はじめに

 皆様こんにちはハトヤブです。今一度問います。ただ戦争しないと言い続けることが将来にわたって戦争を回避する方法なのでしょうか?武器を捨てて平和を叫べば相手も矛を収めてくれるのでしょうか?

 私はこのままでは日本は再び同じ過ちを犯すと思います。それは左の方が考えるような軍国日本の復活なんかではありません。何の戦略も持たず、当事者意識も持たず、無責任体質のまま目先の利益を追い求めるさまは戦前日本も戦後日本も同じです。そうです、同じなのです。戦略がないから国際的に孤立し、当事者意識がないから早期講和に持ち込めず、無責任体質だから破滅まで突き進む……それが日本の第二次世界大戦ではなかったですか?今も戦略がないから中韓朝にいいように詰られ、当事者意識がないから米国に依存し、無責任体質だから憲法一つ変えられない……これが今の日本の現状です。

「戦争はいけないこと」その通りです。誰だって死にたくないし、殺しあいたくないです。しかし、世界は万国・万民族にとって公平に作られてはいません。己の不遇な境遇を打開し、望む通りの新秩序を構築するため戦争をする者は昔からいるし、これからも出てくるでしょう。その筆頭候補が中華人民共和国です。近年、怒涛の経済発展を遂げた同国はかつての華夷思想に基づく新秩序を希求しており、近世の列強(日本を含む)から受けた屈辱を晴らさんとしています。それが2018年3月に任期を撤廃した現国家主席の謳う「中華民族の偉大なる復興」であり「中国夢」なのです。

 さて、かの国の「偉大なる復興」が開始された時、日本はどうするのでしょうか?自分の今の平和を守るために立ち向かいますか?それともかの国の新秩序のために付き従いますか?このブログは後者を選んだ場合の日本とアジアがたどる未来……世界より再び降伏文書を突き付けられるまでの黙示録です。

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 いろいろ見識を改めて手直し中。

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 中国が覇権主義を突き進む私的考察がこちら

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 自称「平和憲法」の嘘から脱却しましょう。

 

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(9/7本文一部修正、10/20前書き向けに修正)

 (2021/2/18 リンクを追加・見やすく修正)

ウクライナに憲法9条があったら?

 皆さんこんにちは今日は憲法記念日ですね。このような日こそ日々当たり前と思っている常識を覆し、自分の頭で考えてみる必要があります。すると思わぬ発見が見つかることでしょう。仏教では「諸行無常」という言葉があります。これは今日ある事が明日もあるとは限らないという理を表したものです。今世界を騒がしているロシアのウクライナ戦争も、誰も予想した者はおらず、「侵攻はない」とか「せいぜいちょっとした紛争だろう」と考えが大勢を占めていました。今日の平和が明日あるとは限らない。それはこれからも起こりうることです。

 「9条」に縋りつく人々

 さてこの戦争について面白い議論がありました。それは「ウクライナに日本の憲法9条があったら、ロシアは侵略しなかったのか?」という議題です。これまで散々「憲法9条があるから日本は平和なんだ」という主張がまかり通ってきただけに、保守派から猛攻撃を浴びることになったのですね。それに対する護憲派は「憲法9条は日本が侵略しないようにするものだから(震え声)」と事実を認めざるを得ない状況になっています。中には「ああそうだよ、外国の侵略は防がないよ!なんか文句ある?」と開き直っているブロガーさんもいらっしゃるようですが、アンタ偉そうに言ってるんじゃないよ!今の世界情勢で日本が侵略する可能性は政治的にも軍事的にも思想的にもあり得ない状況で、専ら戦争を起こすのは中国や北朝鮮、そして既にやらかしているロシアだって言っているのに、防衛強化を妨害してきたのは何処のどいつじゃ!と言われても仕方がない状況です。

 ならば国防強化や憲法改正にもう文句は言わないのかといえばそうではなく、むしろ原理主義化して護憲主義(自称)に血道をあげる有様です。自称護憲政党日本共産党の志位さんはこんなアクロバティックな物言いをしております。

 日本にプーチンのような指導者が生まれた時の備えだそうです。そんな仮の話をする前に現実のプーチンはどうすんのよと言いたくなります。ロシアは極東で日本と隣同士であり、北海道に侵攻してくる可能性は十分にあります。この人たちは1940年代の日本の世界を夢想して「反戦」を訴える「英雄」を気取ってそこから抜け出せなくなっているのでしょう。まぁ、日本共産党の場合は敗戦当初アメリカを「解放者」と呼んでいたけど、レッドパージされてむしろソ連に「解放」してほしかった人達ですから、ロシアのプーチンになら大歓迎なのかもしれません。実際ロシア擁護で勇名になったれいわ新撰組のブレーンは「ロシア軍に大阪から上陸してほしい」なんて言っていますから。

 きっと気に入らないものを壊して欲しい、殺して欲しい「破滅願望」があるのでしょう。人はそれを「革命」と呼びます。

 ウクライナ憲法平和憲法

 ま、自称護憲論者は置いといて「ウクライナに日本の憲法9条があったら、ロシアは侵略しなかったのか?」の正確な答えですが、それは「関係ない」です。そもそもウクライナ憲法ウクライナ人が護るものであって、プーチンは何も気にする必要がないからです。もちろん憲法が原因でウクライナの国防が揺らいでしまうなら話は別ですが、現状のウクライナ憲法でそんなことはありません。

 他方でロシア擁護派の中には「ウクライナが悪い」といった主張がありますが、ウクライナはちゃんとした平和憲法を持つ平和国家なのです。その内容を抜粋して見てみましょう。

Стаття 17. Захист суверенітету і територіальної цілісності України, забезпечення її економічної та інформаційної безпеки є найважливішими функціями держави, справою всього Українського народу.
(第17条ウクライナの主権と領土保全の保護、経済と情報安全保障の確保は、国家の最も重要な機能であり、ウクライナ国民全体の仕事である。)


Оборона України, захист її суверенітету, територіальної цілісності і недоторканності покладаються на Збройні Сили України.
ウクライナの防衛、その主権の保護、領土保全及び不可侵性は、ウクライナ国軍に委ねられている。)


Забезпечення державної безпеки і захист державного кордону України покладаються на відповідні військові формування та правоохоронні органи держави, організація і порядок діяльності яких визначаються законом.
(国家の安全を確保し、ウクライナの国境の保護は、関連する軍事組織と国家の法執行機関に委ねられており、その組織と手続きは法律で定められている。)


Збройні Сили України та інші військові формування ніким не можуть бути використані для обмеження прав і свобод громадян або з метою повалення конституційного ладу, усунення органів влади чи перешкоджання їх діяльності.
ウクライナ国軍やその他の軍隊は、市民の権利と自由を制限したり、憲法秩序を打倒したり、当局を罷免したり、それらの活動を妨害したりするために、誰によっても実力を行使することはできません。)


Держава забезпечує соціальний захист громадян України, які перебувають на службі у Збройних Силах України та в інших військових формуваннях, а також членів їхніх сімей.
(国家は、ウクライナ国軍や他の軍隊で奉仕しているウクライナ市民とその家族に社会的保護を提供しています。)


На території України забороняється створення і функціонування будь-яких збройних формувань, не передбачених законом.
ウクライナの領土では、法律で定められていない武装組織を創設し、運営することは禁じられている。)


На території України не допускається розташування іноземних військових баз.
ウクライナの領土では、外国の軍事基地の設置を許可されていません。)


Стаття 18. Зовнішньополітична діяльність України спрямована на забезпечення її національних інтересів і безпеки шляхом підтримання мирного і взаємовигідного співробітництва з членами міжнародного співтовариства за загальновизнаними принципами і нормами міжнародного права.
(第18条ウクライナ外交政策は、一般的に認められた国際法の原則と規範に従って、国際社会のメンバーとの平和的かつ互恵的な協力を維持することによって、その国益と安全を確保することを目的としている。)

──ウクライナ最高議会HP(https://zakon.rada.gov.ua/cgi-bin/laws/main.cgi?nreg=254%EA%2F96-%E2%F0#Text)より

 ここには国際協調や軍の行動に対する規制即ちシビリアンコントロールが明記されている他、何と外国軍基地の非設置までもが書かれております。9条2項の戦力不保持を超絶拡大解釈して日米安保破棄を主張している方や、日夜「米軍出てけ」とシュプレヒコールを上げている方々にとっては垂涎物の条文ではないでしょうか?逆をいえば日本国憲法戦争放棄武装解除以外は何もなく、せいぜい前文に国際協調があるかな程度で、自衛隊の行動規制も、外国軍基地について具体的な記述が何もないのです。そしてどうやって国を護るかについての方法も責任も日本国憲法にはありません。安保闘争で「日本は個別的自衛権のみが認められる」と言っていた皆さん。ウクライナ憲法を参考にしてはいかがでしょうか?米軍も追い出すことができますよ?

 日本共産党の裏口的な「自衛隊活用」論

 尚、改憲の話になったら脊髄反射で「戦争できる国になる」と主張する人が後を絶ちませんが、現在の自由民主党の9条改正案は既存の条文をそのままに「自衛の措置は妨げない」を加憲するものとなっております。これを知ろうとしていない人が多すぎる。中には今更のように「9条第一項は国連憲章を引用したもので……」と言って護憲の意義を説明しようとする人もいますが、だから加憲ですよ!と言っているんです。今までは自衛が認められていると解釈して運用していましたが、国民の中で一定数以上「自衛も認められない」「自衛隊違憲」という認識がある以上、そのひずみが日本の防衛に暗い影を落としてきたのです。

  1.  ポジティブリスト(他国はネガティブリスト)
  2.  捕虜条約の対象外(自衛隊が捕虜になった時、捕虜として扱ってもらえない)
  3.  攻撃能力の制約(昔は空中給油機もダメだった)
  4.  交戦規定の不在(武器使用は警察と同じ)
  5.  軍法会議の不在(敵兵士を殺害した場合、殺人罪で裁かれる)

 こうした状況を放置して有事に至った場合、どんな混乱が起こるかわかりません。是正しようにも「憲法9条」が障壁になってできないのです。

 

 ところで先月、護憲を標榜し自衛隊を「違憲」と主張する日本共産党についてこんなことがありました。同党の党首、志位和夫委員長が「自衛隊を活用する」と発言して保守層から「ご都合主義だ」と批判されるなど物議をかもしました。

急迫不正の事態に「自衛隊を活用する」とした共産党志位和夫委員長の発言が波紋を広げている。党綱領では「憲法9条の完全実施(自衛隊の解消)」「日米安保条約の廃棄」を目指すとしており、「ご都合主義だ」などと批判的な意見が多く聞かれる。志位氏は近く、自衛隊への見解などを記した最新の党綱領解説本を発表するが、国民の理解をえられるかどうかは不透明だ。(出典:志位氏の自衛隊「活用」発言に「ご都合主義」批判,産経ニュース電子版,2022.4.9.,https://www.sankei.com/article/20220409-4P2HLQPMUVMW7I4EUPWCPZWFE4/

 この「活用論」ですが本人が釈明しているように今に始まった話ではなく2000年の党大会で既に言及しているんですね。曰はく「憲法9条の完全実施の為に自衛隊を段階的に解消していく」とのこと。その“過渡期”に必要に迫られた場合は自衛隊を活用すると。志位さんはしきりに「9条の理想に向け、自衛隊の現実を変えよう」と主張しております。

www.jcp.or.jp

 

www.jcp.or.jp

 言うなれば「憲法9条は理想」という論理ですが、これ……結構危ない考え方なんです。例えば国会議員選挙で「一票の格差」が問題になって裁判所で「違憲状態」と判決が下されたことがあります。違憲状態は違憲の一歩手前の状態ですから、選挙結果やその後成立した法律が無効になる事はないものの、早急な是正が議論されるわけです。でも、もしここで「憲法は理想」と言ってしまったらどうなるでしょう?格差是正への切迫度がかなりマイルドなものになってしまいます。

 憲法は理想の経典でもなければ日本版毛沢東語録でもありません。日本国の国の形を決める最高法規です。これに反した法律は成立せず、行政も司法もこれを犯すことはできません。それを「理想」と言ってぼやかし、自ら「違憲」と断ずる自衛隊を使ってしまっては、安倍さんの安保法制どころじゃすまない本当の意味での「立憲主義の破壊」になってしまいます。

 さらに恐ろしいのはこの「理想」論は応用が利くということです。例えば党に都合が悪い発言をする人を処断する時、言論や表現の自由(第21条)、思想の自由(第19条)を侵すことになりますが、これも「理想だから」で解決できます。また中国の属国になった場合、同国の都合で軍事作戦に協力を求められた時も「理想だから」と言って応じることになるでしょう。外国人参政権も第15条の「国民固有の権利」に抵触しますが、これも「理想」の一言で片付きます。つまりことごとく、当代の内閣や与党の恣意的な判断でゆがめられるのです。もはや人治国家です。

 これが実際に行われているのが中華人民共和国です。同国は「党の指導性」を前面に押し出しているために、宗教の自由も、言論の自由もみんな「事実上の禁止」になってしまっているのです。それでも「党の指導性」の一言で解決できるから「合憲」であり、「中国は民主主義」ということになっているのです。

 もちろん志位さんがそんな腹積もりだと言うつもりはありません(そうでないと思いたいです)。けれどあまりに現実から離れた主張ばかりしていると、実際に権力を握った時に国家運営の為止む無くそうなる可能性もあるということです。ま、実際は中国やロシアの侵略を食らってパニックになったまま終わる気がしますが。

hatoyabu01.hatenablog.com さあ、表玄関からの憲法改正と、裏口からの憲法「理想」論。あなたはどちらを取りますか?

