はじめに

 皆様こんにちはハトヤブです。今一度問います。ただ戦争しないと言い続けることが将来にわたって戦争を回避する方法なのでしょうか?武器を捨てて平和を叫べば相手も矛を収めてくれるのでしょうか?

 私はこのままでは日本は再び同じ過ちを犯すと思います。それは左の方が考えるような軍国日本の復活なんかではありません。何の戦略も持たず、当事者意識も持たず、無責任体質のまま目先の利益を追い求めるさまは戦前日本も戦後日本も同じです。そうです、同じなのです。戦略がないから国際的に孤立し、当事者意識がないから早期講和に持ち込めず、無責任体質だから破滅まで突き進む……それが日本の第二次世界大戦ではなかったですか?今も戦略がないから中韓朝にいいように詰られ、当事者意識がないから米国に依存し、無責任体質だから憲法一つ変えられない……これが今の日本の現状です。

「戦争はいけないこと」その通りです。誰だって死にたくないし、殺しあいたくないです。しかし、世界は万国・万民族にとって公平に作られてはいません。己の不遇な境遇を打開し、望む通りの新秩序を構築するため戦争をする者は昔からいるし、これからも出てくるでしょう。その筆頭候補が中華人民共和国です。近年、怒涛の経済発展を遂げた同国はかつての華夷思想に基づく新秩序を希求しており、近世の列強(日本を含む)から受けた屈辱を晴らさんとしています。それが2018年3月に任期を撤廃した現国家主席の謳う「中華民族の偉大なる復興」であり「中国夢」なのです。

 さて、かの国の「偉大なる復興」が開始された時、日本はどうするのでしょうか?自分の今の平和を守るために立ち向かいますか?それともかの国の新秩序のために付き従いますか?このブログは後者を選んだ場合の日本とアジアがたどる未来……世界より再び降伏文書を突き付けられるまでの黙示録です。

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(9/7本文一部修正、10/20前書き向けに修正)

 (2021/2/18 リンクを追加・見やすく修正)

日本国憲法は平和憲法ではない

 皆さんこんにちは、今日は憲法記念日ですね。日本国憲法が施行されて74年です。時は移ろい、変わらないものもありますが、変わるものもあり、変えねばならぬものもあるのが世の中です。時には常識を疑う勇気も必要です。

 日本国憲法が「平和憲法」であるということは日本国民の誰もが信じて疑わない事であり、それを改めることを頑なに拒否する人が左翼だけでなく「保守派」にも多いです。

 彼らは言います「平和憲法こそが日本の平和を守ってきた」のだと(これを本気で主張する人が自民党の中にもいます)。最近はそれに疑義を唱える者も出てきてはいますが、せいぜい「変えたほうが良い」程度にしか発信できないのが現状です。

 けれどまさか「日本国憲法」こそが近未来に戦争を引き起こす「呼び水」になっているとしたらいかがでしょう?それでも守り通しますか?今回はそれについて見てみましょう。

 マッカーサーノートの真意

 最初に日本国憲法の成立過程からおさらいしていきましょう。

 戦争で敗北した私たちは主権を失い、アメリカを主体とする連合国軍総司令部GHQ)の統治下に置かれることとなりました。GHQは我が国を“民主化”すると称して陸海軍の解体、財閥の解体、行政機構と諸制度の改革ないし破壊を行いました(紀元節が廃止されたのもこの時です)。その集大成としてGHQが力を入れたのが大日本帝国憲法の改正でした。

Failing voluntary action by the Japanese to this end the supreme commander should indeicate to the japanese suthorities his desire that japanese constitution be amended to provide(出典:Politico-Military Problems in the Far East: Reform of the Japanese Governmental System (PR-32),1945.10.8.,日本国立国会図書館HPより)

 これは1945年10月8日、合衆国の国務・陸軍。海軍調査委員会の下部組織である極東委員会で出された資料の一文で「日本の自発的な改革が望めない場合に最高司令官が憲法改正によってこれを行う」としています。これに何か問題があるか言えば、ハーグ陸戦条約違反であることが挙げられます。

ハーグ陸戦条約

第43条:国の権力が事実上占領者の手に移った上は、占領者は絶対的な支障がない限り、占領地の現行法律を尊重して、なるべく公共の秩序及び生活を回復確保する為、施せる一切の手段を尽くさなければならない。

 なお、本条約の主語が「交戦当事国」とあることから戦後は含まれないという主張があるようですが、これは間違いです。なぜなら戦闘が終わっていても当事国間が平和になっているとは限らず、それを明確にするのが「講和条約」だからです。つまり、日本とアメリカは1951年9月8日に署名され、1952年4月28日に発行されたサンフランシスコ講和条約が出るまでは「交戦当事国」ということになり、ハーグ陸戦条約の適応対象となるのです。そうでなければ敵国を征服しさえすれば勝った側は略奪し放題となってしまいます。もともとそれを防ぐための条約です(まあ、守れてませんが)。

 それはともかく、アメリカが日本の憲法を変えるにあたって、日本側が出した草案をすべて蹴って押し付けたのがマッカーサー草案です。その条文の一つを見ればなぜアメリカが条約違反を犯してでも憲法改正を断行したかがわかります。

War as a sovereign right of the nation is abolished. Japan renounces it as an instrumentality for settling its disputes and even for preserving its own security. It relies upon the higher ideals which are now stirring the world for its defense and its protection.

No Japanese Army, Navy, or Air Force will ever be authorized and no rights of belligerency will ever be conferred upon any Japanese force.(出典:

[Three basic points stated by Supreme Commander to be "musts" in constitutional revision],1946.2.4.,日本国立国会図書館HPより)

 これこそが日本国憲法第9条の原点であり、GHQの本当の狙いです。内容は現在の9条と同様に「国際紛争の解決のための戦争放棄」と「戦力不保持」が謳われていますが、それに加えて”even for preserving its own security”「自らの安全を護る目的でさえも」と書かれています。つまりアメリカは日本に「自衛もできない国」になって欲しかったのです。その理由は極めて単純で「二度と日本がアメリカや西欧諸国の脅威にならないようにするため」でした。戦争に勝ったとはいえ対日戦でアメリカは大きな犠牲を払っていましたから、脅威を永久に取り除いておきたかったのでしょう。日本が有色人種の国だったこともあります(合衆国で公民権運動が本格化するのは1950年代になってからです)。

 それを踏まえたうえで、第三国の視点になったつもりで9条を読んでみてください。

第9条日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

 はい、これを見てわかることは「日本だけが戦争をすることは禁止」ということです。つまり日本との戦争を想定している国にとっては、日本人が憲法を護る限り自分たちは絶対に安全で、やりたい放題できるということになります。また、最初の攻撃は必ず自分たちから打てますから、いざ日本が気に入らないと思えばいつでもタコ殴りにすることができます。かつてのアメリカは日本に対してそういう関係を求めており、それが日本国憲法第9条の本質なのです。

 マッカーサーの呪い

 さて、憲法について少しでも詳しい方(保守派限定)なら「ド素人が、重要な点を見落としているだろ」と突っ込んでいることでしょう。その通りです。今の9条とマッカーサーノートには重大な違いがあります。二つを並べてみてみましょう。

War as a sovereign right of the nation is abolished. Japan renounces it as an instrumentality for settling its disputes and even for preserving its own security. It relies upon the higher ideals which are now stirring the world for its defense and its protection.

No Japanese Army, Navy, or Air Force will ever be authorized and no rights of belligerency will ever be conferred upon any Japanese force.

(訳:国家の主権としての戦争は廃止される。日本は、紛争を解決や自らの安全を守るための手段としてそれを放棄する。それは今、安全保障において世界の潮流にある崇高な理想に基づいています。

日本陸軍、海軍、空軍は決して認可されず、日本軍に交戦権は与えないだろう。

 

第9条日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

「理想」云々は戦後当初湧きあがった世界政府思想によるものですから置いときます。重要なのは「自らの安全を守るため」の部分が9条には含まれていないことです。実は「国際紛争を解決する手段としての戦争放棄」自体は1929年7月24日発行の「不戦条約」を引用したものです。つまりその意味は「侵略の禁止」であり、自衛は否定されていないのです。

 ならええやないかそのままでもと言いたくなりますが、現実は甘くありません。確かに政府の公式解釈では「自衛は否定されていない」として自衛隊を合憲としていますが、憲法学者や左翼のみならず日本国民の中には「自衛隊違憲」と認識している人がかなりいます。

産経新聞社とFNNの合同世論調査では、現行憲法下で自衛隊違憲だと考えている人が、実に4人に1人もいることが分かった。憲法学者の世界ほどではないにしても、世論にも「自衛隊違憲論」が根強いことを裏付けたといえそうだ。主要野党は「自衛隊が合憲という認識は広く認知されている」として、安倍晋三首相(自民党総裁)が提案する憲法9条への自衛隊明記案に反対するが、改めて提案の意義が再確認されたといえる。(出典:【産経・FNN合同世論調査】4人に1人が「自衛隊違憲」,産経新聞電子版,2018.5.21.、

https://www.sankei.com/politics/news/180521/plt1805210024-n1.html)

 アンケートが保守系産経新聞ですから、朝日新聞ともなれば半数以上にはなりそうです。まるでマッカーサーノートの消された言葉を霊視しているかのようです(マッカーサーの呪いと名付けましょうか)。

 こうなってしまった理由は戦後教育や左翼メディアなどいろいろ考えられるのですが、知日派アメリカ人弁護士ケント・ギルバート氏は、日本人の憲法に対する認識に原因があると指摘しています。

 1947年5月3日に施行された日本国憲法は、主権者である国民が、直接または代表者を通じて間接に制定した「民定憲法」と位置付けられている。前提として、憲法のすべては法規範で規定されたり、判例憲法慣習によって補充されていくのである。また、民定憲法には「禁止されていないものは許可される」という考え方がある。

 民定憲法の対義が、大日本帝国憲法が属する「欽定憲法」だが、この憲法は「許可が明記されていない限り、禁止」を前提としている。

(中略)

 日本の憲法学者の多くは、前出の欽定憲法のように日本国憲法を解釈し、「戦争のすべてが禁止されている」と論じる。もちろん、民定憲法であっても侵略戦争は認められないが、防衛戦争や米国がイスラム過激派組織「イスラム国」に行った制裁戦争は必ずしも禁止されるものではない。日本国憲法は民定憲法だが、多くの憲法学者は前提が誤っている。(出典:“限界”を迎えた日本国憲法 「戦争はすべて罪」という誤った教育…堂々巡りする議論に終止符を,zakzak2021.4.9.,

https://www.zakzak.co.jp/soc/news/210409/pol2104090002-n1.html)

 アメリカの不当な干渉があったとはいえ、名目上は日本国民の手による改正となっていますから、日本国憲法は「民定憲法」であり、禁止されている事(侵略)以外はできることになっています。しかし「自衛隊違憲」「PKO派遣は違憲」「集団的自衛権違憲」と主張する憲法学者たちは、君主によって制定された「欽定憲法」のように、許可されてない物はすべて禁止と解釈しているというのです。それを裏付ける証拠としてアメリカを含め、多くの国々が憲法の修正・改正をしているのに対し、我が国の憲法は1947年に施行されて以降、一度も改正されていません。「不磨の大典」として一切の手を付けられない様は、1890年に施行されて以降敗戦まで一度も手を付けられることのなかった大日本帝国憲法に通じるものがあります。左翼思想を掲げる護憲派たちがそれを後押ししているのですから、何とも皮肉なものです。

 また、別な理由として元共同通信記者で現参議院議員青山繁晴氏は9条二項の「陸海空軍その他の戦力」の「その他の戦力」に自衛隊が含まれると拡大解釈できる事と、「国の交戦権はこれを認めない」が自衛戦争も否定しかねない事を指摘しています。そこで彼は「自衛隊」の9条明記を掲げた安倍前総理に対して「自衛の措置は妨げない」条文の追加を提案しました。

与野党8党の幹部らが28日、千葉市内で開かれたイベントで、自民党憲法9条の改正案を巡って討論した。自民党の船田元・憲法改正推進本部長代行は「自衛隊を等身大の姿で憲法に書き加える」と強調し、自衛権の範囲は変わらないと訴えた。野党は集団的自衛権の行使拡大につながる懸念を示して批判した。(出典:「自衛の措置」範囲で論戦、自民9条改憲案 野党は拡大懸念,日経新聞電子版,2018.4.28.,

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29985240Y8A420C1EA3000/)

 例によって野党が批判しておりますが(自民党にも反対者がいます)、それは先ほどのケントさんの言う通り「欽定憲法憲法観」であると共に、自衛を否定した「マッカーサーの呪い」に憑りつかれている状態です。いつまで76年前のアメリカの「願望」に従うつもりなのでしょうか?

