尖閣に自衛隊は出してはいけない

 皆さんこんにちは、ハトヤブです。まだまだ続くコロナ渦に福島県沖の地震。感染や被災に見舞われた方々にはこの場を借りてお見舞い申し上げます。不安が尽きない時勢となりましたが、日本の安全保障も重大な岐路に立たされています。いわれるまでもなく尖閣情勢です。

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 2月1日に中国の海警法が施行され半月を越えました。成立当初は中国が自分の領土と言えば全て「管轄権」となる横暴さと「武器使用」の明記が注目され、関心を持つ多くの日本人が不安を感じたことでしょう。

 海警法は、中国の主権や管轄権が外国の組織や個人によって不法に侵害されたときに「武器の使用を含めたあらゆる必要措置」をとる権利があると明記されている。(出典:中国、武器使用認める海警法成立 尖閣諸島周辺での活動強化の恐れ,産経新聞電子版,2021.1.22.,https://www.sankei.com/world/news/210122/wor2101220038-n1.html)

 私自身は緊張が高まるというよりは今のエスカレートした状態を正当化する狙いがあるととらえていました。というのも中国にとって法律は支配の道具に過ぎず、独裁者の気分次第でころころ変わる人治体制だからです。実際、南シナ海でフィリピン漁船やベトナム漁船に対しては発砲や体当たりを敢行しており、ベトナム漁船の方は沈没させています。何より指揮系統が軍と同じにされており、実質「第二の海軍」というべき存在となっております。

2018年には、海警が国務院(政府)管轄の国家海洋局から人民武装警察部隊(武警)に編入され、最高軍事機関である中央軍事委員会の指揮下に入った。昨年6月の法改正では、有事や演習の際に軍と同じ指揮系統の下で一体的に行動することが可能となった。(前掲)

 以上のことから意識ある方々からは「自衛隊を出せ!」という主張が出てきます。けれど菅政権は「注視する」に留め、静観を決め込んでいます。「またいつもの弱腰か!」「親中共の暗躍か!」とことさら憤る方もいることでしょう。本ブログ記事のタイトルも『尖閣自衛隊は出してはいけない』ですから、なおさら反発していらっしゃると思います。その気持ちは良い傾向です。国防について皆で意識を高めましょう。

 ただ本記事でそう書いたのは平和主義とか中国に配慮したからではありません(私は日中同盟に反対の立場です)。その理由は中国が制定し施行した海警法の真意にあります。

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 海警法の真意

 先ほど述べたように中国は人治国家であり、法律は道具でしかありません。つまり海警法は中国海警局の船が尖閣に侵入して日本の漁家や海保に武器を使用したり、日本が建てた施設等を破壊することを可能にするために制定したのではなく、別の目的があるのです。そのことについて自民党参議院議員青山繁晴氏がネット動画の『青山繁晴チャンネル・ぼくらの国会 第108回』で解説しています。

 その人治主義のチャイナがなぜわざわざ日本やアメリカも含めて反発がある事を承知で出してくるのか法律を。好きなようにやればいいじゃない、法律なんて作らなくてもって思うでしょ?で、その疑問を持っている人は本当は結構いらっしゃるのですが……それは正しくて、要は中国は人治主義で習近平の帝が思っていることをそのままやるのは事実なんだけど、その時に相手が日本であれ、アメリカであれ、どこであれ……特に日米ですね、法治国家であることを逆手に取りたいんですよね。で、中国は法律に基づいて正当に尖閣を含む海を警察だけでパトロールしてたら、そこに軍であるところの自衛隊が入ってきて撃ちましたと……全く悪いのは日本ですよねっていう状況を作りたいっていうのが、先ず狙いとして実はある。(出典:青山繁晴青山繁晴チャンネル・ぼくらの国会 第108回,5:40-6:50,https://www.youtube.com/watch?v=bcwTjnFv-zg)

 つまりフリーハンドでできるはずの中国は敢えて我が国と同じ土俵に立つことで、日本の法律をフルに利用する戦略を実行したのです。その法律は海上保安庁法第25条「この法律のいかなる規定も海上保安庁又はその職員が軍隊として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を営むことを認めるものとこれを解釈してはならない」で、ただでさえ憲法9条によって雁字搦めの自衛隊が動ける余地を奪ったわけです。だから、国防に関心のある方が言うように、例えば政治判断で自衛隊を出そうものなら、日本を悪者に仕立て上げて、世界に「日本を攻撃する中国は正義の味方」という国際世論を展開することができるのです。これは奇しくも不肖私如きが、過去記事で取り上げた中国の尖閣奪取作戦そのもので、それが法律としてはっきり表れたことになります。

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 これは中国が得意とする三戦(法律戦心理戦世論戦)の一つであり、これを現場で肌身に染みて理解しているから、青山さんが聞いたところによれば、海保は自衛隊に出てきてほしくない、永田町でも変な法改正はしてほしくないのが本音ということです。先ほど述べたように中国海警局は「第二の海軍」になっていますが、当面は警察のふりをし続けるということで、仰々しく登場した1万2千トンの船舶も使わず、日本の漁船を追いかけまわることに専念するので、現状の海保で十分対応できますという話でした。現状歯がゆく感じられるでしょうが、これが心理戦なのです(尤も私は日本の世論が自衛隊出動論に燃えるとは思ってないし、そうなったとしても政府は防衛出動を出さないとある種の確信に至っております)。

 Xデーは北京五輪の後!?