中印戦争(大幅に手直ししました)

※この作品は作者の独断と偏見によるシミュレーション戦記です。実際の人物、国、民族は関係ありません。

 前回はこちら

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■205×年~ 中印戦争

 南シナ海東シナ海を内海とした中国は海軍を増強しつつあるインドを封じ込めて、航路の完全なる安全を確保するためインド洋へ進出した。最新式の原子力空母を完成させた中国海軍は同艦を含める新設艦隊(南西海艦隊)をスリランカパキスタンの中国海軍基地に配属することを決定する。これにインド政府が抗議の声を上げ両海軍がインド洋で睨みあいになった。

 ブータン革命

 そんな中、インドと中国の係争地区に近接しているブータン王国の西側の住民が中国への領土の一体性を求めて反乱を起こした。反乱は首都のティンプーにまで到達し、国王が捕らえられてしまう。実は反乱を起こした「住民」は中国から不法に入植してきた漢人たちで、ブータン制圧のための秘密の訓練を受けていたのだ。同国を保護国としていたインドは中国の不当な干渉を主張。国王の解放と武装勢力の撤退を要求するが中国は「アルナーチャル・プラデーシュ地域はわが国固有の領土であり、それに隣接する周辺ブータンも我が国の潜在的領土である」と主張。国王を処刑してブータン支配を強行した。

 サイバー大戦・情報戦

 米国の覇権が失墜して以来の保有国同士の一側触発の事態に世界は固唾をのんで見守っていた。ITの発達した両国では大規模なサイバー戦争が連日にわたって繰り広げられ、世界のIT社会に深刻な打撃を与える。情報戦も活発化しており、中国がカースト制度を引き合いに出してインドの野蛮性を主張する一方、インドは中国軍に占領されたブータン王国での悲惨な状況(略奪と殺戮の嵐。かつて国民の幸福度指数が高かったことから「世界一不幸な国になった」として、チベットウイグル内モンゴル天安門、香港、台北事件、ベトナム琉球動乱同様に語り継がれる)を暴露した。
 さらにインド軍人の間で謎の感染症が拡散し、デリーを中心にインド全体に広がっていた。インド首相は中国軍の作ったウイルスだと主張するが、中国報道官は「福祉の遅れた劣悪な自国環境の責任転嫁」と反論した。世界がインド・中国国境線に注目している間、中国海軍はインドのアンダマン・ニコバル諸島攻略の準備を進めていた。

 アンダマン海ベンガル湾の戦い

 二国間の緊張が高まった末、アンダマン海中国イージス艦がインドのフリゲート艦を沈めたことをきっかけとして海戦が勃発。当初両国の戦力差は拮抗していたが、中国軍の対艦極超音速兵器によってインド海軍は甚大な被害を被る。更に中国軍は弾道ミサイル人工知能搭載型のステルス攻撃機を投入してデリーを始めとしたインドの各都市と軍事施設に爆撃した末、アンダマン・ニコバル諸島の占領を図った。
 しかしインドの用意していた多数の戦闘機対艦兵器に阻まれ、思うように攻略できず、インドのサイバー攻撃も相まって部隊の一部装備が機能停止して撤退に追い込まれる。さらにインドは衛星攻撃兵器(ASAT)によって中国の偵察衛星を破壊し、衛星誘導による精密爆撃を妨害しようとした。

 宇宙戦争・戦術核攻撃

 中国は報復としてインドの人工衛星を次々と撃墜偵察衛星はもとより通信衛星気象衛星まで標的とした。この過激な衛星攻撃の結果、一部軌道上では大量のスペースデブリが発生してしまい、第三国の衛星にも大打撃を与える。宇宙戦争は衛星の絶対数が少ないインドに不利となり、国内での情報の疎通が困難になってしまう。

 世界の情報網が混乱した隙を狙って、中国軍は戦術核によるインド軍施設の徹底破壊を実行。アンダマン・ニコバル諸島の防衛システムをも瓦解させ、これを占領することに成功する。中国の核兵器使用をインドが非難するも、それを拡散する通信手段が存在せず、なおも孤立したまま核報復するか否かを迫られる。一方、諸島を征服して事実上インド洋を手に入れた中国は、インド国内のウイルス拡散防止を口実に、インド洋で厳しい海上臨検を繰り返して国籍を問わずインドとの交易を寸断させた(インドを封じ込めて弱体化させる狙いがあった)。

 中印パ三国国境紛争

 インド政府は中国側に停戦交渉を求め、バングラデシュの首都ダッカにて実現した。しかし、会談中に中印国境線に予め控えていた中国軍西部戦区の陸軍が攻撃を開始。無数の虫型ドローンによって打撃を受けたインド軍陣営に侵攻し、破竹の勢いでアルナーチャル・プラデーシュ州を占領していく。当然交渉は破談となり戦争は継続とされたが、技術に劣るインドは失地を取り戻すことができず、交易も寸断されているため備蓄に限りがあるため防戦一方であった。
 そこに中国の準同盟国であるパキスタンが参戦してくる。中国の支援によってハイテク化されたパキスタン軍がカシミール地方に進軍し、インド軍に不意打ちをくらわす。

 デリー攻防戦

  中国の進撃はこれでは終わらなかった。インド中部の国境帯に中国軍が集結し、パキスタンの侵攻に歓呼されるように、ウッタランチャル州に侵攻を開始した。インド首相は国民に徹底抗戦を宣言し、多くの義勇兵を募った。この頃のインドは中国より多くの人口を抱えていたため、人手に事欠くことはなかったのだ。短期での決着を計画していた中パ同盟軍は徐々に失速していき、膠着状態に陥ってしまう。

 戦略核攻撃

 膠着状態を打開するため中国はインドに対し最後の攻勢に出る。インド政府に降伏を要求すると共に、インド内陸の都市を戦略核無差別攻撃し始めたのだ。インドは核報復をしようとするが、その直後ベンガル湾で大きな水柱が上がる。中国軍の数に任せた対潜哨戒部隊にインド原潜が発見され、撃沈されたのだ。辛うじて生き残ったインドサブマリナーの命を賭したSLBMが中国の都市に命中するが、中国軍はまるで意に介さずにインドを核攻撃し続けた。
 ついに打つ手なしと判断したインド首相は中国に降伏し、前線のインド兵士は武装解除された。

 米国

 バーチャル戦争によってアメリカは荒廃の一途をたどっていた。各仮想国家では大統領以下重要なポストは全て一部の人間が独占し、他の者は支配対象として監視を受けていた。不満を言えば罰せられ、他の仮想国家へ寝返ろうものなら裁判もなしに私刑に処される、恐怖政治が行われていた。
 しかしそれが突然と終わる。中印戦争によって衛星を通したインターネット回線が断絶されたのだ。メタバースシステムのプラットホームが寸断された仮想国家は一夜にして崩壊し、アメリカは恐怖の仮想政府から解放された。そこへかつてリアリズムに則ってAIに頼らないものづくりや農業を継続させてきた財団が頭角を現し、アメリカ復興の礎となる。
 しかしそれを良しとしない中国に介入され、アラスカにロシア軍を侵入させて仮想国家「アメリカ人民連盟」の再建を画策されるが、自由を求める民族を越えたアイデンティティに火を点けられた米国民が命を懸けてこれを撃退する。中印のサイバーと宇宙の激しい戦争のおかげで、ハイテク化されたロシア軍もまた弱体化していたのだ。再建したアメリカは過去の大統領強権の経験から、各州を国家へ格上げした緩い連合国家となり「北米連合」と名付けられた。
 そして多くの者が復活した民主主義の元に集い、各々が自分の武器を持ってアジアの独裁国家を討つ決意をする。

 日本

 中印開戦時、日本のメディア(というよりほぼ中国メディア)はこぞって中国政府を支持しインド政府を批判的に報じた。国内では中国を「世界の警察」と崇める風潮が高まり、中国に軍事協力することが世界の平和になると信じられていた。
 戦争の影響でインド洋への海上交通が先細りとなり、国内で品薄が続出。配給があれば我先と押しかけて乱闘騒ぎになる事がしばしばであった(この時代、行儀よく列に並ぶ“日本人”はもう存在していないのである)。
 隣国高麗から度々嫌がらせ目的の弾道ミサイル攻撃を受ける為、ほとほと困っており、宗主国の中国政府に対し核兵器共有による抑止力向上を求める。すると中国から共有の条件として「中日の一体性」と「世界開放戦線への協力」を求めてきたので、日本政府は駐留している中国軍の協力を得て、中国に軍事協力するための平和貢献隊を創設。中国籍住民に志願者を募ったが、思うように集まらないので残っていた日本籍男児徴兵対象にした(21世紀赤紙政策。日本族の別名「鬼子」から赤鬼政策とも呼ばれた)。

 中国

 地方党員から始め、国家主席を経て皇帝に就任した慣遠鋭氏が亡くなった。国中が悲しみに暮れ記念日(本来ならば中国建国100周年が祝われる予定だった)が制定され日本をはじめ中国支配下にある国々から哀悼の意が伝えられる。しかし半年後、政府は慣皇帝復活を宣言する。なんとブルーブレイン人工知能クローン技術の発展的統合によって、死者を蘇生させることに成功したのである。だがこの復活した慣皇帝は、主に生前の野心的な側面だけを受け継いでおり、「世界征服」を志向した軍事行動へより貪欲に追及することになる。
 経済は計画経済で一応の安定はしているが年々増大する軍事費にAIが度々警鐘を鳴らしていた。だが、オペレーターはこの不都合な警鐘を握りつぶし、中央政府には常に「健常」と報告していた。石油資源や核燃料資源は月面基地や極地開発によって潤っていたが、水不足は海水淡水化事業でも追い付かず日本の水源に依存するようになる。鉄不足も深刻化し鉄筋のないコンクリート建築が横行した結果、わずかな地震での倒壊事故が多発する。これに政府は一人あたりの居住空間を細かく取り決めることで強引に解決した(地域によっては一人一畳なところもあり、人民の不満が募っていった)。

 対印戦中、インド側に「神眼」を数機撃ち落とされたことを受けて中国政府は宇宙条約からの脱退を宣言、中国ロケット軍が報復としてインドの衛星を手当たり次第に破壊していく(中印宇宙戦争)。この戦いは一か月にわたり続けられ、その結果一部の軌道上がデブリで溢れて大きな被害を出す。その影響で計画されていた軌道エレベーターは中止に追い込まれた他、宇宙大国中国の象徴である「天宮」も致命的な被害を被ってしまう(ただ、通信に関しては欧米で開発されていたニュートリノによる革新的な通信技術を買収したので問題なかった)。

 なおインドで流行った謎の感染症は中国軍が開発した「改造ウイルス」であり、東南アジアにおいて実験が繰り返されていた生物兵器である。高熱にうなされた末重度の障害を残す凶悪なウイルスで、解析したインドの研究者が報告書を無料で拡散することで暴露された(サイバー攻撃はその仕返しとも言われている)。この他に特定の人種を絶滅させる「ジェノサイドウイルス」の開発もされており、チベット人ウイグル人を対象とした実験で同民族の絶滅に成功する。さらに日本人やモンゴル人、そしてアングロサクソン系用のウイルスも完成しており、実戦配備へ向けた準備が進められていた。
 なお米国の内乱を受けて北京に移設されていた国連本部は、各国代表に対する中国当局の入国制限によって西側排除が鮮明となり、中国にとって都合の悪い案件はことごとく握りつぶされていた。

 統一高麗

 アジアにおける天然ガス需要の好調と弾薬生産量の向上により好景気になるが利益は全て高麗元首とその取り巻きの懐に入るので庶民の生活は全く好転しない。欲をかいた高麗元首は日本に対し核恫喝弾道ミサイル攻撃をすることで、賠償金のお代わりを繰り返していた。同時期に政府はアラブやアフリカ諸国への核弾頭の密輸計画を実行に移し、モンゴルとも核密売へ向けた秘密裏の会合を開く。これが後の世界核戦争を引き起こす元凶となる。

 東南アジア

 戦争でインド洋上の航路が一部制限されたことが影響してどの国も深刻な経済難に陥る。そこで少しでも外貨を得るため森の木々を切り倒し大量の木材として世界各国へ輸出した。しかしこれがもとで砂漠化が進行し、後の大干ばつにて日本産の水に依存するようになる。
 イスラム原理主義の活動が活発化し中国軍へのゲリラが多発する。中国政府は大幅な人員の増加と装備投入を強いられ、対印戦と合わせて軍事費が青天井となっていた。

 インド

 対中戦争での敗北によってインドはアンダマン・ニコバル諸島アルナーチャル・プラデーシュ州アッサム地域カシミール地方全域を失う。中国軍による交易封鎖と謎の感染症も相まってインド国内の経済成長は低迷するが、むしろ同国民のナショナリズムに火をつけた。連邦軍には志願者が大勢押しかけ、復興を促進すると共に、再起へ向けた準備を着々と続けていく。
 また民間レベルでも多くの勇敢なインド人が小型船でインド洋に繰り出して密輸をしたり、東アジア新秩序管理下の船中国共産党支部を社内に設置し東シナ海及び南シナ海の通行を許された交易船の事)を襲ったりと草の根の抵抗を続けていた。彼らの行動は結果的に中国軍のインド洋支配を正当化する口実となってしまうが、強権主義に抗する象徴として後の時代で語り継がれることになる。

