はじめに

 皆様こんにちはハトヤブです。今一度問います。ただ戦争しないと言い続けることが将来にわたって戦争を回避する方法なのでしょうか?武器を捨てて平和を叫べば相手も矛を収めてくれるのでしょうか?

 私はこのままでは日本は再び同じ過ちを犯すと思います。それは左の方が考えるような軍国日本の復活なんかではありません。何の戦略も持たず、当事者意識も持たず、無責任体質のまま目先の利益を追い求めるさまは戦前日本も戦後日本も同じです。そうです、同じなのです。戦略がないから国際的に孤立し、当事者意識がないから早期講和に持ち込めず、無責任体質だから破滅まで突き進む……それが日本の第二次世界大戦ではなかったですか?今も戦略がないから中韓朝にいいように詰られ、当事者意識がないから米国に依存し、無責任体質だから憲法一つ変えられない……これが今の日本の現状です。

「戦争はいけないこと」その通りです。誰だって死にたくないし、殺しあいたくないです。しかし、世界は万国・万民族にとって公平に作られてはいません。己の不遇な境遇を打開し、望む通りの新秩序を構築するため戦争をする者は昔からいるし、これからも出てくるでしょう。その筆頭候補が中華人民共和国です。近年、怒涛の経済発展を遂げた同国はかつての華夷思想に基づく新秩序を希求しており、近世の列強(日本を含む)から受けた屈辱を晴らさんとしています。それが2018年3月に任期を撤廃した現国家主席の謳う「中華民族の偉大なる復興」であり「中国夢」なのです。

 さて、かの国の「偉大なる復興」が開始された時、日本はどうするのでしょうか?自分の今の平和を守るために立ち向かいますか?それともかの国の新秩序のために付き従いますか?このブログは後者を選んだ場合の日本とアジアがたどる未来……世界より再び降伏文書を突き付けられるまでの黙示録です。

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 いろいろ見識を改めて手直し中。

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 中国が覇権主義を突き進む私的考察がこちら

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 自称「平和憲法」の嘘から脱却しましょう。

 

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(9/7本文一部修正、10/20前書き向けに修正)

 (2021/2/18 リンクを追加・見やすく修正)

台湾有事は近づいてきている(改題しました)

 7月8日、安倍晋三内閣総理大臣が凶弾で倒れ、亡くなりました。哀悼の意を示すと共に謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

 その上で責任をもって予言しますが、安倍晋三は日本史及び世界史に残る偉人として語り継がれるでしょう。彼の功績はあまりに多く、我々日本国民が思っている以上に世界に影響を与えていたのです。それは彼の不幸の知らせが世界の駆け巡た際に各国で弔問が相次いだことが明瞭に物語っております。米国に至っては上院で安倍氏賞賛の決議案まで上がるほどです。前駐日米大使のハガティ上院議員によって提案されたこの決議案には超党派の議員68名が共同提出者として名を連ねており、近いうちに採択される見通しです。

決議案は「安倍氏は一流の政治家であり、民主主義的な価値観の不断の擁護者だった」と指摘。日米両国の外交、軍事、経済的な協力を深め日米同盟を前進させたと称賛した。(出典:米上院、安倍氏称賛の決議案採択へ 前駐日大使提出,産経ニュース電子版,2022.7.15.,https://www.sankei.com/article/20220715-BGVXJSSJQVPI5GQN2TQ7FKYKE4/

 ここまでされたら国葬で送らねば逆に失礼というものです。例によって共産とれいわが反対していますが、自分のイデオロギーを優先し過ぎです。国によっては安倍さんの為に喪に服していたという話もあり、それに対して喪にさえ服さぬ我が国の冷淡さよ。これも後世で語られるのは必至でしょう。真に恥ずかしいことです。

 犯人にどんな意図があるにせよ、反安倍界隈がどう思うにせよ、安倍晋三という存在を歴史から抹消することは不可能であると知りなさい。現在米国が掲げている「自由で開かれたインド太平洋」や日米豪印で開かれる「クアッド」は、彼の「価値観外交」と「セキュリティダイアモンド構想」を下地にしております。今の岸田政権も彼が作った花道の上にある事を念頭においてください。

 安倍晋三の残した言葉

 安倍さんが生前言っていたことがあります。

「台湾有事は日本有事」

 戦後日本の政治家としてこうした発言は稀有であり、識者の間でもここまで言うことは稀でした。理由はシンプルに中国の反発が怖いからで、日本人特有の事なかれ精神が影響していたのでしょう。人によっては中国軍の能力を指して「侵攻はない」と言い切っている人もいますが、ロシアのウクライナ侵攻のようにないと思っていた事が起こるのが現実世界です。また例によって「ロシアの軍事侵攻に対する国際的批判で台湾侵攻が遠のいた」とする言説も広まっていますが、中国指導部に直接聞いたわけでない以上これも三者の印象の域を越えません。

 プーチンの成功から読む台湾危機

 ではここからウクライナ戦争の事例を参考に台湾危機の可能性を詳しく考察していきましょう。まずはプーチンの成功から見てみるとします。「いやプーチンに成功はないだろ」と思われるかもしれませんが、まず戦争を起こせたことが成功です。前記事で指摘した通りプーチンは戦争を欲しており、その機会を虎視眈々と狙っていました。NATOの弱体化と対ロシア宥和、米軍のアフガン撤退。できるって思ったからこそ彼は実行へ移したのです。

 ウクライナ戦争の背景として「核抑止が崩壊した」とする主張がありますが、これは二つの意味で間違いです。一つはウクライナに核抑止力が存在しなかった事。独立当時はソ連製の核兵器保有していましたが、技術的問題と国際的圧力によって放棄してします。この時ブダペスト覚書を米英露で署名していますが、お分かりの通り反故にされました。そもそも覚書には法的拘束力がなく、核の拡大抑止を保証する物ではなかったのです。

 二つは侵略に先立ってプーチンが「邪魔するものは歴史上で類を見ないほど大きな結果に直面するだろう」と主張したことが功を奏したことです。これによって欧米各国はロシアの核報復を恐れて介入を避け、ウクライナが求める飛行禁止区域さえ決めることができなかったのです。ゆえにプーチンは安心してウクライナだけを相手に思う存分戦争できるようになりました。これは悪い意味で「核抑止」が機能している証拠です。

 こうした事例は中国にとっては追い風になります。そもそも介入したら核戦争という恫喝は17年も前に人民解放軍の朱成虎少将が「個人的見解」でぶっ放しており、世間を騒がせました。その実効性が証明されたわけですから、習近平にとってはワクワクが止まらないでしょう。

 その象徴を三つご紹介しましょう。まず中国駐大阪総領事館の「戦狼」で名高い薛剑総領事がウクライナ戦争勃発当日、Twitterにて「弱い人は絶対に強い人に喧嘩を売る様な愚かをしては行けない」とツイートしました。軍事強国となった自国を笠に着た明確な台湾への恫喝です。同時に「火中の栗を拾うな」とも付け加えており、日本へも恫喝していることがわかります。

中国駐大阪総領事の戦狼ツイート

 これは決して彼個人の跳ねっ返りではありません。3月5日から開かれた全国人民代表大会では王毅外相が日本に「三つの忠告」を出して牽制ないし恫喝を行っております。

王毅外相は記者会見で、共同通信の記者から日中関係について質問を受けると、2022年が国交正常化から50年の節目にあたることに言及したうえで、「日中関係は依然として分岐と挑戦に直面している」との認識を示した。

そのうえで日本に対し「3つの忠告」と銘打ち、▽両国関係の方向について初心を忘れないこと▽台湾問題や歴史問題で両国関係に大きな衝撃を与えないこと、そして▽時代の潮流に沿って行動することなどを求めた。(出典:中国・王毅外相が日本に対して「3つの忠告」。「火中の栗を拾いに行くな」と日米同盟も牽制,ハフィントンポスト日本語版,2022.3.7.,https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_6225c512e4b042f866f06623

 意訳すると「日本は永久に敗戦国だ」「台湾を見捨てろ」「新たな超大国(中国)の属国になれ」です。国際関係の民主化などと言っていますが、その民主化は我々の考える民主主義でないことは香港を見るからに明らかです。中国の民主主義は共産党支配であり、究極的には中国皇帝習近平圧政下の華夷秩序です。

 またある中国学者が台湾侵攻に先立って「ロシアがお手本を示した」という、よりあからさまな主張までしています。

www.epochtimes.jp こうした点からもロシアのウクライナ侵攻は中国にとって寝耳に水でない予期された状況であることがうかがえます。そして核を使った第三国の介入阻止に確かな可能性を見出しているのです。

 プーチンの失敗から読む台湾の危機

 ここからはプーチンの失敗から台湾危機を考察していきます。失敗というと危機が遠のくように感じますがむしろ逆です。失敗こそいかに成功させるための原資になるからです。

 火力不足で短期決着失敗

 まずプーチンが失敗したと言われる主因は短期による斬首作戦に失敗したことです。その理由はウクライナの航空施設や軍施設を完全に破壊できなかったことや、自軍の兵站を軽視していたことが挙げられます。大きな国力差があることからちょっと攻撃を加えるだけでもアフガニスタンのガニ政権のようにゼレンスキー政権も崩壊するだろうと高をくくっていたのです(その強気な思考は中国にも伝播しており前述の薛剑総領事のツイートと王毅外相の発言に表れました)。しかしウクライナの抵抗は激しく、首都攻略を一旦断念せざるを得ませんでした。

 これは裏手を返せば自国の兵站を確保して標的の航空施設や軍施設を破壊しつくせば可能性が見えてくることになります。米議会の超党派諮問機関「米中経済安全保障調査委員会」は昨年11月に中国軍が台湾侵攻の初期能力を確保した可能性を指摘した上、核戦力も最小限抑止から脱却していることを報告しました。

米国に軍事介入の能力や政治的な意思がないと中国指導層が確信すれば、米国の「抑止策は破綻する」と警告。台湾も過去数十年の軍事への過小投資のつけで重大な課題に直面しているとし、封鎖に耐えられる重要物資の備蓄が不足していると分析した。台湾関係法上の義務を果たすため軍事的抑止力の信頼性を強化する緊急措置も提言した。 報告書は一方、中国の核戦力に関する項を新設。「1960年代に最初に核兵器保有して以来、核戦力の拡大・近代化・多様化のため最大級の取り組みを実行している」と強調した。(出典:中国、台湾侵攻能力を確保 「最小限核抑止」から離脱 米報告書,産経ニュース電子版,2021.11.18.,https://www.sankei.com/article/20211118-WRTDR7FKDFMS5FAWDSQK3HLALU/

 先述の強気で高圧的な態度は決して張子の虎じゃなくなってきているということです。米露がINF(中距離核戦力全廃)条約を結んでいる間、中国はせっせと中距離弾道ミサイルを量産し続けざっと二千発は越えます。よって侵攻決断時に大規模なミサイル攻撃をして台湾の即応力を奪い、制空権を確保して台北に斬首作戦ができると彼らは自信を持ち始めているのです。先の「ロシアがお手本」の学者も短期決戦を主張しており、口先だけの心理戦ではないことが伺えます。

