五輪の裏で蠢くクライシス

 本日、東京五輪開幕の日です。開幕に向けて働くボランティアの方々、開幕へ向けて練習してきた選手たちに感謝と敬意を表し、大会の成功を祈っております。武漢熱の傷跡が残る中、混迷を極めた中での開催となりますが、57年前の東京五輪が「敗戦からの復興」を象徴したように、今日の五輪も何か良い兆しになれば、と思います。

 けれど私の悲観主義な視点で見ると、今日の東京五輪は「敗戦への没落」の象徴になりかねない風潮が現れています。ワクチン接種の遅れと政局や政権批判のエクスタシーに浸る者達の「五輪中止論」。その圧力と己の失政で日和った菅政権による「無観客」の決定。スポーツと平和の祭典に、政局や保身の泥を塗った愚かさは、後世で厳しく指弾されることでしょう。

 この日本という国を認めない者達や、日本の誇りと尊厳の為に戦う覚悟のない政権の存在は、日本とアジアの将来に暗い影を落とすことになります。これから起こり得るであろうクライシス(危機)を述べます。

 五輪と戦争

 先ほど五輪をスポーツと平和の祭典と評しましたが、この4年に一度の大イベントに政治が一切絡まないというのはあり得ません。開催国がその誇りをかけて国費を注ぐのですから、国威発揚やシンボリックなものになってしまうのは致し方がないとも言えます。しかし、五輪の裏で領土拡大の野心を実行に移してしまうという、許しがたい事件が起こりました。2014年のクリミア危機です。

 ソチ五輪閉会式があった2月23日、ウクライナ政変に反発したクリミアの親ロシア団体がキエフの指示に従わないと主張し、4日後にクリミア自治政府議会を占拠しました(ロシアの特殊部隊が関わっていたとされる)。その後国籍マークを外した軍人が空港を制圧し、翌月1日には堂々とロシア軍が侵攻、7日にはとんとん拍子にクリミア議会でウクライナからの分離・ロシアへの編入が決議されました。この間ロシアではソチパラリンピックが開かれていました。

 この所業は国際社会の非難にさらされ、欧米からは制裁を負わされましたが、クウェート侵攻のイラクのように攻撃を受けることはありませんでした。これが冷戦終結後、大国の力による現状変更を許す前例となってしまったのです。

 ならず者国家にとっては平和の意義も、将来の戦争に備えた時間稼ぎに過ぎません。軍事力が伴って制裁さえ凌げれば、侵略をしない理由はないのです。

 近づく尖閣クライシス

 東欧でのならず者がロシアならば、東亜でのならず者は何処か?考えるまでもなく、それは中国です。今月20日に台風で対比するまで、中国海警局の尖閣周辺への不当な航行の継続は157日に上りました。

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 これを北京当局は「パトロール」と称し、実効支配の既成事実化を図っています。ここ一年、武漢熱の責任を問われた北京のファシスト達は逆切れし、ほほえみを完全に捨てた「戦狼」となっております。そこに「第二の毛沢東」を目指す習近平総書記の妄執も相まって、日中間の紛争に危機はかつてないほどに高まっています。しかし我が国の政府は抑制的な姿勢にとどまっており、危機に対応しようという気概が感じられません。

 

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  その体たらくは武漢熱に対する右往左往の対応と、五輪の「無観客」決定に重なります。感染の水際対策に失敗し、ワクチン開発に出遅れ、海外から購入したワクチン接種さえも出遅れるという失策ぞろい。リスクを真正面から勘案せず、ただ保身のために「有観客開催」を決断できなかった覚悟のなさ。それはそのまま尖閣有事での政府対応にまつわる私の予想を裏付ける形となりました。

 

 ある年、沖縄県石垣市周辺の台風通過中に中国の漁民が尖閣諸島魚釣島に上陸。台風明けに海保の巡視船が救出を試みたところ、彼らはテントを張ってその場に立てこもり、銃器でもって抵抗してきた(正体は訓練を受けた武装漁民)。日本政府が対応を決めあぐねている所へ中国海警局の大型船が巡視船に接近し、警告なしに機関砲による一方的な射撃を浴びせてきた。この攻撃により海保の隊員数名が殉職、損傷を受けた船は拿捕され残りの隊員たちが拘束される。(尖閣諸島近海における中国公船発砲事件。尖閣発砲事件と略される。だが中国側は海保の巡視船が銃撃してきたと主張した)。

 これを受けて日本政府は隊員達の解放を求めるも中国政府は「日本は我が国固有の領土である釣魚群島(中国が主張する尖閣諸島の呼称)へ不当に侵入し、我が同胞の拉致を試み攻撃を加えてきた」として謝罪を要求。応じない場合は安保理で訴え、国際的な圧力の下で解決を図ると主張した。島では愛国心に燃えた漁民たちが交代で尖閣に“駐留”し、それを守るように複数の海警船(実質海軍の駆逐艦)が入れ代わり立ち代わり領海内に居座り続けた。

