座して敗北を待つ海保と日本政府

 皆さんこんにちは、ハトヤブです。前回尖閣の危機に自衛隊を出せない理由を取り上げました。中国は「警察の仮面をかぶった第二海軍」である海警局の船を侵入させ、自衛隊が出てくれば安保理で騒ぎ、それがなければ「漁民の仮面をかぶった特殊部隊」の海上民兵尖閣を軍事占拠する計画を持っています。

 

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  そしてそれは2022年の北京五輪の後すぐと言われています(ロシアのソチ五輪後のクリミア侵略と言い、もはや五輪は「平和の祭典」とは言えなくなってますね……)。それ故Xデーは間違いなく近い(もっと早い可能性さえあります)ため対策が必要ですが、どうも海保も政府も動きが鈍いようです。

 参議院議員青山繁晴氏が3月1日の動画「青山繁晴チャンネル・ぼくらの国会」で2月24日の自民党で行われた国防議員連盟会合でのことを話しております。

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 そこで尖閣諸島での「警察力の強化」と「行政力の強化」についてたくさんの官僚方と意見交換をしたそうです。その大筋の概略をスライドにまとめて、私なりに深堀もしつつ以下に示します。

 そんな装備で大丈夫か?

 まずは「警察力の強化」として2月に施行された中国の海警法に対応して、国防議連は現場の人員や巡視船のさらなる充実を提案します。しかし、海上保安庁の方は既に決定された「海上保安体制強化に関する方針」で十分だと突っぱねました。

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(【ぼくらの国会・第115回】ニュースの尻尾「尖閣諸島の政府見解『上陸禁止・現状維持』が浮き彫りに!?」を基にブログ主が作成)

海上保安体制強化に関する方針」とは平成28年から毎年12月に行われている「海上保安体制強化に関する関係閣僚会議」で決定している政策です。海保のホームページに公開されているのですが、その議事録と言ったら二枚から四枚程度の短いもので、まず海保の長官が案をポンと出し、その後に関係閣僚と総理が順に発言して終わりという、まるで中国の会議ですか?と思えるようなシャンシャンです。

 そして資料を見ればなるほど、大型の巡視船をちょくちょく増やしてますねと。それから平成30年7月1日より中国海警局が人民武装警察の隷下になって、実質上軍に近い指揮系統になっていることも資料の片隅には載っています。

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(出典:海上保安庁海上保安体制強化に関する関係閣僚会議資料『海上保安体制強化の取組状況』,2020.12.21.,スライド2,https://www.kaiho.mlit.go.jp/info/post-318.html

 上はその資料の一部です。右上の『中国海洋法執行機関に係る機構改革』がそれです(詳しく読みたい方はリンク先の「令和2年12月21日」の配布資料にアクセスしてください)。ただし、議事録を見る限りそのことに言及されることはなく、対応も一切触れられませんでした。ただ中国側の様子だね。ふーんとでも言いたげな感じです。むしろコロナ対策に協力をすることに重きを置かれていたようにさえ見えました(そりゃ重要だろうけど)。

 もちろん私は素人ですし、公開を前提とした会議で手の内を明かさないのは当然であります。しかしながらわずか15分の議事とは言え、一言だけでも触れないでいて、国民は安心できるのでしょうか?せめて「中国海警局の機構改革を注視する」とか「新たな法施行を想定する(実は海警法案は昨年12月の時点で大筋固まっており、それを防衛省などは察知していました)」でも加えるだけで印象は違います。それがなければ「一顧だにせず」と思われてしまい、ついネットスラングですが『そんな装備で大丈夫か?』と言いたくなってしまいます。

[追記]方や中国海警は軍に似た指揮系統になっているだけではなく、既に海保をしのぐ潜在戦力を持っている段階です。特に1万トンを超えるものは76ミリ砲を装備していると目されており、海保最強と謳われているしきしま型の40ミリ砲を圧倒する火力です。

 中国公船は大型化が進み、複数の3000トン級以上の公船が尖閣領海に侵入するケースもある。海保最大の巡視船は6500トンだが、海保や防衛省によると、中国は「海警2901」など1万トン級の公船2隻を保有。軍艦並みの大口径の砲を備えているとみられる。(出典:尖閣、挑発緩めぬ中国 軍艦並み、巨大公船も警戒―「グレーゾーン」対処課題,時事通信電子版,2020.5.17.,https://www.jiji.com/jc/article?k=2020051600316&g=pol)