 標的の孤立化に失敗

 次のプーチンの失敗……これが本当に根本的な失敗なのですが「ウクライナを国際的孤立に追いやれなかった」ことです。21世紀の国際社会において侵略戦争は禁止されていますが、それを守らせる強制力は集団安全保障以外に存在しません。要は侵略された国に皆が味方して侵略国を懲らしめるってわけですが、侵略されている国が孤立していた場合、誰も助けてくれないことになります。よくロシア擁護派が「何でアメリカはイラクを攻撃してお咎めなしなんだ」と言いますが、それはサッダーム・フセインが国際的に孤立していたからです。

 ロシアはウクライナについて「ドネツク・ルガンスクでロシア系住民にジェノサイドを行っている」と主張していますが、第三国がこれを確認したことはなく、国連で議題に上がったこともありません。同地域にロシア軍が入っているのは明瞭であり、それでも場を収めるように欧米はミンスク合意を推していたのです。しかし結局、プーチンはこれを破りドーンと全面戦争を始めたのでウクライナ孤立策はおじゃんになりました。ゼレンスキーさんは世界に反戦反ロシアデモを呼びかけ、各国議場で演説をして支持を集めることに成功しました。その類まれな外交手腕には舌を巻きます。

 懲りないロシアはゼレンスキー政権を「ネオナチ政権」と呼び、原発を攻撃して「ウクライナは核開発をしている」と自己正当化し、マリウポリ総攻撃時には「生物兵器を研究している」と放言を垂れました。しかし、信じるのはせいぜいロシア国民とDS陰謀論者だけ。終いにはプーチンヒットラーをもじって「プトラ―」と呼ばれてしまう始末。やること成す事すべてが仇となったロシアが頼れるのは今や6375発の核爆弾だけです。

 しかし台湾の場合は逆に中国が圧倒的に有利な状況です。1971年に採択されたアルバニア決議で中華民国(台湾)は常任理事国の座を失い、中華人民共和国(中国)が常任理事国となりました。この時決議文に「蒋介石の代表を国連から追放する」文言が含まれてたことに反発し、中華民国は国連を脱退しました。

 これ以降、中国は国交を結ぶ条件として台湾との断交を要求し、日本や米国を始め多くの国々がそれに従い今や国交がある国はわずかに15か国。つい昨年12月にもニカラグアが台湾と断交し中国と国交を結びました。北京の陰湿な外交戦略で台湾は国際社会で孤立に追いやられたのです。

 だから仮に中国が台湾に攻め入ってもほとんどの国は台湾を国と認識していないので、中国側の「中台戦争は国内問題だ」という主張を信じて黙認する可能性が高いのです。唯一それを押しとどめているのは台湾関係法を施行しているアメリカで、武器支援をしたり侵略の危機には米空母を出張らせて抑止したりしています。

 この時期から中国は軍拡と海洋進出に力を入れるようになりますが、その第一の目的が台湾攻略を実現させるためなのですね。平和統一なるものも模索していますが、それはドイツのような東が西に合体する統一ではないことは香港を見るに明らかでしょう。李登輝さんが台湾を民主化してなかったら、もっと早く飲み込まれていた可能性が高いです。

 ヤバすぎる中国の反台湾政策

 先ほど「北京の陰湿な外交戦略」と書きましたが、これは決して誹謗中傷ではありません。客観的な事実です。

 二年前の一月、チェコの政治家ヤロスラフ・クベラ前上院議長が心臓発作により急死しました。同氏は2月に台湾訪問を予定しており、中国大使館と中国から圧力を受けたチェコ大統領府から脅迫状を受けていたと配偶者が告白しています。

ベラ・クベラ(Vera Kubera)夫人によると、台湾訪問を予定していたクベラ前議長に対して、中国大使館が脅迫状を送りつけ、家族を危険に晒したという。「夫が亡くなった後、遺品整理を始めた。書類の中に公式手紙が2通入っていた。 1通は中国大使館から、もう1通は(チェコ)大統領府から。どちらも恐ろしい内容で、2通の脅迫状をどうすればいいのかわからなかった」
ベラ夫人は夫の死後に手紙を見つけ、娘のバンドラ・ビンソバ(Vendula Vinšov)さんと2人で恐怖におびえたという。また、2通の手紙は、圧力が夫を殺したという十分な証拠になると強調した。(出典:急逝したチェコ前議長 夫人「中国大使館の脅迫状に殺された」,大紀元電子版,2020.4.29.,https://www.epochtimes.jp/2020/04/55784.html

 かつてチェコ(当時チェコスロバキア)がナチスドイツによって国を喪っていた時に中華民国(台湾)に亡命政府を承認してもらった過去があります。その後共産党政権時代に断交するも、民主化以降は非公式での関係を築いていました。中国はチェコの外交に内政干渉し台湾との交流を妨害しようと圧力をかけたのです。

 同じ2020年10月には太平洋の島国フィジーで台湾の建国記念式典の最中に中国大使館職員が立ち入り、台湾駐在所職員に暴力を振るう事件が発生しました。

式典は、首都スバにあるグランドパシフィックホテルで開かれた。このイベントに中国大使館職員2人が立ち入り、許可なく会場などを撮影した。台湾駐在所職員は声をかけて退出を求めたが、これを拒否し、職員を殴った。暴力を振るわれた職員は頭部を負傷し、病院に搬送されたという。
フィジーの警察が現場に到着すると、中国大使館の職員は外交特権を理由に捜査を拒否した。しかも、「台湾の職員から暴力を振るわれた」と逆上したという。(出典:フィジーでの台湾式典で中国大使館職員が暴行 台湾職員は病院搬送,大紀元電子版,2020.10.19.,https://www.epochtimes.jp/2020/10/63597.html#.X4-oHinbAhs.hatena

 いくら気に入らなくても第三国で乱暴狼藉をはたらくのはいくら何でもやり過ぎです。それでいて逆に暴力を振るわれたと逆切れするなど、まともな精神状態じゃありません。

 さらに2021年には20年から世間を騒がせていた武漢熱のワクチンを台湾が購入するのを妨害する事件が起こりました。

蔡氏は与党・民進党の会合で、アストラゼネカおよびモデルナとの契約は「円滑に」進んだとする一方で「ビオンテックについては、同社の独工場から調達する契約が完了寸前だったが、中国が介入したため合意できていない」と説明した。
(中略)
中国の上海復星医薬(上海フォサン・ファーマシューティカル)は中国本土・香港・マカオ・台湾でワクチンを独占的に販売する契約をビオンテックと結んでいる。先週末にビオンテックのワクチンを台湾向けに供給する用意があると表明した。(出典:台湾と独ビオンテックのワクチン契約、中国が妨害=蔡総統,ロイター通信日本語版,2021.5.26.,https://jp.reuters.com/article/health-coronavirus-taiwan-china-idJPKCN2D70ZD

 もはや陰湿以外の何物でもありません。台湾には日本からもワクチンを送りましたが、それにも中国は強烈に反発しています。「お前は俺のものだから他の者と付き合ってはならないし、受け取ってもならない」と言いたいのでしょう。まるでパートナーを束縛するメンヘラ男です。

 なおこれは余談ですが、此度亡くなられた安倍さんは今月末に李登輝氏のお墓参りの為に訪台を計画していました。当然中国は猛反発しており「日本は歴史的な罪を負う」ともはや脅迫状です。これが何かしらの因果関係をもたらしたかは現時点ではわかりません。

 プーチンの願望が映す台湾危機

 最後にプーチンのまだ成功とも失敗とも決まっていない点として戦績があります。現状ウクライナをすぐに征服できない状況を見ると失敗と映りますが、少しでも支配領土を広げていることを戦績と言うなら成功とも言えます。実際、2014年のクリミア侵略では高い支持率を獲得しており、18年の大統領選挙で再選を決めた他、事実上の任期延長を図った20年の改憲にも成功しております。今後の戦況次第で変わりますが、彼が戦績を諦めることはないでしょう。むしろそれを求め続けることが政権存続の命綱になりつつあることを前記事の後半で解説しました。

 一方の習近平ですがこちらはより切迫した状況で戦績を必要としています。2012年11月に中国国家主席の地位を握った彼は腐敗撲滅で政敵を葬った後、権力集中に力を注いできました。2018年には憲法を改正して国家主席の任期制限を撤廃し、毛沢東思想に並んで習近平思想なるものを党規約に加えて、個人崇拝への野望も垣間見せていました。

 それで今年の10月の党大会がいよいよ三期目に踏み出す転換点になるのですが、それに赤信号が点っているのだそうです。というのも彼の時代から中国経済は失速をし始め、鳴き物入りの一帯一路も振るわず、米国との貿易戦争でさらに打撃を食らいます。国際社会でも香港やウイグル人権問題に批判を集め、武漢熱での恣意的なマスク・ワクチン外交で顰蹙をかい、後先考えぬ戦狼外交によって欧米での評価を大いに落としてしまいました。挙句の果ては世界に先駆けて「終息」させたはずの武漢熱が上海で再拡大し、強引な都市封鎖で人民の生活を困窮させるなど、国内の評価もがた落ちとなっています。

 経済もダメ、外交もダメ、政治もダメ。こうなったら習近平が唯一頼れるのは台湾問題に関する戦績だけです。以前このブログでご紹介した台湾の東沙諸島を標的とした軍事作戦。最低限これだけでも党大会までに実行し、確実に成功させねばならない状況です。故に台湾防空識別圏へのひっきりなしの挑発や、ロシアと組んでの威圧的な日本周回作戦を繰り返しているのです。

 

台湾有事は日本有事、汝平和を欲さば、戦への備えをせよ!

 

(2022/8/15 改題、一部中見出し変更)

プーチンは戦争を欲していた(改題しました)

 皆さんこんにちは、日本ではすっかり夏ですね。しかし、ロシアのウクライナ侵略戦争はなおも続いております。私は二つの意味で驚いております。一つはロシアがこれほどまでに国際秩序をぶち壊して一線を軽々と超えたことです。21世紀情報化時代での有事ということもあって情報は氾濫しており、ロシア軍の戦争犯罪ウクライナ軍反撃による被害、ロシア経済のひっ迫などいろいろです。その詳細についてはここでは触れません。未だ有事の最中であるため、情報の中には嘘と誇張が含まれるからです。

 といってもロシア軍が民間人を攻撃したのは隠しようのない事実であり、皮肉にも私が描いたシミュレーション戦記で中国が切り開くはずだった戦乱の時代をロシアが始めたわけですから、正直複雑な気持ちです。元々ロシアという国を信用していなかった私は同国がいつか北海道を狙いに来ると想像しつつ、けれどそれは世界覇権戦争に踏み出す中国を裏切る形で、WW2で連合国側についたように仕掛けてくるだろうと考えていました(シミュレーション戦記)。しかし実際はもっとアグレッシブであり、ロシアは可能ならいつでも北海道を狙う、そんな鬼気迫る世界観であることが確認できました(シミュレーション戦記2.0)。

 二つ目に驚いたのはウクライナが諦めずに戦っていることです。敗戦後の平和教育から圧倒的な国力差で戦いを挑むことは愚かなことだと教えられた日本においては、開戦序盤から「降伏しろ」だの「話し合え」だの偉そうなことを言って物議をかもす論客が後を絶ちません。まぁ、21世紀のピエール・ラヴァルである鳩山由紀夫を生んだ国ですから似たような者は現れて当然でしょう。将来、我が国がウクライナと同じ境遇に陥った時にどんな反応をするのか楽しみでなりません。

 ロシアについて過去記事で少し取り上げていますが、本ブログでは本来中国の覇権主義についての考察や日本の現状、米国の行方や未来に起こり得る戦争が主目的でありロシアについては門外漢であります。それ故ウクライナ戦争に関連の話題はあまりしないのですが、地政学上東欧と極東はとても似通っており、ロシアが中国と深い関係にあることから、いずれやってくる台湾有事や日本有事に向けて考える手がかりがあるはずです。今回はそれをピックアップして考察していきたいと思います。

 ウクライナ戦争は誰が望んだ?

