見えた!尖閣有事前日譚

 皆さんこんにちわ。祖国では総裁選が終わっていよいよ衆院選となっております。武漢熱対策としての緊急事態宣言も解除され、いろいろ忙しくなってきている所でしょう。

 しかし世界情勢の方は日本の事情などお構いなしに進んでいきます。内政のことばかりに気を取られているうちにとんでもない状況になっている可能性があるのです。

 かねてから我が国では尖閣諸島に対する中国の侵略的野心が注目されており、本ブログでもその危険性を取り上げている所存です。

 

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 現状、大きな衝突は起こっていないものの、中国海警が定期的に”パトロール”する状態が続いており、第三国からすれば「中国が尖閣諸島を実効支配している」という既成事実が積みあがっている段階です。いつ海上民兵が上陸してもおかしくない上に、日本政府が中国との衝突を避ける為、事実上「棄権」していつの間にか盗られている。というシナリオも現実味を帯びます。私たち国民が関心も持たなければそうなってしまうのです。

 今回は尖閣よりさらに一食触発の事態にある離島についてご紹介していきます。

 150機の中国軍機が狙っていたもの

 今月一日から五日までの間、中国は合計150機の軍用機を台湾の防空識別圏に立て続けに侵入させました。種類は戦闘機、爆撃機、対潜哨戒機、早期警戒管制機です。こうした多種類の軍用機の集団はストライクパッケージと呼ばれ、米軍が攻勢対航空作戦など航空優勢未確保の地域での爆撃に用いる編成です。つまりより実戦に近い動きです。

 例によって日本のメディアでは中国の軍事力を見せつけるとか、四日から始まった日米英加(カナダ)蘭(オランダ)新(ニュージーランド)の六か国合同演習の対抗するためとか言われてます。もちろんそれもあるでしょうが、真の狙いは別なところにあるようです。まず、侵入した中国軍機の動きを見てみましょう。

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出典:2021年10月5日NHKオンラインより『なぜ? 5日間で延べ150機 中国軍機が台湾防空識別圏に進入』

 ご覧の通り台湾の南西をかすめるように侵入してますね。件の合同演習が沖縄南西から南シナ海に出たので、その対抗にも見えますが、実は台湾の南西にある島を念頭に置いているのです。それは東沙諸島です。東沙諸島は東沙島と環礁からなる島で、現在台湾が実効支配しております。

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台湾南西に位置している東沙島と環礁

 元々は無人島だったのですが、例によって中国がここの領有権を主張しており、台湾はコーストガードである海岸巡防署や軍人を200人ほど駐在させているそうです(ヘタレな我が国と違ってちゃんとしてますね)。

 中国が東沙諸島を狙う理由として10月12日の青山繁晴『ぼくらの国会第227回』において青山さんが次のように解説しておられます。

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 これ(東沙諸島)って南シナ海の入り口だよね。でここ(北東)に日本があって横須賀の第七艦隊の母港もあり、ということは、例えば南シナ海に行く潜水艦の特に原子力潜水艦の通り道になる事も多い。で地裁学的に言うと軍事的に言うとこのちっちゃな環礁が南シナ海の入り口を抑えているわけです。(出典:【ぼくらの国会・第227回】ニュースの尻尾「台湾新戦争」,青山繁晴チャンネル・ぼくらの国会,2021.10.12.,18:13-18:50)※括弧内ブログ主注釈

 つまり南シナ海の入り口として東沙諸島を軍事制圧する実戦的演習として先の150機の軍用機侵入が実行されたのです。

 南シナ海の重要拠点

 東沙諸島は中国の南シナ海の支配強化において重要な拠点となります。NIDS防衛研究所の論文に同島の地政学的重要性が説明されています。

 中国軍が東沙島を奪取した場合、干潮時に水深1m 程度の東沙島のラグーンを埋め立てて大規模な人工島を作り上げるであろうことは、南沙諸島におけるこれまでの行動を見れば確実に予想できる。(中略)強力なレーダーや延長した滑走路、港湾施設、対艦ミサイルや対空ミサイルを配備し軍事要塞化した東沙島は、バシー海峡西側出入り口、台湾海峡南側出入口、南シナ海北部を押さえる中国軍の一大軍事拠点となる。フィリピンと係争しつつ中国が実効支配しているとされるスカボロー礁にも中国が同様の措置を施せば、南シナ海を囲むダイヤモンドが形成され、南シナ海は完全に中国の「内海」と化す可能性もある。(出典:緊迫化する台湾本島周辺情勢【2】-高まるバシー海峡・東沙島の地政学的重要性-,NIDS コメンタリー,2020.6.16.124 ,3頁,http://www.nids.mod.go.jp/publication/commentary/pdf/commentary124.pdf

 中国は現在に至るまで南シナ海のファイアリークロス礁やミスチーフ礁、ズビ礁に巨大な滑走路を建設しており、大型の輸送機や爆撃機も発着できるようになっております。ベトナムから奪ったパラセル諸島ウッディー島にも島を突き出るほどの大きな滑走路が敷かれており、これにフィリピンから奪ったスカボロー礁、そして東沙島も軍事基地として整備した場合このようなダイアモンドが出来上がります。