 オーストラリア

 政府は中国軍のインド洋支配に懸念を表明し、中国政府に同海域の自由な航行の保障を求めるが無視される。政府は同国のオセアニア進出を警戒し水面下でインドへの支援を行う他、国軍にはインド洋にて航行の自由作戦を実行させる。この時、準同盟関係にあった米国は内戦の最中だったため、できる事に限界があったのである。
 一方、国内では長年続く干ばつにより水不足が慢性化し、日本からの水資源輸入が畜産業にとって死活問題になりつつあった。また、地方行政や企業において主要ポストを手に入れた中国移民が、母国の影響力を笠に着て傍若無人に振舞ったので、国民や他の国籍住民の不評を買っていた。

 中東

 アラブ諸国は大国イランに対する抑止力と、石油需要量減少に伴う体制維持の策として、必要最小限の核保有(統一高麗から密輸)が相次ぐ。これによって体制保証を口実に軍を中東に駐留(かつて覇権国だった米国の中央軍に対抗してシルクロードと名付ける予定だった)させ、一帯一路で形成した影響力を確固たるものにするという中国の世界覇権戦略が暗礁に乗り上げてしまう。

 しかし保有は同地域に平穏をもたらさなかった。既に核保有国同士として緊張状態にあったイランやイスラエルが新参者の核保有国に度々攻撃を加え、いつ核戦争が起こってもおかしくない状況になっていく。彼らにとっては異教でも異端でも、新たに核保有国が現れること自体が脅威だったのだ。

 モンゴル

 政府は長年中国と良好関係にあったが、同国の覇権主義に警戒感を抱き始め、北朝鮮時代から交流のある統一高麗に特使を送り、核密売へ向けた会合を開き、取引を成立させていた。これが皮肉にも中国を刺激する結果をもたらす。

 

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ハトヤブのシミュレーション戦記

 

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(2019/9/9,10/2 本文一部加筆修正、12/3 リンク添付)

(2020/1/11 本文中一部修正、7/10 リンク追加、7/26 ブータン王国についての記述を追加、8/9 リンクを追加)(9/13 皇室に関する記述を変更)(9/25 中印海戦の舞台をアラビア海からベンガル湾へ変更)(2021/5/8 ウイルス兵器に関する記述を追加)(2022/4/3 シナリオと背景描写を大幅に手直し)

ウクライナ戦争終結シナリオ最終版(フィクションです)

 皆さんこんにちは、21世紀最大の侵略戦争であるロシアのウクライナ戦争が今なお続いております。情け容赦のない帝国主義のロシアに対してウクライナは屈することなく戦い続けています。彼らを見ていると勇気をもらいますね。かつて米国と戦っていた我々もこんな感じだったのかと懐かしささえ感じます。今日では「なぜもっと早く降参しなかったのか」と叩かれる戦前日本ですが、それは占領統治したのが領土的野心の低いカーボーイ(米国)だったからで、中国やソ連(当時のロシア)だったら同じ台詞は言えないでしょう。彼らが沖縄返還のように領土を還すことはありません。

 何事にも終わりがあるようにこの戦争にも終わりがあります。そのシナリオについて様々な考えや情報が錯綜している状況ですが、素人的立場ながら私もいろいろ考えている所存であります。何故ならこの戦争が後の中国の台湾侵攻日本有事につながる大きなうねりを起こすからです。

 フィンランド化を解決策として語る無知

 まずウクライナの今後について戦争開始前から「フィンランド」という言葉が出まわっていました。曰くNATOには入らず、クリミアやドネツク、ルガンスクを諦め、ロシアの影響下で独立を維持するというものです。このことについてはっきり言わなければならないことがあります

 まず言葉そのものがフィンランドの人達に対して失礼だということ。かつて中曽根さんが「日本が防衛努力を怠るとフィンランドのようになる」と発言して同国の抗議を受けています。またこの言葉を単に「強い大国に卑屈にひれ伏す弱小国」の意で使うのは、過去の経緯を知らない愚論でしかないということです。

 1938年当時のロシアであるソ連フィンランドに非公式の交渉を持ち掛けます。曰くレニングラード湾の4つの島嶼を割譲せよと。理由はソ連第二の都市レニングラードフィンランド国境が近かったためです。今のプーチンの「NATO不拡大」と発想は同じです。

 当然フィンランド側は応じなかったわけですが、翌年1939年10月にはさらに要求を吊り上げてきます。要求の中にはフィンランドが対ソ連防衛線として構築しているマンネルハイム線防御の撤去も含まれており、交渉は決裂しました。

 翌月の11月30日、ソ連フィンランドに全面侵攻を開始します。冬戦争です。侵略に先立ってソ連兵13人が死傷するマイニラ砲撃事件が起きます。これはフィンランドの攻撃に見せかけたソ連偽旗作戦であることがわかっており、今のウクライナ戦争の発端としてロシアが主張する「ドネツク・ルガンスクに対するウクライナ軍の攻撃」に通ずるものです。

 戦力はソ連が圧倒しており、25万のフィンランド軍に対して47万の兵力を投じていました。ソ連フィンランド全土を占領する気満々で、開戦序盤で占領した町にソ連に亡命したフィンランド人をトップに据えたフィンランド民主共和国を建てて「これが正統なフィンランドだ」と宣言します。

 しかしその後の戦闘はロシアの独裁者スターリンが期待するようには進みませんでした。彼は攻撃を仕掛ければフィンランドはすぐに降伏するだろうと考えていたのです。武力侵攻と合わせて敢行されたヘルシンキへの空爆では人民に蜂起を促すビラを撒いていました(これもまた「二日でキエフを堕とせる」と判断し勝利記事まで書かせたプーチンに通ずるものがあります)。しかしフィンランド軍の抵抗はすさまじく、十分な兵站を確保していなかったソ連軍は大きな被害をこうむります(これも同じですね)。

 けれどスターリンは諦めず、司令官を取り換えて、大量の装備を整えて再び猛攻を仕掛けます。これにはさすがのフィンランド軍も耐え切れず、マンネルハイム線の突破を許してしまいます。その後ソ連側の提案で停戦交渉が進められ、フィンランドは国土の10%を失う過酷な条件をのむことになりました。

 その後フィンランドソ連と対抗するために当時ナチス政権だったドイツに接近し、枢軸国側として戦うことになりました。フィンランドでは冬戦争の続きとして継承戦争と呼んでいます。その結果は「枢軸国」ということからもわかるように、フィンランドは敗戦国になるわけですが、この戦争においてもソ連軍に大きな被害を出します。その結果スターリンフィンランド支配の興味を失い攻勢を断念。フィンランド独力で戦後処理を行い、表向きは東側の親露政権として、メディアの自主規制などを行いました。これが所謂「フィンランド化」と呼ばれる状態で、1991年のソ連崩壊まで続きました。

 これを今のウクライナに当てはめてみれば、確かに類似点は多くあります。と言っても有事前に「フィンランド化」を提唱した人は、まさかロシアの全面侵攻を受けろとまで言ったつもりなかったでしょう。フィンランドの人からしても多くのソ連兵士を殺したにも拘らず、領土を失い、ロシアの影響下に置かれたことはかなりの屈辱だったはずです。実際、ソ連崩壊後は堰を切ったように欧米へ接近し、欧州連合EU)に加盟しております。そうした経緯を鑑みずにフィンランドがとった政策を大国との戦争を避ける小国の処世術のように語るのは浅学というものです。

 また仮にゼレンスキー政権がクリミアやドネツク、ルガンスク、加えてロシア軍が武力制圧した地域を放棄するという苦渋の決断をしたとしても、プーチンキエフを諦める決断をしなければ休戦は成立しません。というのも冷戦時のフィンランドと異なり、ウクライナNATOの一員であるポーランドと国境を接しているため地政学的に孤立しておらず、ワルシャワ条約機構と言ったロシアを中心とした大きな組織もありません(あるのはユーラシア経済連合というロシアと数国の小さな共同体です)。現在ゼレンスキー政権は欧州連合EU)への加入を申請しており、それが通れば一見中立のように見えながらも実際は欧州の一員という、“”のフィンランドスウェーデンのような立ち位置になれるのです。しかし、それは「キエフはロシア発祥の地」と論文で書くプーチンには到底受け入れられないでしょう。

 危険な甘いトリックスターにご用心

 ウクライナの「非軍事化(無条件降伏)」と「非ナチ化(非欧米化のための占領統治)」という要求が降ろされない以上、停戦合意は成立しません。つまり

  1. ロシア軍がウクライナの全てを焦土にする
  2. ゼレンスキー大統領が無条件降伏する
  3. ロシア経済が完全に崩壊してプーチン政権が倒れる

のいずれかとなります。3にならない為にプーチンは国境に控えていたすべての兵を投入し、何が何でもキエフを包囲して、ゼレンスキーさんに降伏を迫るつもりです。必要なら核の使用も辞さないでしょう。如何に国の為に戦う指導者でも、いえ、国のために戦う指導者だからこそ1の事態は受け入れられません。これは人民の命をないがしろにできる独裁国家が民主国家に対して唯一持てる優位性(人道的非対称性)です。これがまかり通った瞬間、世界は混沌の時代に突入します。

 ここで破局的な結末を回避するかもしれないシナリオが一つ存在します。それはある国の介入です。前の記事で「三者が折版案を模索しようとしても無駄」と書きました。それに変わりはありません。独仏首脳がいくら語り掛けても馬耳東風ですし、トルコが仲介した外相対談も進展なしです。安倍さんがモスクワへ飛んでも無駄でしょう。

 ですがもしプーチンウクライナ征服を一時断念する決断をした場合、ある人物に頼るでしょう。中国の独裁者、習近平です。

 今メディアでは習近平プーチンに出し抜かれたとか、立ち位置に戸惑っていると報じられていますが、事前にウクライナ侵略計画は聞いていると思います。何故なら、戦争は北京五輪が終わった直後、7日の間も置かずに始められたのですから。「平和の祭典」として掲げられる五輪の期間とその前後は「戦闘を行ってはいけない」として国連で加盟国が共同提案し無投票で休戦決議を採択しております。その共同提案に今回は日米豪印が中国の人権問題を理由に参加してないものの、ロシアは参加しているわけです。もし本当に寝耳に水なら習近平のメンツに関わるので烈火のごとく怒るはずです。しかし事前に聞かされていたなら話は別です。そしてもしもの時の仲介役として“第三者”の立ち位置を求められていたとしたら、非難決議の棄権も不思議ではありません。

 中国がウクライナとロシアに提示する仲介案として以下のものと予想します。

  1. クリミア半島アゾフ海沿岸地域のロシア主権の承認とドネツク・ルガンスク両人民共和国の独立承認
  2. 今後50年間のNATO及びEU加入政策の凍結、NATO軍および米軍の通過・駐留の禁止
  3. 前項1を除くウクライナ国土からのロシア軍の撤収
  4. 中国がウクライナの安全を保障する

 1はロシアへの領土割譲です。ウクライナにとっては過酷な条件です。2はプーチンが侵略の理由として掲げていた「中立化」です。3がウクライナ側が求めるロシア軍の撤退。ここに「非軍事化」と「非ナチ化」は含まれていません。

 ここで4が肝となってきます。これは中国によるウクライナの安全保障協力であり、具体的に言えばウクライナへの中国軍の駐留です。これがプーチンが妥協するキーポイントになります。

 プーチンが恐れているのはウクライナの欧米化、非ロシア化です。故に同国をロシアの影響下に置きたかったわけですが、中国の影響下に置いてしまえば欧米化は防げます。中国はロシアの事実上の同盟国であり、中国軍とロシア軍の連携も進んでおります。また中国の一帯一路はロシアを中心とするユーラシア経済連合とも連携しているので、ウクライナの中国依存が高まれば、中国を通してロシアとの一体性も実現できるでしょう。

 さらに今は西側のヒーロー的存在になっているゼレンスキーさんですが、中国との関係が深まれば、例えばウイグルの人権問題や香港問題について中国側に立った発言をするようになるでしょう。そうなると今までの熱が嘘のように冷め、世界の孤児になりかかっているロシアの国際的地位も回復するという寸法です。そしてウクライナへの関心が薄くなった隙に、キエフで政変を起こして親露政権を樹立する。かくしてプーチンの願いは実現したのであった……という筋書きです。

 さらにこれには続きがあります。中国の介入によって欧州の危機を脱したことにバイデン政権と欧州首脳陣はいたく感謝。中国の人道問題は譲らないが、台湾の東沙諸島や日本の尖閣諸島への侵攻程度は許容する……なんてことになりかねません。

 私のシナリオが外れることを望みます。

 

[補足]平和憲法ウクライナには外国軍の駐留はない

 無知なのは私も同じで、何とウクライナ憲法には「外国軍の非駐留」があります。つまり私のシナリオは100%外れるフィクションだということがわかりました(嬉しい)。

На території України не допускається розташування іноземних військових баз.
ウクライナの領土では、外国の軍事基地の設置を許可されていません。)
──ウクライナ最高議会HP(https://zakon.rada.gov.ua/cgi-bin/laws/main.cgi?nreg=254%EA%2F96-%E2%F0#Text)より第17条の一部を抜粋

 同時にこれは「ウクライナNATOに加盟すると、ロシアを狙う核ミサイルが配備される」というロシア擁護派の論理を粉砕する物でもあります。ロシア擁護派が観念論に陥って右翼化する日も近いです(というか既に右翼と言えますね私的には)。

 

 最後にウクライナの方々の御健闘を祈りつつ、此度の戦争で亡くなったウクライナの民間人とウクライナとロシア双方の兵士達のご冥福をお祈り申し上げます。我ら日本国民はウクライナと共にあります。

 

 混沌化する世界に取り残された日本と世界の未来(ちょっとロシアがおとなしすぎるシナリオです)。

hatoyabu01.hatenablog.com

混沌化する世界で食い荒らされる日本と世界の未来(ロシアをアグレッシブにした手直し版。かなりエグイ内容です)※現在制作途中

hatoyabu01.hatenablog.com

(2022/3/30 本文一部修正、5/19 補足追加)

韓国の渡ったルビコン川に帰還路はない

 皆さんこんにちは、ウクライナ戦争は膠着状態でありますが、ウクライナは諦めず、ロシアも諦めない状況が続いています。敗戦史観の我が国においては「早く降伏しろ」とか「攻撃を止めろ」という感情しかないでしょうが、互いに譲れるものがないという状況で戦争は続くものです。いいか悪いかでなく、これが人の集まりし共同体である「」なのですね。それぞれに異なる「平和の形」があり、それが合わないから「戦い」が生まれる。この場合「ウクライナの完全独立」がウクライナの平和、「ロシア帝国ウクライナ全土を含む)の完全復活」がロシアの平和という不一致が生じています。故に簡単に折半できぬというわけです。だた物理的に戦闘が不可能になれば話は別ですが、それは後ほどの記事で。

 今回は韓国大統領選の結果についてです。と言っても私はほとんど関心がなかったので、詳しい内容は他のメディアやブロガーさんに頼みます。本記事ではシンプルに一点だけの予測をあげるとします。

 日韓改善の兆しだって?