 まずウクライナ戦争がなぜ起こったのかという様々な人が考える話ですが、その答えはシンプルに「プーチンが戦争したかったから」というのが正確なところです。こう書くと「いやいやプーチンさんが戦争を始めたのはNATOの東方拡大が原因で」と何か知ったかのように言う人が後を絶ちませんが、それはプーチンが長年掲げていたドクリトンを引用しているだけで、全面侵攻へ至った理由には乏しいのです。過去記事でも論破していますが、今回は完全に粉砕されることを覚悟してください。

 ロシアは既に外交目的を果たしていた

 まず侵攻開始の2022年2月24日の時点でウクライナNATOに加盟する切迫した状況になっていないことが第一に挙げられます。そもそもNATOは加盟を希望する国に対し、加盟国すべてが了承する必要があります。一国でも反対したら入れないんですね。例によってプーチンとその支持者はNATOアメリカ帝国の一旦と思い込んでいるわけですが、2008年の首脳会談においてウクライナジョージアの加盟はドイツとフランスによって反対されています。

北大西洋条約機構NATO)首脳会議は2日、初日の日程を終えたが、ウクライナグルジアのほかマケドニアによる加盟問題は合意に達しなかった。
 クロアチアアルバニアの新規加盟では合意、アフガニスタンへの兵員増派問題では進展があったが、ウクライナグルジアの加盟を強く推すブッシュ米大統領には痛手となった。(出典:NATO首脳会議、ウクライナなどの加盟問題で合意に達せず,ロイター電子版,2008.4.3.,https://www.reuters.com/article/idJPJAPAN-31139120080403

 この姿勢は侵攻直前まで継続されており、特にドイツに至っては侵攻前に支援としてヘルメットのみを送った他、エストニアがドイツ製りゅう弾砲をウクライナへ引き渡すことを許しませんでした。これはノルドストリームを通して送られていたロシア産の天然ガスが影響しており、エネルギー保障上ロシアの機嫌を伺うようになっていたからです。

 またドイツだけでなく欧州全体もロシアとの対立を避けたい本音があり、親露勢力(事実上のロシア軍)が支配するドネツク・ルガンスクに「特別な地位」を認める形で双方兵を引き上げる「ミンスク合意」を推していました。事実上独立を認めるかのような合意にウクライナは煮え湯を飲まされる気分ですが、欧州の支援無くしてロシアに対抗できない為受け入れざるを得ない状況でした。しかしウクライナが合意を履行しようにもロシア側は兵を引こうとせず、一方的にウクライナに履行を要求するばかりで結局膠着した状態が続いていました。

  第1は、ミンスク合意を履行する当事者は誰かという問題である。この合意には、TCGの代表に加えて、ロシアの後押しもあり武装勢力の代表も署名しているが、一部の措置について履行主体が曖昧である(例えば重火器を撤去するのは「双方(both sides)」としか書かれていない)。そしてその解釈はこの紛争をいかに捉えるかによって変わってくる。
  ウクライナはロシアを「侵略国」と規定するとともに、この戦争を国家間戦争と位置づけているため、ロシアも合意の履行義務を負っていると主張する。一方、ロシアはそもそもウクライナ領におけるロシア軍の存在を否認しており、この紛争を内戦と位置づけている。この観点からすれば、ロシアはあくまで紛争の「調停者」に過ぎず、履行するのは「ウクライナ政府とDNR/LNR」であり、「外国」の部隊や兵器などの撤収を求める項目もロシアとは無関係ということになる。
  第2は、合意項目の履行順序をめぐる問題である。ミンスクⅡでは、ミンスクIの教訓から一部項目に履行期限が記され、和平プロセスの大まかな流れも示されることになったが、いくつかの鍵となる項目については履行順序が曖昧で、矛盾を孕むものとなっている。
  ウクライナは「治安項目」の完全停戦や重火器撤去、そして外国(つまりロシア)の部隊などの撤収が実現してはじめて、CADR/LRにおける民主的な選挙の実施、特別地位法の恒久化、憲法改正手続きといった「政治項目」の履行を完了することができるという立場である。他方、ロシアはこれを逆に捉えており、治安状況にかかわらず、ウクライナはこうした「政治項目」をまず実現させるべきだと主張している。(出典:合六強,長期化するウクライナ危機と欧米の対応,国際安全保障,2020.12.,p37)

 合意自体が曖昧なこともありますが、明らかに欧州がロシアに及び腰で、ロシアが兵を送っているのは明らかなのに、ロシアの「紛争は親露派の行動でロシアは関係ない」という主張を丸呑みした結果です。この手法は侵略方法としてまさに王道で中国も沖縄に対して同様の手順を踏んできますのでそのつもりで。

 NATOは脅威でない

 第二に何度も書きますがNATOは防衛的組織であり、その拡大はプーチンの考えるような覇権主義的なものでないことです。旧東側を受け入れる度にロシアと会合し、軍を常駐させずのローテーションにするなどかなり気を使っています。さらにロシアとその影響下の国々と平和のためのパートナシップを結ぶなど歩み寄りを重ねていました。

 こうした姿勢であるが故にすでに紛争状態にある国は受け入れられず、南オセチア紛争を抱えたジョージアのように、ウクライナも紛争を抱えていると見なされる限り加盟を先延ばしにされてしまいます。だからもしウクライナが出血覚悟でミンスク合意を履行してもロシアは韓国の慰安婦問題よろしく紛争を蒸し返せばいいのです。実際8年間それを続けてきたわけですから。

 第三にこの防衛的組織ですが、長年平和が続いて緩み切っていました。いざとなれば一緒に戦ってくれるからと言って加盟国は防衛費を削減していたのです。NATOにはGDP比2%の軍事費が努力義務となっていますが、達成国は30か国中わずかに8か国(2022年時点)、ドイツに至っては、ロシアが戦争するまで頑なにこれを拒否し、国軍の装備はとてもお寒い状況になっていたそうです。

 

grandfleet.info

 この余りの堕落っぷりに世界的に有名な戦略家のルトワックさんに「麻薬中毒者」に例えられてしまうほど。2019年にはアメリカファーストを掲げていたトランプ前大統領が米国のNATO脱退を主張し、当時のフランスのマクロン大統領が「脳死」と発言して物議をかもしました。この時ロシアは「最高の言葉だ」と言って大喜びしているのです。
 え?それでもウクライナNATOに加盟したら、NATO軍基地が作られてアメリカの弾道ミサイルが配備されるだって?仕方ないですね。その議論に止めを刺して差し上げます。ウクライナ憲法には外国軍の駐留を禁じる条項があるのですよ。第17条の最後にこうあります。

На території України не допускається розташування іноземних військових баз.
ウクライナの領土では、外国の軍事基地の設置を許可されていません。)

──ウクライナ最高議会HP(https://zakon.rada.gov.ua/cgi-bin/laws/main.cgi?nreg=254%EA%2F96-%E2%F0#Text)より

 つまり仮にウクライナがクリミアとドンバス東部を諦めるなりして紛争を終わらせ、NATO加盟が認められたとしてもNATO軍が駐留するかどうかはまた別問題になるということです。しかもこの条項、先代のポロシェンコ政権で憲法にEUとNATO加入を目指す方針を明記した後も残っているんです。

 こうした歴史的経緯と客観的事実を踏まえると2月24日にロシアが戦争する必要は全くありませんでした。ウクライナNATOに加盟するのを阻止してるし、ドンバス東部を切り離せるのも時間の問題で、NATO自体も弱体化して脅威で無くなっていきます。おまけにトランプ政権後期からバイデン政権に至るまでに持ち上がった中国のコロナ問題や人権問題で東欧への意識も向かなくなる始末。日本との経済協力会合も直前まで定例通りに開かれ、待っているだけで金が手に入るはずでした。目的がウクライナの中立であるならもう達成していたのです。

 戦争がしたかったプーチン

 しかしプーチンはあえてウクライナへ全面侵攻を仕掛けました。まだ東部の紛争地に進軍するならともかく、全く関係のない首都キーウまで直接堕としにかかったのです。手法は独裁仲間のベラルーシを経由して立ち入り禁止にされているチョルノービリ原発を突っ切るという荒業でした。

 この衝撃は欧州を激変させました。ドイツはそれまで拒否していたGDP比2%への軍事費増強を宣言し、ウクライナへの武器支援を決断しました。また、それまで中立を掲げていたスイスやフィンランドスウェーデンまでウクライナ支援に動いたのです。そしてついにはフィンランドスウェーデンの2国はNATO加盟を決断し、トルコの難色はあったものの、今月5日に無事加盟と相成りました。結果的にNATOは侵攻前より拡大し、復活してしまったんですね。

 こうした状況をプーチンの誤算と呼ばれていますが、本当にそうでしょうか?彼は就任以来、チェチェン南オセチアやシリアなどで武力行使を指示しています。だから当然どの程度すればどんな反応が返るかは予想できたはずです。いくら下院がドネツク・ルガンスクの独立承認を法制化しているからと言って、それを承認するかしないかは大統領である彼の権限ですから「止められない理由」にはなりません。またロシアがウクライナ討伐一色かといえばそうでもなく全ロシア将校協会のイヴァショフ氏はウクライナ侵攻に反対していました。

 

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 にもかかわらずプーチンは戦争を選んだのです。それは世界的孤立もいとわず、ウクライナを完全支配下におさめる意思があったのは明白です。彼の目的はロシア帝国の復活であり、その観点で考察すれば曖昧蒙昧な中立状態より直接ウクライナ支配下におさめる方が都合がいいのです。実際、ロシア軍が占領しているウクライナの都市では徹底したロシア化が進められています。

ロシアが主権宣言した祝日「ロシアの日」を迎えた12日、ウクライナでの制圧地域でも記念行事が開かれた。南部ヘルソン州とザポロジエ州では既に、一方的に樹立した暫定政権が住民にロシア国籍を証明する身分証交付を開始。ロシア通貨ルーブル流通も進めており、ウクライナ側は「ロシア化」の加速に反発している。(出典:「ロシア化」の動き加速 南部制圧地域で身分証交付,産経ニュース電子版,2022.6.13.,https://www.sankei.com/article/20220613-TOXIPQBYU5LZ7HXOFKF2PQRXIU/

 