 9条に護られるならず者国家たち

 ここまで記事を読んでくださった方の中には「このブログは反米ブログか」と思われる方が出てくるかもしれません。私が右か左か、親米か否かは皆さんのご想像に任せます。しかし、今私が声を大にして言いたいのは「今9条の恩恵に最もあずかっているのは中国と北朝鮮、韓国、ロシア」であるということです。もっとはっきり申せば日本国憲法第9条は平和どころか、戦争を招き寄せつつある危険な条項となりつつあるのです。「そんな、まさか」と思われるかもしれませんが、前に指摘したマッカーサーノートの真意を思い出してください。「日本だけが戦争をすることは禁止」とあり、どこにも「日本と戦争してはいけない」という規定はありません。日本人は例によって「許可されてないから」禁止されていると思い込んでいますが、向こうにとっては別に日本の憲法に縛られる道理などなく、力さえ伴えばいつでも戦争を仕掛けることができるのです。今までは「世界の警察」アメリカがにらみを利かせており、戦力もはるかに及ばなかったので平和でしたが、これからはどうでしょうか?

 何しろ他ならぬアメリカの専門家が日本に9条を制定させたことに「先見性がなかった」と評しています。

長らく日本社会は米国の安全保障の傘下に置かれ、73年の平和を享受してきた。このため、自国防衛能力を刷新する必要性をまだ認識できていないかもしれない。平和主義の深化により、日本の一部世論は、日本が海外における戦争に巻き込まれることに反対している。

しかし、この平和は、日米安全保障条約の下で保障されている。米軍には日本をあらゆる状況下で保護する義務があるが、日本は同じことをする義務はない。

1947年当時、マッカーサー元帥と日本政策担当者たちは、日本が現在見るようなアジアの安定を確保する上で重要なパートナーになることを予見していなかった。このため、9条は近視眼的だったと言える。(出典:憲法9条には先見性がなかった 日本には正規軍が必要=米専門家,大紀元電子版,2019.7.3.,

https://www.epochtimes.jp/p/2019/07/44452.html#.Xf-Hb_YTkoc.hatena)

 この「アメリカは日本を護るが日本はアメリカを護る義務がない」という片務性はトランプ前大統領も指摘していたことであり、多くの米国民が同じ考えを抱えていたとすれば日本の安全保障は根底から覆ることになります。何せ在日米軍の補完としての活動を前提に自衛隊は組織されているわけです。巷でも増長する中国に関して「米中戦争の危機」などと他人事で、日本はそれに巻き込まれないようにすべきという主張さえあります。実際はアメリカが「日本と中国の戦争に巻き込まれる」ことに戦々恐々としており、抑止のために日本の防衛力向上に期待をかけているのが「現在のアメリカ」なのです。4月17日にバイデン大統領がわざわざ菅総理をワシントンに招いてまで会談に臨んだのは反中とか親日というわけではなく、インド太平洋と台湾の安定に日本も協力してほしいというメッセージだったのです。尖閣の安保第5条適応のリップサービスに浮かれている場合ではないのです。

 所々に影を落とす9条被害

 以上の話を聞いても「そもそも何が問題なの?」と疑問に思われる方がおられるでしょう。「いざというときは自衛隊ちゃんと戦うっしょ」と嗤う人もいるかもしれません。なら9条による具体的な弊害をご紹介していきます。

 まず、最も弊害を被っているのは自衛隊です。自衛隊自衛隊法を根拠に活動をしている訳ですが、その内容は「できる事」細かく羅列したポジティブリストとなっております。一方、米軍をはじめとした海外の軍事組織は全てネガティブリストで動いています。ネガティブって言葉は悪いイメージをしてしまいそうですが、その肝は「やってはいけない事」を単純明快に並べ、それ以外はすべてやって防衛に当たれというスマートさにあります。

 例えば敵のミサイル一発飛んできただけでも、海外の軍は探知次第即撃ち落とせますが、わが自衛隊は「防衛大臣内閣総理大臣の承認を得て……」などと行政手順を踏まなければならず、その間に着弾☆というコントみたいな状況にあるのです。それも自衛隊が「警察予備隊」をルーツとして警察に倣った法体系を採用したためです。変えようにもそれが自衛隊を「軍」と認めることになるため「マッカーサーの呪い」にかかった人たちが頑固として阻止してくるのです。

 また最近不肖私が記事に挙げている尖閣諸島防衛において、自衛隊法第80条の「必要とあれば海上保安庁防衛大臣統制下における」も、海上保安庁法第25条の「海保は軍に属さない」によって妨げられる状況にあります。これを改善しようという働きかけも「マッカーサーの呪い」により強く拒絶する勢力に阻まれます。

 

「困るのは自衛隊じゃん。外交で解決すれば」と思ったそこのあなた!手を挙げて!そう、あなたですよ?怒らないから。

 実は外交にも9条の弊害はしっかり表れております。ただニコニコして仲良くして日本が支援金を出して……と言ったことはできても、例えば対ロシア外交では北方領土問題がまるで進展せず、韓国相手には腫物を触るように扱っていいように詰られ、横田めぐみさんのように北朝鮮に囚われた方々をいつまでも取り戻せないでいます。

「これらは難しい問題だから仕方がない」と思われますか?いいでしょう最近の例を挙げます。アメリカが中国のウイグル人への人権侵害について「ジェノサイド」認定しましたが、日本政府は「認定しない」発言をして物議をかましました。

 米国務省が中国による新疆ウイグル自治区での行動を「ジェノサイド(大量虐殺)」と認定したことを巡り、外務省の担当者は26日の自民党外交部会で「日本として『ジェノサイド』とは認めていない」との認識を示した。出席した自民党議員からは「日本の姿勢は弱い」などの指摘が相次いだが、外務省側は「人権問題で後ろ向きという批判は当たらない。関係国と連携しながら対応していく」と理解を求めた。(出典:政府、中国のウイグル弾圧を「ジェノサイドとは認めず」 米国務省認定と相違,毎日新聞電子版,2021.1.26.,

https://mainichi.jp/articles/20210126/k00/00m/010/145000c

 その根拠として当局が主張しているのは「ジェノサイド条約に入ってない」であり、その理由が憲法9条です。いかがです?日本の「平和憲法」が弾圧されるウイグル人を見て見ぬふりさせるのです。それって本当に「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求」してるんですかね?

 そもそも今を平和と評するのも語弊があります。繰り返すように我が国はロシアに北方領土を、韓国に竹島を不法占拠されているままです。現在も中国に尖閣をひっきりなしに狙われ続けています。何より横田めぐみさん達が今も北朝鮮で辛い思いをし、被害者家族の方々が会えぬまま老いていく悲劇に思いをいたせば、口が裂けても「日本は平和」などと言えないでしょう(それでもなお言えるとするなら、その人は自己中心的で人の痛みを何とも思わない冷酷非道な人間です)。領土も国民も奪われている状態で何もできずにいるのは果たして平和と言えるでしょうか?

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少し前にミームとして流行った風刺画。私には周囲が戦乱の火薬庫となっているのに

平和だと言い張る日本人と重なって見える

 さてもう一度問います。それでもなお憲法改正に反対しますか?国土が奪われ国民の命と財産が奪われても憲法を守ることが平和と言い張りますか?いかに屁理屈をごねようとももはやそれは精神論に過ぎません。「憲法守って一億玉砕」が潔いと思えるなら、戦後の平和教育自体が欺瞞であると評さざるを得ません。

 

 

 頑なに憲法を変えぬ日本がこの先直面する戦争と受難、そして滅亡の黙示録

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台湾護る? 本気度疑わしき、ジョー&ヨシ コンビ

 皆さんこんにちは、4月17日にアメリカ合衆国のワシントンで我らが菅義偉総理大臣と合衆国のジョー・バイデン大統領閣下が首脳会談を行い、共同記者会見を開きました。かねてから中国問題について取り上げるであろうと予想され、「台湾」という言葉が出てきたことに例によってメディアが大騒ぎしているわけですが、これによって大きく何かが変わるでしょうか?現状は変わらないのではというのが私の予想です。

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日米共同記者会見 外務省HPより

 共同声明そのものは「理想的」の一言に尽きました。尖閣諸島への安保5条の適応や普天間移設、北朝鮮核問題や拉致事件の解決で協力し、武漢熱対策や気候問題で連携していくことを確認しました。また日米同盟の強化が謳われ、自由で開かれたインド太平洋を護るパートナーとして、東シナ海南シナ海へ手を伸ばそうとする中国に対処すること、同国の香港及びウイグル自治区での人権問題への懸念を共有すること、そして台湾の重要性についても認識を共にした内容となっています。この内容に台湾は率直に歓迎の意を示しており「インド太平洋地域の平和と安定に役立つ」とコメントしています。

japan.cna.com.tw

 声明にはAN ALLIANCE FOR A NEW ERA(新しい時代のための同盟)とあり、あたかも6年前、アメリカの上下両院合同会議で安倍前総理が演説した「希望の同盟」をなぞらえたかのようです。

 気になったのは共同記者会見の時です。両首脳は一致して自由で開かれたインド太平洋や武漢熱対応、脱炭素化に言及しつつも、バイデン氏は中国に先行されている5Gネットワークの構築やイノベーションに言及したのに対し、菅氏は尖閣への安保5条適応や北朝鮮問題に言及するなど若干の差異がありました。国の立場があるでしょうから当然ですが、両者で共通して「台湾」や「ウイグル」には触れていないことです。産経新聞の記者が質問することで、ようやく出てきたといった印象です。

Q    (As interpreted.)  Thank you very much.  My name is Sugimoto of Sankei Newspaper.  The summit — I believe that China policy was one of the central agenda items, so my question is on China policy.  Both governments consider that peace and stability of Taiwan is of great importance and that had been the agreement between the two countries. 

What kind of exchange of views were conducted on this matter at today’s meeting?  In order to deter contingency in the Straits, what can Japan do?  And what can Japan do, when actually, a contingency occurs in the Taiwan Straits?  Did the Prime Minister explain to President Biden what Japan can do under such circumstances?

And also, were there discussions on Xinjiang Uyghur Autonomous Region human rights issue?  Grave concern is shared by the two countries, but Japan is the only G7 country that has not imposed sanctions on China.  Were you able to gain President Biden’s understanding towards such position?

PRIME MINISTER SUGA:  (As interpreted.)  As we engaged in an exchange of views over the regional situation, we also discussed the circumstances in Taiwan and Xinjiang Uyghur Autonomous Region as well.

     I refrain from mentioning details since it pertains to diplomatic exchanges, but there is already an agreed recognition over the importance of peace and stability of the Taiwan Straits between Japan and the United States, which was reaffirmed on this occasion. 

I also explained Japan’s position and initiatives regarding the situation in Xinjiang Uyghur Autonomous Region to the President, who I think understood my points.
(出典:Remarks by President Biden and Prime Minister Suga of Japan at Press Conference,ホワイトハウスHP,https://www.whitehouse.gov/briefing-room/speeches-remarks/2021/04/16/remarks-by-president-biden-and-prime-minister-suga-of-japan-at-press-conference/
[機械翻訳]
Q (解釈されたとおり) ありがとうございました。 私の名前は産経新聞の杉本です。 サミットは、中国政策が中心的な議題の一つであったと思うので、私の質問は中国政策です。 両政府は、台湾の平和と安定が非常に重要であり、両国間の合意であったと考えている。

本日の会合では、この件に関してどのような意見交換が行われましたか。 海峡の不測の事態を抑止するために、日本は何ができるのでしょうか。 そして、実際に台湾海峡で不測の事態が起こるとき、日本は何ができるでしょうか? 首相はバイデン大統領に対し、このような状況下で日本が何ができるかを説明しましたか。

また、新疆ウイグル自治区の人権問題についても議論がありましたか? 両国は重大な懸念を共有しているが、日本は中国に制裁を科していない唯一のG7国である。 バイデン大統領の理解を得ることができましたか?

