香港動乱と米国の変節(追記しました)

※この作品は作者の独断と偏見によるシミュレーション戦記です。実際の人物、国、民族は関係ありません。

※「見えざる戦争前夜」より内容を大幅加筆修正しました(11/22)。

※2020年大統領選までに米朝講和が行われなかったことから該当箇所に取り消し線。

 

■20××年 香港動乱と米国の変節(追記)

 米国のポーカー大統領は「アメリカファースト」を掲げて貿易赤字を解消するべく奮闘していた。同盟国日本にはTPP脱退を言い渡し二か国間の自国に有利な取り決めを要求する。そして、中国に対しては関税を挙げて知的財産の保護と安全で公正な貿易を実現するよう圧力をかけた。日本相手には大統領の目論見通りに運んだが、中国との通商協議では妥結のめどがなかなか立たなかった(知的財産保護に関して中国側が難色を示したからといわれる)。安全保障面では北朝鮮とイランの核問題に同時に取り組むも目立った成果は得られず、韓国との安全保障体制に揺らぎが生じていた。その一方で日本やイスラエル、台湾との関係を重視し連携する方針を固めたかに見えた。

 香港民主化デモ

 そんな中香港で逃亡犯条例改正に反対するデモが発生し、多くの市民が参加する民主化運動へと発展する。これに対し中国政府は天安門事件のごとく軍投入こそしないものの、香港警察を通した暴力的弾圧を推し進め民主活動家や独裁政治に賛同しない大学生を一網打尽にする(天安門チベットウイグル内モンゴルに続く悲劇と後の時代に語り継がれる)。これに米議会は非難の声を上げ、上下院で香港の人権保護を目的とした制裁法案を可決する(香港人権・民主主義法と呼ばれる)。圧倒的多数で可決された法案にポーカー大統領は署名をするが香港問題に対する具体的言及をすることはなかった。

 米中冷戦

 それを中国国家主席慣遠鋭(カン・エンエイ)氏は好機とみなしてポーカー氏を反中と批判しつつ、台湾や日本に対して軍事挑発を活発化させて動向を探る。中国に出方について米軍関係者から警告を受けたポーカー大統領は台湾と日本との関係を一層深める方針をとる(台湾には近代化改良したF16を提供し、日本に対しても尖閣問題で支援と防衛を約束した)。しかし少し前に解任された国防長官の暴露本から、同盟国軽視と言わざるを得ない言動が指摘される。そのため米中冷戦と謳われる中、同盟国である日本政府との歩調が合うことはなかった。

 米朝講和の試み

 近づく大統領選の箔として、ノーベル平和賞受賞を狙ったポーカー大統領は周囲の反対を押し切って北朝鮮元首との会談を強行し関係改善を演出。日本の期待を裏切って北朝鮮の核保有を黙認した形で平和条約を結んだ(建前上は核兵器の段階的廃絶が謳われていたが実行に移されることはなかった)。その後韓国からの米軍撤収への動きが始まり、その前段階として韓国軍への有事作戦統制権の返却が前倒しされていた。また、中国を念頭に置いたアジア重視についても口だけになり、主たる役目を日本側に期待した形となったため、中国の軍拡によるアジアの軍事バランスは揺らぐ一方であった。

 武漢熱騒動

 2020年の初頭、中国の武漢で新型ウイルスが広まり、世界中へ拡散(パンデミック)していった。広東ウイルス(SARS)を超える被害をもたらしたが、頼みの綱の世界保健機構(WHO)のテトリス事務局長が中国に忖度して「パンデミックでない」と明言したことが問題視された。ポーカー大統領はWHOが中国の手に落ちていることを悟り、米国の脱退を表明した(のちのバルデン大統領によって撤回される)。一方、中国はウイルス名称のトリック(先代中国人WHO事務局長による改革で地名を冠したウイルス名を付けるのを禁じた)を利用してウイルス発生源を隠蔽し、ワクチンやマスクの輸出を戦略的にコントロールすることで「世界の救世主」を演じて国際社会で存在感を発揮していた。