 現在1万トン級の海警船は尖閣に来ていません。日本漁船を追い回すのに向いてないからです(巡視船の意味ないやん)。けれど明らかに海保の巡視船を標的とした装備と言えるでしょう。

 お下がりは嫌だ

 いくら巡視船をちょくちょく増やすといっても、大型船は年に建造できる数に制約がありますし、予算も中国みたいに年々倍増とはいきません。ならばと議連が提案したのは海自の退役護衛艦の活用です。

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(【ぼくらの国会・第115回】ニュースの尻尾「尖閣諸島の政府見解『上陸禁止・現状維持』が浮き彫りに!?」を基にブログ主が作成)

 なるほど海保は海自に比べてとても長く船舶を運用します。一番長いもので1978年11月22日に竣工されたPLH01「そうや」の運用年数が43年で未だ現役です。

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オホーツク海を駆ける巡視船「そうや」出典:釧路海上保安部,巡視船そうやが海氷観測支援 ~2020年2月、海氷が押し寄せるオホーツク海を走る~,2020.2.,くしろ海保だより,https://www.kaiho.mlit.go.jp/01kanku/kushiro/event/event.html)

 けれどまさか全ての巡視船を40年以上運用するわけじゃありませんし、それでは時の情勢にまるで対応できなくなることになるので、必要に応じて検討する余地を残すべきだと思います。ガスタービンエンジンを使ったことがないなら、海自から技術支援を受ければいいし、何ならディーゼルエンジンに換装すればいいのです。どうしても海保専用のピカピカ新品に拘るというのは「俺たちは海自なんかと違う、海上保安官だ!」というプライドがあるように思えてなりません。

 やるとは言ってない

 続いては行政力の強化です。議連は日本の尖閣諸島の実効支配の象徴として、新たな灯台を建設することを提案します。それに対し海保は既に管理していると返します。

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(【ぼくらの国会・第115回】ニュースの尻尾「尖閣諸島の政府見解『上陸禁止・現状維持』が浮き彫りに!?」を基にブログ主が作成)

 まるで言葉のキャットボールができてませんが、行間を読めば「新たに建造するつもりはない」ということでしょう。その理由は間違いなく中国を刺激しないためです。中国の海警法には自国の「管轄権」と断じた領域に建てられた外国の組織や個人による建造物は破壊していいことになっています。

外国の組織や個人が中国の島・岩礁などに建設した構造物についても「強制的に取り壊すことができる」と規定。日本が尖閣諸島ヘリポートなどを建設することを牽制(けんせい)する狙いがあるとみられる。(出典:中国、武器使用認める海警法成立 尖閣諸島周辺での活動強化の恐れ,産経新聞電子版,2021.1.22.,https://www.sankei.com/world/news/210122/wor2101220038-n1.html)

 おそらくこれを意識して新たな施設建設を退けたのでしょう。やれやれ、その前の所有者が作った小さな灯台が勝手に破壊されたらどうするつもりでしょう?その時はちゃんと新しい灯台を作るんでしょうね?

 遺骨なんて知らん(by厚労省

 さらに官僚たちは尖閣に日本人が上陸することも避けたがります。

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(【ぼくらの国会・第115回】ニュースの尻尾「尖閣諸島の政府見解『上陸禁止・現状維持』が浮き彫りに!?」を基にブログ主が作成)

 尖閣諸島戦時遭難事件とは、第二次世界大戦末期の1945年7月に石垣島の住民が台湾に疎開するために乗った民間船が米軍機に爆撃された事件です。多くの溺死者を出しながらも魚釣島へ漂着した住民たちは少ない食べ物を分け合って耐え、有志達が難破船から小舟を作って救助を要請しに海に出ました。結果、遭難から50日後に救助が来ましたが、それまでの間に多くの方が餓死してしまい、その遺骨が今も魚釣島に埋められているのです。

 この悲劇的な歴史を厚生省の役人は詳しく知らず、追悼式や慰霊祭の支援もしてないそうです。実際、遺族の方々はご自分の力で慰霊祭を開いております。

 遺族会が結成され、尖閣諸島魚釣島に慰霊碑を建立も、領土問題で慰霊祭が催せないことから、舟蔵に慰霊碑を建立。毎年、遺族会が慰霊祭を7月3日に開催している。

 遺族会は、「隣国との紛争になってほしくない」理由で、領土問題への政治的な関与を拒否し続け、平和への希求を第一に活動。遺族会が慰霊祭を自ら主催して、開催し続けている。(出典:縮小して尖閣列島戦時遭難死没者慰霊祭開催,やいまタイム,2020.7.3.,

https://yaimatime.com/yaimanews/89223/)

 謙虚な遺族たちは上陸を遠慮するでしょうが、それに甘えて放置する行政は何なのでしょうか?遺族たちよりも中国の方が大切なのでしょうか?