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南シナ海を支配するダイアモンド

 近年中国海軍が大きくいなったとはいえ、まだまだ広い海域を支配するには力不足だったのが、人工島という「不沈空母」ができることにより、パトロール能力がかなり向上できるのです。こうなるといよいよ米軍も近づくことができなくなり、アジアでの軍事バランスが中国側に傾きます。台湾周辺での軍事演習も難しくなるでしょうし、航行の自由作戦もやらなくなるでしょう。

 さらにここで台湾周辺の東沙諸島、そして尖閣諸島の位置関係も見てみましょう。

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東沙諸島尖閣諸島の位置関係

 はい、がっつり台湾を挟んだ位置関係であることがわかります。本ブログではかねてから中国が南シナ海東シナ海を支配しようとする目的の一つは台湾を南北から挟み撃ちにするためであり、「一つの中国」としての正統性の為の国策であるとみています。台湾の東沙諸島に我が国の尖閣諸島。これらを奪取して立派な滑走路を備えた海軍基地を創れば、常に沈まぬ空母が台湾海峡の両脇を固めることができ、台湾に多方面作戦を強いて疲弊させることができます。台湾攻略の可能性がグッと高くなるのです。

 東沙有事は尖閣有事の前日譚

 このまさしく盲点を突いた作戦でどんなことが起こるでしょうか?青山さんはこう述べています。

中国軍が本当に考えているのは台湾本島を爆撃して、そこで大戦争になって、遅ればせながら米海軍がやってきて、そこで自衛隊もある程度の実績を残して日本人の意識を変えるっちゅなことは、実は彼らはリアリストだし弱み……実戦経験が一度もないということを、陸軍はあっても海空軍はゼロなんだから、やられることは限られてくると知ってるので、この台湾のいわば喉元であり、南シナ海の入り口であり、そして現代の海戦の中心である原子力潜水艦の通り道であるここをニ・三日で、まさしく10月の四日間で150機ほどというのは短期決戦で、アメリカ海軍がやってきたときにはもう終わっていると、しかも民間人の犠牲者はほとんどいないと、そこに中国が臨時の政府を創る。簡単ですよね。それで正統性を主張すると。つまり「台北にいるのは偽の政府だ」と、言うことをいったら台湾の中にかなり親中派は浸透してて(中略:八田與一の像の首が切り落とされた話)東沙に臨時政府のようなものを置かれて、そっから散々プロパガンダをやられると、動揺全くしないとは言い切れないですね。(出典:【ぼくらの国会・第227回】ニュースの尻尾「台湾新戦争」,青山繁晴チャンネル・ぼくらの国会,2021.10.12.,27:42ー30:19)※括弧内ブログ主注釈

 八田與一は台湾の水利を手掛けた日本人で、旱魃の危険にさらされていた嘉南平原を潤すために、烏山頭ダムを建設した方です。台湾に豊穣をもたらした偉人も辱めるなんて、民族主義は人をどこまでも残酷にさせますね。

 過去に中国は2008年4月に大量の中国漁船団を送り出し、東沙諸島から一キロ離れた海上に漁船基地を造らせ、台湾国民をおおいに動揺させたことがあります。不幸にもアメリカの専門家は別にして、米国民や米議会は「東沙?何それ?」な状況なので、護ってくれと頼んでも受け入れてもらえません(この点、我が国の尖閣諸島は首相が何かにつけて「安保5条適応」を念仏のように確認している分マシかもしれません)。したがって、今回中国の計画通り東沙諸島の奪取を成し遂げたとしたら、その衝撃は計り知れないものになるでしょう。中国への警戒感が高まる一方「殺されるよりは恭順すべき」という主張も出てきて台湾世論がおおいに揺らぎます。

 そして日本はと言えば米国同様「東沙?なにそれおいしいの?」状態なので、大きなニュースになる事もなく「ちょっとした衝突だ」程度にしか受け取られないでしょう。しかしそれによって南シナ海の軍事バランスは一気に変わり、それを敏感に察知した自称軍事評論家が「尖閣諸島も米国は護らないから、中国と仲良くした方がいい」という主張を表だってするようになります。そして彼らの言ったとおりに、尖閣有事で米軍が動かなければ……我が国で「米国離れ」と私が最も警戒している「日中同盟論」が動き出すことでしょう。

 よく「台湾も独立せず、現状のまま未来永劫続けばいい」と主張する方がいらっしゃいますが、そもそも台湾は我が国が放棄して以降一度も共産党中国の施政下に入ったことはなく、偉大な李登輝氏によって民主主義が根付いているので、現状維持で最も困るのが他でもない中国共産党の方であるということに気づかなければなりません。動画内で青山さんは「中国軍が台湾本島を爆撃することはない」とおっしゃっていますが、目的のために人間は何処までも冷酷になれるもの。「できる」と判断すれば台湾国民が何人死のうが、ためらうことはないでしょう。彼らが標的にしている日本の米軍基地だって、すぐ近くに民間人はいっぱいいるのですから。

 

台湾で起こることを対岸の火事とは思わず「次は自分たちだ」と思って緊張感と危機意識を持ちましょう。