岸田首相に勇気はあるか

 皆さんこんにちは、最近冷え込んできましたがいかがお過ごしでしょうか。 世間では岸田政権が発足して一か月、給付金やオミクロン変異株などでワーワー言っている今日ですが、激動へ向かう世界情勢は待っていてはくれません。12月6日、米国ホワイトハウスのサキ報道官は2022年2月に行われる北京五輪に選手以外の外交使節団を派遣しないことを決定しました。所謂「外交的ボイコット」です。日本でも同様に「外交的ボイコット」を求める声も上がっており、岸田政権の対中政策が問われる事態となっております。外相に親中で名高い林芳正氏を起用し、日本版マグニツキー法の見送りを鮮明にしている状況で岸田氏に大々的にボイコットする度胸はないと考え、ツイッターにも悪い予想を書きました。

 これはあくまで悪い”予感゛であって、派手に外れてくれたら万歳三唱するつもりです。私は預言者ではないので。けれど万歳と言えないような別な悪い予感もしてきました。

 勇ましい対中融和のバイデン

 まず、世界に先駆けて「外交的ボイコット」踏み切ったバイデン政権ですが、見た目のインパクトは裏腹にその行動はとてもマイルドなものです。ボイコットの理由に人権問題を上げていますが、人権団体は一年も前に北京での開催自体に異議を唱えていたはずです。

 160を超える世界中の人権団体が連名で国際オリンピック委員会(IOC)に書簡を送り、2022年冬季五輪の北京開催を撤回するよう訴えていたことが11日までに分かった。中国政府による大規模な人権侵害が疑われる現状を撤回の理由に挙げている。

IOCのバッハ会長あての書簡では、新疆ウイグル自治区チベット、香港、内モンゴルにおける中国政府の活動に言及。冬季五輪の開催国としてふさわしくない状況が確認されているとの認識を示した。(出典:22年冬季五輪、中国開催の撤回を 160超の人権団体がIOCに訴え,CNN電子版(CNN香港),2020.09.11,

https://www.cnn.co.jp/showbiz/35159444.html

 例によって親中のバッハ会長に足蹴りにされたんでしょうが、それを差し置いてバイデンさんの英断とは言えないわけですよ。選手団は送るって言うことは開催を認めるってことですからね。1980年のモスクワ五輪においてはソ連アフガニスタン侵攻を理由に日本を含めた西側で全面ボイコットをしました。これじゃウイグル人権問題はアフガニスタン侵攻よりは些細な問題ってことになりますよ。

 もちろん「平和の祭典」たる五輪に政治を持ち込むべきでないという主張は理解できるし、この日の為に日々己を磨いてきた選手の方々の思いを踏みにじるのはよくないことではあります。中国も「五輪の政治化」を批判してますが、五輪を政治利用しているのは他でもない彼らですよ。全体主義国にとって五輪は政治プロパガンダの舞台でしかありません。ソ連然り、ナチスドイツ然り。

 また同じボイコットでもタイミングで印象はだいぶ変わります。相手に打撃を与えるのが本来の趣旨ですから、やり方次第ではただの「事前キャンセル」になってしまいます。特に今のような早いうちに宣言するのは、世界に先んじたインパクトはある一方で、以後開催には文句を言えないことになりますから中国側にとってはダメージを抑える余地があるのです。その証拠にホワイトハウスでボイコット検討を表明している間に中国のメディアは「そもそも招いていない」と北京五輪関係者の「主張」を表明しております。

2021年11月29日、中国メディア・環球網は、米国などの政治家が来年の北京冬季五輪の「外交ボイコット」を主張していることについて、北京五輪の関係者が「そもそも招待していない」と語ったことを報じた。

記事は、近ごろ米国なと一部西側諸国の政治家が頻繁に北京冬季五輪の「外交的ボイコット」を口にしていると紹介。一方で、北京五輪の関係筋が29日に「ホスト国である中国は、これまで米国の政治家に北京五輪の招待を出していない」と語ったことを伝えた。(出典:米国などの北京五輪外交的ボイコット検討に、中国「そもそも招待してない」―中国メディア,レコードチャイナ,2021.11.30.,

https://www.recordchina.co.jp/b885797-s25-c100-d0193.html 

 こんな予防線を張られた上でのボイコット宣言ですから「売り言葉に買い言葉」程度の打撃に留まったわけです。中国外交部・趙立堅報道局副局長は「断固たる措置を取る」といきり立っていますが、せいぜい五輪期間中での米閣僚の入国禁止(意味ない)か、米国都市への五輪招致の未来栄光協力しない表明(意味不明)なものになるでしょう。まだダメージは少ないのですから。

 むしろ中国へ最もダメージを与えるのは現時点では曖昧な表明にしておいて、開催直前にボイコットを決める方法です。外交上の礼儀を欠きますが、出席するだろうという目算を盛大に狂わせるので、習近平のメンツを丸つぶれにすることができます。

 岸田政権に未曾有の圧力

 たがが一国、されど超大国。民主国家のリーダーたる米国にボイコットを表明された中国にとってはここからが正念場ということになります。既にオーストラリア、イギリス、カナダも外交的ボイコットを表明し、ニュージーランド武漢熱を理由に閣僚級を派遣しない方針を示しました。表向きには「驚くことない」とすましてしますが、水面下では第三国に米国に追随しないよう圧力をかけまくっているはずです。実際、岸田政権にもかなりの圧力がかけられていると参議院議員青山繁晴は動画で述べております。