 最新の人工衛星画像で見てますっ!

 法治ならぬ「放置の精神」は環境破壊にも及びます。それは政治団体魚釣島に持ち込んだ山羊の食害です。

 固有種など貴重な動植物が生息する尖閣諸島魚釣島(3.8キロ平方メートル)は、野生化したヤギによる食害の影響で裸地部分が目立っていることが、富山大学の横畑泰志準教授(獣医学博士)らが衛星のデータを使って作成した立体画像で21日分かった。横畑準教授が同日、石垣市を訪ね、野生化ヤギ問題の状況を報告。「もともとの裸地部分を含め島面積の3割以上が裸地になっているのではないか」と危機感を募らせ、早期の学術調査やヤギ駆除の必要性を訴えた。(出典:魚釣島の裸地3割に拡大 尖閣諸島、野生ヤギの食害進む,八重山毎日新聞,2009.12.22.,https://www.y-mainichi.co.jp/news/15085/)

 魚釣島には固有種としてセンカクモグラやセンカクアホウドリがいるといわれています。もし山羊が島の緑を根こそぎ食べつくしてしまったら、絶滅に追いやられるかもしれません。議連もこの調査を提案に盛り込みましたが、官僚の答えはこうでした。

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(【ぼくらの国会・第115回】ニュースの尻尾「尖閣諸島の政府見解『上陸禁止・現状維持』が浮き彫りに!?」を基にブログ主が作成)

 人工衛星で調査しているそうです。随分と簡単なお仕事ですね。「大阪へ出張行ってきて」と言われてGoogleストリートビューでポチポチやって「行ってきました」と言っているようなものです。先に引用した富山大学の教授が衛星写真で調査していましたが、当局者がそれを真似てどうするんです?

 日本人禁制の日本領土!?

  当局者が日本人を尖閣に上陸させない方針は筋金入りで、例えば総務省尖閣諸島を管轄している石垣市が固定資産税の実地調査することも禁じております。以下は2011年の記事です。

 総務省は7日、固定資産税課税のために尖閣諸島に上陸調査ができるよう求めていた石垣市の要請に対し、上陸は認めないとの方針を決め、市に回答した。市がこれまでにも上陸調査せずに課税してきており、島の現況に変化がないことや、国の機関を除き上陸を認めないという所有者の意向を踏まえた。(中略)

 尖閣諸島は民間人が所有するが、政府が「平穏で安定的な維持と管理」のために借り上げており、「政府としては原則として政府関係者を除き何人も尖閣諸島への上陸は認めない」と従来方針を示した。

(出典:尖閣諸島への上陸認めず 総務省が市の要請に回答,八重山毎日新聞,2011.1.8.,https://www.y-mainichi.co.jp/news/17500/)

 所有者と意向とありますが、この後国が買い取って国有化してもその方針が変わってませんから、借り入れていた政府の意向の反映である可能性が高いです。昨年10月、石垣市尖閣諸島の字名を「登野城」から「登野城尖閣」に変えた時、標柱の設置を政府に具申しましたが、あっさりと突っぱねられています。「政府関係者を除き」とありますが、山羊の調査すらしないのですから正確には「日本人の上陸は認めない」と言っているのと同じです。以上の海保と官僚の有様を見て青山氏は「海警法なきがごとし(まるで中国が海警法を施行してないと思っているみたいだ)」と言い放って会合は終了となりました。

 座して敗北を待つ海保と日本政府、国民は?

 これまで見てきたように海保も政府も、中国が尖閣侵略の次のステージに出たにもかかわらず、「警察」の仮面を被ってやってくることに逆に安心し、過度の配慮を継続して現状を維持しようとしています。政府は尖閣を「平穏かつ安定に維持及び管理」と宣っていますが、既に管理されてるとは言えず、中国の攻勢によって「平穏」でも「安定」でもなくなっています。まるで戦況が悪化していることに見て見ぬふりをして戦争を継続した「戦中日本」とある意味同じです。

 いい機会なので私が書いた拙いシナリオを引用しましょう。地震津波と違って国が相手となる有事においては、政府の危機対処能力は著しく低下する……いや、能力さえ発揮できないと(現場の方に申し訳ありませんが)私は考えております。