菅総理大臣:(解釈されたとおり) 地域情勢に関する意見交換を行う中で、台湾と新疆ウイグル自治区の状況についても議論しました。

外交交流に関する詳細については触れ控えていますが、この機会に再確認された日米間の台湾海峡の平和と安定の重要性について、既に合意された認識があります。

また、新疆ウイグル自治区の状況に関する日本の立場や取り組みについても、私の指摘を理解していると思います。

「日本の立場と取り組み」って何ですか?まさかジェノサイド条約に入ってないから日本は中国のウイグル人弾圧を静観しますという立場をバイデン氏に理解してもらったのでしょうか?
 しかも産経さん以外に日本の記者一人とアメリカの記者二人の質問があったのですが、東京五輪のことや銃規制、イランの核問題などおよそ中国と関係のない質問ばかりでした。52年ぶり「台湾」に言及したなどと騒がれている割に鮮鋭な印象はまるでありません。

政治だけ対中対決のジョー、対中配慮満々のヨシ

 台湾の重要性を強調しているアメリカは台湾を訪問するパラオ大統領に大使を同行させたり、「ジャパンハンドラー」でお馴染みのアーミテージ氏ら3人の要人を送り込んだり、政治面における活動を活発化させています。それに対して中国は戦闘機を台湾の防空識別圏に十数機も大々的に侵入させて軍事面での活動を活発化させている状況です。このままエスカレートとすればよもや米中戦……となるのが大方の人の考え方でしょう。

 けれど本当にそうでしょうか?もちろん意図しない形での武力衝突は十分あり得ます。しかしアメリカが、バイデン政権がそれを望んでいるかは別な話です。

 それを象徴するものとして4月9日に出された2022年度予算教書があります。そこで国防予算は7530億ドルとなっており、ペンタゴン単体への予算は7150億ドル、トランプ前政権に比べほぼ横ばいとされています。

バイデン米大統領は9日、2022会計年度(21年10月~22年9月)の予算教書で、国防関連予算として7530億ドル(約82兆6千億円)を議会に要求した。トランプ前政権下で成立した21会計年度に比べ1・7%増えた。国防総省単体の予算としては7150億ドルを要求。同省の「最大懸案」である中国の脅威への対処に向けた「太平洋抑止構想」の推進に向けた予算が必要だとしている。(出典:バイデン政権の国防予算約83兆円,産経新聞電子版,2021.4.10,https://www.sankei.com/world/news/210410/wor2104100011-n1.html

 しかしミリタリー系の情報を配信しているブログ「航空万能論」さんによれば、海外緊急事態対応基金(OCO)が廃止されるため、実質500億ドルの削減だそうです。

grandfleet.info

 同基金アフガニスタン戦争とイラク戦争への戦争資金だったので廃止するのは妥当ではありますが、それが実質非戦闘時の装備費代わりに使われていただけに、ペンタゴンは予算の国直しを強いられるとのことです。対中国と大見得を張っている状態での軍事費削減。よほど中国を甘く見ているか、パフォーマンスだけの対中強硬姿勢のどちらかでしょう(普通に考えれば後者です)。

 方や日本ときたらため息が出る状態で、ウイグル問題で欧米がジェノサイド認定していても、ジェノサイド条約に入ってないことを理由に「認定しない」と言ったり、尖閣で中国海警がしきりに侵入を図るのに海保の体制を現状維持にしたりと、素人目に見ても中国配慮が滲みだしています。

 

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  こうした現状を踏まえてから声明を見ると、どこか看板倒れのような、見掛け倒しのような印象を持ってしまうのです。

 ぜひ日米両国にはこの声明を口先だけに留めず、実効性ある政策として推し進めて頂きたい。

 

(2021/4/20 日時表記を修正)

 

海保よ、隊員達を犬死させるおつもりか

 皆さんこんにちは、ハトヤブです。4月は変化の季節です。新たな環境、新たな新生活を送られる方も多いと思います。特にこんにちは武漢熱の脅威の中だけにあまり明るい気分にならないかもしれません。
 今の世界情勢、日本の安全保障も明るくないです。それも"変化がない"ことがその根底にあります。人は自ずと変化を嫌うもの。ですが周囲の環境が変われば、そうも言えないハズなのに変わらない。これが日本の病理です。

 悠長な部会提言と限界間近の現場

 4月1日の国防部会・国土交通部会・安全保障調査会合同部会で尖閣諸島の防衛に関する提言をまとめました。その内容がひどい事ひどい事。

 自民党の国防部会、国土交通部会などが1日にまとめた尖閣諸島沖縄県石垣市)の防衛に関する緊急提言をめぐっては、海上保安庁法の改正の是非で両部会の意見が真っ向から対立した。自衛隊派遣の前段階として海保の機能を強化するため、同法改正の必要性を訴える国防部会に対し、国交部会は改正は不要と主張。最終的には「必要があれば法整備も検討する」との“玉虫色”の表現で決着した。(出典:自民尖閣提言 玉虫色の決着 国防部会・国交部会 意見対立,産経新聞電子版,2021.4.5,https://www.sankei.com/politics/news/210405/plt2104050041-n1.html

 玉虫色なんて文学的にはよくても事実を伝える新聞には不適格でしょう。何のことはない問題の先送りです。国防部会と国土交通部会で一致点が出なかったのです。「必要なら法整備を検討する」とありますが、期日を決めない検討するほどあてにならないものはありません。国土交通部会側は「法改正は必要ない」とちゃっかり言っちゃってますから、国土交通省がひっくり返らない限りないでしょう。5年後か、10年後か……。その時には尖閣どころか沖縄も中国のものになってそうです。

 永田町がこんな有様な一方で現場の方は緊迫した状態が続いています。特に海保の方では中国に物量戦に対し、綻びが出始めております。海保の巡視船が故障し、一時航行不能に陥ったのです。

 尖閣諸島沖縄県石垣市)周辺で領海警備に当たっていた海上保安庁尖閣専従巡視船が1月、任務中に故障し、一時、航行不能状態に陥っていたことが21日、海保関係者への取材で分かった。老朽化が原因とみられる。尖閣では中国海警局の船による領海侵入が相次ぎ、中国は2月、海警局の武器使用を認める海警法を施行するなど日本の有効支配を覆す動きを強めており、装備の刷新も含めた対策が急務といえそうだ。(出典:尖閣巡視船、一時航行できず 昭和55年建造…老朽化で故障か,産経新聞電子版,2021.3.21,https://www.sankei.com/affairs/news/210321/afr2103210007-n1.html

 以前の記事で少し触れたのですが、海保は海自より船舶を長く運用します。一番長いものが1978年に竣工されたPLH01「そうや」で、運用年数は何と43年です。

 

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 件の巡視船PLH04「うるま」も1980年竣工というご長寿船でした。

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(出典:那覇海上保安部ホームページより)

 2月の国防議連の会合で招かれた海保が「現状で対応できており、法整備の必要のなし」と大見得を張っていた矢先のことです。何で長寿船を激戦区に送ったのでしょうか?年にちょくちょく新ピカ巡視船を取得するだけでは対応できないことの証左ではないでしょうか?毎年12月に行われている「海上保安体制強化に関する関係閣僚会議」で碌に議論もせず、海保の出した案を丸のみにしているからこうなるのです。今年は有識者会議にして現場の隊員たちや海自の制服組を招いてみてはどうですか?

 海保以上に過酷なのは現地で漁を営む漁家の方々です。日々中国海警(警察の仮面をかぶった第二海軍)に追い回され、沖縄メディアからは「活動家」扱いされる始末。特に心に刺さったのが宮古島の漁師の次の言葉です。

「中国は日本の漁船を尖閣に寄せつけないようにして、実効支配を奪うつもりだろう。漁師が行かないと『尖閣は中国のもの』という既成事実ができてしまう。僕は頑張って行こうと思っている」(出典:「偽装漁船」中国海警局船から執拗な接近と追尾 漁師を嘆かせる尖閣海域の異常、行かないと「中国のもの」という既成事実が,ZAKZAK,2021.4.7.,https://www.zakzak.co.jp/soc/news/210407/pol2104070003-n1.html

 彼の心意気に頭が下がる思いです。褒められもせず、同情すらされず、もし何かあっても補償がないだろう状況で踏みとどまるのは、利益も注目も求めていない、純粋な地元への愛があってこそでしょう。彼の安全を切に願うばかりです。
 この状況を知ってか知らずか「検討する」と宣っている永田町の呑気さに腹が立ちます。

 ネグレクト自民党カミカゼ海保

 いつやるかはわからないとはいえ法整備を「検討する」があるならまだ救いはあるじゃないか、と思われる人もいるでしょう(そう思わないと絶望しかないでしょう)。しかし、提言がまとまる前日の様子をうかがう限り、望みは薄いです。3月31日に行われた合同会議では海保が軍に属さないことを定めた第25条の削除を提言に入れる案が出ましたが、国土交通部会議員の強硬な反対を受けてしまいました。その時に言った内容を参議院議員 青山繁晴さんが動画で伝えております。

www.youtube.com

……そしたら強い反論が国防部会でいつも見る人からは全くなくて、国土交通部会の普段全く(青山さんが)見ない人から出たんですけど、ここ(部会資料のメモ)に思わず書いたんですけど、「9条というものがあるわけですよ!9条というものがあるわけですから、25条の削除なんてとんでもないです!海上保安庁は触っちゃいけないですよ!」で時々話している人(青山さんに反論する議員)からね「日本は他人を傷つけない国でやってきた!それは変えちゃいかん!ましてや命を奪うかもしれないことはあってはいけない!」……ということは尖閣諸島は差し出せということですねと……(出典:【ぼくらの国会・第137回】ニュースの尻尾「恐るべき“自民党”の実態」,青山繁晴チャンネル・ぼくらの国会,2021.4.9,25:28-26:19)

  開いた口が塞がらないといいますが、自民党にもいたんですね。言っている言葉は綺麗ですが、それはまんま左翼界の9条の会だの、ピースボートだのと呼ばれる人たちとそっくりです。これをして実際聞いた青山さんや保守派の方は「お花畑」という言葉を思い浮かべるでしょうが、私はもはや一種のエスノセントリズム(自民族中心主義)に近いものを感じています。活動家として生業としてるならともかく、日本の脅威について知る機会がない立場ならともかく、立法を預かる国会議員が、それも政権を担う与党議員が、神格化された9条の思想に溺れるなんてとんでもないことです!今まさに漁家の方々が危険にさらされ、海保の隊員たちの命が奪われるかもしれない状況でそんな妄執に取りつかれるのは、母親が本来守るべき子供を見捨てるネグレクトに近い大罪です。

 言葉が綺麗と言えば海保の発行しているパンフレットでこんなのを見つけました。2014年版と少し古いのですが、その特集に海上保安庁の精神が謳われているのです。

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(出典:海上保安庁ホームページより)

正義仁愛」というそうで1948年5月1日に発足して以来、ずっと受け継いできた伝統だそうです。この言葉は度々引用され、2019年のパンフレットにもあります。

 美しい言葉ですが、その精神を高らかに掲げながらボロ船を繰り出し、第25条の「軍に属さない」というプライドだけで、あの海軍並みの力を持つ中国海警に立ち向かう様は、失礼ながら大東亜戦争末期の「必勝」の精神で敵に突っ込む神風特攻隊を想起してしまいます。潔い美学も分からなくはないですが、そのために犠牲になるかもしれない現場の隊員を思うと、戦後日本の平和教育って一体何だったのだろうと悲しくなります。

 不肖私の未来予想では海保が中国に一方的に攻撃され、無残に捕らえられるシナリオとなっております(海保の皆さんごめんなさい)。けれどそのシナリオがどんどん現実味を帯びている現状に胃が痛くなります。今後自民党の国防議連などではいかなる流れで自衛隊を出動させるかで議論することになるでしょう。しかしそれは海保の犠牲を抑えることとセットでやらなければなりません。もし海保の隊員が無残に捕らえられて、殺されている状況で「海保が沈んだ。さあ、次は海自だ」と行けるのかと。隊員の解放と遺体の帰還を結局優先してしまうように私には思えてならないのです。

 

 海保は自力で中国海警に対処できてない現実を直視し、日本の領土を護るため、現場の隊員と日本の漁家を護るため、自分たちの体制を護るのを止めませんか?