 もしキーウが堕とされていたらウクライナ全土でこうした政策が実行されていたでしょう。反抗的な市民はサハリンなどに強制移住され、ロシア人に従順なものだけが残されます。その選別手法はナチスユダヤ人選別に酷似しているとされ、「賢いウクライナ人」を選んでいるとのこと。プーチンを擁護する人の中には「ウクライナはネオナチ政権だ」と主張することがありますが、まずゼレンスキーさんがユダヤ人であるだけでその理屈は崩壊しますし、ロシアの方の行動自体がナチスそっくりです。

 加えて皮肉なことに3月1日にロシアはキーウのテレビ塔爆撃の際に隣接していたホロコースト追悼施設まで破壊してしまうという暴挙も犯しています。挙句の果てはラブロフ外相が「ヒットラーユダヤ人の血」発言して世界中の顰蹙をかいました。この時ラブロフさんは「賢いユダヤ人に聞いた」と発言しており、ナチスの選別手法を模倣していることを世界に印象付ける結果を招いています。

 こんなにも欧米やイスラエルのヘイトまで集めているにも拘らず、最近ではピョートル大帝を自身に重ねるような発言までかましているプーチンさん……。そこにはもはや開き直りがあるばかりか、むしろ長年の悲願達成に燃える印象さえあります。そうです。プーチンこそウクライナ戦争を夢見ていた張本人なのです。

 夢をかなえたプーチン

 それを裏付けるエピソードがあります。今から8年前の2014年秋に米政治情報サイトのポリティコのインタビューで、ポーランドの元外相のシコルスキ氏が2008年にプーチンからウクライナの割譲を提案されていたことを暴露しました。

ポリティコによるとシコルスキ氏は、同国のトゥスク首相(当時)がロシアを訪問した際にプーチン大統領から話を持ちかけられたと発言。「プーチン氏はわが国に対し、ウクライナの割譲に参加することを希望していた」と述べた。
プーチン氏は「ウクライナは作りものの国家であり、そもそも西部のルボフはポーランドの街だ。共に、正常な状態に戻そうではないか」とも述べたという。ルボフは第2次大戦前、ポーランド領だった。
トゥスク氏は、会話が録音されていることを認識していたため提案については回答しなかったが、その後も関心を示すことはなかったという。(出典:ロシアが2008年にウクライナ割譲を提案=ポーランド元外相,ロイター電子版,2014.10.21.,https://jp.reuters.com/article/ukraine-crisis-poland-sikorski-idJPKCN0IA08420141021

 これはまさしく1938年から39年に渡るナチスドイツによるチェコスロバキア解体を彷彿とさせるものです。この報道に対してシコルスキ本人は「誇張されている」と言っているものの、「ウクライナは作りものの国家」という弁は2021年7月に発表されたプーチンの論文「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性」にぴたりと符合します。
 幸い当時のポーランド首相はこの時代錯誤の提案を蹴りましたが、この時点からプーチンウクライナ侵略計画は始まっていたと言えます。今日ウクライナに東部割譲を含めた政治的妥協に動く独仏や一部の米国リベラル識者に対して、ポーランドが強硬にウクライナ支援に力を注ぐのはこうした伏線が影響しているのかもしれません。何しろチェコスロバキアを征したヒットラーはその後ポーランドに侵攻しましたからね。

 プーチンは止まらない

 今日本を含めた西側の識者の間で「ロシアは戦略的に敗北した」という弁が主流であり、プーチン失脚の可能性が高いと説きます。しかしそれは西側の世界観でもってロシアを見た場合です。西側の世界観はグローバルな経済交流でモノと金を溢れさせて国民によりよい生活を提供することに重きを置いています。故に戦争の為に世界から孤立し、経済交流を絶たれた状態は敗北と映るでしょう。

 しかしプーチンの世界観は違います。彼の世界観は18世紀から19世紀の帝国史観としてのロシアを復興させることに戦略的価値を見出しています。NATO拡大に反対するのもシンプルに帝国復活の邪魔になるからです。そしてここからが重要なのですが、戦争によって自身の政権を延命できると考えている節があります。それは当初からウクライナ侵略で掲げている「非ナチ化」にあります。前述の通りむしろロシアの方がナチスの如くウクライナ人の選別・支配を行っているわけですが、国内向けだと意味合いが違うようです。参議院議員の青山さんはこう話されています。

何故プーチン大統領が「ナチ、ナチ」というかというと、これはロシア人全ての記憶として相手がナチだったら一発でまとまるんですよ。これは一時期ナポレオンと同じでね、ナチの軍隊もソ連奥深くへ入って行って結局冬将軍に負けて滅んでいく、ナポレオンとそっくりですよ。でもその時にナチをはね返した、イギリスがナチを防ぎきったってことも重要だけど、当時のソ連ロシアがはね返したってことも重要で、ロシア民族の偉大なる誇り、歴史の記憶で大英帝国と並んでナチを打倒した、本当はアメリカが入ってくれたからだけど、要するに米英と並んでロシアの誇りなんですよ。だから相手が「ナチ」だと言ったら片が付くからプーチンは国内対策で言ってるんですよ。(出典:【ぼくらの国会・第304回】ニュースの尻尾「プーチン大統領 最後のあがき」,青山繁晴チャンネル・ぼくらの国会,2022.3.25.,5:43-5:46,https://www.youtube.com/watch?v=WbvDQ5nijM4

 ユダヤ人であるゼレンスキーさんを指して「ナチだ」という荒唐無稽さにはそんな裏があったんですね。プーチン第二次世界大戦大祖国戦争にあやかって国家の危機を演出し戦争を正当化したのです。しかもこれは負けられない戦いを意味するため、どこかで妥協とか停戦する可能性を自ら摘み取ってしまうものでもあります。つまり孤立しようが経済的に困窮しようが戦争を続けることになるんですね。そしてその戦争はプーチンでなければ続けられないとなるわけです。

プーチン大統領のもともとの戦略はウクライナ広すぎるんで、少しずつカットしていって、最終的には全土をロシアのものにしたい。で少しずつカットして、少しずつ呑み込んでいくのなら、その間ずっと自分は独裁者でいられると。途中でだれか代わりにやるわけにはいかないですよ、というのをやりたい。(出典:同上,36:28-36:53)

 日本のメディアでは6月にプーチンが失脚するとか、東部征服で手打ちにするんだとか言っているわけですが、第二次祖国戦争にしてしまったプーチンウクライナ征服するまで止まる理由はないんですね。そして西側の思惑に反して経済的苦境をむしろ統制強化に使って、ずっと独裁者でいようとします。そもそも彼が帝国復活を目指すのも、死ぬまで権力者でいたい個人的欲望が極大化した結果でもあるのです。

 アメリカは既にロシアが戦争を長期化させる兆候をつかんでいます。今月5日プーチンの最側近とされるニコライ・パトルシェフ安全保障会議書記がウクライナへの「特別作戦」について、当初の目標である「非ナチ化」を達成する方針を掲げました。

 米政策研究機関「戦争研究所」は5日、パトルシェフ氏の発言を受け、「プーチン政権が、ドンバス地方を超えた領土を切望している」との分析を示した。「非ナチ化」のほか、ウクライナ軍の非武装化を狙っているとされる「非軍事化」といったロシア側が改めて明示した目標は「ウクライナ軍の完全な敗北と、ゼレンスキー政権の降伏によってのみ可能となる」とも指摘されているという。(出典:ロシアの目標、あくまで「ウクライナの非ナチ化」…軍事作戦さらに長期化か ,読売新聞電子版,2022.7.7.,https://www.yomiuri.co.jp/world/20220706-OYT1T50215/

 これでウクライナ戦争の長期化はほぼ確定となりました。どんなに少なく見積もってもロシアの次の大統領選がある2年間は続くでしょう。それまでにウクライナが全面降伏した場合、ウクライナ戦争は終わりますが、その後あまり間を置かずにモルドバジョージアの「回収」が待っています。そしてその後は台湾を征服し終えた中国と組んで我が国に二方面から侵略してくるのです。

 

 戦争は始めたい人が始める。それを止めるには戦う覚悟をするしかありません。汝平和を欲さば、戦への備えをせよ!

 

(2022/8/15 改題、一部中見出し変更)

日本がアメリカを護る時代がやってくる!?

 皆さんこんにちわ、気温も上がって夏日になる事も増えました。燃料代が高騰する中、原発も動かせず、電力ひっ迫になった場合全国各地で「計画停電」が実施される可能性があります。ひょっとしたらこれからの夏の風物詩になるかもしれません。

 ウクライナ戦争が継続しています。西側メディアではロシア軍の予想外の脆さに驚き、プーチンは命運が尽きたという認識が支配的になっています。しかし繰り返すように戦争は継続しており、プーチンに諦めの色はないのは明確です。彼にとってウクライナ征服はロシア再興に必須であり、例えどんな犠牲を払っても成し遂げるつもりでしょう。失脚は……そうですね、金正恩体制が崩壊するのと同じ確率と予想しておきます。つまりあっさり失脚するかもしれないし、思いのほかズルズルと存続する可能性もあるのです。

 一部では「ウクライナ戦争から手を引き(つまり見殺しにして)ロシアと関係を正常化するべき」と言った主張が出ていますが、例えウクライナにロシアへの譲歩を促して休戦にこぎつけたとしても、装備と兵士が整い次第プーチン戦争を再開するでしょう。それこそ北朝鮮のように執念深く。スターリンフィンランド征服を諦めたのも冬戦争・継続戦争合わせて3年5か月かけたのですから、ウクライナプーチンに全面降伏をしない以上はそれくらいの長いスパンで見なければなりません。

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hatoyabu01.hatenablog.com 繰り返しますがプーチンが目指しているのはロシア帝国の復活であり、ウクライナを征服すれば、次はモルドバジョージアを「回収」し、その次はフィンランド、首尾よくいけばいよいよNATO加盟国であるバルト三国も視野に入れることになります。また西だけでなく東にも拡張を目論み、中国と同盟を結んで日本を攻撃する予想がほぼ確実であると私は考えております。

hatoyabu01.hatenablog.com もとより私はロシアを信用しておらず、中国の属国になった日本が中国と共に世界覇権戦争を戦い破滅した瞬間に北海道を盗りに来ると考えていましたが、それさえも甘い幻想だったということです。世界は思ったよりもアグレッシブで残酷です。

 昔より軽い米大統領の声

 甘いと言えば先月の日米首脳会談の結果に対し私は国内で甘い認識が蔓延っていると危惧しております。バイデン大統領の「台湾発言」です。

 バイデン米大統領は23日午後、日米首脳会談後の共同記者会見で、台湾で紛争が起きた場合に米国が防衛に関与するかを問われ「イエス」と述べた。(出典:バイデン氏、台湾紛争なら米が防衛に関与,産経ニュース電子版,2022.5.23.,https://www.sankei.com/article/20220523-BGLURFSFJBKC7FLRD7JVOT4OZY/

 この発言に例によって主要メディアでは「米国の台湾政策転換か!?」と騒いでいるわけですが、何でそうなるのか。言霊信仰があるとはいえ、いい加減冷静に思考しなさいな。まあ、アメリカ側としては狙ってやってる感もあるし、対中けん制になるからいいけどね。だけどこれで「台湾有事で米中戦争!日本はどうする!?」という他人事思考からはいい加減脱却してほしいものです。アジア情勢のメインプレイヤーは日本ですよ。

 バイデンさんの発言は一にも二にも「対中けん制」以上のものはありません。すぐにホワイトハウスが「台湾巡る政策に変更ない」と表明しています。これは昨年の8月と10月に続く「失言」で、真新しいものではありません。これは私の考察ですが、米大統領の発言そのものの権威がかなり下がっている可能性があります。だから言いたいことが言えるのです。その象徴としてロシアがウクライナに侵攻して1か月後の3月26日、ワルシャワでの演説でプーチンに「権力の座に居座るな」と発言したのです(直後にホワイトハウスが訂正しています)。

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 これは私の感覚ですが、この時点でもってアメリカは「世界のリーダー」ではなくなったと思います。湾岸戦争の時のような全盛期なら大騒ぎでしょうけど、今は「言うだけ」というのが殆どの国の共通認識です。ぼろ切れまとったテロリストから逃げ出す超大国が、没落したとはいえ東側の大国の体制を堕とせるとは誰も思いません。もっともこれはバイデンさん個人の責任ではなく、先々代のオバマ政権と先代のトランプ政権からくる「米国の衰退」という大局によるものです。

hatoyabu01.hatenablog.com まさに私が予想下通りの結果になってしまったわけですが、日本にとって悪い話ばかりではないので。理由はこれから解説します。

 アメリカが日本に「お願い」!?