 今回当選したのは尹錫悦候補で反文在寅の中心的人物です。彼の元には保守派と中道派が結集し、与党である左派「共に民主党」を圧倒する勢いである事が報じられていました。前の記事で韓国でさえ「青瓦台の中国寄りを正すべき」といった主張が出たという話を書きましたが、それを言ったのがこの人です。

国保守系野党「国民の力」の大統領候補、尹錫悦(ユン・ソクヨル)前検察総長は12日、ソウル市で外国メディアと会見し、北朝鮮の脅威に対応するため日米韓3カ国の安全保障協力を強めるべきだとの認識を示した。悪化した日韓関係の改善に向け「歴史問題と経済、安保協力を網羅した包括的解決を模索する」と述べた。(出典:日米韓で「安保協力を強化」 韓国大統領選の野党候補,日本経済新聞電子版,2021.11.12.,

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM129PO0S1A111C2000000/

 至極まっとうな主張で、彼が当選したことにより「ああ、これで日韓関係は改善するんだ」という主張がこれから出てくるでしょう。

 結論から言いましょう。違います!日韓関係は改善するどころか、より複雑化し場合によっては悪化する可能性さえあるでしょう。

 尹新大統領で日韓関係が改善しない三大理由

 これは別に嫌韓とかそういうのはないです。むしろ私は元来韓国には無関心であり、彼らの反日言動も「民族の自尊心」よるものと理解しており、それを全否定する立場でもありません。彼らには彼らの歩む「」があり、その先が我が国との「敵対」であったなら、別に構わないと思っております。何せ彼らは「独立国」ですから。

 逆に何かと我が国に粘着してくるのが鬱陶しいと感じてますし、それに対して同じように粘着している嫌韓日本人も、姑息に懐柔しようとする親韓日本人にも呆れております。日本と朝鮮半島の歴史を見ればわかりますが、交流が盛んな時期もあれば絶っていた時期もあるんですね。だからどういう関係が「正しい」かなんてものはなく、潮時だとみてこのまま冷却した関係が続いた方が双方の為だと思うんですね。コリアンのアイデンティティは非常に強固なので、中国の属国になったところで滅ぶことはありません。歴史が証明しています。

 私見はともかく、なぜ新大統領でも韓国と日本の関係がよくならないのかと言うと、大きく三つの理由があるからです。それは

  1. 保守政治家ではない
  2. 反日に左右無し
  3. 安保を歴史問題の取引に

 という事情があるからです。順を追って解説していきましょう。

 保守政治家ではない

 まず、尹氏ですが前は検事総長でした。それも文在寅氏の指名を受けた。そう、弾劾された朴槿恵元大統領を裁いた当事者です。それが紆余曲折あって文氏と対立し、反文在寅の中心的人物となりました。韓国大統領制は一期五年の再選無しなので、任期中は親族の利益誘導など滅茶苦茶やってしまうわけです。それで退任後本人や親族が逮捕される例が後を絶たず、「事実上の王朝交代」と言われているほど。だから尹氏が大統領に就任した暁は文氏とその取り巻きたちは窮地に陥ります。中国辺りに「亡命」する可能性もありますね。

 そんな経緯があるので彼は政治家じゃない故にその手腕は未知数となっています(もっともこれは大統領制の強みであり、米国のトランプさんやウクライナのゼレンスキーさんのように異業種出身が活躍することは珍しくないです)。文氏に対抗する過程で「保守」となったわけで、今主張したことが全て実現されるとは考えない方がいいです。そもそも韓国が米国から離れて中国に接近しだしたのは保守派と言われた朴槿恵時代からなので、いわんや新政権で変わる保証はどこにもないのです。

2015年 リッパート駐韓大使襲撃事件
(同年) アジアインフラ投資銀行参加
2016年 南シナ海判決に対し米国と歩調を合わせず
2017年 一帯一路サミット参加
(同年) 環境影響評価を理由にTHAAD配備を遅延
(同年) THAAD追加配備拒否を含む「3NO」を宣言
(同年) 米韓国防相の共同声明を一部否認した中韓合意文を発表
(同年) 米韓首脳会談の翌日、共同発表文の一部を否認・削除
2018年 平昌五輪に乗じて南北親善を演出
(同年) 圧力姿勢の米国を出し抜いて南北首脳会談

ルビコン川の対岸で足踏みする文政権 - 未来に予想される戦争と敗戦
 反日に左右無し

 尹氏に限らず韓国では保守も左翼同様に反日です。というより反日している自覚がありません。韓国の人に「反日を止めろ!」と言っても「反日なんてしてないよ?」と返されます。彼らの中では「悪魔国家日本」は世界の常識であり、断罪したり諭して見せたり、ついには命令したりするのが「普通の事」なのです。

 そして政治の世界において親日汚職や犯罪と同じくらいにスキャンダラスなカテゴリーであり、主に左翼が保守を攻撃する常套句が「親日疑惑」です。これは1930年代のドイツの「ユダヤ疑惑」に近いレベルと言えるでしょう。親日と見なされると社会的に滅されます。

 尹氏は慰安婦問題について強硬になる兆候を紹介します。韓国のことについて日夜詳しく情報発信して下さっているシンシアリーさんのブログによれば、尹氏は元慰安婦(と言われている)イ・ヨンス氏と会って「日本から必ず謝罪を引き出して見せる」と誓ったそうです。

sincereleeblog.com そんな彼が2015年の日韓合意での「最終活不可逆的な合意」を守れるはずがありません。文氏同様に謝罪と賠償を求めてきます。それも日本の過去の談話の「謝罪」では物足りないというわけですから、韓国国会議長をしていた文喜相氏のように「天皇の謝罪要求」もあり得るわけです。そうなると如何に譲歩大好きな日本の親韓政治家でも受け入れられないでしょう。民主党政権の時でさえそうだったのですから。

 安保を歴史問題の取引に

 さらに厄介なのは尹氏が昨年の6月末の出馬表明の際、こんなことを言っているからです。

尹氏は「慰安婦や徴用工の問題、安保協力や経済の懸案をすべて一つのテーブルにのせ、グランドバーゲンするアプローチが必要だ」と語った。グランドバーゲンとは過去の対北朝鮮交渉で使った一括妥結方式を意味する表現だ。日韓の外交・国防担当閣僚会議(2プラス2)の開催も提案した。(出典:韓国大統領選、「反文在寅」の最有力候補が出馬表明,日本経済新聞電子版,2021.6.29.,

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM283TF0Y1A620C2000000/

 慰安婦どころか所謂徴用工の問題まで安保と経済のテーブルに挙げてアプローチするというのです。要は安保協力と引き換えに歴史問題で譲歩を引き出す狙いが見え見えです。経済についてはホワイト国指定復帰も含まれるでしょうし、そもそも日韓請求権協定に反した所謂徴用工の件も持ち出すあたりに暗雲が垣間見れます。

 尹氏の当選に関しては経済関係に詳しいブロガーの新宿会計士さんも注目しており、必ずしも日韓関係改善にはならないと警戒感を表しております。

shinjukuacc.com

 なお新宿会計士さんは日韓問題について「落としどころ」をわかりやすく提示していらしてまして、それが以下の三つです。

  1. 韓国が国際法に照らし、自力で解決する
  2. 日本が韓国に譲歩する
  3. 日韓関係が行き詰まる

(ブログ「新宿会計士」さんhttps://shinjukuacc.com/より引用)

 1が国際儀礼上正常ですが、韓国がそれをやらないのは誰もが知るところです。問題は2ですが、私はこれは「落としどころ」ではないと考えます。これは感情論ではなく、行き着く先を考えた結果です。

 これまでの日韓問題は韓国側が問題を提示し、日本が譲歩するというのが繰り返されています。ただ繰り返すだけならいいのですが、今回は所謂徴用工と言ったものが含まれています。これは1965年に締結された「財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定(通称 日韓請求権協定)」で解決済みとしたはずのものであり、これを譲ってしまうとなると協定は事実上空文化し、日韓併合時代(韓国側からすれば植民地時代)のもろもろについても賠償要求ができると彼らは判断します。よしんばそれに全て応じたとしても、ついには独島(韓国が勝手に読んで不法占拠している島根県竹島)の放棄や、長崎県対馬の割譲さえ要求するほどにエスカレートするでしょう。そうなると如何に日本に売国政権が立っていたとしても譲れず、最悪日韓版のフォークランド紛争に発展する可能性があります。

 つまり全て韓国側に対立を解消する気がない限り「落としどころ」はありません。冒頭のロシアとウクライナと同じです。日本をトコトンやり込めてあわよくば隷属させたい韓国の「平和」と、1965年に結んだ協定といくつかの妥協で手落ちにしたい日本の「平和」が一致してないのです。これからも一致することはないでしょう。

 

 韓国が渡ったルビコン川には帰還するための橋はありません。無理に戻そうとすればまた将来にいらぬ禍根を残すことになるでしょう。安易な妥協には反対です。

プーチンは世界を混沌にしてでもウクライナを占領統治したい

 皆さんこんにちわ、今北京パラリンピックの真っ最中ですね……そうです、世間の関心はそっちではありません、ウクライナ戦争です。クリミアの時もそうでしたが、ロシアはつくづく約束を守らない国ですね。オリンピック・パラリンピックとその前後7日間の戦争自粛を求めた「休戦宣言」をこうも堂々と踏みにじられては「平和の祭典」ならぬ「血の祭典」と後世で評されるでしょう。最悪、今回が最後の五輪になってしまうかもしれません。

 プーチンが踏み抜いた二つのタブー

 今回の戦争で明確にプーチンのロシアが侵してしまったタブーがあります。第二次世界大戦以来の「侵略戦争」をしてしまったことです。これは明確な国際条約違反であり、世界秩序への挑戦です。

 厳密に言えば「侵略」そのものは第二次世界大戦後にも行われています。中国共産党によるチベット侵攻東トルキスタン侵攻、北朝鮮による韓国侵略、北ベトナムによる南ベトナム征服、ソ連による軍事介入、アメリカのパナマ侵攻、イスラエルレバノン侵攻、イラククウェート侵攻などなど。でもそれらはいずれも新興国の増長だったり、冷戦当時におけるイデオロギー戦争や政変をかけた戦争だったりします。そして大国の場合は「侵略」と形容されないように気を使っていました。

 しかし今回は国際社会でそれなりの地位のある大国が、「侵略」以外形容しようがない拡張戦争を堂々とやらかし、しかもそれをだれも止められないのは第二次世界大戦後の世界で初めての出来事でしょう。勿論ロシア側の言い分としてはドネツク・ルガンスクの独立した二つの国(自称)を守るためと主張していますが、クリミア侵略以来、同地域にロシア軍が入っていることは周知の事実であり、ロシアの言い訳を信じる者は、世界中探しても何処にもいません(ロシアプロパガンダに洗脳されているロシア国民と親露日本人くらいです)。

 当初プーチンが主張していた「NATO不拡大」論はバルト三国が既にNATOに加盟していることや、ジョージアのようにウクライナが加入できる見込みが薄い事、未加入であってもスウェーデンフィンランドのように欧米と連携できることから「侵略」の口実に過ぎないと過去記事で論破しています。

 

hatoyabu01.hatenablog.com

 何より戦争に先立ってプーチン自身が「キエフはロシア発祥の地」とか「ウクライナはロシアが作った」とか「ロシアとウクライナの一体性」と堂々と論文なり演説なりで主張している時点で「侵略」を堂々と宣言してしまったようなものです。プーチンの主張は言うなれば、台湾統一を掲げる習近平と一緒です。

 核のパンドラボックスを開けたプーチン

 戦争も問題ですが、もっと深刻なのが「侵略時における核恫喝」です。2月24日プーチンは国際社会に向けて邪魔するものは「歴史上で類を見ないほど大きな結果に直面するだろう」と主張しました。