 

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 (2021/04/15 タイトル変更、最後に提言を追加)

座して敗北を待つ海保と日本政府

 皆さんこんにちは、ハトヤブです。前回尖閣の危機に自衛隊を出せない理由を取り上げました。中国は「警察の仮面をかぶった第二海軍」である海警局の船を侵入させ、自衛隊が出てくれば安保理で騒ぎ、それがなければ「漁民の仮面をかぶった特殊部隊」の海上民兵尖閣を軍事占拠する計画を持っています。

 

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  そしてそれは2022年の北京五輪の後すぐと言われています(ロシアのソチ五輪後のクリミア侵略と言い、もはや五輪は「平和の祭典」とは言えなくなってますね……)。それ故Xデーは間違いなく近い(もっと早い可能性さえあります)ため対策が必要ですが、どうも海保も政府も動きが鈍いようです。

 参議院議員青山繁晴氏が3月1日の動画「青山繁晴チャンネル・ぼくらの国会」で2月24日の自民党で行われた国防議員連盟会合でのことを話しております。

youtu.be

 そこで尖閣諸島での「警察力の強化」と「行政力の強化」についてたくさんの官僚方と意見交換をしたそうです。その大筋の概略をスライドにまとめて、私なりに深堀もしつつ以下に示します。

 そんな装備で大丈夫か?

 まずは「警察力の強化」として2月に施行された中国の海警法に対応して、国防議連は現場の人員や巡視船のさらなる充実を提案します。しかし、海上保安庁の方は既に決定された「海上保安体制強化に関する方針」で十分だと突っぱねました。

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(【ぼくらの国会・第115回】ニュースの尻尾「尖閣諸島の政府見解『上陸禁止・現状維持』が浮き彫りに!?」を基にブログ主が作成)

海上保安体制強化に関する方針」とは平成28年から毎年12月に行われている「海上保安体制強化に関する関係閣僚会議」で決定している政策です。海保のホームページに公開されているのですが、その議事録と言ったら二枚から四枚程度の短いもので、まず海保の長官が案をポンと出し、その後に関係閣僚と総理が順に発言して終わりという、まるで中国の会議ですか?と思えるようなシャンシャンです。

 そして資料を見ればなるほど、大型の巡視船をちょくちょく増やしてますねと。それから平成30年7月1日より中国海警局が人民武装警察の隷下になって、実質上軍に近い指揮系統になっていることも資料の片隅には載っています。

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(出典:海上保安庁海上保安体制強化に関する関係閣僚会議資料『海上保安体制強化の取組状況』,2020.12.21.,スライド2,https://www.kaiho.mlit.go.jp/info/post-318.html

 上はその資料の一部です。右上の『中国海洋法執行機関に係る機構改革』がそれです(詳しく読みたい方はリンク先の「令和2年12月21日」の配布資料にアクセスしてください)。ただし、議事録を見る限りそのことに言及されることはなく、対応も一切触れられませんでした。ただ中国側の様子だね。ふーんとでも言いたげな感じです。むしろコロナ対策に協力をすることに重きを置かれていたようにさえ見えました(そりゃ重要だろうけど)。

 もちろん私は素人ですし、公開を前提とした会議で手の内を明かさないのは当然であります。しかしながらわずか15分の議事とは言え、一言だけでも触れないでいて、国民は安心できるのでしょうか?せめて「中国海警局の機構改革を注視する」とか「新たな法施行を想定する(実は海警法案は昨年12月の時点で大筋固まっており、それを防衛省などは察知していました)」でも加えるだけで印象は違います。それがなければ「一顧だにせず」と思われてしまい、ついネットスラングですが『そんな装備で大丈夫か?』と言いたくなってしまいます。

[追記]方や中国海警は軍に似た指揮系統になっているだけではなく、既に海保をしのぐ潜在戦力を持っている段階です。特に1万トンを超えるものは76ミリ砲を装備していると目されており、海保最強と謳われているしきしま型の40ミリ砲を圧倒する火力です。

 中国公船は大型化が進み、複数の3000トン級以上の公船が尖閣領海に侵入するケースもある。海保最大の巡視船は6500トンだが、海保や防衛省によると、中国は「海警2901」など1万トン級の公船2隻を保有。軍艦並みの大口径の砲を備えているとみられる。(出典:尖閣、挑発緩めぬ中国 軍艦並み、巨大公船も警戒―「グレーゾーン」対処課題,時事通信電子版,2020.5.17.,https://www.jiji.com/jc/article?k=2020051600316&g=pol)

 現在1万トン級の海警船は尖閣に来ていません。日本漁船を追い回すのに向いてないからです(巡視船の意味ないやん)。けれど明らかに海保の巡視船を標的とした装備と言えるでしょう。

 お下がりは嫌だ

 いくら巡視船をちょくちょく増やすといっても、大型船は年に建造できる数に制約がありますし、予算も中国みたいに年々倍増とはいきません。ならばと議連が提案したのは海自の退役護衛艦の活用です。

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(【ぼくらの国会・第115回】ニュースの尻尾「尖閣諸島の政府見解『上陸禁止・現状維持』が浮き彫りに!?」を基にブログ主が作成)

 なるほど海保は海自に比べてとても長く船舶を運用します。一番長いもので1978年11月22日に竣工されたPLH01「そうや」の運用年数が43年で未だ現役です。

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オホーツク海を駆ける巡視船「そうや」出典:釧路海上保安部,巡視船そうやが海氷観測支援 ~2020年2月、海氷が押し寄せるオホーツク海を走る~,2020.2.,くしろ海保だより,https://www.kaiho.mlit.go.jp/01kanku/kushiro/event/event.html)

 けれどまさか全ての巡視船を40年以上運用するわけじゃありませんし、それでは時の情勢にまるで対応できなくなることになるので、必要に応じて検討する余地を残すべきだと思います。ガスタービンエンジンを使ったことがないなら、海自から技術支援を受ければいいし、何ならディーゼルエンジンに換装すればいいのです。どうしても海保専用のピカピカ新品に拘るというのは「俺たちは海自なんかと違う、海上保安官だ!」というプライドがあるように思えてなりません。

 やるとは言ってない

 続いては行政力の強化です。議連は日本の尖閣諸島の実効支配の象徴として、新たな灯台を建設することを提案します。それに対し海保は既に管理していると返します。

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(【ぼくらの国会・第115回】ニュースの尻尾「尖閣諸島の政府見解『上陸禁止・現状維持』が浮き彫りに!?」を基にブログ主が作成)

 まるで言葉のキャットボールができてませんが、行間を読めば「新たに建造するつもりはない」ということでしょう。その理由は間違いなく中国を刺激しないためです。中国の海警法には自国の「管轄権」と断じた領域に建てられた外国の組織や個人による建造物は破壊していいことになっています。

外国の組織や個人が中国の島・岩礁などに建設した構造物についても「強制的に取り壊すことができる」と規定。日本が尖閣諸島ヘリポートなどを建設することを牽制(けんせい)する狙いがあるとみられる。(出典:中国、武器使用認める海警法成立 尖閣諸島周辺での活動強化の恐れ,産経新聞電子版,2021.1.22.,https://www.sankei.com/world/news/210122/wor2101220038-n1.html)

 おそらくこれを意識して新たな施設建設を退けたのでしょう。やれやれ、その前の所有者が作った小さな灯台が勝手に破壊されたらどうするつもりでしょう?その時はちゃんと新しい灯台を作るんでしょうね?

 遺骨なんて知らん(by厚労省

 さらに官僚たちは尖閣に日本人が上陸することも避けたがります。

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(【ぼくらの国会・第115回】ニュースの尻尾「尖閣諸島の政府見解『上陸禁止・現状維持』が浮き彫りに!?」を基にブログ主が作成)

 尖閣諸島戦時遭難事件とは、第二次世界大戦末期の1945年7月に石垣島の住民が台湾に疎開するために乗った民間船が米軍機に爆撃された事件です。多くの溺死者を出しながらも魚釣島へ漂着した住民たちは少ない食べ物を分け合って耐え、有志達が難破船から小舟を作って救助を要請しに海に出ました。結果、遭難から50日後に救助が来ましたが、それまでの間に多くの方が餓死してしまい、その遺骨が今も魚釣島に埋められているのです。

 この悲劇的な歴史を厚生省の役人は詳しく知らず、追悼式や慰霊祭の支援もしてないそうです。実際、遺族の方々はご自分の力で慰霊祭を開いております。

 遺族会が結成され、尖閣諸島魚釣島に慰霊碑を建立も、領土問題で慰霊祭が催せないことから、舟蔵に慰霊碑を建立。毎年、遺族会が慰霊祭を7月3日に開催している。

 遺族会は、「隣国との紛争になってほしくない」理由で、領土問題への政治的な関与を拒否し続け、平和への希求を第一に活動。遺族会が慰霊祭を自ら主催して、開催し続けている。(出典:縮小して尖閣列島戦時遭難死没者慰霊祭開催,やいまタイム,2020.7.3.,

https://yaimatime.com/yaimanews/89223/)

 謙虚な遺族たちは上陸を遠慮するでしょうが、それに甘えて放置する行政は何なのでしょうか?遺族たちよりも中国の方が大切なのでしょうか?

 最新の人工衛星画像で見てますっ!

 法治ならぬ「放置の精神」は環境破壊にも及びます。それは政治団体魚釣島に持ち込んだ山羊の食害です。

 固有種など貴重な動植物が生息する尖閣諸島魚釣島(3.8キロ平方メートル)は、野生化したヤギによる食害の影響で裸地部分が目立っていることが、富山大学の横畑泰志準教授(獣医学博士)らが衛星のデータを使って作成した立体画像で21日分かった。横畑準教授が同日、石垣市を訪ね、野生化ヤギ問題の状況を報告。「もともとの裸地部分を含め島面積の3割以上が裸地になっているのではないか」と危機感を募らせ、早期の学術調査やヤギ駆除の必要性を訴えた。(出典:魚釣島の裸地3割に拡大 尖閣諸島、野生ヤギの食害進む,八重山毎日新聞,2009.12.22.,https://www.y-mainichi.co.jp/news/15085/)

 魚釣島には固有種としてセンカクモグラやセンカクアホウドリがいるといわれています。もし山羊が島の緑を根こそぎ食べつくしてしまったら、絶滅に追いやられるかもしれません。議連もこの調査を提案に盛り込みましたが、官僚の答えはこうでした。

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(【ぼくらの国会・第115回】ニュースの尻尾「尖閣諸島の政府見解『上陸禁止・現状維持』が浮き彫りに!?」を基にブログ主が作成)

 人工衛星で調査しているそうです。随分と簡単なお仕事ですね。「大阪へ出張行ってきて」と言われてGoogleストリートビューでポチポチやって「行ってきました」と言っているようなものです。先に引用した富山大学の教授が衛星写真で調査していましたが、当局者がそれを真似てどうするんです?

 日本人禁制の日本領土!?

  当局者が日本人を尖閣に上陸させない方針は筋金入りで、例えば総務省尖閣諸島を管轄している石垣市が固定資産税の実地調査することも禁じております。以下は2011年の記事です。

 総務省は7日、固定資産税課税のために尖閣諸島に上陸調査ができるよう求めていた石垣市の要請に対し、上陸は認めないとの方針を決め、市に回答した。市がこれまでにも上陸調査せずに課税してきており、島の現況に変化がないことや、国の機関を除き上陸を認めないという所有者の意向を踏まえた。(中略)

 尖閣諸島は民間人が所有するが、政府が「平穏で安定的な維持と管理」のために借り上げており、「政府としては原則として政府関係者を除き何人も尖閣諸島への上陸は認めない」と従来方針を示した。

(出典:尖閣諸島への上陸認めず 総務省が市の要請に回答,八重山毎日新聞,2011.1.8.,https://www.y-mainichi.co.jp/news/17500/)

 所有者と意向とありますが、この後国が買い取って国有化してもその方針が変わってませんから、借り入れていた政府の意向の反映である可能性が高いです。昨年10月、石垣市尖閣諸島の字名を「登野城」から「登野城尖閣」に変えた時、標柱の設置を政府に具申しましたが、あっさりと突っぱねられています。「政府関係者を除き」とありますが、山羊の調査すらしないのですから正確には「日本人の上陸は認めない」と言っているのと同じです。以上の海保と官僚の有様を見て青山氏は「海警法なきがごとし(まるで中国が海警法を施行してないと思っているみたいだ)」と言い放って会合は終了となりました。

 座して敗北を待つ海保と日本政府、国民は?