 米国

 経済は大統領の積極的な金融政策によって安定はしていたが、中国との貿易戦争により穀物輸出の滞りに苦言を呈するものも少なくなかった。また、平和条約を締結した北朝鮮の経済支援を口実に自国の経済圏に組み込もうとするも、中国の横やり(デジタル人民元)にあって失敗してしまい得るものが何もなかった。結局ノーベル平和賞受賞も叶わず、国内のウイルス感染者数も抑えられなかった為にポーカー政権は一期で終了した。

 任期中、ポーカー氏は台湾と日本との関係を重視していたが、実のところ彼にとってそれらは対中カードでしかなかった。彼は米国の国益を優先するため世界に駐留している軍の撤収を公約に掲げており、駐留の対価として欧州には軍事費の増額、日本と韓国には駐留費の倍増を要求していた。米国一極体制を壊しかねない彼の政策に当時の国防長官は苦言を呈したが、解任されてしまう。

 だがポーカー大統領の政策はこの先米国一極体制を支えられない米軍の事情、世界より自国の生活が第一と考える米国民の民意に則ったものであり、リベラルな民主党大統領が当選してもその方針が踏襲されることになる。人権問題を背景にした中国非難もいつしか中国の労働者と市場を当てにしている国際企業への批判に代わり、富の再分配を目的にした制裁の口実に使われるようになった。
 なお国内の各州では韓国の民間団体が中国の団体の支援を受けながら、徴用工を戦時奴隷と称して政治宣伝を本格化していた。これが後に米日関係のみならずアジア情勢全体に重大な転換をもたらすことになる。

 日本

 2019年夏に行われた参院選で与党が過半数も維持するも、改憲発議に必要な3分の2を維持できず改憲議論はどんどんトークダウンしていた。そして10月に予定通り消費税10%へ増税すると、駆け込み需要は振るわず武漢熱騒動も相まって個人消費がどんどん落ちていき、高部政権批判がまた盛り上がるようになっていた。
 中国の慣遠鋭国家主席の訪日に先立ち、沖縄のドニー知事が訪中し副首相と会談。故オナカー氏の時同様、中国人観光客の増量を確約し中国依存を高めていく。慣主席を国賓として招いている間も尖閣諸島に中国船がひっきりなしに来るが、政府はもちろん多くの国民も慣れ切ってしまい危機意識はまるでなかった。その影響か石垣島では自衛隊配備が反対運動や地権者問題で遅延していた。
 一方、韓国に対して政府は毅然とした態度で慰安婦問題の蒸し返しや、日韓請求権条約を無視した徴用工判決など、無理無体の要求や非難を突き放していた。しかしながら国際社会を味方につけるための世論戦には消極的で、首相を含む多くの政府関係者も韓国の政権が代われば改善するだろうと高をくくっていた。
 なお、この時自民党内部のリベラル派と野党第一党の民主連合(民連)が結託して女性宮家設立を推進する皇室典範特例法が成立する。これにより今上天皇の娘が婚姻後も皇室に残る道が切り開かれるが、それが後に皇室と日本のアイデンティティに重大な影響をもたらすことになる。

 中国

 経済は米国との貿易戦争で低迷。しかし慣主席はアジアは中国の管理領域と演説し軍事兵器の生産継続を命じる。それまでの好景気を背景にした軍拡によって中国海軍は大幅に増強され、空母機動部隊の基盤が整えられた他、対艦ミサイルの能力向上で長射程の攻撃能力を得るようになった。また航空戦力も増強され、ステルス性を持つ第五世代戦闘機である殲20が多数製造された他、多種多様な無人攻撃機無人偵察機も実用化し実戦配備される。さらに軍事衛星も数多く打ち上げられ、独自の軍事ネットワークが構築されていた。
 香港で起きたデモを受け中国政府は同地域の人民監視網を新疆ウイグル自治区ウルムチ並みに強化し、独立派と民主活動家に対する徹底的な排除を行う(これによって香港の一国二制度は事実上破綻した)。