 ロシアのプーチン大統領はモスクワ時間の24日早朝、「住民を保護するため」との理由でウクライナ東部における特殊な軍事作戦の遂行を決断したと発表。テレビ演説で「外部からの邪魔を試みようとする者は誰であれ、そうすれば歴史上で類を見ないほど大きな結果に直面するだろう」と語り、核兵器の使用も辞さない構えを再び示唆した。 (出典:プーチン大統領核兵器の行使を再び示唆「邪魔する者は歴史上で類を見ないほど大きな結果に直面するだろう」,中日スポーツ電子版,2022.2.24.,https://www.chunichi.co.jp/article/424053

 これは人類史上最も深刻な事態で、今まで核兵器は自衛のための「切り札」として、己の国家が危機的状態でなければ基本使えないという暗黙の了解となっていました。ソ連にしろ中国にしろ表向きには「核報復」を原則とした核戦略を取っていたのです(ただここ最近はロシアも中国も「核の先制不使用」を実質撤廃する方針転換を行いました)。

 それをプーチンはとうとう「邪魔する奴は核攻撃だ」と堂々と脅すようになったのです。実は似たようなことが過去にありました。17年前、中国の人民解軍人にして国防大学の教授であった朱 成虎少将は香港駐在の国際メディアに対して「米国が台湾海峡での武力紛争に介入した場合、中国政府は核兵器の使用を辞さない」と発言して物議をかもしました。米下院は中国政府に対し発言の撤回と同少将の免職を求める決議を出しました。当人は「個人の見解」と述べておりますが、言論の自由のないかの国において、個人が勝手に他国へケンカを売る発言が許されるはずもなく(言論の自由があっても問題になりますが)中国政府の脅迫戦略であると見なされています。

 プーチンは元首の立場で堂々とこれをやったわけで、核戦力を武器にした世界に対する脅迫以外の何物でもないでしょう。加えて言えばその手の恫喝は北朝鮮の独裁者が度々していることであり、2月24日を以てロシアは「極北の北朝鮮」と化したと言えます。丁度、国際社会から厳しい制裁下に曝されていますし、その内ロシア国民も北朝鮮国民と同じ生活になるかもしれません。しかし、堕ちても腐っても常任理事国がこんなことをやってしまっては、今後似たような暴挙に出る国や指導者が続々と現れる危険性があります(次にやらかす国は十中八九中国です)。プーチンは開けてはいけない箱の扉を開けました。

 原発攻撃、民間人攻撃

 恫喝だけでも問題なのにロシアは更なる暴挙に出ました。ウクライナ原発を攻撃し、軍事制圧したのです。

 ロシアのウクライナ侵攻で、ロシア軍は4日未明(日本時間同日午前)、欧州最大のウクライナ南部ザポロジエ原発を攻撃し、制圧した。戦闘により原発施設の一部で火災が発生した。ウクライナ当局は周辺の放射線量に異常はなく、原発の安全性にも問題はないとしているが、稼働中の原発への攻撃という異例の事態に国際社会の懸念が強まった。(出典:露軍、ウクライナ南部の原発制圧,産経ニュース電子版,2022.3.5.,https://www.sankei.com/article/20220305-ZRVHBZ4BQVMWTNDTV3DRRGYWKQ/

 これにも当然国際社会の非難が浴びせられますが、ロシアはすました顔です。当初安保理で非難された時は「西側の嘘」などと言い、その後は開き直ったプーチンが「ウクライナが核保有しようとしている」などと言い始めています。ここまでくるとプロパガンダにもならない妄想です。原発運用国は我が国も含めIAEAの監視下にあり、変な動きをすればたちどころに制裁を浴びます。そのIAEAロシア非難決議を出しているのですから、誰も弁護する人はいません。

 目的はシンプルにウクライナの電力インフラを掌握することにあるのでしょうが、やり方がやり方だけに原子炉に爆発物を付けてドン★なんてするんじゃないかと誰もが思います。間違いなくその恐怖心を煽ってウクライナに降伏を促す魂胆でしょう。もはやこれは「戦術」ではなく「戦略」攻撃です。

 またロシア軍は民間人への攻撃も無差別に行っており、その写真や映像が世界中に出回っています。まるで「侵略している様子」を見せびらかしているようであり、21世紀の今日までやっと人類が築き上げた「人としての尊厳」を土足で踏み散らす行為です。国際刑事裁判所ICC)は3日からロシア軍の戦争犯罪の捜査を開始しており、7日にはその報告書が出たそうです。

米国のアントニー・ブリンケン(Antony Blinken)国務長官は6日、ロシアのウクライナ侵攻をめぐり、民間人を標的にした攻撃などロシア側が戦争犯罪を実行していることを示す「信頼度の高い報告書」を確認したと明らかにした。
 ブリンケン氏は、訪問中のモルドバから米CNNのトーク番組「ステート・オブ・ザ・ユニオン(State of the Union)」に出演。「(ロシア軍が)民間人を意図的に攻撃していることを示す信頼度の高い報告書を確認した。戦争犯罪に該当するものだ」と述べた。(出典:ロシアの戦争犯罪、「信頼できる」報告書確認 米国務長官,AFPBBNews,2022.3.7.,https://www.afpbb.com/articles/-/3393636

 もはやこれでロシアのウクライナ侵略戦争を正当化する余地は消えました。プーチンが頼れるのはただ一つ、6375発の核爆弾だけです。

 プーチンは狂ったのか?

 現在多くの識者やブロガーたちが「どうしてプーチンはこんな挙に出たのか」について頭を悩まし、ウクライナ戦争の落としどころなどを考察しています。当初は「ロシア側にも言い分はある」と言っていた人達も、ロシアの暴虐には閉口ししているようで、米国や英国の政治家に至っては大真面目に「プーチンは気が狂った」と考え始めています。

 もし本当にプーチンの気がふれたなら、話は簡単です。ウクライナ戦争はプーチン政権の崩壊で決着します。古今東西、どんな国の民族でも狂人についていきたい国民は居ません。最終的に誰も彼の言うことを聞かなくなり、引きずりおろされます。

 しかし、現実としていかに多くの損害を出しているとは言え、ロシア兵たちの士気が下がっているとは言え、攻撃は継続されており、止める気配がありません。国際社会でいくら非難を浴びようが、それまで中立を掲げていたスイスやスウェーデンフィンランドまでがウクライナ支援に動こうが俄然せずです。政府関係者は皆プーチン同調した発言をしていますし、そもそも侵略の発端となるドネツク・ルガンスクの独立承認を下院が要請しています。つまりプーチン独りの独断行動ではないということです。

 私はロシアのことを良く知りません。故にこれは推測ですが、プーチンが論文で主張していた「キエフはロシア発祥の地」とか「ウクライナはロシアが作った」といった主張を、教育等を通してすべてのロシア国民が意識しているとしたらどうでしょう?ウクライナを手に入れる為、どんな手段を使っても構わないという考えがまかり通っても不思議はありません。丁度お隣の韓国が「反日なら何をやってもいい」と無体なことを繰り返すのに似ています。勿論「やりすぎだ」という意識から反戦デモに参加する人々もいるでしょうが、国全体が韓国同様「ウクライナ」に染まれば、誰も止める人は居なくなるでしょう。

 多くの方はなぜ今ロシアが豹変したのか驚いている人が多いと思いますが、それは「猫を被っていた」の一言で説明がつくでしょう。前の記事で触れたようにロシアが冒険に出たのはソ連崩壊以降、経済と軍事で(ウクライナよりは)力を付けたから、アメリカが「戦わざるカーボーイ」になったからにほかなりません。プーチンや彼を支持する多くのロシア人にとって「人としての尊厳」よりも「民族の自尊心」が優先されるのです。

 これからどうなるか?

 これからどうなるかですが、これはシンプルに「ウクライナの無条件降伏」か「ロシア軍の無条件撤退」のどちらかしかありません。つまり圧倒的な物量と核戦力でロシアがウクライナを伸してしまうのか、国際社会の圧力に屈してロシアが手を引くのかのいずれかのシナリオを辿ることになります。第三者が折版案を模索しようとしても無駄です。ウクライナがクリミアや東部の領土のことで妥協することはあっても、ロシアが妥協しない限り戦争は続きます

 その証拠にプーチンはフランスのマクロン大統領との電話会談で、ウクライナとの和平の条件としてウクライナの「非軍事化」「非ナチ化」「中立化」の三つをあげています。困ったことにこれらの要求の意味を分かっていない方が日本には特に多く、ウクライナからいらしている当事者相手に「抵抗するべきでない」と宣う始末。なんというか、日本のピエール・ラヴァルは結構いるんですね。

 まずプーチンの要求しているウクライナの「非軍事化」は武装解除のことであり、はっきり申せば「無条件降伏」です。こう聞くと思い浮かぶのが第二次世界大戦で負けた我が国に米国を中心とした連合国が要求したものですね。即ちすべてのウクライナ国民が武器を捨てて抵抗を止めるという意味であり、まさかそれで終わるわけはなく、武装解除を確約するために武器を持ったロシア兵の監視下に置かれることになります。つまりまんま「占領」です。

 戦争が起こっても「占領」はないだろうと思っている識者が多いようですが、「非軍事化」は即ちそういう意味であることを理解するべきです。

 次に「非ナチ化」ですが、識者たちは現ウクライナ政権であるゼレンスキーさんの退陣と考えているのが殆どです。もちろんゼレンスキーさんを狙っているのは間違いないですが、それを「ナチス」なぞらえている点に恐ろしい目的が隠されています(そもそもユダヤであるゼレンスキーさんを「ナチス」呼ばわりすることに無理がありますが)。

 第二次世界大戦後のドイツは日本同様敗戦国として「非ナチ化」の為に「占領」され、主権を失っています。そしてナチスに協力した人間への断罪が行われました。

 これをウクライナで再現するとなったら?実際ゼレンスキーはナチスではないので「反欧米化」もしくは「ウクライナ」を進めることになります。それは大統領のみならず、反ロシア的活動をしていた一般人に至るまで、身柄を拘束することを意味します。その証拠に侵略に先立つ時に「殺害リスト」をロシア側が用意しているとの情報をバイデン政権は掴んでいました。

緊迫するウクライナ情勢をめぐり、バイデン米政権が国連に対し、ロシアがウクライナを侵攻・占領した場合に殺害もしくは強制収容所送りにするウクライナ人らのリストを作成していると警告する書簡を送ったことが明らかになった。21日付の米紙ワシントン・ポストなどが報じ、バイデン政権高官が同日確認した。(出典:露、ウクライナ侵攻後の「殺害・収容リスト」作成か 米が国連に警告,産経ニュース電子版,2022.2.22.,https://www.sankei.com/article/20220222-FUVX54JORRMEFMHYXLVJMHNGCI/

 こんな粛清、ヤヌコビッチが戻ってきたところですぐ実践できるわけありません。ロシアに「占領統治」してもらう必要があります。当然警察権も司法権もあったものではなく、ウクライナの主権は事実上はく奪されるということです。

 最後に「中立化」ですが、これは冷戦時代の我が国において反米を掲げる人が良く使う常套句で、その本質は「離米」です。先の要求通りに従えばウクライナ武装解除されて「非ナチ化」されなければなりませんので、スイスのような武装中立にはなりません。かといってまさか国連の平和維持軍を受け入れるはずもなく、中立とは名ばかりの「ロシア化」になるでしょう。それがわかっているからウクライナ側は受け入れられないのです。

 逆にロシア側からすればプーチンとその支持者の世界観的にとっても、壊すだけ壊して撤退とはいかないでしょう。おまけに二日間で終わるはずが、ウクライナの予想以上の抵抗に苦戦し、たくさんの犠牲と多大な軍事リソースを費やしているのです。最低限一年以上のウクライナ占領、可能ならば「併合」も視野に入れていれもおかしくはありません。既に世界から最大限の非難を浴びていますから「毒を食らわば皿まで」な状況です。

 何でもありな世界へ

 国際法を堂々と破り、国際社会の目を無視し、核兵器を周囲に突き付けて侵略戦争に勤しむ姿は愚かしいながらも「清々しく」も感じられます。かつて我が国が国際連盟から脱退した時もこんな感じだったのでしょうか?あれによって国連は瓦解し、世界は混沌と化しました。現在もロシアの拒否権によって国連は「脳死状態」となり、木偶の坊となっております。

 国際法が守られ無くなれば好き勝手に戦争を始める国が増えます。また核恫喝が許されるのならどの国も核を持ちたがるようになります。これは北朝鮮みたいな国があっちこっちにできるということです。まさに混沌、何でもありの世界です。

 今我が国ではこの戦争をきっかけに「9条」や「」について議論が呼びかけられるようになりました。この動きを一過性のものとはせず、「国を護るには何が必要なのか」を真剣に議論していく世の中になって欲しいものです。

 もう時間はありません。

 

 

 最後にウクライナの方々の御健闘を祈りつつ、此度の戦争で亡くなったウクライナの民間人とウクライナとロシア双方の兵士達のご冥福をお祈り申し上げます。我ら日本国民はウクライナと共にあります。

 

 

 混沌化する世界に取り残された日本と世界の未来(ちょっとロシアがおとなしすぎるシナリオです)。

hatoyabu01.hatenablog.com

混沌化する世界で食い荒らされる日本と世界の未来(ロシアをアグレッシブにした手直し版。かなりエグイ内容です)※現在制作途中

hatoyabu01.hatenablog.com

(3/8 誤字修正、太字強調、リンク追加)