 ある年、沖縄県石垣市周辺の台風通過中に中国の漁民が尖閣諸島魚釣島に上陸。台風明けに海保の巡視船が救出を試みたところ、彼らはテントを張ってその場に立てこもり、銃器でもって抵抗してきた(正体は訓練を受けた武装漁民)。日本政府が対応を決めあぐねている所へ中国海警局の大型船が巡視船に接近し、警告なしに機関砲による一方的な射撃を浴びせてきた。この攻撃により海保の隊員数名が殉職、損傷を受けた船は拿捕され残りの隊員たちが拘束される。(尖閣諸島近海における中国公船発砲事件。尖閣発砲事件と略される。だが中国側は海保の巡視船が銃撃してきたと主張した)。
 これを受けて日本政府は隊員達の解放を求めるも中国政府は「日本は我が国固有の領土である釣魚群島(中国が主張する尖閣諸島の呼称)へ不当に侵入し、我が同胞の拉致を試み攻撃を加えてきた」として謝罪を要求。応じない場合は安保理で訴え、国際的な圧力の下で解決を図ると主張した。島では愛国心に燃えた漁民たちが交代で尖閣に“駐留”し、それを守るように複数の海警船(実質海軍の駆逐艦)が入れ代わり立ち代わり領海内に居座り続けた。
 世界中で日中戦争の危機が叫ばれるが日本政府は事態の悪化を恐れて中国側の要求をのみ、尖閣諸島とその周辺の島々について共同開発を志向した交渉に応じることに同意した(日中東シナ海合意)。結果、海保の隊員は解放されたが中国人が尖閣諸島から引き上げることはなかった(中国による事実上の国境書き換え)。

 

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  このシナリオでは日本の巡視船が中国海警船に一方的に攻撃されていますが、これは海上保安庁法第20条に定められた外国船への武器使用条件として「軍艦及び各国政府が所有し又は運航する船舶であつて非商業的目的のみに使用されるものを除く」とあるからです。一応、先月の25日に政府見解で海警局の尖閣上陸は「重大犯罪」として「危害射撃」が可能だとしていますが、自衛隊憲法9条同様に解釈問題で揺れる危険性があります。その上海警の大型船は白く塗った駆逐艦ですし、上陸した「漁民」達も陸自のレンジャー顔負けの実力部隊ですから、いざ有事となった時に陸と海から挟まれて悲惨なことになりかねません。そうなった時に「海保が沈んだ。次は自衛隊だ!」などとできるのかと。戦後日本のありようを思い返せば、殉職した隊員の遺体回収と生き残って「捕虜」となった隊員の解放を優先することでしょう。尖閣を取り戻すどころではなくなるわけです。

 とても気分が悪くなる話ですが、今回私も含めて尖閣の実態を知って国民みんなで共有することができることが唯一の救いです。そして私たちが唯一中国に対して有利な立場にあるのは民主主義、議院内閣制であることです。以下、青山氏の動画の発言より引用します。

議院内閣制っているのは、政府の側からも立法府のぼくらに対して「ここが足りません」と、ね?さっきの尖閣諸島の上陸禁止で言うと「政府関係者を除き」となってるけども、政府関係者も入れないじゃないですか?

だから逆にこれは法がちゃんとあって、例えば「環境調査」という法律がちゃんとあって、その法に基づいてだったら、政府も動けるわけだから、だからそうやって議院内閣制で「ここが足りません」ってことを、言わなきゃいけない!(出典:【ぼくらの国会・第115回】ニュースの尻尾「尖閣諸島の政府見解『上陸禁止・現状維持』が浮き彫りに!?」,2021.3.1.,19:56 - 20:26)

 ひたすら現状維持に固執する政府も役人たちも意識を変えれば、青山さん達からではなく彼らの方から、提案し法に基づいて尖閣も護れるようになっていく。そんな可能性が我が国にはあるのです(中国は習近平総書記が首を縦に振れば何でもできますが、横に振れば何もできません)。その後押しとなるためには私たち国民の意識を高めて「このままでいいわけない」と盛り上がれば行政も立法も動くのです。

 敗北を目の前に座り込む海保と日本政府を私たちが立ち上がらせましょう。

 

 戦えない日本が陥る無残な敗北と不幸になるアジアの近未来シミュレーション

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(2021/3/4 中国海警船について追記。中タイトル編集。本文一部修正、3/31本分一部修正)