 武漢熱を引き起こした新型ウイルスは、「兵器用ウイルス」を開発していた武漢の研究所で使用された実験動物が適切に処分されず、不法に市場に払い下げられた結果拡散された。騒動によって武漢の研究所は一時的に閉鎖されたが、その後復活し本格的な兵器用ウイルスの研究開発に取り組むことになる。

 従来ビットコインなど民間が独自に発行していた仮想通貨を世界で初めて国の通貨として導入(デジタル人民元)、国内のみならず一帯一路参加国等にも導入を促した。また、国策として人工知能(AI)の開発を推し進め、社会信頼評価システムによる生活管理が全国規模で始動される。さらに、これまで外資系を含めた国内企業への共産党支部設置を国外の中国系企業にも要求するようになる。

 朝鮮半島

 国内ではフミ大統領の方針により国民の反日感情が過激化の一途をたどっており、日系企業が襲撃されるなど事実上の排日運動が敢行される。また、徴用工を含めた日韓併合時代の案件で訴訟が相次ぎ、日系企業への資産差し押さえが横行する。
 軍事に関してはレーダー照射事件以降、日本海で巡視船や海自に対する挑発が繰り返され、遂には日韓で軍事機密情報をやり取りするのに重要なGSOMIAを破棄してしまうすると通告した(理由は日本の輸出三品目の管理厳格化だがフミ氏は議員時代に同条約締結を批判していた)。破棄自体は行われなかったものの日本との関係は過去最悪。米国との関係も米韓共同軍事演習を廃止して以降、冷却化していき同盟そのものが解消に向かっていた。
 一方、北朝鮮は米国との平和条約の締結に成功し日本以外の国からの制裁解除を勝ち取る。その後韓国の左派政治家を平壌に招き統一に向けた話し合いを行っていた(南北の秘密会合。この時点で韓国の運命は確定していたといえる)。

 台湾

 香港動乱をきっかけに対中警戒論が盛り上がり、地方選挙で落ち目になっていた民進党が息を吹き返す。才台文総統は香港の一国二制度が蔑ろになっていることを指摘し香港を参考にした中台統一論を一蹴した。米国のポーカー大統領による政策もあり、中華民国空軍はF16の近代改良版の購入へこぎつける。海軍も中国を警戒し小型フリゲート艦を多数建造、海峡を介した侵略に備えていた。しかし、対ステルス能力としては決して十分とは言えない状況にあった。

 台湾総統選は香港動乱の影響もあり、親中メディアのネガティブキャンペーンを打ち破って民進党が勝利、才台文総統が再選される。

 武漢熱騒動では独自の情報収集と判断んで水際対策に成功し、世界中の称賛を浴びた。その反面中国に支配されたWHOからは国として扱われず、情報共有も許されなかった(それが結果的にWHOの判断を狂わせる皮肉な結果をもたらした)。

 

続きはこちら

hatoyabu01.hatenablog.com

ハトヤブのシミュレーション戦記

hatoyabu01.hatenablog.com

(2019/11/22 23:40 本文一部修正、11/14 本文一部修正、12/3 リンク添付)

(2020/1/11、本文見やすく修正・デジタル人民元について追記、2/14 台湾総統選を追加)(2020/05/25、香港についての記述を追加、2020/7/10 リンク追加、2020/8/9 米中冷戦・アメリカファーストな大統領についての記述を追加、2020/8/28 日本の皇室について記述を修正・中国国家主席来日に取り消し線)(2020/9/13 内モンゴルの記述を追加・皇室についての記述を修正)

(2020/11/07 本文中一部追記・取り消し線)(2021/5/8 武漢熱に関するシナリオを追加)