 

プーチンがウクライナ侵攻する真の目的(一部取消線の取り消し)

 皆さんこんにちは、北京五輪が終わって間もなくロシアが戦争を始めました。相手はウクライナ。このことは第二次世界大戦後で最も大規模で本格的な「侵略戦争」として歴史に刻まれるでしょう。今はもはや戦後ではなく「戦前」なのです。
 プーチンさんがウクライナを侵略する理由として「NATO不拡大」がよく日本のロシア通の識者からはよく取り上げられます。曰く「1990年のドイツ再統一の時に当時の米国務長官ジェームズ・ベーカー氏が当時ソ連だったロシアの党書記長ミハイル・ゴルバチョフ氏に『東方に一インチも動かさない』と約束した」と、ソ連崩壊後、バルト三国を始め、東欧諸国がNATOに続々と加入したのは「裏切り」だという話です(日ソ不可侵条約を真正面から破る国に「裏切り」なんて言う資格があるのか甚だ疑問ですが)。記事によってはこのことをもってしてあたかも西側が悪いかのようなニュアンスに誘導し、最後に「アメリカが戦争を煽っている」とまで書きます。

NATO不拡大」は口実に過ぎない

 しかしおかしな点がいくつもあります。まず東欧諸国の主権が全く無視されていること。加盟するかしないかは当事国の意思であり、それを「NATOの拡張主義」と言うのは言いがかりに近いです。次におかしいのはNATO拡大をロシアの脅威と見なしていること。NATOはあくまで集団安全保障で第二次世界大戦までの「軍事同盟」と異なります。加盟国が侵略された時に他の加盟国が共同で防衛をする組織ですから「侵略しよう」と思わない限り、脅威ではないのです。実際、ソ連崩壊後2000年代に入るまでのロシアはNATOに好意的で平和のためのパートナーシップに加盟しているほどです。

 ただここ十数年はロシアとNATOの関係が悪化していました。一番有名なのは2008年のジョージア南オセチア紛争で、独立後親米路線を行くジョージアに対して南オセチアがロシアの支援の下独立を強行した戦争です。この時ジョージアNATOに加盟する意欲を示していたことにロシアが強く反発していました。ジョージアの加盟を阻止するためにロシアが独立運動を煽ったとも見れるわけです。

 だとすれば三つ目のおかしな点が見えてきます。2014年以降、ウクライナドネツク・ルガンスクの分裂主義勢力(事実上ロシア軍が介入している)との紛争状態にあり、ジョージアの例を見れば、ウクライナNATO加入は既に困難な状況と言えます。

 さらに言えばNATO加入できていないジョージアは米軍やイスラエル軍と訓練したり、西側の兵器を導入したりと対ロシア防衛体制を固めていますし、同じく未加入国であるスウェーデンフィンランド欧州連合に加盟している関係上、有事・訓練時のNATO軍の通過を認めているため「NATO加入さえ阻止すればロシア安全保障はバラ色」とは言えないのです。

 以上を踏まえて考えればプーチンさんの言う米ソ冷戦時代のごとき「勢力争い」としての「NATO不拡大論」は時代遅れであり、もしロシアがNATOの脅威にさらされるならそれはロシア自身の対外政策の失敗としか言えないのです。

 プーチンさんの「妄想」

 ならどうしてなのかと言えば、それはプーチンさんの「妄想」によるものであると私は考察します。「妄想」と言ってもありもしないことを夢想するのではなく、これまで築き上げた権力を以てして、世界を自分の思い通りにしようとする「尊大な野望」という意味です。

 その妄想とはズバリ『ロシア帝国の復活』です。旧ソ連圏を再統合するばかりか、力の届く限り支配領域を広げ、自らが「皇帝」としてそこに君臨する。そんな妄想が彼の脳裏に鮮明に浮かび上がっているからこそ、一見世界を敵に回すかのような行動に出るのです。

 プーチンが「皇帝」を志す具体的な証拠を紹介しましょう。まず彼は2000年に大統領に就任(私は当時彼が「強いロシアを目指す」と言ったのが印象に残っています)して以降、現在に至るまで権力の座に居座って居ます。ロシア連邦の大統領職の任期は4年連続二期までを上限としていますが、プーチンさんは一旦首相の座に降りることでこれを回避し、2020年には上限カウントをリセットできるように憲法改正し、2024年以降も大統領で居続けるよう画策しています。

[モスクワ 11日 ロイター] - ロシアの上下両院は11日、プーチン大統領(67)の2024年の大統領選出馬を可能にする憲法改正案を承認した。プーチン氏が30年以上権力の座にとどまることが可能になる。
大統領・首相としてロシア政界に君臨してきたプーチン氏だが、現憲法では2024年に任期が終了する。今回の憲法改正が認められると、プーチン氏の通算任期はゼロになる。一方、後継者には2期の任期が適用される。(出典:ロシア議会が改憲案承認、プーチン2036年まで続投も,ロイター電子版,2020.3.12.,https://jp.reuters.com/article/russia-putin-idJPL4N2B50FC

 これには協力者もいるそうでコンスタンチン・マロフェーエフ氏という「オルガルヒ」と呼ばれる新興財閥(いわゆる貴族、ソ連時代におけるノーメンクラトゥーラです。因みに渦中のウクライナの親欧米政権前に権力を握っていたのはヤヌコビッチというオルガルヒでした)とのこと。彼はプーチンを終身指導者にするために「君主制」に移行させると公言しています。

 憲法改正手続きを経て、ロシアはプーチン大統領の「終身制」国家に移行する可能性が強いが、英紙『フィナンシャル・タイムズ』(3月13日)は、憲法修正の影の仕掛け人は、若手民族派新興財閥(「オリガルヒ」)のコンスタンチン・マロフェーエフ氏だと報じた。
 ウクライナ領クリミア併合にも関与した同氏は従来から、
「ロシアが直面するのは2018年問題ではなく2024年問題だ」
 とし、政権交代の危機を回避するため、プーチン大統領を「新ツァー(皇帝)」に擁立すべきだと述べ、「君主制移行」を公言していた。(出典:「新興若手財閥」の暗躍でプーチン「終身大統領」確立へ フォーサイト-新潮社ニュースマガジン,時事通信電子版,2020.3.24.,https://www.jiji.com/jc/v4?id=foresight_00302_202003240003

 かつて古代のローマ共和国が変質して帝政化したことはよく知られている話です。それと同じことが現代にも起こる……。にわかに信じがたい話ですが、既に終身大統領による独裁体制が敷かれたり、世襲を志向した国家体制をとりつつある国があります。他でもないロシア支配下だった旧ソ連諸国がそうなのです。

 例えばアゼルバイジャンソ連時代に共和国のトップを経験したヘイダル・アリエフ氏が独立後大統領として君臨し、2003年に病死する直前に息子のイルハム氏が大統領選で勝利する形で後を継いでいます。

 カザフスタンでもナザルバエフ氏がソ連時代から独立した以降も大統領の座に居座り続け、2019年に突然退任を発表すると共に側近のトカエフ上院議長を後継に指名しました。ただ、上院議長の座にはナザルバエフ氏の長女が就任したことから、彼女が「本命」でないかと言われております。

 そしてロシアと最も関係が深いベラルーシでは今のところ「世襲」の動きはないものの、同国元首のルカシェンコ大統領は婚外子のニコライをとてもかわいがっており、しばしば外交の場で同席させたりしています。彼は独立後に行われた1994年の大統領選以降長きにわたって大統領の座に居座っており、その強い権力志向から「ヨーロッパ最後の独裁者」と呼ばれています。2020年の大統領選挙では選挙不正を疑われ、翌年まで続く反政府デモが起こりました。

 子分(と元子分)の国々がこの有様なら親分であるロシアがまっとうな民主主義でないことは火を見るよりも明らかです。選挙戦で圧勝しているのも、ベラルーシのように何かあるのではと勘ぐってしまいます。実際反プーチンの政治家や批評家の多くが暗殺されています。いかにもKGB出身らしい「選挙対策」です。

 そして彼らは独裁国家同士で連帯しています。2011年、ロシアは既に関税同盟関係にあるベラルーシカザフスタンとの間でEUに近い統合組織「ユーラシア連合」を構想し、2015年には「ユーラシア経済連合」として正式に発足しました。

 この構想の中では人・モノ・サービスを自由に行き来させて通貨も統合させるそうで、欧州委員会をモデルにしたユーラシア委員会を設立するとのこと。プーチンは「ソ連の復活ではない」と強調していますが、ソ連の崩壊について「20世紀最大の地政学破局」と述べており、大国への未練を覗かせています。即ちこれこそが「ロシア帝国」の下地なのです。

 しかし現時点で参加しているのはベラルーシカザフスタンの他にアルメニアキルギスのみ。加えて中国の一帯一路と連携する程度です。プーチンの狙いはウクライナをユーラシア連合に加盟させることです。

 ただし経済の深い繋がりから政治的な連携に至るには政体の不一致は大きな障害になります。既に2020年に中国の香港で「一国二制度」が有名無実のものとなったことに象徴されるように、独裁主義が民主主義を淘汰する事例がポツポツ出始めています。

 プーチンさんもまた、公然と自由を否定する持論を出しています。西側でこんな発言したら「ファシスト」と呼ばれるレベルです。

[モスクワ 27日 ロイター] - ロシアのプーチン大統領は、自由主義(リベラル)的な価値観について、西側諸国の多くの人々が拒絶しているため、時代遅れのものとなったとの見解を示した。
プーチン大統領は27日付の英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙に掲載されたインタビューで、ドイツのメルケル首相は中東からの移民・難民に対しリベラルな政策を導入したことで基本的な誤りを犯したと指摘。
(中略)
その上で「リベラルな概念は時代遅れのものとなった。国民の大多数の利益と相反するものとなっている」とし、「多くの人々にとり、伝統的な価値観はリベラルな価値観よりも安定的で重要なものになっている。リベラルな価値観は消滅しつつあると考えている」と述べた。
(出典:リベラルな価値観は時代遅れ、西側諸国で拒絶─プーチン大統領=FT紙,ロイター電子版,2019.6.28.,https://jp.reuters.com/article/putin-idJPKCN1TS30S

 侵略に先だった21日の演説でプーチンさんはウクライナが「米国の植民地」などと言って「独立」さえ否定していますが、その本音は中国の香港問題と同じく民主化運動」によって己の政権が崩壊する発火点になる事を恐れているからなのですそして民主主義は帝国として国家統合するのに障害になるのです。皇帝を志すプーチンさんにとって「民主主義」は敵なのです

 だからウクライナ問題の解決策としてロシアの影響下にありながら民主主義を維持する「フィンランド化」を提案している方がいらっしゃいますが、そんな生ぬるい策プーチンさんが許すはずがありません(実際フィンランドソ連崩壊と共にいそいそと欧州に接近しています。先の「NATO不拡大」のレトリックに従えばこれも「裏切り」と見れるでしょう)。アゼルバイジャンカザフスタンのような親ロシアの世襲独裁国家になるか、中国の香港のようなロシアの直接統治下にさせられるかのどちらかしかありません。

 本当の原因

 プーチンさんが皇帝を目指しているとは言え、30年の権力の座に居続けた彼が一見無謀な行動に出るのは不自然なように見えます。「野心」だけではリスクが高すぎるのです。では何故戦争を決意したのか?プーチンさんが言うように「ロシアの安全保障」でしょうか?いいえ、先に述べたように防衛的組織であるNATOはロシアにとって直接的な脅威ではありません。勿論リビア内戦の前例もありますが、ロシアは米国と並ぶ核大国であり、相互確証破壊(MAD)を成り立たせているため、カダフィ大佐のようになる心配は限りなく低いでしょう。

 そもそも本当にNATOがロシアの脅威なら2004年にエストニアラトビアリトアニアの三国がそろってNATOに加入している時に強く反発しているはずです。かの三国はロシア国境とロシアの飛び地に接しており、ウクライナよりもモスクワに近いです。ウクライナにミサイルが置かれると騒ぐなら、この三国にもそれが言えることになります。実際ミサイル関係については軍事に詳しいブロガーさんが「キューバ危機」との比較を行い、ロシア側の主張が荒唐無稽であることを解説して下さってます。

news.yahoo.co.jp

 なら背景は何でしょうか?それはソ連崩壊後のロシアの経済力と軍事費を見ればわかります。まずは経済力の指標となるGDPと一人当たり所得の推移を見ていきましょう。

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(出典:ソ連崩壊から30年が経過したロシア経済の軌跡,三菱UFJリサーチ&コンサルティング,2021.2.9.)