 参議院議員青山繁晴さんは日米首脳会談の裏について興味深い話をしていました。

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 日米首脳会談で「台湾発言」の他に目玉になったのはIPEF(インド太平洋経済枠組み)ですが、いくつかメディアで言われているように「関税無し」で協定じゃないのです。ならうま味は何だと言ったらストレートに「反中同盟」なのです。だから例によって中国の王毅外相は行く先々の国でIPEF批判をしています(まるで韓国の告げ口外交ですね)。

中国の王毅国務委員兼外交部長(外相)はフィジーを訪問中の5月30日(現地時間)、「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」について関税引き下げや市場開放がないことなどに言及し、「米国は自分の定めた基準とルールで他国を型にはめ、WTOを基本とする多角的貿易体制とは別のシステムを作り上げようとしている」と批判した。(出典:王毅・中国外相、フィジーでIPEFを批判,日本貿易振興機構ビジネス短信,2022.6.1.,https://www.jetro.go.jp/biznews/2022/06/df9c3ceb365534cd.html

 そのIPEFですが、青山さんの話では今までのような要求ではなく、「お願い」したというのです。親中で有名な宏池会の岸田さんも、例年の中国の戦狼外交北京五輪を巡る米中等距離外交に失敗し、なおかつロシアが派手に戦争おっぱじめたおかげで「反中」へのハードルが低くなった事情があるのでしょう。岸田さんが同意したその日に「発足です!」となったわけです。自虐的な日本人としては信じられませんが、日本が参加したおかげで(すでに参加表明した韓国は別として)インド等多くの国々が参加して2022年6月2日現在14か国となったわけです。

 こうしてみるとあの8年の安倍政権でどれだけ日本の国際的地位が高まっているかわかろうものです。今ではよく耳にするクアッドも元は彼の「セキュリティダイアモンド構想」ですし、彼の価値観外交で日本外交の幅が明らかに広まりました。「軍事より外交」なんて言っている方々、安倍さんが戦後日本で最も外交に力を入れた首相であることを念頭に置いといてください。正直、岸田さんは彼がついてこねた天下餅を食べているようなものです。本当に運のいい人。

 米国から「まさか!?」のお願い

 加えて安倍さんが残したレガシーで有名なのは「平和安全法」ですよね。日本とアメリカの集団的自衛に法的裏付けをしたものですが、これが今回大きな胎動をもたらしたのです。

 時に日本の安全保障と言えば米国で、米国にお願いするから、引き換えに要求を受けるというのが日米関係なわけです。よく保守の方が「日本は米国の属国」と嘆きますが、それは国防に関わることだからですね。国が安全じゃなければ経済も政治も成り立たなくなるのです(ついで言うと外交も)。故に主従のような日米関係だったわけですけど、それが変わるかもしれないのです。

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 中国は賢いから、日本を叩くときに在日米軍基地だけ叩いて……自衛隊と一緒にいるような三沢基地などは横須賀も含めてやらなくて、沖縄に多い米軍専用基地……嘉手納とか普天間とか、そこだけを叩いてくることがあり得る。その時に日本、いわゆる日本は被害受けていない、米軍専用施設だけ被害受けてるのに反撃してください!中国に。これを「お願い」してきている。(【ぼくらの国会・第345回】ニュースの尻尾「米からマサカのお願い」より13:23-13:57引用)

 自衛隊が米軍基地を護って反撃する!一見有り得そうでなかったことが起ころうとしているのです。もとより日米の防衛構想は「日本が盾で、米国が矛」だったわけですが、日本が「専守防衛」という敵が自国領域に入らない限り攻撃はおろか反撃もしない体制で、しかも実態は自国領域に入っても反撃しない無抵抗主義だったのです。その象徴が1987年に起こった「ソ連軍機の沖縄本島領空侵犯事件」です。

対ソ連軍領空侵犯機警告射撃事件 - Wikipedia

 12月9日、ベトナムカムラン湾から発った4機のソ連偵察機Tu-16バジャーが日本の防空識別圏に入り、空自戦闘機がスクランブルします。4機中3機は進路を変えましたが、一機だけは空自機の目の前で沖縄本島上空を悠悠自適に飛び、二回の警告射撃を受けてようやく出ていきます。この時米軍基地上空も飛んでおり、もし爆撃機であったなら日米の信頼は地に落ちていたことでしょう(Tu-16は爆撃機として設計された大型機で、中国が現在主力爆撃機として使っております)。そこからの転換ですから、世界が注目する大転換です。当然最も注目しているのは中国なのは言うまでもありません。

 脈あり?伏線もある!

 あいにくこれは青山さんが話した水面下の話の一部であり、岸田さんがどう答えたのかはわかりません。内容が内容だけに二つ返事で「イエス」とは言えないと予想されますが、全面拒否ではないことは間違いないでしょう。というのもバイデンさんとの記者会見で、岸田さんも重大な発言をしているのです。

地域の安全保障環境が一層厳しさを増す中、バイデン氏とは日米同盟の抑止力、対処力を早急に強化する必要があると再確認し、私からは日本の防衛力を抜本的に強化し、その裏付けとなる防衛費の相当な増額を確保する決意を表明した。(出典:岸田首相「防衛費の相当な増額を確保」 日米共同記者会見要旨,産経ニュース電子版,2022.5.23.,https://www.sankei.com/article/20220523-RLQQ2TFQPNOQLNXEV3WEDT5KRM/

 記事では台湾有事に日本はどうするか聞かれていて、それは政治家特有の「定型文コピペ作戦」ではぐらかしていますが、防衛費の相当な増額ははっきり言っているんです。安倍さんならともかく宏池会の岸田さんがですよ?ここで言ってしまったら、無かったことにはできないわけですよ。毎年の微増で誤魔化すことはできません。例によって公明党や野党が反対するでしょうが、やると言った以上はやらないと日米間の信頼が崩れます。

 また面白いことにこの話には伏線があるのですよ。二年前の2020年3月に米海兵隊から戦車を全廃するという再編案が出されたのです。

 2020年3月23日(月)、アメリ海兵隊のデービッド・バーガー総司令官が、10年以内に戦車大隊を廃止し、歩兵部隊と砲兵部隊を削減することなどを盛り込んだ、新戦略に基づく大規模再編案の概要を発表しました。2019年の夏以降進めてきた、人員・部隊・装備における再構築計画の策定作業を受けてのものです。(出典:アメリ海兵隊 戦車全廃か M1戦車大隊廃止 変わる戦い方 自衛隊・日本への影響は? 乗り物ニュース,2020.4.11.,https://trafficnews.jp/post/95307

 記事では理由として無人機や精密攻撃兵器の開発に振り分ける為と言ってますが、戦車を無くす意味を解ってません。巷では無人機によって簡単に破壊されるから「戦車は時代遅れ」という主張がありますが、今ウクライナに戦車が供与されていることからもわかるように戦車の戦術的価値は変わっておりません(これに関してはいつか兵器考察シリーズとして書けたらなと思います)。その本質は今アメリカに起こっている大局とつながっていて「戦わざるカーボーイ」になっていく一貫だと私は考えます。

 もとより在日米海兵隊は日本沖縄防衛以外に中東などへの遠征の任務も受け持っていました。それがイラク、シリア、アフガンからの撤収によって役目が減ったのですね。加えてミサイル技術の発達した今日では沖縄は安全な場所ではなくなっています。米軍としてはリスクを減らしつつ効果的な戦力だけを残しておきたいんですね。それが精密攻撃兵器を持った部隊というわけですが、それだけではもし敵の揚陸部隊が上陸した時にやられてしまいますし、既に占領された島嶼を奪還することもできません。その穴埋めをどうするかというと、それが陸自の水陸機動団になるわけですね。

 また年を同じくして20年12月防衛省は長射程のミサイルの開発を決定しました。

政府が研究開発を進める新型の対艦誘導弾の射程が約2千キロに及ぶことが28日、分かった。配備が実現すれば自衛隊保有するミサイルでは最長射程となる。これとは別に、陸上自衛隊が運用する12式地対艦誘導弾の射程を将来的に1500キロに延伸する案が浮上していることも判明。「国産トマホーク」ともいえる長射程ミサイルの整備を進めることで、自衛隊の抑止力強化につなげる狙いがある。(出典:《独自》「国産トマホーク」開発へ 射程2千キロの新型対艦弾 12式は1500キロに延伸,産経ニュース電子版,2020.12.29.,https://www.sankei.com/article/20201229-IJSI3I2G35PKXLKSEGF4FR76JA/

 射程二千キロともなれば日本国内から平壌や北京を狙える距離で、まさに「敵基地攻撃」と言えるでしょう。今年4月に出された自民党の新しい安全保障戦略では「専守防衛の考えの下での反撃能力」というわけわからない言葉に変わっていますが、一応の趣旨として敵基地や敵司令部の攻撃はする……かもしれないニュアンスとなっています。それが米国のお願いによって「May be を外してやってくれ」となったわけです。

 すっかり頼りなくなった米国ですが、日本にとっては悪い話じゃありません。自衛隊が米軍を護るのが鮮明になれば、日米地位協定の改定にも弾みがつくし、特に沖縄の悩みの種となっている米軍専用基地に自衛隊が関わることになるわけですから、いずれ日米共用となって北海道のように自衛隊が主体になる可能性があると私は思うのです。ウチナーチュ自身も参加する自衛隊によって沖縄を護る。これほどいい話はありません。

 しかしそれを実現するには憲法9条が障壁となってきます。この条項に手を加えない限り、日本はいつまでも米軍の大部隊に居てもらうか、中国の属国になり消滅するしかないのです。

ウクライナに憲法9条があったら?