 世界中で日中戦争の危機が叫ばれるが日本政府は事態の悪化を恐れて中国側の要求をのみ、尖閣諸島とその周辺の島々について共同開発を志向した交渉に応じることに同意した(日中東シナ海合意)。結果、海保の隊員は解放されたが中国人が尖閣諸島から引き上げることはなかった(中国による事実上の国境書き換え)。

尖閣発砲事件 - 未来に予想される戦争と敗戦

 いかに自衛隊の練度が優れていても、海保が「正義と仁愛」の精神で体を張ろうとも、政府に迅速な危機管理能力と覚悟がなければ、尖閣防衛は「絵にかいた餅」になるのです。

 尖閣から始まる日本の受難

 これを読んでいる方の中には「たかが無人島ぐらいで」と思っている人もいらっしゃるでしょう。はい、そこのあなた手を挙げて!怒らないから。

 尖閣諸島沖縄本島から418km離れている反面、台湾とは169kmしか離れていません。そして線を結べばほぼ直線上になる事から、ここに中国軍の拠点を置けば、台湾有事において台湾と日米同盟の物理的分断を図ることができ、台湾統一を目指す習政権にとってとても有利になります。

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沖縄本島尖閣諸島、台湾の地政学的関係

 何より我が国では尖閣日米安保の第5条適応を根拠に「米軍が尖閣を護ってくれる」という認識が支配的になっています。しかし条文自体を読めばわかりますが、締約国は日本の施政下におけるいずれか一方に対する攻撃に対して対処するとあり、日本の領土侵害自体に対処するとは書いていません。また「対処」とある通り、必ずしも直接的軍事介入が約束されているわけではなく、後方支援や制裁レベルに留まる可能性もあるのです。

第五条 各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全
を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動する
ことを宣言する。
前記の武力攻撃及びその結果として執つたすべての措置は、国際連合憲章第五十一条の規定に従つて直ちに国
際連合安全保障理事会に報告しなければならない。その措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全を回復し及
び維持するために必要な措置を執つたときは、終止しなければならない。

(出典:外務省ホームページより https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/pdfs/jyoyaku.pdf)

 したがって国土の防衛の主体はあくまで日本であり、自衛隊なのです。つまり、自衛隊が動かなければ米軍は動きません。方や中国は海警局と海上民兵主体で尖閣奪取を試みるつもりなので、まず矢面に立つのが海保になります。序盤から自衛隊を出せば「警察や漁家相手に軍隊を出した」とやり玉に出され、国際世論戦で不利になってしまうからです。

 

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  で、海保で対応できないと判断された時にこそ、自衛隊の出番になるのですが、海上保安庁法第25条「この法律のいかなる規定も海上保安庁又はその職員が軍隊として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を営むことを認めるものとこれを解釈してはならない」が障害となって、スムーズに対応することができず、海保の巡視船が沈むのを黙って見るしかなくなります。その後「海保が沈んだ。さあ、次は海自だ」とすんなりいけるのでしょうか? その時も政権が日和って「防衛出動」どころか「海上警備行動」すら発令しなかった場合、自衛隊は動かず、米軍もまた遠くから他人事のように眺めているだけとなります。そんなことが実際に起こった時のことを想像してみてください。政権や与党自民党への信頼が地に落ちるのは当然のこと、自衛隊や米国に対しての信頼さえ揺らぐと思いませんか?

 

 さらに重ね重ね言いますが中国船が尖閣諸島周辺を航行し続けるのは既成事実を積みかさねるためであり、同諸島が日本ではなく中国の施政下であることを宣伝するためです。昨年10月、中国海洋局は釣魚島(中国が魚釣島に勝手につけた)が自国領土であるというプロパガンダを仮想空間を駆使して展開しています。

www.zakzak.co.jp

 つまり時間が経つごとに中国に有利な状況へシフトしており、ある日、米国のシンクタンクが「尖閣はもはや日本の施政下にない」と発言して、同盟関係が揺らぐ可能性もあります。というか揺らぎます。リベラルのバイデン政権だからという話ではなく、タカ派と呼ばれたトランプさんのような政権であっても、自己を護ろうと努力しない同盟国は”リストラ“の対象になるのです。

 

 私の描く恐ろしいシナリオを紹介しましょう。尖閣発砲事件によって国民の信頼を失った自民党は次の衆院選で大敗し、野党連合が与党となります。野党はその大部分が反米左派のポピュリストですから、辺野古移設中止や安保法制の廃止、特定機密法の廃止を断行するでしょう。国民も米国への信頼も失くしていますから、彼らの主張をすんなりと受け入れて支持します。同盟国への協調性が皆無となった日本に米国は呆れかえり、リスク低減のために在日米軍の縮小・撤収を決定します。かくして東アジアの軍事バランスはどんどん中国優勢になっていき、台湾武力統一は勿論、沖縄の奪取さえ視野に入るようになるのです。

 

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  専門家の予想では中国が実際に尖閣奪取を図るのは来年の北京冬季五輪とされています。しかし油断は禁物です。現在、武漢熱対応の失策と五輪「無観客」の影響で次期衆院選自民党が57議席失って過半数割れする予想が出ております。もしここに尖閣発砲事件が起これば、予想をはるかに上回る結果になること必須です。日本は領土だけでなく未来への希望と尊厳を失うことになるのです。