 これまで見てきたように海保も政府も、中国が尖閣侵略の次のステージに出たにもかかわらず、「警察」の仮面を被ってやってくることに逆に安心し、過度の配慮を継続して現状を維持しようとしています。政府は尖閣を「平穏かつ安定に維持及び管理」と宣っていますが、既に管理されてるとは言えず、中国の攻勢によって「平穏」でも「安定」でもなくなっています。まるで戦況が悪化していることに見て見ぬふりをして戦争を継続した「戦中日本」とある意味同じです。

 いい機会なので私が書いた拙いシナリオを引用しましょう。地震津波と違って国が相手となる有事においては、政府の危機対処能力は著しく低下する……いや、能力さえ発揮できないと(現場の方に申し訳ありませんが)私は考えております。

 ある年、沖縄県石垣市周辺の台風通過中に中国の漁民が尖閣諸島魚釣島に上陸。台風明けに海保の巡視船が救出を試みたところ、彼らはテントを張ってその場に立てこもり、銃器でもって抵抗してきた(正体は訓練を受けた武装漁民)。日本政府が対応を決めあぐねている所へ中国海警局の大型船が巡視船に接近し、警告なしに機関砲による一方的な射撃を浴びせてきた。この攻撃により海保の隊員数名が殉職、損傷を受けた船は拿捕され残りの隊員たちが拘束される。(尖閣諸島近海における中国公船発砲事件。尖閣発砲事件と略される。だが中国側は海保の巡視船が銃撃してきたと主張した)。
 これを受けて日本政府は隊員達の解放を求めるも中国政府は「日本は我が国固有の領土である釣魚群島(中国が主張する尖閣諸島の呼称)へ不当に侵入し、我が同胞の拉致を試み攻撃を加えてきた」として謝罪を要求。応じない場合は安保理で訴え、国際的な圧力の下で解決を図ると主張した。島では愛国心に燃えた漁民たちが交代で尖閣に“駐留”し、それを守るように複数の海警船(実質海軍の駆逐艦)が入れ代わり立ち代わり領海内に居座り続けた。
 世界中で日中戦争の危機が叫ばれるが日本政府は事態の悪化を恐れて中国側の要求をのみ、尖閣諸島とその周辺の島々について共同開発を志向した交渉に応じることに同意した(日中東シナ海合意)。結果、海保の隊員は解放されたが中国人が尖閣諸島から引き上げることはなかった(中国による事実上の国境書き換え)。

 

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  このシナリオでは日本の巡視船が中国海警船に一方的に攻撃されていますが、これは海上保安庁法第20条に定められた外国船への武器使用条件として「軍艦及び各国政府が所有し又は運航する船舶であつて非商業的目的のみに使用されるものを除く」とあるからです。一応、先月の25日に政府見解で海警局の尖閣上陸は「重大犯罪」として「危害射撃」が可能だとしていますが、自衛隊憲法9条同様に解釈問題で揺れる危険性があります。その上海警の大型船は白く塗った駆逐艦ですし、上陸した「漁民」達も陸自のレンジャー顔負けの実力部隊ですから、いざ有事となった時に陸と海から挟まれて悲惨なことになりかねません。そうなった時に「海保が沈んだ。次は自衛隊だ!」などとできるのかと。戦後日本のありようを思い返せば、殉職した隊員の遺体回収と生き残って「捕虜」となった隊員の解放を優先することでしょう。尖閣を取り戻すどころではなくなるわけです。

 とても気分が悪くなる話ですが、今回私も含めて尖閣の実態を知って国民みんなで共有することができることが唯一の救いです。そして私たちが唯一中国に対して有利な立場にあるのは民主主義、議院内閣制であることです。以下、青山氏の動画の発言より引用します。

議院内閣制っているのは、政府の側からも立法府のぼくらに対して「ここが足りません」と、ね?さっきの尖閣諸島の上陸禁止で言うと「政府関係者を除き」となってるけども、政府関係者も入れないじゃないですか?

だから逆にこれは法がちゃんとあって、例えば「環境調査」という法律がちゃんとあって、その法に基づいてだったら、政府も動けるわけだから、だからそうやって議院内閣制で「ここが足りません」ってことを、言わなきゃいけない!(出典:【ぼくらの国会・第115回】ニュースの尻尾「尖閣諸島の政府見解『上陸禁止・現状維持』が浮き彫りに!?」,2021.3.1.,19:56 - 20:26)

 ひたすら現状維持に固執する政府も役人たちも意識を変えれば、青山さん達からではなく彼らの方から、提案し法に基づいて尖閣も護れるようになっていく。そんな可能性が我が国にはあるのです(中国は習近平総書記が首を縦に振れば何でもできますが、横に振れば何もできません)。その後押しとなるためには私たち国民の意識を高めて「このままでいいわけない」と盛り上がれば行政も立法も動くのです。

 敗北を目の前に座り込む海保と日本政府を私たちが立ち上がらせましょう。

 

 戦えない日本が陥る無残な敗北と不幸になるアジアの近未来シミュレーション

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(2021/3/4 中国海警船について追記。中タイトル編集。本文一部修正、3/31本分一部修正)

尖閣に自衛隊は出してはいけない

 皆さんこんにちは、ハトヤブです。まだまだ続くコロナ渦に福島県沖の地震。感染や被災に見舞われた方々にはこの場を借りてお見舞い申し上げます。不安が尽きない時勢となりましたが、日本の安全保障も重大な岐路に立たされています。いわれるまでもなく尖閣情勢です。

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 2月1日に中国の海警法が施行され半月を越えました。成立当初は中国が自分の領土と言えば全て「管轄権」となる横暴さと「武器使用」の明記が注目され、関心を持つ多くの日本人が不安を感じたことでしょう。

 海警法は、中国の主権や管轄権が外国の組織や個人によって不法に侵害されたときに「武器の使用を含めたあらゆる必要措置」をとる権利があると明記されている。(出典:中国、武器使用認める海警法成立 尖閣諸島周辺での活動強化の恐れ,産経新聞電子版,2021.1.22.,https://www.sankei.com/world/news/210122/wor2101220038-n1.html)

 私自身は緊張が高まるというよりは今のエスカレートした状態を正当化する狙いがあるととらえていました。というのも中国にとって法律は支配の道具に過ぎず、独裁者の気分次第でころころ変わる人治体制だからです。実際、南シナ海でフィリピン漁船やベトナム漁船に対しては発砲や体当たりを敢行しており、ベトナム漁船の方は沈没させています。何より指揮系統が軍と同じにされており、実質「第二の海軍」というべき存在となっております。

2018年には、海警が国務院(政府)管轄の国家海洋局から人民武装警察部隊(武警)に編入され、最高軍事機関である中央軍事委員会の指揮下に入った。昨年6月の法改正では、有事や演習の際に軍と同じ指揮系統の下で一体的に行動することが可能となった。(前掲)

 以上のことから意識ある方々からは「自衛隊を出せ!」という主張が出てきます。けれど菅政権は「注視する」に留め、静観を決め込んでいます。「またいつもの弱腰か!」「親中共の暗躍か!」とことさら憤る方もいることでしょう。本ブログ記事のタイトルも『尖閣自衛隊は出してはいけない』ですから、なおさら反発していらっしゃると思います。その気持ちは良い傾向です。国防について皆で意識を高めましょう。

 ただ本記事でそう書いたのは平和主義とか中国に配慮したからではありません(私は日中同盟に反対の立場です)。その理由は中国が制定し施行した海警法の真意にあります。

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 海警法の真意

 先ほど述べたように中国は人治国家であり、法律は道具でしかありません。つまり海警法は中国海警局の船が尖閣に侵入して日本の漁家や海保に武器を使用したり、日本が建てた施設等を破壊することを可能にするために制定したのではなく、別の目的があるのです。そのことについて自民党参議院議員青山繁晴氏がネット動画の『青山繁晴チャンネル・ぼくらの国会 第108回』で解説しています。

 その人治主義のチャイナがなぜわざわざ日本やアメリカも含めて反発がある事を承知で出してくるのか法律を。好きなようにやればいいじゃない、法律なんて作らなくてもって思うでしょ?で、その疑問を持っている人は本当は結構いらっしゃるのですが……それは正しくて、要は中国は人治主義で習近平の帝が思っていることをそのままやるのは事実なんだけど、その時に相手が日本であれ、アメリカであれ、どこであれ……特に日米ですね、法治国家であることを逆手に取りたいんですよね。で、中国は法律に基づいて正当に尖閣を含む海を警察だけでパトロールしてたら、そこに軍であるところの自衛隊が入ってきて撃ちましたと……全く悪いのは日本ですよねっていう状況を作りたいっていうのが、先ず狙いとして実はある。(出典:青山繁晴青山繁晴チャンネル・ぼくらの国会 第108回,5:40-6:50,https://www.youtube.com/watch?v=bcwTjnFv-zg)

 つまりフリーハンドでできるはずの中国は敢えて我が国と同じ土俵に立つことで、日本の法律をフルに利用する戦略を実行したのです。その法律は海上保安庁法第25条「この法律のいかなる規定も海上保安庁又はその職員が軍隊として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を営むことを認めるものとこれを解釈してはならない」で、ただでさえ憲法9条によって雁字搦めの自衛隊が動ける余地を奪ったわけです。だから、国防に関心のある方が言うように、例えば政治判断で自衛隊を出そうものなら、日本を悪者に仕立て上げて、世界に「日本を攻撃する中国は正義の味方」という国際世論を展開することができるのです。これは奇しくも不肖私如きが、過去記事で取り上げた中国の尖閣奪取作戦そのもので、それが法律としてはっきり表れたことになります。

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 これは中国が得意とする三戦(法律戦心理戦世論戦)の一つであり、これを現場で肌身に染みて理解しているから、青山さんが聞いたところによれば、海保は自衛隊に出てきてほしくない、永田町でも変な法改正はしてほしくないのが本音ということです。先ほど述べたように中国海警局は「第二の海軍」になっていますが、当面は警察のふりをし続けるということで、仰々しく登場した1万2千トンの船舶も使わず、日本の漁船を追いかけまわることに専念するので、現状の海保で十分対応できますという話でした。現状歯がゆく感じられるでしょうが、これが心理戦なのです(尤も私は日本の世論が自衛隊出動論に燃えるとは思ってないし、そうなったとしても政府は防衛出動を出さないとある種の確信に至っております)。

 Xデーは北京五輪の後!?