 皆さんこんにちは今日は憲法記念日ですね。このような日こそ日々当たり前と思っている常識を覆し、自分の頭で考えてみる必要があります。すると思わぬ発見が見つかることでしょう。仏教では「諸行無常」という言葉があります。これは今日ある事が明日もあるとは限らないという理を表したものです。今世界を騒がしているロシアのウクライナ戦争も、誰も予想した者はおらず、「侵攻はない」とか「せいぜいちょっとした紛争だろう」と考えが大勢を占めていました。今日の平和が明日あるとは限らない。それはこれからも起こりうることです。

 「9条」に縋りつく人々

 さてこの戦争について面白い議論がありました。それは「ウクライナに日本の憲法9条があったら、ロシアは侵略しなかったのか?」という議題です。これまで散々「憲法9条があるから日本は平和なんだ」という主張がまかり通ってきただけに、保守派から猛攻撃を浴びることになったのですね。それに対する護憲派は「憲法9条は日本が侵略しないようにするものだから(震え声)」と事実を認めざるを得ない状況になっています。中には「ああそうだよ、外国の侵略は防がないよ!なんか文句ある?」と開き直っているブロガーさんもいらっしゃるようですが、アンタ偉そうに言ってるんじゃないよ!今の世界情勢で日本が侵略する可能性は政治的にも軍事的にも思想的にもあり得ない状況で、専ら戦争を起こすのは中国や北朝鮮、そして既にやらかしているロシアだって言っているのに、防衛強化を妨害してきたのは何処のどいつじゃ!と言われても仕方がない状況です。

 ならば国防強化や憲法改正にもう文句は言わないのかといえばそうではなく、むしろ原理主義化して護憲主義(自称)に血道をあげる有様です。自称護憲政党日本共産党の志位さんはこんなアクロバティックな物言いをしております。

 日本にプーチンのような指導者が生まれた時の備えだそうです。そんな仮の話をする前に現実のプーチンはどうすんのよと言いたくなります。ロシアは極東で日本と隣同士であり、北海道に侵攻してくる可能性は十分にあります。この人たちは1940年代の日本の世界を夢想して「反戦」を訴える「英雄」を気取ってそこから抜け出せなくなっているのでしょう。まぁ、日本共産党の場合は敗戦当初アメリカを「解放者」と呼んでいたけど、レッドパージされてむしろソ連に「解放」してほしかった人達ですから、ロシアのプーチンになら大歓迎なのかもしれません。実際ロシア擁護で勇名になったれいわ新撰組のブレーンは「ロシア軍に大阪から上陸してほしい」なんて言っていますから。

 きっと気に入らないものを壊して欲しい、殺して欲しい「破滅願望」があるのでしょう。人はそれを「革命」と呼びます。

 ウクライナ憲法平和憲法

 ま、自称護憲論者は置いといて「ウクライナに日本の憲法9条があったら、ロシアは侵略しなかったのか?」の正確な答えですが、それは「関係ない」です。そもそもウクライナ憲法ウクライナ人が護るものであって、プーチンは何も気にする必要がないからです。もちろん憲法が原因でウクライナの国防が揺らいでしまうなら話は別ですが、現状のウクライナ憲法でそんなことはありません。

 他方でロシア擁護派の中には「ウクライナが悪い」といった主張がありますが、ウクライナはちゃんとした平和憲法を持つ平和国家なのです。その内容を抜粋して見てみましょう。

Стаття 17. Захист суверенітету і територіальної цілісності України, забезпечення її економічної та інформаційної безпеки є найважливішими функціями держави, справою всього Українського народу.
(第17条ウクライナの主権と領土保全の保護、経済と情報安全保障の確保は、国家の最も重要な機能であり、ウクライナ国民全体の仕事である。)


Оборона України, захист її суверенітету, територіальної цілісності і недоторканності покладаються на Збройні Сили України.
ウクライナの防衛、その主権の保護、領土保全及び不可侵性は、ウクライナ国軍に委ねられている。)


Забезпечення державної безпеки і захист державного кордону України покладаються на відповідні військові формування та правоохоронні органи держави, організація і порядок діяльності яких визначаються законом.
(国家の安全を確保し、ウクライナの国境の保護は、関連する軍事組織と国家の法執行機関に委ねられており、その組織と手続きは法律で定められている。)


Збройні Сили України та інші військові формування ніким не можуть бути використані для обмеження прав і свобод громадян або з метою повалення конституційного ладу, усунення органів влади чи перешкоджання їх діяльності.
ウクライナ国軍やその他の軍隊は、市民の権利と自由を制限したり、憲法秩序を打倒したり、当局を罷免したり、それらの活動を妨害したりするために、誰によっても実力を行使することはできません。)


Держава забезпечує соціальний захист громадян України, які перебувають на службі у Збройних Силах України та в інших військових формуваннях, а також членів їхніх сімей.
(国家は、ウクライナ国軍や他の軍隊で奉仕しているウクライナ市民とその家族に社会的保護を提供しています。)


На території України забороняється створення і функціонування будь-яких збройних формувань, не передбачених законом.
ウクライナの領土では、法律で定められていない武装組織を創設し、運営することは禁じられている。)


На території України не допускається розташування іноземних військових баз.
ウクライナの領土では、外国の軍事基地の設置を許可されていません。)


Стаття 18. Зовнішньополітична діяльність України спрямована на забезпечення її національних інтересів і безпеки шляхом підтримання мирного і взаємовигідного співробітництва з членами міжнародного співтовариства за загальновизнаними принципами і нормами міжнародного права.
(第18条ウクライナ外交政策は、一般的に認められた国際法の原則と規範に従って、国際社会のメンバーとの平和的かつ互恵的な協力を維持することによって、その国益と安全を確保することを目的としている。)

──ウクライナ最高議会HP(https://zakon.rada.gov.ua/cgi-bin/laws/main.cgi?nreg=254%EA%2F96-%E2%F0#Text)より

 ここには国際協調や軍の行動に対する規制即ちシビリアンコントロールが明記されている他、何と外国軍基地の非設置までもが書かれております。9条2項の戦力不保持を超絶拡大解釈して日米安保破棄を主張している方や、日夜「米軍出てけ」とシュプレヒコールを上げている方々にとっては垂涎物の条文ではないでしょうか?逆をいえば日本国憲法戦争放棄武装解除以外は何もなく、せいぜい前文に国際協調があるかな程度で、自衛隊の行動規制も、外国軍基地について具体的な記述が何もないのです。そしてどうやって国を護るかについての方法も責任も日本国憲法にはありません。安保闘争で「日本は個別的自衛権のみが認められる」と言っていた皆さん。ウクライナ憲法を参考にしてはいかがでしょうか?米軍も追い出すことができますよ?

 日本共産党の裏口的な「自衛隊活用」論

 尚、改憲の話になったら脊髄反射で「戦争できる国になる」と主張する人が後を絶ちませんが、現在の自由民主党の9条改正案は既存の条文をそのままに「自衛の措置は妨げない」を加憲するものとなっております。これを知ろうとしていない人が多すぎる。中には今更のように「9条第一項は国連憲章を引用したもので……」と言って護憲の意義を説明しようとする人もいますが、だから加憲ですよ!と言っているんです。今までは自衛が認められていると解釈して運用していましたが、国民の中で一定数以上「自衛も認められない」「自衛隊違憲」という認識がある以上、そのひずみが日本の防衛に暗い影を落としてきたのです。

  1.  ポジティブリスト(他国はネガティブリスト)
  2.  捕虜条約の対象外(自衛隊が捕虜になった時、捕虜として扱ってもらえない)
  3.  攻撃能力の制約(昔は空中給油機もダメだった)
  4.  交戦規定の不在(武器使用は警察と同じ)
  5.  軍法会議の不在(敵兵士を殺害した場合、殺人罪で裁かれる)

 こうした状況を放置して有事に至った場合、どんな混乱が起こるかわかりません。是正しようにも「憲法9条」が障壁になってできないのです。

 

 ところで先月、護憲を標榜し自衛隊を「違憲」と主張する日本共産党についてこんなことがありました。同党の党首、志位和夫委員長が「自衛隊を活用する」と発言して保守層から「ご都合主義だ」と批判されるなど物議をかもしました。

急迫不正の事態に「自衛隊を活用する」とした共産党志位和夫委員長の発言が波紋を広げている。党綱領では「憲法9条の完全実施(自衛隊の解消)」「日米安保条約の廃棄」を目指すとしており、「ご都合主義だ」などと批判的な意見が多く聞かれる。志位氏は近く、自衛隊への見解などを記した最新の党綱領解説本を発表するが、国民の理解をえられるかどうかは不透明だ。(出典:志位氏の自衛隊「活用」発言に「ご都合主義」批判,産経ニュース電子版,2022.4.9.,https://www.sankei.com/article/20220409-4P2HLQPMUVMW7I4EUPWCPZWFE4/

 この「活用論」ですが本人が釈明しているように今に始まった話ではなく2000年の党大会で既に言及しているんですね。曰はく「憲法9条の完全実施の為に自衛隊を段階的に解消していく」とのこと。その“過渡期”に必要に迫られた場合は自衛隊を活用すると。志位さんはしきりに「9条の理想に向け、自衛隊の現実を変えよう」と主張しております。

www.jcp.or.jp

 

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 言うなれば「憲法9条は理想」という論理ですが、これ……結構危ない考え方なんです。例えば国会議員選挙で「一票の格差」が問題になって裁判所で「違憲状態」と判決が下されたことがあります。違憲状態は違憲の一歩手前の状態ですから、選挙結果やその後成立した法律が無効になる事はないものの、早急な是正が議論されるわけです。でも、もしここで「憲法は理想」と言ってしまったらどうなるでしょう?格差是正への切迫度がかなりマイルドなものになってしまいます。

 憲法は理想の経典でもなければ日本版毛沢東語録でもありません。日本国の国の形を決める最高法規です。これに反した法律は成立せず、行政も司法もこれを犯すことはできません。それを「理想」と言ってぼやかし、自ら「違憲」と断ずる自衛隊を使ってしまっては、安倍さんの安保法制どころじゃすまない本当の意味での「立憲主義の破壊」になってしまいます。

 さらに恐ろしいのはこの「理想」論は応用が利くということです。例えば党に都合が悪い発言をする人を処断する時、言論や表現の自由(第21条)、思想の自由(第19条)を侵すことになりますが、これも「理想だから」で解決できます。また中国の属国になった場合、同国の都合で軍事作戦に協力を求められた時も「理想だから」と言って応じることになるでしょう。外国人参政権も第15条の「国民固有の権利」に抵触しますが、これも「理想」の一言で片付きます。つまりことごとく、当代の内閣や与党の恣意的な判断でゆがめられるのです。もはや人治国家です。

 これが実際に行われているのが中華人民共和国です。同国は「党の指導性」を前面に押し出しているために、宗教の自由も、言論の自由もみんな「事実上の禁止」になってしまっているのです。それでも「党の指導性」の一言で解決できるから「合憲」であり、「中国は民主主義」ということになっているのです。

 もちろん志位さんがそんな腹積もりだと言うつもりはありません(そうでないと思いたいです)。けれどあまりに現実から離れた主張ばかりしていると、実際に権力を握った時に国家運営の為止む無くそうなる可能性もあるということです。ま、実際は中国やロシアの侵略を食らってパニックになったまま終わる気がしますが。

hatoyabu01.hatenablog.com さあ、表玄関からの憲法改正と、裏口からの憲法「理想」論。あなたはどちらを取りますか?