 まず、ぼくの責任で申しますけど、ぼくなりの情報活動でぼくは確認できていると思っているのは、中国からすさまじい圧力がかかっている。水面下で。その圧力が、中国はしたたかだから、非常にシンプルに圧力をかけていて、一言で言うと「アメリカを取るのか中国を取るのか、決めろ!」と。もう、曖昧は許さないと。その象徴として「北京五輪を支持」して、「支持」をはっきり言えと。それでアメリカやイギリスが匂わせているような「外交ボイコット」は絶対するなと、ちゃんと地位の高い外交使節団を送って来いと。つまり開会式閉会式に合わせてですね。特に開会式に合わせて。それでそれを通じて中国共産党としては日本がアメリカを取るのか中国を取るのかどっちの決断をしたのか判断すると。(出典:【ぼくらの国会・第251回】ニュースの尻尾「対中宥和はダメっ!」,青山繁晴チャンネル・ぼくらの国会,2021.12.04.,1:20-2:21,

https://www.youtube.com/watch?v=YMXH5kRfXec

 とうとう来ましたね。中国の国家戦略はアジアを手中に収めて、そこから世界へ覇権を伸ばしていくことにありますから、そのためには日本を屈従させる必要があるわけです。日本さえ隷属させてしまえば、東アジアと東南アジア諸国は中国に到底対抗する力も持っていませんから、進んで従属国になるしかないわけです。

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中国が望んでいるアジア覇権

 中国が北京五輪支持を迫っている根拠として「東京五輪を支持した」だそうです。閣僚級で北京五輪開催に関わる国家体育総局局長の苟仲文氏を派遣したから恩に報いろ、ということでしょうか。ついでに台湾問題でも「米国の側に立つな」と言っています。実に横暴で身勝手な内政干渉です。そもそも東京五輪は2020年に開催されるはずだったのが、中国の武漢熱感染爆発を隠蔽して初動を遅らせたせいで延期し、しかも無観客試合にさせられたのです。受けたのは恩でなく害です。

 そんな理不尽な圧力にさらされている岸田さんですが、青山さんが代表を務める「日本の尊厳と国益を護る会」の申し入れ書は、バイデン政権のボイコット表明が報じられた7日の内に受け取ってくれたそうです。申し入れ書には「中国の人権侵害を一切容認しない」立場を表明し、弾圧をやめない場合は外交的ボイコットを実施すること、6月に流れてしまった非難決議の早期可決を目指すことがまとめられております。

shiaoyama.com 岸田さんも「右翼」とか「反中」だからと言う理由で邪見にしない辺り、従中一辺倒ではないようですね(だからと言って親中ではないとは言いませんが)。7日の記者会見でも「国益の観点から自ら判断」すると言ってます。かつてなら「国際関係の観点から判断」と言ってました。「国益」と言っただけで「右翼」と呼ばれる時代でしたから。

 日本的外交の悪足掻き

 で、岸田さんが考えている策は何か。産経新聞が報じております。

政府内では、閣僚ではないスポーツ庁室伏広治長官や日本オリンピック委員会山下泰裕会長を派遣する案が浮上している。苟氏は閣僚級だが、中国オリンピック委員会のトップも兼ねる。

政府関係者ではない山下氏を派遣することになれば、外交的ボイコットを打ち出した米国と一定程度足並みがそろうとみられる。政府は中国側の対応や米国以外の先進7カ国(G7)の動向なども見極めつつ、最終判断する見通しだ。(出典:<独自>日本、北京五輪に閣僚派遣見送り検討,産経新聞電子版,2021.12.8.,

https://www.sankei.com/article/20211208-LXZKVPPE45K65ARDAPFMKVSOZM/

 要は閣僚級じゃないけど東京五輪やスポーツに関わる役員を送って中国のメンツを保ちつつ、閣僚を送ってないからと米国の顔も立てる。絵にかいたような日本的外交、曖昧外交ですね。閣僚級じゃないと言っても政府の役員である以上、まさか私事で行かせるわけにもいきませんから公費での訪問となります。それって事実上の「外交使節団」になりません?外国メディアはどう報じるでしょうか?

 それに「曖昧は許さない」と言ってきている中国がこれで納得するんですかね。五年前ならこのトリックは通じたでしょうか、今はどうでしょう。微笑みを捨て、ロシアと大艦隊を組んで日本列島を一周して見せた彼らは「上っ面」ではもう騙せないかもしれません。今後同国は間違いなく、林外相に訪中するよう根強い工作をかけてきます。訪中してしまえば最期、北京五輪について話題にしないわけにはいかず、あれよあれよと「北京五輪支持」の言質を取られてしまうでしょう。そうなったら「閣僚級を送ってないから」と言う岸田政権のアリバイ政策は脆くも崩れることになります。私の言う別な悪い予感とはこのことです。

 なお冒頭でも申しましたがバイデン政権とその後のオーストラリア、イギリス、カナダの各政権が踏み切った「外交的ボイコット」は、見た目に反してマイルドなものです。後はどれくらいの国々が追随するのかにかかっており、数国程度ならただの孤立、落ち目の米国とその追随国のレッテルを張られて終わりです。第三世界の国々には権威主義が蔓延っており、中国の人権問題に目をつぶるところも少なくありません(そもそも欧米が率先して目を瞑ってたのですから)。ドイツやフランスの動向も気になるところです。

 また、これも繰り返しになりますが、この手のボイコットは早いうちにやるよりも後々に決断する方が、先方への打撃が強いです。裏手を返せば判断を先送りにすればするほど、その重みが増し、中国に従うか、中国に逆らうかと言う二者択一に近くなってしまいます。そうした戦後日本外交史上、最も重大な決断を岸田さんは下せるのでしょうか?

 

(2021/12/10 誤字修正)