 いわば中国側が仕掛けた罠があるわけですが、皮肉にもそれは戦後日本の「戦争しない」精神を生かせば十分に回避できるわけです。当然、それでめでたしというわけはなく、中国は日本が挑発に乗らない場合の作戦も用意しています。それが実行に移されるのは来年の北京五輪のすぐ後だそうです。

 その時にもうチャイナがはっきり決心したと分かったのは軍事作戦では出てこないと。ただし、言わばdisguised operation……disguised「仮面をかぶったオペレーション(作戦)」で、これまあアメリカ側と話してんだけど……その仮面てのは「警察」の仮面、警察官の仮面をした兵士。それで民兵って海上民兵ってのを本当にお金をかけて訓練をしてその訓練は実はアメリカは上から見てるから衛星で見てるからバレてるわけだけど、これは徹底的な訓練、その映画ドラマの世界で如何に漁民に化けるか、如何に「普通の漁民」に見えるか、しかし中身は屈強な、日本で言ったら陸上のレンジャー部隊と変わらないぐらいの実力を持った、アメリカで言うと海兵隊の突撃部隊みたいな実力を持った民兵をいっぱい養っていて、海警法の下で「警察」として管轄してて、一番うまくいったのは自衛隊が発砲してくれることだけど、そうでなくても、海警法の刺激で日本の抵抗が強くなればなるほど、中国の漁民……今漁出来てないってのが彼らの考え方だから、中国の漁家に漁をさせるために、警察力でパトロールしてて、その時に例えば漁船が沈められたりして、漁家の中国の漁民の人々が魚釣島を中心に上陸したと。で、それは本当は武装もしてると……いうストーリーしか考えてない。(前掲)

 即ち武装漁民を先兵として、徹頭徹尾有事とみなしにくい「グレーゾーン」で攻めるというわけです。中国の海上民兵については、自民党の部会でもその対応が議論されていますから「今の法体系のままでこちらも警察として対応し、特殊部隊として動いたときには自衛隊海上警備行動でできるじゃないか」と海保は言っているわけです。

 中国が軍事によらないことに固執するのは、近年中国海軍がレベルアップしたとはいえ、まだ日米の同盟軍に善戦できる確証がないためで、迂闊に大規模戦争をして日本での改憲機運が盛り上がるのを防ぎたいからです。動画で青山さんは彼が代表を務める「護る会」の提言として、

  • 尖閣周辺の日米合同演習や沖縄那覇への日米統合連絡本部の設置
  • 海保の装備の充実と尖閣諸島とその周辺での環境調査及び観測機の設置
  • 日本国民への周知させるための資料館の設置
  • 同じ境遇にあるベトナムやフィリピンとの連携

を上げて締めくくっています。

 ネックは首相の判断力と世論の支え

 というわけで日々中国の船が領海侵犯を繰り返している状況に自衛隊が出て行けない理由を明らかにしたうえで、着々と対策が練られていることを伺い知ることができました。しかし、政府の有事に対する覚悟がどれくらいなのかが一番の問題となるでしょう。地震などの自然災害に冷静に動けても、他国の悪意に基づく災厄にはまごつく可能性が高いのです。現場においても海保や海自の武器使用は警察官職務執行法を準用しており、それが諸外国に比べソフト(正当防衛でない限り人に危害を与えてはならない)であることから、そこを突かれて多くの犠牲を出す危険性も高いです。

 何より世論が関心を示さなかったら、国土防衛のために命を懸ける人々が浮かばれず、逆に相手のプロパガンダに乗せられて犯罪者扱いされたら、もう誰も日本を護らなくなってしまいます。それは果たして「国」と言えるのでしょうか?勿論、脊髄反射で「自衛隊を出せ!」とか「断交だ!」とか喚きたてるのも困りものですが、それ以上に「辺境の島など俺には関係ない」とか「尖閣なんて上げちゃえばいい」という態度が、戦後日本が立ち上がるのを妨げているのです。それは中国にとってとてもうれしいことで、さらなる海軍の発展を推し進め、米国をアジアから下がらせることができれば、日本を軍事的に屈服させ、日米同盟の日中版を作ることで永遠に日本を隷属させることができるのです。

 

 そうですこれはただの南方の島の問題ではないのです。

 この先の日本とアジアの未来を決める大きな課題なのです。

 

 日本が戦う気概を持たずに尖閣を奪われる惨めなシナリオはこちら

hatoyabu01.hatenablog.com

 (2021/2/19 画像追加、3/3 引用箇所の差し替え)

 

バイデン政権がやる事・やらない事

 皆さんこんにちは、ハトヤブです。バイデン政権が発足してかなり時間が経ちました。前政権のトリッキーなトランプさん就任前の時と同様、希望絶望入り混じった論評があふれております。基本的に私は悲観的な立場で見ることが多いのですが、今回はリアリスティックに予想して彼がやりそうなこと、やらなさそうなことを上げていきたいと思います。

 バイデン氏がやる事

 先ず、バイデン政権が確実にやりそうなこと(あるいは既にやっている)ことを挙げていきます。

 中国人権問題

 一番目に意外と思われるのが既に取り組んでいる中国の人権問題です。「あれ?親中じゃなかった?」という声が出てくるでしょうが、そもそもこれは以前からも訴えられてきたものですし、日本の親中と違って「問題が存在しない」ことにしないのがアメリカです。実際、一昨年の香港人権法などは超党派で決議されたものですからね。

「なら反中じゃん」と思われるかもしれませんがそこが落とし穴であり、小手先の訴えなど中国にとっては痛痒を感じません

中国外務省の華春瑩(か・しゅんえい)報道官は20日の記者会見で、中国によるウイグル族などのイスラム教徒少数民族に対する弾圧を「ジェノサイド(民族大量虐殺)」と米国が認定したことについて「紙くずだ」と猛反発した(出典:中国が米のジェノサイド認定に「紙くず」と猛反発,産経新聞デジタル版,2021.1.20,

https://www.sankei.com/world/news/210120/wor2101200022-n1.html)

 勿論、中国が反発しているということはそれだけ彼らの威信を傷つけることになるのでしょうが、具体的に何ができるのかと言えば関係者の入国制限とか米国内の資産凍結ぐらいです。バイデン政権はウイグル自治区産の綿花の輸入を禁止したそうですが、産地偽装とかされたらどうするのでしょうか(何もしない我が国よりはましですが)。

 今後、注目されるのは被害者当事者への支援でしょう。世界ウイグル会議の総裁をホワイトハウスに招いて会談したり、支援金を別途出したりしそうです。あとはチベット問題にも言及し、ダライ・ラマ14世とも会談するでしょう。逆にこれができなければ偽物です。

 東アジアの緊張緩和

 次にやりそうなのは一見相反するように見える米中緊張緩和です。型にはまらないトランプさんは在任中、台湾総裁と電話会談をおっぱじめたり、米高官を台湾に訪問させたり、さらに新型のF-16戦闘機等を売却するなど、中国を十二分に刺激することを繰り返していました。

 一方、バイデン氏も就任式には台湾の駐米代表を招くなど、関係強化をアピールしていますが、就任後間もなく中国軍機が台湾の防空識別圏に侵入する出来事がありました。

 習近平国家主席率いる中国軍は23、24日、台湾の防空識別圏(ADIZ)に戦闘機や爆撃機など計28機を進入させた。対中融和派との指摘を払拭するように「米台連携」を打ち出したジョー・バイデン米新政権を挑発し、値踏みした可能性がある。これに対し、米国務省は、中国共産党政権に、台湾への軍事、外交、経済的な圧力を停止するよう求める声明を発表した。(出典:中国、「米台連携」のバイデン新政権を値踏みか 台湾の防空識別圏に戦闘機など28機進入、併合のチャンス見極めか,ZAKZAK,2021.1.25.,

https://www.zakzak.co.jp/soc/news/210125/for2101250003-n1.html)

 最初23日に中国が13機の戦闘機を侵入させたことを受けて、米国務省が声明を発したわけですが、翌日の24日には15機もの戦闘機が侵入を試みたとか。南シナ海に米空母「セオドア・ルーズベルト」を中心とする打撃軍を入れたことに対する行動とみられていますが、一歩も引かない相手の姿勢はバイデン政権にとってかなりのインパクになったはずです。ビビるとまではいかずとも、不測の事態が起こらぬよう慎重になるのは確実でしょう。トリッキーなトランプさんとの違いを強調するためにも抑制的に振舞って緊張緩和を図ると思います。

 ノーベル平和賞を目指す

 もう一つバイデン大統領が目指すと確実に予想されるのはノーベル平和賞です。彼が副大統領をしていた当時、オバマ元大統領が「核なき世界」の演説をしたことで受賞し、タカ派と思われがちなトランプ前大統領も受賞を狙っていました。これは私の主観ですが今やアメリカ大統領のステータスシンボルの一つに平和賞の受賞が不可欠なものになりつつあると考えています。それを想起する一例として、以下のことがあります。

11月の米大統領選で民主党候補の指名獲得を確実にしているジョー・バイデン前副大統領は6日、広島への原爆投下から75年の節目にあわせて声明を出した。「広島と長崎の恐怖を決して繰り返さないために、核兵器のない世界に近づくよう取り組む」と表明し、オバマ前大統領が掲げた「核なき世界」の理想を引き継ぐ考えを明確にした。(出典:バイデン氏、「核なき世界実現」継承…原爆投下75年で声明 ,読売新聞電子版,2020.8.8.,

https://www.yomiuri.co.jp/world/uspresident2020/20200808-OYT1T50178/)

 この理想(厳密には核少なき世界)を掲げ、失効が近づいていた新戦略兵器削減条約(新START)の延長を公約しているわけですが、この条約は戦略核弾頭と弾道ミサイルを対象としており、戦術核としての極超音速兵器は想定していない、また米露だけで中国が参加していない問題があります。それでもバイデン氏は平和の象徴としてこの条約を維持したいのです。実のところ中国の人権問題に取り組むのも、平和賞狙いの側面もあるかもしれません。

 バイデン氏がやらない事

 次にバイデン政権がやらないであろうと確信できることを三つあげます。

  • 台湾国家承認
  • 米中デカップリング
  • 米中戦争はしない
 台湾国家承認はしない

 まず絶対しないであろうと確信できるのは、トランプさんが一時はするかと噂された台湾国家承認です。かつて中華民国と断交し、中華人民共和国との国交を結んだときに共産党政権を唯一の合法政府とした「一つの中国」に合意しております。しかしトランプさんは「一つの中国」政策に縛られることに疑問を呈し、上述した関係深化を図りました。2018年には台湾旅行法ができ、政権終盤には台湾と政治高官をやり取りする自粛を完全解除としました。

 しかしバイデン政権は「一つの中国」政策の堅持を明言しております。

 米国務省のプライス報道官は3日の記者会見で、バイデン政権が中国本土と台湾は不可分の領土とする「一つの中国」原則を堅持する考えを示した。「米国の政策は変わっていない」と強調した。(出典:米、「一つの中国」を堅持 政策不変と国務省報道官,産経新聞電子版,2021.2.4.,

https://www.sankei.com/world/news/210204/wor2102040022-n1.html)

 念のため重要な補足ですが、アメリカは中国共産党政権を中国の唯一の合法政府と認めただけで、台湾が中国の一部であることは主張を認識しているだけで承認はしていないのです(日本も似たような形だったりします)。しかし、狡猾な中国は「一つの中国」=台湾は中国の一部というプロパガンダを長年続け、日米の多くの人がそう思い込むように既成事実化しているのです。

 よってバイデン政権が「一つの中国」政策を堅持するからと言って、即ち台湾を売り渡すようなことはありませんが、トランプさんのような火中の栗を拾うような行動は慎む可能性があります。実のところ、トランプ政権より前の政権では「一つの中国」政策と共に「台湾の独立*を支持しない」と発言して中国を喜ばせていました。その時もアメリカは台湾関係法に基づき防衛を担うとしてきましたから、バイデン政権が台湾関係重視を謳いながら「独立*は支持しない」と発言しても何もおかしくはないのです

(*台湾独立というのは誤りで、そもそも台湾は中華人民共和国の施政下に入ったことはなく、政治体制も完全に自立しています。したがって台湾独立を支持するか否か言っている時点で中国のプロパガンダに毒されていることになります)

 当然国家承認なんて夢のまた夢ですから、それがはっきりとした瞬間、中国はニコニコ顔で米中冷戦のデタント(雪解け)を演出する可能性があります。その時こそ、バイデン政権が真に中国に厳しいかわかるのです。

 米中デカップリングはしない

 あともう一つ、明確に言えるのはバイデン政権は最後まで中国とのカップリング(断交)に踏み切らないだろうということです。バイデン氏個人の問題というよりもアメリカや日本等自由主義諸国共通の問題で、経済の結びつきを強めすぎたという失態があります。前政権においても対中国強硬姿勢にシフトした象徴の一つ、2019年10月のペンス副大統領の演説でもデカップリングは否定されているし、2020年7月のポンペオ国務長官の演説でも「封じ込めでない」と発言しています。

 つまり自由主義国家であるがために、中国とのつながりを全てシャットアウトできずグローバリズムを否定する孤立主義に転換して、他の自由主義国に連帯を求めたのがトランプ政権の対中戦略の本質です。しかしバイデン政権は国際協調を基調とし、中国に対しては「戦略的忍耐」で挑む意向を示しました。