 ソ連崩壊後ガクンと落ちていたGDPが2000年頃からうなぎ上りです。奇しくもプーチン政権が誕生した記事と重なっており、彼の支持率が高い一因ではあるようです。しかしそれも2014年以降はガクッと落ちています。何かわかります?そう、クリミア侵攻です。その当時の米国大統領オバマさんによって課せられた制裁がかなりのダメージになっていることがうかがえます。
 次に軍事費を見ていきましょう。ロシアの国防費は米国は勿論、中国にさえ及ばない規模ですが、その推移を見れば今回ウクライナ侵攻の原点が見えてきます。

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(出典:2019年防衛白書

 このデータは2010年からですが、こちらも右肩上がりです。経済力が上がれば当然ではあるものの、その伸び率は2011年から2016年の間は二桁台の伸びとなっています。特に2016年の国防費のGDP比は5.5!制裁による成長鈍化でも軍事費を上げ続けようとしていたのがわかります。

 ここからわかることはいたってシンプルで「経済成長と共に軍事力を増したから冒険にでた」ということです(これとそっくりな国があります。中国です!)。しかも2014年当時の世界はリーマンショックからようやく立ち直ったばかりで、米国ではオバマさんが「米国は世界の警察ではない」と言っていた時期でした。時を同じくして中国は我が国の尖閣諸島へ挑発を仕掛け、南シナ海への支配を広げていた最中です。ロシア皇帝を夢見る彼にとって「これはいける!」と思っても不思議はありません。実際、2014年にクリミアに侵攻し第二次世界大戦後、常任理事国として初の堂々たる力を背景とした「国境書き換え」を成功させました。

 ここで湾岸戦争のように米国やNATOによる介入が入るのなら違っていたかもしれませんが、核保有国であるロシアと正面切って戦うことができない為、事実上の容認となったのです。唯一行われた経済制裁は確かにロシアにダメージを与えましたが、プーチン政権を崩壊させるまでには至らなかったのです。

 これに米国の世界へのコミットメントの低下が重なります。先に述べた「世界の警察を止めた」オバマさんに続き、アメリカ・ファーストのトランプさんがそれまで作り上げてきた国際協調を崩してしまいました。彼の言っていることは正論ではありますが、やり方が稚拙過ぎたのです。例えばNATO加盟国の義務であるGDP比2%の国防費が護られていないことを理由に米国をNATOから脱退させると表明しました。当然NATO諸国は動揺するわけで、フランス大統領のマクロン氏はNATOが「脳死」に至っていると発言し、物議をかもしました。

【11月8日 AFP】エマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)仏大統領は7日、英週刊誌エコノミスト(Economist)が掲載したインタビューで、北大西洋条約機構NATO)が「脳死」に至っていると発言した。これを受け、加盟国の間ではNATOの真価をめぐる議論が勃発。独米はNATOを強く擁護したのに対し、非加盟国のロシアはマクロン氏の発言を称賛した。(出典:NATOは「脳死」とマクロン氏 加盟各国が反論、ロシアは称賛,AFP通信日本語版,2019.11.8.,https://www.afpbb.com/articles/-/3253705

 記事にもありますがこの時、ロシア外務省の報道官が「最高の言葉だ」なんて言っているのが印象的です。だから今プーチンさんが「NATOの東方拡大」を深刻な脅威と主張するのが本心からとは思えないのです。
 そしてトドメにバイデンさんがしでかした、あの夜逃げのごときアフガニスタン撤退を見てプーチンさんはこう思ったのではないでしょうか?「ぼろきれを着たタリバン兵さえアメリカを追い出せるなら、俺らも行けんじゃね?」

 これから始まるNATOの切り崩し

 厄介なのはこれが「最初で最後である」保証がどこにもないことです。ウクライナさえ生贄にすればロシアは満足するという主張は、1938年のミュンヘン会談の後起こったことを教科書で読み直すだけで論破できます。あれはチェコスロバキアのドイツ系住民の多いズデーテン地方の割譲を要求したナチスドイツに宥和した会談でしたが、そこで成立したミュンヘン協定は翌年のドイツのチェコ侵攻によって空文化しています。奇しくも今回のウクライナ問題においてもドネツク・ルガンスク両地域の高度な自治を求めたミンスク合意もプーチンさんの「独立承認」によって空文化しています。歴史は繰り返しているのです。

 そして私が注目したのは当初プーチン側がバイデンさんに対して「NATO東方不拡大を保証した協定」を求めたことです。冒頭で触れたNATOの「裏切り」のレトリックに囚われていると分かりませんが、これは軍事力を背景にした安全保障体制への露骨な干渉です。例えていうなら中国が軍事圧力をかけながら日米同盟に干渉するようなものです。もしこれを許してしまったら、次はバルト三国を離脱させろと要求したり、終いには「非核化」と称してNATOの米軍撤収を要請したりするでしょう。そうなるとNATOは「脳死」どころか「心不全」に至ってしまい、欧州全体がロシアの草刈り場になってしまうでしょう。

 ウクライナ問題はただの東欧の一国の問題ではありません。NATOの問題であり、同じく米国の同盟国の日本の問題でもあるのです。知らず存ぜぬをしていると、私が書いたシミュレーション戦記のように自分たちが「刈られる」立場となっているでしょう。

 

             シミュレーション戦記

 

 ロシアに関する見識を改めた新バージョンを製作中

            シミュレーション戦記2.0

 

(2022/2/24 ユーラシア連合に関する記述を追加、本文一部を修正、2/27 ベラルーシの記述を追加、5/13 民主化運動についてかけてあった取消線を消去)

未来の中越戦争(かなり手直ししました※エグさ増量につき閲覧注意)

※この作品は作者の独断と偏見によるシミュレーション戦記です。実際の人物、国、民族は関係ありません。

 前回はこちら

hatoyabu01.hatenablog.com

 

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■204×年 ベトナム動乱(第三次中越戦争

 南シナ海を中国に支配されて十数年、ベトナムでは沿岸域を中国船が我が物顔で通るのを同国民が苦々しく思っていた。ベトナム政府は中国に配慮して反中感情を抑圧し、交易を行うために通貨を人民元に換え、政府内にも中国共産党支部の設置を受け入れていた。その上一時的な中国軍艦の寄港まで認めており、快適な宿舎も提供するなど自国軍よりも優遇していた(あくまで政治ポストがベトナム人であり続ける為の苦肉の策だったと言われる)。

 ホーチミン運動

 だがある日、一人のベトナム人少女が中国軍人の暴行を受ける事件が起こり、反発した国民がベトナム最大の都市ホーチミン反中デモを決行し中国企業に対して破壊活動を行った(建国の父ホーチミン氏の肖像画が掲げられたことから、ホーチミン運動と呼ばれる)。中国政府が懸念を表明したので、ベトナム政府が軍をして鎮圧に当たらせるが収まるどころか、軍人の中からもデモへ参加する者が現れた。やがて運動はベトナム全土に波及し、中国に従属的な政権を倒すため軍民一体となって各都市の空港や港を占拠するに至る(一説には一部の軍事基地も占拠されており八月革命以来の革新運動と記録される)。

 スワームロボットと海兵隊

 これに焦ったベトナム政府が中国に支援を求めると、待っていたかのようにベトナム近海に展開していた南海艦隊が動き出す。まず、AI搭載型無人ステルス戦闘機「利剣」で反政府団体に占拠された軍事基地や空港を爆撃した後、虫のように小さい殺人ロボットを大量にばらまいた。ロボットはデモに参加していた民衆は勿論、取り締まっていたベトナム軍人をも攻撃し、ホーチミン市を始め各都市で阿鼻叫喚の騒ぎになる。更にそこへロボットのようなハイテク装備を施された中国海兵隊がなだれ込むように上陸し、自国民保護を口実としてベトナムを事実上占領下に置く(陸軍や空軍は極力参加させない。これは海洋大国を名乗り上げる為中国政府が計画した実戦訓練であり、ベトナム人少女を襲った中国軍人たちも当局の工作員だった)。この侵攻によりベトナム人百万人超が虐殺され、後にチベットウイグル内モンゴル天安門、香港、台北事件に続く悲劇と語り継がれることになる。

 ベトナム併合

 意図せず国土を占領された形となったベトナム政府は抗議するも、中国側は「ベトナム自治能力なし」と一方的に判断を下し破壊騒動の責任として同国国家主席を拘束。その後、自国高官らを臨時政府として配置し「後阮人民共和国」としての再建を目指したが、国際社会が承認しないと分かるや雲南省の管轄とした(後に南北分割して南側を後阮自治区とした)。中国軍の殺戮、支配を逃れようと数百万人規模のベトナム難民が海外へ移住を果たす(ベトナム難民問題。日本大使館にも多くの移住希望者が連日詰め寄った)。

 しかしその後、後阮自治区では迫害されたベトナム人による暴動ゲリラが頻溌するようになり、20年間にわたって駐屯していた中国軍を悩ませ続けることになる(後のベトナム正史ではこのゲリラ戦の期間も含めて第三次中越戦争としている)。

 米国

 ワン大統領以降、政治は混乱の極みにあった。大統領選におけるイデオロギーの対立民族間の対立が過去に類を見ないほどの騒ぎになり、暴動やテロが頻溌する。ワン氏の後に当選した共和党アングロサクソン系大統領は強烈なチャイナパージを実行し、中国系のみならずアジア系の全てを政府の要職から追放した。西海岸の都市で実施されていたベーシックインカムを廃止させ、銃規制も解除させた。

 これにアジア系は勿論、アフリカ系、リベラルな民主党系の政治団体が反旗を翻し、サンフランシスコを中心に空前の国民デモを実施する。そして20年代から発展してきたメタバース内に仮想政府を発足させ、連邦政府とは別の政策を実行に移した。この動きはアメリカ西海岸に広がり、ついにサンフランシスコを首都とした仮想国家「アメリカ人民連盟」の建国を宣言。現実世界でも独自の仮想通貨を使用したり、3Dプリンターで作った武器武装して警察やアングロサクソン系を排除したりした。事態を重く見た連邦政府が介入を試みるも、サーバーは中国の北京にある上に量子暗号化されているためアクセスできず、散発的な暴力事件に対処するだけで不毛に4年が過ぎてしまう。

 次に当選したヒスパニック系大統領は独立を主張する「アメリカ人民連盟」に対し宥和的な態度を示した。これに保守派の国民が反発し彼らもまた仮想国家「アメリ自由連合」を建国する。その結果、米国民の七割以上が仮想国家により二分されることになり、事実上の内戦状態に陥る。現実の連邦政府は軽視されて機能不全に陥り、ヒスパニック系住民ハワイ原住民までも仮想国家建設を主張しアメリカ全土が無政府状態となった(アメリカ・バーチャル戦争)。

 米国内戦の影響で国連本部はニューヨークからの移設が議論され、中国政府の後押しを受けて北京に移設されることが決定した。結果、中国の影響力がいよいよ強まり、同国によるベトナム侵攻は事実上黙認されたのだ。また、長きにわたる孤立政策によって米ドルは世界で流通しなくなり、国際金融市場においてもデジタル人民元が支配的地位に上り詰めていた(ただし中国支配下以外の地域では元の信頼も心許ない為、貿易商の間で独自の取引が行われていた)。

 なお国内企業も仮想企業にとって代わられて軒並み衰退していったが、一部のリアリスト財団による活動によって救済され、AIに頼らないものづくりや農業が一部の地域で続けられた。米国領土保全の為の活動も維持され、最低限の軍装備も維持された。特に重要視されたのは核抑止を維持するための原子力潜水艦で、かつての日本の技術を吸収して世界ハイレベルを維持していた。

 日本

 敗戦に伴い多くの日本人政治家が「ファシズム」の一環として粛清され、自民党など主要な政党は軒並み解散に追い込まれた。残ったのは中国と内通していた親中政治家らで結成された弱小政党だけだった。その空白を埋めるように台頭してきたのは東亜総連の支援を受けた東連党で、その多くが中国籍住民だった。この動きは地方でも起こっており、中国人(漢人)による実質的な日本の乗っ取りが完成しつつあったのだ。表向き上自由と民主主義を標榜しているが、中国を批判することは禁忌とされており、首相や大臣となりうる議員は毎年中国皇帝に面会が出来る者とされていた。

 学校教育は中国の意向に合わせた極端な虐日史観となっており、聖徳太子存在せず「日出る国」の手紙はなかったことにされている。また元寇元朝偉大なる"中華民族"の日本解放の試みとされ、朝鮮"侵略"では明に大敗した豊臣秀吉三跪九叩頭の礼で反省したと教えられる。さらに明治時代の日本は天皇絶対王政を布いた「日帝時代の暗黒社会」を築いたとされ、第二次世界大戦残虐で極悪非道な振る舞い南京大虐殺では百万人以上虐殺し五十万人以上の女性をレイプしたことになっている)を指揮したのだと暗記させられる。そして東亜総連のチラシが配られ、天皇制廃止運動への参加が推奨された。

 ある年、今上天皇の娘内親王中国共産党主催の交流会で出会った中国共産党員と婚約していることが発覚。国内メディアや多くの住民が日中友好の象徴として肯定的に受け止める一方、一部の保守派の日本人は強く反発し彼女の皇籍離脱を求めるデモを開始する。政府はデモを「差別的である」として検挙し、彼らが将来皇位継承者として有望する傍系の親王をデモの扇動者と見なして逮捕。その後行方知れずとなる。

 国民が動揺と不安に苛まれる中、女性皇太子に指名された内親王が自らの皇籍存続を国民投票に問う「お気持ち」をネット動画にて表明(この時代、皇族のメディア露出は当局によって厳しく制限されていた)。それを政府は皇室の政治干渉として黙殺しようとしたが、逆に利用しようと言う中国軍部の助言を受け、天皇制の存続の是非を問う国民投票へすり替え、翌年天皇制廃止が国民投票により決定された。この時既に日本人は少数派に転落しており、その多くが民族としてのアイデンティティを失っていたのだ。

 地方では中国国営企業による土地買収が進み、中国籍の知事や市長が母国から積極的に移住者を招き入れたことで、自治体の住民のほとんどを中国人が占めている。日本人は「日本族」と呼ばれて差別迫害の対象となっており、学校では日本子女に対する陰湿な虐めが横行する。また、政府や中国軍に目を付けられた日本人は悉く中国の秘密警察によって捕らえられ、裁判も無しに拷問処刑されてその様子が動画配信でエンターテインメントとして公開されている。この時代、中国における日本人の扱いは、ウイグル族チベット族と同じか、もしくはそれよりも酷かったのである。