中印戦争(大幅に手直ししました)

※この作品は作者の独断と偏見によるシミュレーション戦記です。実際の人物、国、民族は関係ありません。

 前回はこちら

hatoyabu01.hatenablog.com

■204×年~ 中印戦争

 南シナ海東シナ海を内海とした中国は海軍を増強しつつあるインドを封じ込めて、航路の完全なる安全を確保するためインド洋へ進出した。最新式の原子力空母を完成させた中国海軍は同艦を含める新設艦隊(南西海艦隊)をスリランカパキスタンの中国海軍基地に配属することを決定する。これにインド政府が抗議の声を上げ両海軍がインド洋で睨みあいになった。

 ブータン革命

 そんな中、インドと中国の係争地区に近接しているブータン王国の西側の住民が中国への領土の一体性を求めて反乱を起こした。反乱は首都のティンプーにまで到達し、国王が捕らえられてしまう。実は反乱を起こした「住民」は中国から不法に入植してきた漢人たちで、ブータン制圧のための秘密の訓練を受けていたのだ。同国を保護国としていたインドは中国の不当な干渉を主張。国王の解放と武装勢力の撤退を要求するが中国は「アルナーチャル・プラデーシュ地域はわが国固有の領土であり、それに隣接する周辺ブータンも我が国の潜在的領土である」と主張。国王を処刑してブータン支配を強行した。

 サイバー大戦・情報戦

 米国の覇権が失墜して以来の核保有国同士の一側触発の事態に世界は固唾をのんで見守っていた。ITの発達した両国では大規模なサイバー戦争が連日にわたって繰り広げられ、世界のIT社会に深刻な打撃を与える。情報戦も活発化しており、中国がカースト制度を引き合いに出してインドの野蛮性を主張する一方、インドは中国軍に占領されたブータン王国での悲惨な状況(略奪と殺戮の嵐。かつて国民の幸福度指数が高かったことから「世界一不幸な国になった」として、チベットウイグル内モンゴル天安門、香港、台北事件、ベトナム琉球動乱同様に語り継がれる)を暴露した。
 さらにインド軍人の間で謎の感染症が拡散し、デリーを中心にインド全体に広がっていた。インド首相は中国軍の作ったウイルスだと主張するが、中国報道官は「福祉の遅れた劣悪な自国環境の責任転嫁」と反論した。世界がインド・中国国境線に注目している間、中国海軍はインドのアンダマン・ニコバル諸島攻略の準備を密かに進めていた。

 中印パ三国国境紛争

 二国間の緊張が高まった末、ブータン東の中印国境線に予め控えていた中国軍西部戦区の陸軍が攻撃を開始、インド軍と戦闘になる。当初両国の戦力差は拮抗していたが、突如飛来した無数の虫型ドローンによって打撃を受けたインド軍陣営は潰走に追い込まれる。勢いに乗った中国軍は破竹の勢いでアルナーチャル・プラデーシュ州へ進撃していく。更に中国軍は精密誘導ミサイルや人工知能搭載型のステルス攻撃機を投入してデリーを始めとしたインドの各都市と軍事施設を爆撃した。
 そこに中国の準同盟国であるパキスタンが参戦してくる。同国は既に本戦争において中国と盟友関係にあったのだ。中国の支援によってハイテク化されたパキスタン軍はカシミール地方に侵攻し、インド軍に二方面作戦を強いる。
 久方ぶりの国境紛争にインドは全力で応戦する。多数の戦闘機や巡航ミサイルを効果的に使って敵に打撃を与え、侵攻を一旦押しとどめることに成功する。

 アンダマン海の戦い

 その時アンダマン海で中国イージス艦がインドのフリゲート艦を沈めたことをきっかけとして海戦が勃発。実は中国の本命はアンダマン海の要所、アンダマン・ニコバル諸島だったのだ。衛星によって誘導された中国軍の対艦極超音速兵器によってインド海軍は甚大な被害を被り、海戦は中国軍の勝利で終わる。しかし島嶼にはインドの用意していた対艦兵器がずらりと並んでおり、中国軍は思うように揚陸することができなかった。更にインド軍は中国軍事ネットワークへのサイバー攻撃衛星攻撃兵器(ASAT)による中国偵察衛星の破壊で、一部敵装備を機能不全に追いやった。

 宇宙戦争・戦術核

 これに中国は報復としてインドの人工衛星偵察衛星はもとより通信衛星気象衛星まで次々と撃墜し始める。この過激な衛星攻撃の結果、一部軌道上では大量のスペースデブリが発生してしまい、第三国の衛星にも大打撃を与える。宇宙戦争は衛星の絶対数が少ないインドに不利となり、国内外での情報の疎通が困難になってしまう。
 世界の情報網が混乱した隙を狙って、中国軍は戦術核による島嶼のインド軍施設の徹底破壊を実行。アンダマン・ニコバル諸島の防衛システムをも瓦解させ、これを占領することに成功する。中国の核兵器使用をインドが非難するも、それを拡散する通信手段が存在せず、なおも孤立したまま核報復するか否かを迫られる。民主主義で選ばれた首相は国民は勿論世界を巻き込んだ核戦争へ発展するのを恐れ、中国側に停戦交渉を求めた。

 デリー攻防戦

 インド政府とパキスタン政府、そして中国政府はバングラデシュの首都ダッカにて停戦交渉を開始した。しかし、会談中にインド中部の国境帯にいつの間にか中国軍が集結しており、突如ウッタランチャル州へ侵攻を開始した。その行く手にあるのはインド首都のデリーである。アルナーチャル・プラデーシュ州やカシミール地方への侵攻も再開。当然交渉は破談となるが、序盤の被害が災いしてインド軍は失地を取り戻すことができず防戦一方であった。
 しかしここでインド首相は国民に徹底抗戦を呼びかけ、多くの義勇兵を募った。この頃のインドは中国よりも多くの人口を抱えていたため、人手に事欠くことはなかったのだ。この結果、短期での決着を計画していた中パ同盟軍は徐々に失速していき、膠着状態に陥ってしまう。デリー侵攻の中国軍は撤退に追い込まれた。

 戦略核ダッカ合意

 膠着状態を打開するため中国はインド国内のウイルス拡散防止を口実に、アンダマン・ニコバル諸島を拠点にインド洋で厳しい海上臨検を繰り返して国籍を問わずインドとの交易を寸断させた。陸海で包囲された形となったインドだが、近年の経済成長とマンパワーで抗戦を続けていた。
 このままでは埒が明かないと判断した中国政府はとんでもない作戦を実行する。インド政府に降伏を要求すると共に、インド内陸の都市を戦略核で無差別攻撃し始めたのだ。これにはインドも迷わず核報復するが、中国軍はまるで意に介さずにインドを核攻撃し続けた。核弾頭の数で劣るインドは止む無く降伏を選択し、中国・パキスタン側の要求を呑んで停戦に至った。

 米国

 バーチャル戦争によってアメリカは荒廃の一途をたどっていた。米国民の七割以上が仮想国家により二分されることになり、一部では3Dプリンターで作った武器で武装して銃撃戦が行われる事例が多発する。事態を重く見た連邦政府が介入を試みるも、サーバーは中国の北京にある上に量子暗号化されているためアクセスできず、散発的な暴力事件に対処するだけであった。各州政府も最低限の行政を担うだけで仮想政府を事実上受け入れ、連邦政府を軽視するところさえあった。そこを中国とロシアに付け込まれ、国連で「アメリカ人民連盟」が正式な政府として承認を受けてしまう。

 しかし中印戦争によって衛星が破壊され、メタバースシステムのプラットホームにアクセスできなくなったことで、仮想国家は一夜にして崩壊、アメリカ全土が無政府状態になる。連邦政府が国家統制の回復を図るが、それを良しとしない中露に介入される。かつての覇権を捨てた合衆国の軍事力は大きく縮小しており、ロシア軍にアラスカの三分の一を占拠されてしまう。更に太平洋の島、グアムとハワイで独立運動が先鋭化し、グアム人民共和国の独立を許してしまう。

 まさに国家解体の危機に瀕していたが、そこにアメリカ復興の為連邦軍の下支えをしていた財団が頭角を現し、AIに依存しきっていた米国民に対しAIに頼らないものづくりや農業を広めた(ヒューマン・ルネッサンスと呼ばれ、世界中に影響を与えた)。

 日本

 中印開戦時、日本のメディア(というよりほぼ中国メディア)はこぞって中国政府を支持しインド政府を批判的に報じた。国内では中国を「世界の警察」と崇める風潮が高まり、中国に軍事協力することが世界の平和になると信じられていた。
 戦争の影響でインド洋への海上交通が先細りとなり、国内で品薄が続出。配給があれば我先と押しかけて乱闘騒ぎになる事がしばしばであった(この時代、行儀よく列に並ぶ“日本人”はもう存在していないのである)。
 隣国朝鮮から度々嫌がらせ目的の弾道ミサイル攻撃を受ける為、ほとほと困っており、同盟国である中国に対し抑止力向上を求める。すると中国から抑止力向上の条件として「中日の一体性」と「世界開放戦線への協力」を求めてきたので、日本政府は駐留している中国軍の協力を得て、中国に軍事協力するための平和貢献隊を創設。「鬼畜米英打倒」をスローガンに多くの志願者を募った(この時日本族男児は徴兵対象にしており、日本族の別名「鬼子」から赤鬼政策とも呼ばれた)。そうして新設された平和貢献隊は中国の指揮の下、独立運動している米国領グアムに介入し、事実上の軍事占拠を実現する。

 なお環境政策として以前から進めていた再生可能エネルギ^開発で国内消費電力の50%を太陽光や風力で“名目上”賄えるようになった。ただ天候によっては供給が追い付かず、一部の家庭(少数民族)では停電の日が多いのが当たり前となっている。風車の多い地域では風車病が萬栄し、発電性能の落ちた太陽光パネル(中には中国や朝鮮から運ばれた廃棄パネルもある)があちこちで不法投棄されている。国土の1割がパネルで占められており、いくつかの山では毎年のように土砂崩れが起こる他、水源が無くなると言った問題も起こっていた(これが後に第三次世界大戦の引き金になる)。

 中国

 地方党員から始め、国家主席を経て皇帝に就任した慣遠鋭氏が亡くなった。国中が悲しみに暮れ記念日(本来ならば中国建国100周年が祝われる予定だった)が制定され日本をはじめ中国支配下にある国々から哀悼の意が伝えられる。しかし半年後、政府は慣皇帝復活を宣言する。なんとブルーブレインと人工知能とクローン技術の発展的統合によって、死者を蘇生させることに成功したのである。だがこの復活した慣皇帝は、主に生前の野心的な側面だけを受け継いでおり、「世界征服」を志向した軍事行動へより貪欲に追及することになる。
 経済は計画経済で一応の安定はしているが年々増大する軍事費にAIが度々警鐘を鳴らしていた。だが、オペレーターはこの不都合な警鐘を握りつぶし、中央政府には常に「健常」と報告していた。石油資源や核燃料資源は月面基地や極地開発によって潤っていたが、水不足は海水淡水化事業でも追い付かず日本の水源に依存するようになる。鉄不足も深刻化し鉄筋のないコンクリート建築が横行した結果、わずかな地震での倒壊事故が多発する。これに政府は一人あたりの居住空間を細かく取り決めることで強引に解決した(地域によっては一人一畳なところもあり、人民の不満が募っていった)。