サキ氏は会見で、習氏の主張はバイデン政権による中国への戦略的アプローチを変えるものではないとし、「ここ数年、中国は国内でより権威主義的になり、国外ではより自己主張を強めている。中国政府は安全保障、繁栄、価値観において大きな挑戦を挑んでおり、われわれも新たなアプローチが必要だ」と述べた。

さらに、「われわれは戦略的な忍耐を持ってこの問題に取り組みたい」と述べ、ホワイトハウスが今後数週間以内に、この問題について議会や同盟国などと協議すると述べた。(出典:米新政権、中国に「戦略的忍耐」で対応 企業規制解除は慎重,ロイター通信日本語版,2021.1.26.,

https://jp.reuters.com/article/usa-biden-china-idJPKBN29U2EP)

 この戦略的忍耐という言葉にはオバマ政権の北朝鮮政策を思い出されます。「非核化を前提としない限り対話に応じないで制裁を維持する」というものでしたが、結果的に相手に核開発するのに十分な時間を与えただけでした。今回、対中政策としてどんな「新たなアプローチ」をとるのかわかりませんが、国際社会で嫌々手を握りながら、北米大陸に籠ってギャンギャン人権問題を訴える以外の妙案があるのか見ものです。

 逆に中国側からバイデン政権を懐柔するアプローチとしては同政権が力を入れると公言している気候問題になるでしょう。何しろ、こんな記事が出るくらいですから。

 ケリー氏は1月27日の記者会見で、気候変動対策は米中にとって「重要な問題だ」とした上で「知的財産窃取や南シナ海問題といった中国との全ての懸案に関し、気候変動(をめぐる協議の)取引材料には決してしない」と強調していた。(出典:米「南シナ海と環境、取引しない」発言に小泉環境相「心強い」,産経新聞電子版,2021.2.2.,

https://www.sankei.com/life/news/210202/lif2102020011-n1.html)

 そもそも環境問題安全保障を天秤にかけること自体常軌を逸しており、自分から言ったのか、質疑応答で出たのか、いずれにせよこんな発言が出ること自体が異常事態です。というのも、新しい米国務長官アントニー・ブリンケン氏はケリー気候変動対策大統領特命大使の後輩であり、中国にとってはケリー氏さえ押さえればアメリカ政治を操れると考えるからです。気候問題にこれほどの大物を抜擢するなんて、よほどバイデン氏は気候問題に力を込めているのかがわかります。ひょっとしたらこの案件で功績を収めたことによる平和賞受賞も狙っているのかもしれませんね。

 米中戦争はしない

 最後にこれだけはしないと確信できるのが、米中戦争です。「え?嘘やろ?いつ米中開戦するか一色触発の事態やって」と思われるかもしれません。そうですね。可能性はゼロではないです。10%位でしょうか?シナリオとしては習近平総書記が自信過剰になって、戦略もなしに台湾やら沖縄やら、果てはグアムなどに人民解放軍をけしかければバイデン政権とて戦争に応じざるを得ません。アメリカには日本の9条みたいなものはありませんからね。

 しかし、大きな犠牲を強いることになります。何しろ相手は保有です。核戦争にまで発展してしまえば、アメリカの主要都市が核の炎に晒されます。人命を重んじ、民主主義の上に立つ指導者としてそれを決断できるのは、「自衛」という正当性がある場合のみです(逆に言うと相手が核保有国でない小国の場合はハードルが低いです)。

 現状では純粋な戦力差を比較すると中国は米国の足元にも及びません。最近、空母やら強襲揚陸艦やら建造していますが、まだ練度は未熟でしょう。しかしそれでも着実にレベルアップをしており、決して楽観できる状態ではありません。それに米軍は世界に展開しているため、局地戦では負ける可能性さえあるのです。

 さらに米国が中国と事を構えにくい大きな理由があります。それはロシアと違って米中は大洋を隔てて離れすぎており、国民が切迫した脅威に感じないのです。おまけに間には大きな大国が堤防のごとく立ちはだかっています。何かわかります?そう、私たち日本です。

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(出典:Google Earth より,赤い覇権主義を抑える壁日本)

 以上のような理由からアメリカは自分から中国に戦争をけしかける可能性はかなり低いです。少し前に騒がれた人工島の爆撃計画アメリカが先制してする可能性は殆どありません(もしやるならオバマ政権の時代に対空火器が運び込まれる前にやってます)。戦争とは落としどころが付かなければ、どんどん拡大するものであり、一歩も引かない姿勢の相手に先に攻撃した場合、かなり厄介なことになります。自国に被害が及ぶ可能性があるとするなら猶更です。

 そういうことなのでアメリカは、これまで日本や台湾をいざという時に護る代わりに、あまり敵を挑発する真似はするなと釘を刺してきました。それが結果的に日本の対米追従と呼ばれる政治や、台湾冷遇という苦境をもたらしていたのです。ただし、このいざという時の可能性は、中国が力をつけるごとに着実に上昇していきます。トランプさんはただ座してそれを待つのではなく、日本や台湾の自立を促進して米軍の負担を減らそうとしました。バイデン氏も最終的にはその結論に達するでしょうが、トランプさんのようなインパクトのある決断ができるのか未知数です。

 先祖返りする日本

 我ながら情けないと思うのは、我が国の政府が従来の政治に戻ろうとしていることです(安倍政権が終わったせいもあるでしょう)。尖閣諸島日米安保5条が適応すると聞いて喜び、自由で開かれたインド太平洋と聞いて喜ぶ有様です。その上バイデン氏と菅首相の電話会談で中国の話題が出たにもかかわらず、中国に配慮するように報道資料から中国の字を抜く始末です。当分は対中強硬とみなしながらも、トランプさんのようなトリッキーな真似はしないだろうと踏んでのことでしょう。下手すれば中国とのパイプ役になろうとも考えているかもしれません。いったん延期された習総書記の国賓訪日も諦めてないでしょう。

 これを改めさせるには在日米軍駐留費4倍のプレッシャーをかけることがいい薬になっただろうに、残念なことです。

 

オバマ・トランプ・バイデン3代政権が飾る超大国の終焉

 皆さんこんにちは、ハトヤブです。本日就任するジョー・バイデン氏は私の未来予想シミュレーション戦記に登場する「バルデン大統領」のモデルになっている大統領です。この大統領の任期中に起こることは、私の予想が正しければアメリカの時代の終わりという現象でしょう。

 いや、あのアメリカが終わるとか有り得へんだろと思ったあなた。日本国民なら学生の頃、国語の授業で平家物語祇園精舎を読んだことがあるでしょう?

祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の断りをあらはす。驕れるものも久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。猛きものもつひには滅びぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。

 この言葉のように覇者は必ず失墜するのが日本史だけでなく、人類史の宿命となっています。地中海をまたにかけたローマ帝国も今は跡形もなく、日の沈まぬ帝国と呼ばれたスペイン帝国大英帝国も今は一中堅国家に納まっています。これらと同じように超大国アメリカもいつかは普通の国に戻る日が来ると考えるのは自然なことです。

 世界の警察を辞めたオバマ大統領

 綻びの発端はブッシュ・ジュニア時代の9.11同時多発テロから始まり、アフガニスタン戦争、イラク戦争と中東への軍事介入が続きます。タリバン政権やフセイン政権は難なく倒せましたが、国の体をなしてないテロリスト集団との戦いは困難を極め、米軍の疲弊をもたらしました。そこへ追い打ちをかけるようにリーマン・ショックが起こり、世界同時不況に見舞われます。その時に世界経済を牽引したのが中国です。まるで世界恐慌ソ連みたいですね。

 その後現れた大統領はこれまでのアメリカの常識を逸脱し、大きな路線変更を象徴する者でした。お分かりの通り、オバマ大統領です。米国史上初の黒人大統領である彼はブッシュ・ジュニアを批判して選挙に勝った背景から、軍事介入に消極的になりました。果ては核なき世界の演説を行い、ノーベル平和賞を受賞するまでになりました(ここよく覚えといてください!)。印象的だったのは「アメリカは世界の警察ではない」と謳った演説です。

オバマ大統領は、シリア内戦に関するテレビ演説で、退役軍人などから、「米国は世界の警察官でなければいけないのか」という書簡を受け取ったことを明らかにし、次のように述べた。

「米国は世界の警察官ではないとの考えに同意する」。

(出典:惠谷 治,「世界の警察官をやめる」と宣言したオバマ大統領,ダイアモンドオンライン,2015.8.5https://diamond.jp/articles/-/75884)

 実際のところイラク戦争は終わらせましたが、中東への駐留は続き、ビンラディン氏殺害リビア内戦介入、IS(自称イスラム国)への攻撃は行っております。それでも空爆無人機の運用だけに留まり、地上軍の派遣には消極的でした(ISとの戦いではイランの協力を借り、それが核合意に結びつきました)。

 警察なき世界で暴れる中露

 この消極的なアメリカを見て増長したのがロシア中国です。ロシアはウクライナの政変に反発してクリミアへ武力侵攻し、住民投票を演出して自国に編入しました(事実上の国境書き換え)。さらにはウクライナ東部への侵略も内乱を装って行い、分断状態が今も続いています。これにオバマ政権は強い態度は示したものの、湾岸戦争のような介入は行わず経済制裁に留めました。

 これよりもっと酷いのがアジア政策で、就任初期はアジアリバランスを掲げ、中国市場目当てに米中蜜月を演出します。この結果起こったのは日本の尖閣諸島への挑発南シナ海での人工島の建設です。そして覇権主義に燃える習近平総書記から太平洋を米中で二分割する提案をされます(後のトランプ政権も同じ提案をされています)。

これを端的に表現したのが習主席がオバマ大統領に言い渡した「広く大きな太平洋には米中の両大国を受け入れる十分な空間がある」という言葉だ。習発言からは、中国海軍にとって西太平洋への入り口に位置する尖閣諸島の重要性も見えてくる。当然、オバマ大統領は簡単には乗れない。(出典:中沢克二,米中、緊張含みの緊密化 首脳会談、異例の8時間,日経経済新聞電子版,2013.6.10,

https://www.nikkei.com/article/DGXDASGM0900Z_Q3A610C1EB1000)

 要はアジアから米軍が出ていき、日本の安全保障からも手を引けといっているのです。日本を含めたアジア諸国を国とも思わない身勝手な発言です。またアジアインフラ投資銀行(AIIB)など米国抜きのアジアを志向し、自らのそのトップになる事を堂々と主張しました。

 終盤のオバマ政権は対中強硬姿勢に転じたものの、米海軍の軍艦を中国の人工島が建設された南シナ海へ送るだけの「自由の航行作戦」しかできませんでした。ブッシュ大統領イラク戦争を批判した都合上それ以上の戦闘に踏み込むことができないのです。中国が核保有国であることもあるでしょう。

 孤立主義に舵を切ったトランプ大統領

 次の大きな方針転換を図ったのが強烈なキャラクター性でおなじみのトランプ大統領です。忘れもしない彼が就任して一番初めにしたことは日本やシンガポールニュージーランド、オーストラリアなど12か国の太平洋諸国ですり合わせていた環太平洋パートナーシップ協定(TPP)からの脱退です。

トランプ大統領は23日、ホワイトハウス内で「TPPから永久に離脱する」とした大統領令に署名し、再交渉などの可能性も明確に打ち消した。12カ国で大筋合意したTPPは、米国の批准に向けた行政手続きが完全に止まった。トランプ氏は「(TPP離脱は)米労働者に素晴らしいことだ」と述べた。(出典:トランプ氏、TPP「永久に離脱」 大統領令に署名,日本経済新聞電子版,2017.1.24,

https://www.nikkei.com/article/DGXLASGM24H1X_U7A120C1MM0000)