 日本人だけの妊娠・出産禁止されており、発覚次第下ろされ死産させられる。中国系ハーフや高麗系ハーフなら生かしてもらえるが、差別と偏見の対象になるために安楽死を強制されることも少なくなかった。当然日本国籍の住民は急激に減少していくが、中国からの定期的な集団移住に加えて、台湾や今回のベトナム難民を大量に受け入れた事もあって、国内の総人口はむしろ増えていた。その代わり国内の外国籍住民の占める割合が全体の3割に迫るようになっていた(ちなみに中国系は6割)。

 経済は敗戦から奇跡的な復興を成し遂げるが好景気とは言えず、国内企業は経営のために組織内に中国共産党支部を受け入れて、度重なる干渉で経営不振に陥っていた。また、海洋資源の利用が制限されて日本の漁業は全滅し、代わりに中国漁船が日本の経済水域関係なしに漁をするのが当たり前になる。これによって日本の食卓から国産の魚が消えた他、稚魚も根こそぎ水揚げする虎網漁で、幾つかの魚種が絶滅してしまい魚食文化そのものも衰退していく。

 なお、とある中国国営企業日本の水源を独占し、本国や世界中の国々に良質な水を輸出する事業で巨万の富を得た(対称的に水源を奪われた地域は慢性的な水不足に苦しみ続けた)。この水産業は今後の日本の中心的産業になると共に、後の第三次世界大戦時の元凶となる。

 琉球

 本島では中国人の移民が増え琉球(旧沖縄県民)が人民全体の1割未満になっていた。学校では中国化教育が薦められ、琉球語は日本語や米語の影響を受けている為嫌忌された。また、歴史教育でも琉球処分は帝国日本が当時の中国から琉球を奪った事にされ(琉球族の祖先は漢民族であるという漢琉同祖説)、米国による統治は勿論日本への返還も非合法であったと教えられる。そして中日戦争のおかげで解放されたとして、毎朝琉球族の子供には北京の方角へ向かって感謝の文言を復唱させた。
 経済は中国同様計画経済となっており、ベーシックインカム制度が導入されている。しかし給付金を受ける条件として私有財産を制限され、政府が指定したアパートの住むことを義務付けられる。再開発は地方まで広がり、森が切り開かれて昔ながらの家屋も壊された。この強引な開発に残ったわずかな琉球族に不満が募っていた。

 そこへ、琉球政府が中国駐屯軍の要求を受けて基地の増築を決定した結果彼らの反発を招き、かつて米軍に対してやったような反基地闘争が始まる。琉球政府は彼らを「ヤマトンチュ右翼の残党」として容赦ない検挙を行った。だが、道路に(妨害のため)寝そべった老婆を若い中国軍人が意図的に装甲車で数度にわたりひき殺した事がきっかけで、とうとう全島規模で流血を伴う暴動に発展してしまう。
 こうなるといよいよ警察で対処できなくなった政府は非常事態宣言を発して中国政府に支援を要請した。要請を受けた中国政府はすぐに駐屯している中国軍を以てして暴動を容赦なく弾圧琉球動乱。チベットウイグル内モンゴル天安門、香港、台北事件、ベトナムに続く虐殺事件)した。死者は数万人にのぼるとされる。

 事件後、中国政府は非常時の琉球が中国に統治を全委任する事を定めた中琉国家安全条約を結ばせる。条約締結後、既に非常事態宣言下の国内では生き残った琉球族への監視が厳しくなり国外への渡航禁止や出版禁止など、さまざまな制限が課された。地域によっては台湾やチベットへ集団で強制移住させられるケースが相次ぎ、純粋な漢民族に置き換えられていった。その後半年もしないうちに琉球族は絶滅し、漢民族だけの議会によって中国への編入が決定され、台湾省の一角に据えられた。

 中国

 年々の軍艦の増産の結果、海軍はかつての米国海軍を遥かに凌ぐ規模になった。しかし、それによって金属などの資源不足が深刻になり、帝政以前の産物である鬼城(過剰生産により建設が先行した計画都市で買い手がつかずにゴーストタウン化した場所)の無許可の解体、資材回収が相次ぐ。
 経済はAIによる計画経済の成功もあって、人民元が東アジアでの基軸通貨の地位を確たるものにする。宇宙開発も新たな局面を迎え、原子力スペースシャトルが開発された他、資源目的の月面基地小惑星資源採取も実現させて宇宙を事実上支配下に置く(軌道エレベータの建設計画もあった)。北極南極の資源開発にも貪欲に取り組み、それが近隣諸国との軋轢をもたらしていた。
 留まることを知らない成長に世界中が称賛するが、その実情は8割以上が自動化されたAI企業によって支えられており、雇用市場は崩壊していた。そのため都市に住む人民はベーシックインカムに依存しており、皇帝と一部の共産党員以外は皆下流になっている。教育も思想矯正が主たることとなり、人民の間で学問離れが深刻化し「我々は党とAIの言うとおりに生きればよい」という認識が一般的になる(この時代、中国のAIは個人の生活や人生も統制下に置いていたのだ)。
 一方、田舎に暮らす人民の生活は配給制によって支えられた。しかし、漢民族が常に優先されそれ以外は十分な配給を得られなかった。貧窮層を中心に不満が蓄積するが、この頃は武装した警察ロボットが常時配備されていたので、暴動の類はすべて鎮圧されていた(しかし、編入して間のない雲南省後阮自治区では警備ロボットの数が足りず、軍の介入を必要とした)。
 AIの開発が2030年代にひと段落したので、慣皇帝は医学分野での発展を指示していた。その結果、人工子宮が実用化して漢民族を中心に利用されるようになった。クローン技術の研究も行われており、皇帝が不老不死について研究させていると言う噂が流れる。一方、宇宙では天宮に増設された物資投下システム『天雷』が核弾頭の精密な投下に有効とわかり、兵器化への改修が進められていた。。
 対越戦中、南部戦区の陸軍に加え西部戦区の陸軍が中越国境に配置されていた。これは南海艦隊の拡充のために南部戦区陸軍の縮小が進んだ結果である。戦後、南部戦区軍はベトナム占領の任を得たが西部戦区は出番がなかったため、同戦区の政治委員は不満を募らせていた。しかし彼らの雌伏は後の対印戦で大いに報われることになる。

 統一高麗

 南部の暮らしも北部の暮らしと同じ位になり、人口も減って同程度になっていた。平壌では高麗元首一族とその取り巻きが相も変わらず贅沢三昧な暮らしをしており、毎年8月15日の光復祭では模擬弾頭のノドン弾道ミサイルを日本本土に打ち込んで祝っていた(日本ではその度に大騒ぎになっていた。模擬弾頭を使ったのは人道的理由が建前だが財政的事情が主である)。
 長年石炭を採掘していた産炭地がほぼ枯渇するが、メタンハイドレート採取事業日本海全体に拡大することで、天然ガス生産量を大幅に増やしていた。そして中東やアフリカの国々と核密輸の商談にこぎつける。

 東南アジア

 東南アジア各国の主要港湾には中国海軍の基地建設が完了し、名実ともに中国の牙城と化していた。各海峡の通航が管理され、国籍を問わず中国共産党支部を社内に設置した企業だけが、南シナ海を通って交易することができた。これは中国政府が貿易を支配するだけでなく、デジタル人民元を世界的基軸通貨にするための信頼性を担保させる意味もあった。
 度重なる中国政府の干渉によって各国の自国通貨が完全に廃止され、中国のAIに支配された計画経済の一部にされていた。毎年のように新型ウイルスが発生し、なぜか原住民のみが感染する現象が起こっていた(アジアウイルスの怪。これがベトナム軍における戦闘力の低下をもたらしていた)。生産性を補うために受け入れた中国系移民によって土地が買い占められ、強引な開発が押し進められていく。政治面においてもタイやカンボジアでは君主制が廃止された他、多くの国で主要なポストは全て中国移民が牛耳っていた。それ故、中国人を優遇した政策が当たり前になっていた。

 なお、同諸国に駐屯していた中国軍は須らく治安維持も担うようになり、フィリピンではモロ・イスラム解放戦線と、インドネシアではジェマ・イスラミアと戦い多くのムスリムを虐殺していた。このことは中東や中央アジア、アフリカのムスリム達に警戒感を懐かせる要因となる。

 欧州

 欧州連合(EU)は総崩れになり、ユーロの信認が地に落ちて、独自の通貨が各国で使われるようになる(ある国は事実上の内戦に陥り、地域別に独自の通貨が勝手に発行される事態に陥った)。米国が内乱に陥ったためにNATO軍の抑止力が低下し、またしてもウクライナがロシアの公然とした侵略に曝されるようになる。

 ロシア

 西側の弱体化に反比例するように東欧へ勢力を伸ばすことを目論んでいたジーミル政権は、米国が内戦に陥ったことに乗じて今度こそウクライナ征服を目指すべく軍事行動に出る。以前と異なり欧米の影響力が失われた世界では、ウクライナを支える動きはもはやなく、サイボーグ化したロシア兵によって無残に蹂躙されてしまう。勢いに乗ったロシア軍はバルト三国にも攻め入り、ルーマニア、そしてついにポーランドにまで侵攻を開始する。
 これにはさすがに他のNATO加盟国も看過できず、欧州全体を巻き込んだ大戦に発展してしまう(第三次世界大戦前哨戦と呼ばれる)。中国の支援を受けて優位な立場にあったロシアであったが、さすがにいくら衰退したとはいえ複数の国家を相手にするのは分が悪すぎた。次第に押し返され、逆にロシア領土にまで踏み込まれてしまう。
 ここでジーミル政権は小型戦術核による敵陣営の攻撃を実施、自国兵士を放射能汚染された爆心地を通過させて強引に戦線を押し返す。数か月後、開戦前よりロシア側が少し領土を広げた状態で停戦が妥結され、ジーミルの権威失墜は避けられるも、兵士から被爆者が続出し大きな批判を呼んだ。
 翌年ジーミルが老衰によって死亡すると、ついに抑圧されていたロシア国民が一斉蜂起する(一か月間影武者による隠ぺいが行われていたが、検閲の目をかいくぐって暴露記事が世界を駆け巡った)。ジーミルのイエスマンだけで占められていたクレムリン政府にはまとめることができず、同盟国中国の介入を必要とした。こうして皮肉なことにロシアはベトナム同様に主権を失い、中国の衛星国として欧米との戦いに従事させられるのだった。

 中東・アフリカ・中央アジア

 この時代、アラブ諸国には保有大国へと成長したイランに対する警戒感が高まっていた。特にサウジアラビアでは石油消費量の減少(2021年から始まった脱炭素政策が原因)による年々の石油生産量の減少から、体制維持にも不安が出始める。そこへ長年一帯一路で経済支援してきた中国軍の駐留による体制保障を打診してくるが、同国軍のムスリムに対する虐殺を見ていた各国は受け入れに消極的だった。その時統一高麗から核兵器の密売を持ちかけられ、多くの国々が興味を持つ。

 一方、中央アジアではアフガニスタンタリバン政権が体制維持のために中国軍の駐留を受け入れていた。アフガン国内で新たなイスラム過激派組織が活発化していたのだ。また中国と準同盟関係にあったパキスタンも、拡大するインド海軍に危機感を抱いて中国との関係を一層強める。同国は十年前に中国から正規空母遼寧」と殲15艦上機の供与を受けていたが、艦上機の発艦重量が乏しい上艦そのものの維持費が嵩んで満足な運用ができずにいた。すると中国はパキスタン政府にさらなる軍港の拡大を提案し、そこを新設の南西海艦隊の拠点にするとした。この大きな軍事シフトが後の中印戦の原因となる。

 インド

 インドでは年々中国海軍の動きに警戒感を募らせ海軍を着実に増強させていたがその歩みは遅かった。ロシアが国家として破綻したことで、約束していた次世代戦闘機の技術移転が受けられず、度々萬栄する謎の感染症(中国軍の仕業)によって開発にも支障をきたしていた。そのため苦肉の策として、旧世代の戦闘機や対艦兵器を国産化し沿岸域やアンダマン・ニコバル諸島に多数配備して独自の接近阻止・領域阻止を構築しようとしていた。また中国の宇宙兵器に対抗するための対衛星兵器戦術核の開発も進められていた。

 外交では対中を睨み西側の協力を仰ぐが色よい返事は貰えず、長年の中立政策が災いして孤立を余儀なくされた。また、債務で中国に海軍基地を建設されたスリランカと秘密裏に会談を開くが具体的な対応策は決められず、パキスタンとも対立が深まるばかりだった。ブータンに対する中国人の浸食も問題視されたが、インドが直接介入することはなかった。

 

ハトヤブのシミュレーション戦記 

 (2019/9/19,10/2 ,11/15 本文一部修正、12/3 リンク添付)

(2020/1/11 見やすく修正、5/25 本文一部加筆、6/25 琉球に関するシナリオを推敲、7/10 リンク追加、8/9 リンクを追加)(9/13 皇室に関する記述を変更)(2021/5/8 ウイルスに関する記述を追加)

(2022/2/17 日本政党や皇室について手直し、画像を追加、2/28 各国の状況についてかなり手直ししました、4/3 内容を加筆修正)