいですが、岸田さんの下心なんて米中両国にバレています。特に中国の方はこれで納得したわけではないようです。以下は産経新聞が報じた中国の反応ですが、本音をわかりやすくまとめています。

www.sankei.com 相互主義の名のもとに「北京五輪を支持しろ」と。これ前記事で青山さんが伝えていた水面下の交渉での要求そのものですよね。

 まず、ぼくの責任で申しますけど、ぼくなりの情報活動でぼくは確認できていると思っているのは、中国からすさまじい圧力がかかっている。水面下で。その圧力が、中国はしたたかだから、非常にシンプルに圧力をかけていて、一言で言うと「アメリカを取るのか中国を取るのか、決めろ!」と。もう、曖昧は許さないと。その象徴として「北京五輪を支持」して、「支持」をはっきり言えと。それでアメリカやイギリスが匂わせているような「外交ボイコット」は絶対するなと、ちゃんと地位の高い外交使節団を送って来いと。つまり開会式閉会式に合わせてですね。特に開会式に合わせて。それでそれを通じて中国共産党としては日本がアメリカを取るのか中国を取るのかどっちの決断をしたのか判断すると。(出典:【ぼくらの国会・第251回】ニュースの尻尾「対中宥和はダメっ!」,青山繁晴チャンネル・ぼくらの国会,2021.12.04.,1:20-2:21,https://www.youtube.com/watch?v=YMXH5kRfXec

https://hatoyabu01.hatenablog.com/entry/2021/12/09/123730

 するなと言われていた外交的ボイコットはしたことになっているけど、前述の通り実態は中国が送ったのと同格の役員を送ることになっていますから一応要求に応えていると言えます。それで「北京五輪支持」をしてしまえば「ボイコット」などどこか行ってしまうでしょう。

 これは私の予想ですが、中国側には作戦があるんじゃないかと思います。それは年始の林外相の電撃訪中です。11月の日中外相電話会談の時に「訪中の要請があった」と林外相は21日のフジテレビのインタビューで発言しています。中国にとっては狙いどころであり、「五輪開催までには決めろ」と言ってきても不思議はありません。そして訪中してしまえば五輪の話題を避けるわけにはいかず、「北京五輪の成功を祈っている」と言った時点で「日本は北京五輪を支持している」というプロパガンダが世界中に出回ります。そうなれば米中双方の顔を立てた岸田政権の政策は砂上の楼閣の如く崩れ、「従中政権」のレッテルを貼られることになるでしょう。

米国の不信、日本の勇気

 既に米国側は岸田政権に対し不信を抱いているそうで、政権発足二か月になっても未だに訪米を実現できてません。それどころか来月7日に予定している日米安全保障協議委員会(2プラス2)での訪米も見送りになり、オンラインでの協議となるそうです。

www.sankei.com 理由として米国内の武漢南アフリカ変異株(オミクロン株)の流行をあげていますが、ならば4月に訪米した菅前首相は何なのでしょうか。あの時だって米国内は武漢熱流行の最中です。テレワークが発達したご時世ですが、実際会うことの大切さは人づきあいの悪い私でもわかります。そして気になるのは予定されている2プラス2が実は年内に開かれるはずだったという事実です。

日米両政府は3月に東京で2プラス2を開催した際に発表した共同声明で、共通の優先的な政策に関する取り組みを強めるため、年内に再び2プラス2を開催するとしていた。しかし、日米間の調整が進まず年内開催を断念。1月7日に開催する方向で調整していた。(出典:〈独自〉外務・防衛相1月訪米見送りへ 日米2プラス2はオンライン形式,産経新聞電子版,2021.12.24.,

https://www.sankei.com/article/20211224-VKBKNEXULZNQRCXMDEU4FIVDMQ/

 協議では具体的な装備や役割分担を話し合うことから、昨今沖縄で話題になっている米軍の中距離ミサイル配備の話も出てきそうです。さらに加えて記事にはこうあります。

また、3月に2プラス2を開催した際の共同声明では台湾海峡の平和と安定の重要性を盛り込んでおり、台湾有事の際の米軍と自衛隊の対応に関しても意見交換するとみられる。北朝鮮の核・ミサイル開発への対処も議題となる。(前掲)

 台湾有事です。ここで安倍さんが「台湾有事は日本有事」と発言した時に中国が烈火の如く怒ったのを思い出してください。台湾を併合したいかの国にとって、日米が介入してくるほど困ることはありません。当然岸田政権にも「台湾問題に介入するな」と圧力をかけているわけで、その影響が米国との調整にも表れていると考えるのは邪推でしょうか?

 この際、北京五輪のことはもういいです。もう日本が中国に宥和しているのはバレていますから、橋本議員が行こうが最悪林外相が出席したっていいですよ。その代わり、台湾政策ではしっかりと米国と歩調を合わせてください。二股外交をするからには、米国を怒らせるだけでなく、中国をも怒らせる覚悟を持たなければなりません。でなければ韓国のようにルビコン川を渡る破目になります。韓国は中国の属国でも生きて行けますが、日本はそうではありません。