 シンガポールブルネイニュージーランド、チリから始まったこの協定はアメリカと日本の傘下によって巨大な経済圏となって増長する中国に対抗する象徴になるはずでした。国内ではアメリカ主導で日本経済と雇用に悪影響があると異論が相次ぎ、当時参入を決めた民主党政権崩壊を早める遠因にもなったほどです。それを引き継いだ安倍政権は甘利氏による懸命な交渉の末、日本にも受け入れられる条件にすり合わせるに至っていたのです。それをトランプさんは自国の都合だけでちゃぶ台返しにし、アメリカの都合のいい形自由貿易協定(FTA)を結ばせたのです。これが彼が大統領就任時に公約したアメリカファーストです。

 彼はその後続々と国家間の取り決めから離脱していきました。地球温暖化対策を地球規模で取り決めるパリ協定、イランの核開発を期限付きで制限するイラン核合意、米ソで核弾頭を搭載した中距離ミサイルの全廃を実現した中距離核戦力全廃条約(INF)、非武装での偵察機の運用を認めるオープンスカイ協定、そして世界規模の感染症対策に取り組む世界保健機構(WHO)からも脱退する方針を示しています。それぞれの背景を見れば納得できるものもあるものの、その稚拙無遠慮なやり方は世界のリーダーとしてのアメリカの地位を大きく貶めるものでした。所謂孤立主義モンロー主義の再来と言えるでしょう。

 世界の守護者を辞めたアメリ

 挙句の果てはアメリカが長年継続してきた安全保障戦略にも物申し始めます。かねてからトランプさんは世界に駐留する米軍の撤収を公言しており、日本が在日米軍の駐留費を全て負担しないなら撤収するぞと就任前から発言しています。幸い安倍前首相との個人的な信頼関係ができたことで日米関係が揺らぐことはありませんでしたが、日米同盟の片務性には度々苦言を呈しております。

トランプ氏は「日本が攻撃されれば米国は第三次世界大戦を戦う。私たちはいかなる犠牲を払ってでも日本を守る。だが、米国が攻撃されても日本はそれをソニー製のテレビで見ていればいいのだ」と語った。(出典:トランプ氏「日本は米国を守らない」 米FOXビジネスのインタビューで,産経新聞電子版,2019.6.27.,

https://www.sankei.com/world/news/190627/wor1906270050-n1.html)

 これを左翼は全く重く見ず、保守も「日本も負担を負っている」と反論するだけでしょうが、私は深刻な事態と受け止めます。なぜならこれまでアメリカは我が国を軍事強国にさせない瓶のふたと世界覇権を維持する重要拠点と成す為に同盟を維持しており、我が国も低コストで世界4位の海洋資源シーレーン恩恵にあずかるために同盟の継続を望んでいるのです。それを彼は完膚なきまでに否定したのです。それがドナルド・トランプ個人の考えならいいのですが、2億人の米国有権者の総意だとしたら笑ってはいられません。

 彼の安保戦略見直しはそれに留まらず、在韓米軍NATO中東に駐留している米軍にも及びます。特にシリアから撤退後、ISとの戦いで共同戦線を張っていたクルド人部隊がトルコ軍の攻撃を受けても援護しようとはしませんでした。

 トランプ大統領は10月9日、クルド人部隊を見捨て、シリア北東部に駐留する米兵を撤退させた自身の決断を改めて擁護した。クルド人第二次世界大戦アメリカを助けなかったからだという。

(中略)

9日の"第二次世界大戦"発言の直後、報道陣にシリアからの撤退やクルド人部隊の扱いは、他の潜在的アメリカの同盟国に対し、負のメッセージを与えたのではないかと尋ねられたトランプ大統領は、「同盟はものすごく簡単だ」と答えた。アメリカにとって、新たなパートナーシップを組むのは「難しいことではない」という。

そして、「我々の同盟国」は「我々に大いに付け込んできた」とも述べた。

(出典:John Haltiwanger,「同盟は簡単」「第二次世界大戦で我々を助けなかった」トランプ大統領クルド勢力を見捨てたとの批判に反論,BUSINESS INSIDER JPAN,2019.10.10.,

https://www.businessinsider.jp/post-200340)

 このロジックに従えば日本はアメリカを助けるどころかなので見捨てていいことになります。さすがにそれは冗談だとしても“「我々の同盟国」は「我々に大いに付け込んできた」”という発言は日米同盟の片務性への苦言と根っこは同じです。つまりアメリカはこの時をもって世界の守護者を止めたということになります。

 こう書くと日本のトランプ支持者の方々から「お前、ここ一年のトランプ閣下の素晴らしい業績無視してるだろ?」と抗議されますね。はい、就任初期、北朝鮮政策で中国に協力を求め、習近平総書記と「馬が合う」と言ったトランプさんですが、貿易交渉の拗れと米国国内への工作の深刻さから「アンチ・チャイナ」へと転じました。2018年10月にはペンス副大統領中国共産党政権への強硬姿勢を示す演説をし、昨年7月がポンペオ国務長官自由主義共産主義との対決を説きました。そして香港人権法をはじめ台湾旅行法台湾保障法を制定し、さらにウイグル人権法チベット支援法までできました。大変素晴らしいです。

 でもそれだけです。要は中国の暴虐に対してアメリカ一国が経済制裁をするのみです。香港の弾圧に米軍が介入するわけでもなければ、台湾に再駐留するわけでもありません。湾岸戦争の時とは大違い、オバマ政権の対ロシア制裁と何が違うのでしょうか?

 さらに付け加えるとトランプさんは任期中ノーベル平和賞を受賞することに腐心しておりました。そうです。オバマ大統領も受賞していたあれです。2019年は北朝鮮問題で安倍さんから推薦してもらい、2020年は中東アラブ諸国イスラエル国交正常化の仲介として推薦されました。平和賞受賞を望む人が中国と本気で戦うと思います?

 中国べったりのバイデン新大統領

 さて最後に新大統領のバイデン氏ですが、彼は専ら親中として有名な人です。それを証明する上で有名なのは、2013年冬に中国が尖閣上空に一方的に防空識別圏を設定した時の対応です。この時副大統領だったバイデン氏は、訪日して当時首相だった安倍さんと会談するのですが、日米共同で中国に撤回を求める彼の提案を拒否したのです。それだけなら世界の警察を止めたオバマ政権外交政策に従ったとも取れますが、当時日本の野党党首の海江田氏と会談した時に「習近平に迷惑はかけられない」と漏らしたのです。以下は中国の報道です。

なぜ米国は安倍首相の要求を拒んだのか。その理由については会談で明かされることはなかったが、3日午前に海江田万里民主党党首と会談したバイデン副大統領は本心を漏らしていた。「習近平国家主席は事業を始めた苦しい時期にある。彼に面倒をかけられない」、と。どうやら米国人は口では日米同盟を高らかに歌いながら、心ではひそかに中国に配慮しているらしい。(出典:「習近平に迷惑はかけられない」とバイデン副大統領、米国の日本支持は口だけだった―中国メディア,Record China.,2013.12.5.,

https://www.recordchina.co.jp/b80065-s0-c10-d0042.html)

 日本の野党も基本的に親中ぞろいですから、仲間意識のようなものを感じてつい口を滑らせたのでしょう。日米の新聞社は一切関心を示していませんが、バイデン氏も海江田氏も否定していませんから一概に作り話とは言い切れません。現に最近でも口先だけ外交はいかんなく発揮されているからです。

 菅義偉首相は12日、米大統領選で当選確実と報じられた民主党ジョー・バイデン前副大統領と電話会談を行った。バイデン氏は、中国の軍事的覇権拡大で緊迫する沖縄県尖閣諸島について、日本防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の適用範囲であるとの見解を示したという。ところが、政権移行チームのホームページ(HP)に掲載された発表文には「尖閣諸島」の文字がないのだ。「親中派」とされるバイデン氏だが、まさか日本には「口先外交」で対応し、中国にも配慮したのか。(出典:バイデン氏“口先外交”か 公表文書に「尖閣」明記なし 菅首相と電話会談で明言も…中国配慮か,ZAKZAK,2020.11.13,

https://www.zakzak.co.jp/soc/news/201113/for2011130008-n1.html)

 基本的に電話会談は実際に会談して共同声明を出すのに比べれば、政治的重みはないのでしょうが、日本との会談では尖閣に言及しながら然るべき公の場所に記入しないのは、重要でないと判断したか、中国に配慮したかのどちらかでしかありません。前掲の記事を見るに理由は考えるまでもないでしょう。

 もっとも中国に甘いということが有名すぎるために批判を避けようと対中強硬になるという意見もあります。また、民主党及びアメリカの国として中国の人権侵害を不問とすることもできないから宥和に走れないとする指摘もあります。実際、香港人権法などは共和・民主一致で可決されたものですから、大統領といえど独裁者ではないのでこれをひっくり返すことはできないでしょう。

 しかし中国側にとってすれば、別に甘やかして欲しいわけではなく、アジアで自分たちが何をやってもアメリカが手出ししてこないのが望ましいので、バイデン新政権が親しき習近平総書記にする最大の宥和政策は何もしないだけでいいのです。口先だけ批判して終わり……。少し前の米国なら有り得ないでしょうが、オバマ政権で世界の警察を辞め、トランプ政権で世界の守護者を辞めている現在なら難しいことではありません。仮に制裁するとしても、トランプさんを批判していた都合上とてつもなく生温いものになるでしょう。

 アメリカが世界のリーダーを辞める日

 そんなバイデン新大統領がする大転換アメリカを世界のリーダーから降ろすことです。勿論本人にそのつもりはないのですが、トランプさんを大統領から引きずり下ろす為だけに民主党から選ばれた彼は、トランプを否定するあまりアメリカの地位を貶めることになるでしょう。

 まずバイデン氏は大統領就任一日目にトランプさんが脱退を表明した世界保健機構(WHO)への復帰を宣言すると公言しています。

バイデン氏は7日、ツイッターで「米国が国際公衆衛生の強化に関与することで、米国民はより安全になる」と強調。大統領選で勝利すれば、来年1月の就任1日目にWHO復帰を表明すると述べ、「私は国際舞台でのリーダーシップを回復する」と訴えた。(出典:WHO脱退、大統領選の結果次第 バイデン氏「復帰」約束―米,時事通信社電子版,2020.7.9.,

https://www.jiji.com/jc/article?k=2020070800896&g=int)

 このWHO、知っている人はいるかもしれませんが、事務局長のテドロス氏が中国と深い関係で、武漢熱への対応も中国配慮が目立ったために批判にさらされていました。トランプさんの脱退表明はこれに起因するのですが、無条件で復帰を公約したバイデン氏にこれは追求できるでしょうか?できるわけありません。また、パリ協定への復帰も公約していますが、そこで厳しい排出制限や新産業のシェールガス採掘の制限を言い渡されても、おいそれと断る事もできなくなります。つまり、ことごとくアメリカ主導の世界が音を立てて崩れ去っていくのです。

 中でもバイデン氏が大統領就任後、真っ先に取り組まないといけないのが武漢熱対策……なのですが、外交面ではイラン核問題が急務となっております。というのも昨年12月、イランの護憲評議会で二か月以内に制裁が解除されなければ核開発を促進する決定を下しているからです。

法案は、核合意の枠組みを維持する欧州諸国がイランに対する石油・金融セクターへの制裁を2カ月以内に緩和しない場合、国際原子力機関IAEA)の抜き打ち査察を認める追加議定書の履行停止やウラン濃縮度引き上げなど、核合意の制限を破ることを求める内容。(出典:イラン護憲評議会、核開発拡大法を承認,大紀元時報日本語版,2020.12.3.,

https://www.epochtimes.jp/p/2020/12/65418.html)

 記事は12月の初めですから、2か月となれば後十日ちょいしかありません。本格的に開発が始まってしまえば、核合意の枠組みに戻すのは困難です。けれど、バイデン氏はイラン核合意への復帰も公約しているため、それを実現するためにイランに課していたウラン濃縮制限等について妥協する可能性もあります。それを見越してかイランはすでに20%ウラン濃縮を始めているそうです。

 

 これから私たちが見るのは世界をけん引できない頼りないアメリです。それによって左翼は勿論、保守派の中にもアメリカを見限る者が必ず出てくるでしょう。それが日本の自立に向かうならいいのですが、勢いの増している国へ乗り換えるという主張には注意が必要です。それが私の反対する日中同盟となってしまうでしょうから。

 

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 衰退するアメリカから中国へ乗り換えた日本の末路がこちら

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