 いわば中国側が仕掛けた罠があるわけですが、皮肉にもそれは戦後日本の「戦争しない」精神を生かせば十分に回避できるわけです。当然、それでめでたしというわけはなく、中国は日本が挑発に乗らない場合の作戦も用意しています。それが実行に移されるのは来年の北京五輪のすぐ後だそうです。

 その時にもうチャイナがはっきり決心したと分かったのは軍事作戦では出てこないと。ただし、言わばdisguised operation……disguised「仮面をかぶったオペレーション(作戦)」で、これまあアメリカ側と話してんだけど……その仮面てのは「警察」の仮面、警察官の仮面をした兵士。それで民兵って海上民兵ってのを本当にお金をかけて訓練をしてその訓練は実はアメリカは上から見てるから衛星で見てるからバレてるわけだけど、これは徹底的な訓練、その映画ドラマの世界で如何に漁民に化けるか、如何に「普通の漁民」に見えるか、しかし中身は屈強な、日本で言ったら陸上のレンジャー部隊と変わらないぐらいの実力を持った、アメリカで言うと海兵隊の突撃部隊みたいな実力を持った民兵をいっぱい養っていて、海警法の下で「警察」として管轄してて、一番うまくいったのは自衛隊が発砲してくれることだけど、そうでなくても、海警法の刺激で日本の抵抗が強くなればなるほど、中国の漁民……今漁出来てないってのが彼らの考え方だから、中国の漁家に漁をさせるために、警察力でパトロールしてて、その時に例えば漁船が沈められたりして、漁家の中国の漁民の人々が魚釣島を中心に上陸したと。で、それは本当は武装もしてると……いうストーリーしか考えてない。(前掲)

 即ち武装漁民を先兵として、徹頭徹尾有事とみなしにくい「グレーゾーン」で攻めるというわけです。中国の海上民兵については、自民党の部会でもその対応が議論されていますから「今の法体系のままでこちらも警察として対応し、特殊部隊として動いたときには自衛隊海上警備行動でできるじゃないか」と海保は言っているわけです。

 中国が軍事によらないことに固執するのは、近年中国海軍がレベルアップしたとはいえ、まだ日米の同盟軍に善戦できる確証がないためで、迂闊に大規模戦争をして日本での改憲機運が盛り上がるのを防ぎたいからです。動画で青山さんは彼が代表を務める「護る会」の提言として、

  • 尖閣周辺の日米合同演習や沖縄那覇への日米統合連絡本部の設置
  • 海保の装備の充実と尖閣諸島とその周辺での環境調査及び観測機の設置
  • 日本国民への周知させるための資料館の設置
  • 同じ境遇にあるベトナムやフィリピンとの連携

を上げて締めくくっています。

 ネックは首相の判断力と世論の支え

 というわけで日々中国の船が領海侵犯を繰り返している状況に自衛隊が出て行けない理由を明らかにしたうえで、着々と対策が練られていることを伺い知ることができました。しかし、政府の有事に対する覚悟がどれくらいなのかが一番の問題となるでしょう。地震などの自然災害に冷静に動けても、他国の悪意に基づく災厄にはまごつく可能性が高いのです。現場においても海保や海自の武器使用は警察官職務執行法を準用しており、それが諸外国に比べソフト(正当防衛でない限り人に危害を与えてはならない)であることから、そこを突かれて多くの犠牲を出す危険性も高いです。

 何より世論が関心を示さなかったら、国土防衛のために命を懸ける人々が浮かばれず、逆に相手のプロパガンダに乗せられて犯罪者扱いされたら、もう誰も日本を護らなくなってしまいます。それは果たして「国」と言えるのでしょうか?勿論、脊髄反射で「自衛隊を出せ!」とか「断交だ!」とか喚きたてるのも困りものですが、それ以上に「辺境の島など俺には関係ない」とか「尖閣なんて上げちゃえばいい」という態度が、戦後日本が立ち上がるのを妨げているのです。それは中国にとってとてもうれしいことで、さらなる海軍の発展を推し進め、米国をアジアから下がらせることができれば、日本を軍事的に屈服させ、日米同盟の日中版を作ることで永遠に日本を隷属させることができるのです。

 

 そうですこれはただの南方の島の問題ではないのです。

 この先の日本とアジアの未来を決める大きな課題なのです。

 

 日本が戦う気概を持たずに尖閣を奪われる惨めなシナリオはこちら

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 (2021/2/19 画像追加、3/3 引用箇所の差し替え)