 対印戦中、中国軍が常に優位を保ったことで超大国としての実力を誇示し、世界支配への大きな足掛かりを得ることができた。ただし、宇宙空間においては衛星の撃ち落とし合いが原因でケスラーシンドロームが発生。その影響で計画されていた軌道エレベーターは中止に追い込まれた他、宇宙大国中国の象徴である「天宮」にも大きな被害を被ってしまう(ただ、通信に関しては欧米で開発されていたニュートリノによる革新的な通信技術を買収したので問題なかった)。一方、海では停戦後もインドの交易を妨害し続け、インドを封じ込めることに成功したのだった。

 なおインドで流行った謎の感染症は中国軍が開発した「改造ウイルス」であり、東南アジアにおいて実験が繰り返されていた生物兵器である。高熱にうなされた末重度の障害を残す凶悪なウイルスで、解析したインドの研究者が報告書を無料で拡散することで暴露された(サイバー攻撃はその仕返しとも言われている)。この他に特定の人種を絶滅させる「ジェノサイドウイルス」の開発もされており、チベット人ウイグル人を対象とした実験で同民族の絶滅に成功する。さらに日本人やモンゴル人、そしてアングロサクソン系用のウイルスも完成しており、実戦配備へ向けた準備が進められていた。
 なお米国の内乱を受けて北京に移設されていた国連本部は、各国代表に対する中国当局の入国制限によって西側排除が鮮明となり、中国にとって都合のいい人材しか集まらなかった。米国の仮想国家「アメリカ人民連盟」が承認されたのはこうした背景があり、何を隠そう同勢力を裏で操って援助していたのである。グアムやハワイでも仮想国家による独立運動と反基地闘争を促し、日本と介入してグアムを事実上の支配下に置くことに成功する。西太平洋の大部分を手に入れた慣皇帝は残る南方の大陸に食指を伸ばす。

 統一高麗

 アジアにおける天然ガス需要の好調と弾薬生産量の向上により好景気になるが利益は全て高麗元首とその取り巻きの懐に入るので庶民の生活は全く好転しない。欲をかいた高麗元首は日本に対し核恫喝弾道ミサイル攻撃をすることで、賠償金のお代わりを繰り返していた。同時期に政府はアラブやアフリカ諸国への核弾頭の密輸計画を実行に移し、モンゴルにも核密売の話を持ち掛ける。これが後の世界核戦争を引き起こす元凶となる。

 東南アジア

 戦争でインド洋上の航路が一部制限されたことが影響してどの国も深刻な経済難に陥る。そこで少しでも外貨を得るため森の木々を切り倒し大量の木材として世界各国へ輸出した。しかしこれがもとで砂漠化が進行し、後の大干ばつにて日本産の水に依存するようになる。
 イスラム原理主義の活動が活発化し中国軍へのゲリラが多発する。中国政府は大幅な人員の増加と装備投入を強いられ、対印戦と合わせて軍事費が青天井となっていた。

 インド

 対中戦争での敗北によってインドはアンダマン・ニコバル諸島とアルナーチャル・プラデーシュ州とアッサム地域、カシミール地方全域を失う。中国軍による海上封鎖と謎の感染症も相まってインド国内の経済成長は低迷するが、むしろ同国民のナショナリズムに火をつけた。連邦軍には志願者が大勢押しかけ、復興を促進すると共に、再起へ向けた準備を着々と続けていく。
 また民間レベルでも多くの勇敢なインド人が小型船でインド洋に繰り出して密輸をしたり、東アジア新秩序管理下の船(中国共産党支部を社内に設置し東シナ海及び南シナ海の通行を許された交易船の事)を襲ったりと草の根の抵抗を続けていた。彼らの行動は結果的に中国軍のインド洋支配を正当化する口実となってしまうが、強権主義に抗する象徴として後の時代で語り継がれることになる。

 ロシア

 中印戦においてロシアは中国側に立ち、インドに対しては戦略資材を輸出禁止にするなどの対応をとった。実は同年ジーミルが老衰によって死亡し、(一か月間影武者による)隠ぺいが行われていたが、検閲の目をかいくぐって暴露記事が世界を駆け巡ったのだ。これによって抑圧されていたロシア国民が一斉蜂起する事件が起こり、クレムリンが事態の収拾に乗り出すもイエスマンだけで占められていた彼らにはまとめ役がおらず、同盟国中国の介入を必要とした。皮肉なことに念願の帝国を築き上げたこの国は深部までチャイナマネーに侵されており、事実上の傀儡でしかなかった。
 米国で起こった内戦に対し、中国から介入の要請があると新ツアリデント(ジーミルが可愛がっていた若者)は即座に行動した。没落したとはいえかつての超大国に真正面から戦争を仕掛けることに疑問の声が上がるが、もはや独裁者を止める仕組みは存在しなかったのだ。

 オーストラリア

 政府は中国軍のインド洋支配に懸念を表明し、中国政府に同海域の自由な航行の保障を求めるが無視される。この時、準同盟関係にあった米国は内戦の最中だったため、圧倒的な戦力差を誇る中国には相手にもされなかったのである。政府は万が一のことを考え、首都キャンベラやシドニーなど人口の多い都市に核攻撃を想定したシェルターを国家予算を割いて建設させた。
 一方、国内では長年続く干ばつにより水不足が慢性化し、日本からの水資源輸入が畜産業にとって死活問題になりつつあった。また、地方行政や企業において主要ポストを手に入れた中国移民が、母国の影響力を笠に着て傍若無人に振舞ったので、国民や他の国籍住民の不評を買っていた。

 中東

 アラブ諸国は大国イランに対する抑止力と、石油需要量減少に伴う体制維持の策として、必要最小限の核保有(統一高麗から密輸)が相次ぐ。これによって体制保証を口実に軍を中東に駐留(かつて覇権国だった米国の中央軍に対抗してシルクロード軍と名付ける予定だった)させ、一帯一路で形成した影響力を確固たるものにするという中国の世界覇権戦略が暗礁に乗り上げてしまう。

 しかし核保有は同地域に平穏をもたらさなかった。既に核保有国同士として緊張状態にあったイランやイスラエルが新参者の核保有国に度々攻撃を加え、いつ核戦争が起こってもおかしくない状況になっていく。彼らにとっては異教でも異端でも、新たに核保有国が現れること自体が脅威だったのだ。

 モンゴル

 モンゴル政府は長年、北朝鮮時代から交流のある統一朝鮮と良好関係にあり、年々増大する中国の覇権主義に警戒感を抱き、独立を守るためのパートナーシップを結んでいた。ある年、朝鮮政府から核密売の提案を受けるも、モンゴル非核地帯を理由に断った。しかし、これが「モンゴルが核密輸を計画している」という誤ったデマとして広まり、慣皇帝に目を付けられてしまう。

 

続きはこちら 

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(2019/9/9,10/2 本文一部加筆修正、12/3 リンク添付)

(2020/1/11 本文中一部修正、7/10 リンク追加、7/26 ブータン王国についての記述を追加、8/9 リンクを追加)(9/13 皇室に関する記述を変更)(9/25 中印海戦の舞台をアラビア海からベンガル湾へ変更)(2021/5/8 ウイルス兵器に関する記述を追加)(2022/4/3 シナリオと背景描写を大幅に手直し、6/9 主に米国内戦とモンゴルについて修正、10/3 シナリオを大幅に変更)

ウクライナ戦争終結シナリオ最終版(フィクションです)

 皆さんこんにちは、21世紀最大の侵略戦争であるロシアのウクライナ戦争が今なお続いております。情け容赦のない帝国主義のロシアに対してウクライナは屈することなく戦い続けています。彼らを見ていると勇気をもらいますね。かつて米国と戦っていた我々もこんな感じだったのかと懐かしささえ感じます。今日では「なぜもっと早く降参しなかったのか」と叩かれる戦前日本ですが、それは占領統治したのが領土的野心の低いカーボーイ(米国)だったからで、中国やソ連(当時のロシア)だったら同じ台詞は言えないでしょう。彼らが沖縄返還のように領土を還すことはありません。

 何事にも終わりがあるようにこの戦争にも終わりがあります。そのシナリオについて様々な考えや情報が錯綜している状況ですが、素人的立場ながら私もいろいろ考えている所存であります。何故ならこの戦争が後の中国の台湾侵攻日本有事につながる大きなうねりを起こすからです。

 フィンランド化を解決策として語る無知

 まずウクライナの今後について戦争開始前から「フィンランド」という言葉が出まわっていました。曰くNATOには入らず、クリミアやドネツク、ルガンスクを諦め、ロシアの影響下で独立を維持するというものです。このことについてはっきり言わなければならないことがあります

 まず言葉そのものがフィンランドの人達に対して失礼だということ。かつて中曽根さんが「日本が防衛努力を怠るとフィンランドのようになる」と発言して同国の抗議を受けています。またこの言葉を単に「強い大国に卑屈にひれ伏す弱小国」の意で使うのは、過去の経緯を知らない愚論でしかないということです。

 1938年当時のロシアであるソ連フィンランドに非公式の交渉を持ち掛けます。曰くレニングラード湾の4つの島嶼を割譲せよと。理由はソ連第二の都市レニングラードフィンランド国境が近かったためです。今のプーチンの「NATO不拡大」と発想は同じです。

 当然フィンランド側は応じなかったわけですが、翌年1939年10月にはさらに要求を吊り上げてきます。要求の中にはフィンランドが対ソ連防衛線として構築しているマンネルハイム線防御の撤去も含まれており、交渉は決裂しました。

 翌月の11月30日、ソ連フィンランドに全面侵攻を開始します。冬戦争です。侵略に先立ってソ連兵13人が死傷するマイニラ砲撃事件が起きます。これはフィンランドの攻撃に見せかけたソ連偽旗作戦であることがわかっており、今のウクライナ戦争の発端としてロシアが主張する「ドネツク・ルガンスクに対するウクライナ軍の攻撃」に通ずるものです。

 戦力はソ連が圧倒しており、25万のフィンランド軍に対して47万の兵力を投じていました。ソ連フィンランド全土を占領する気満々で、開戦序盤で占領した町にソ連に亡命したフィンランド人をトップに据えたフィンランド民主共和国を建てて「これが正統なフィンランドだ」と宣言します。

 しかしその後の戦闘はロシアの独裁者スターリンが期待するようには進みませんでした。彼は攻撃を仕掛ければフィンランドはすぐに降伏するだろうと考えていたのです。武力侵攻と合わせて敢行されたヘルシンキへの空爆では人民に蜂起を促すビラを撒いていました(これもまた「二日でキエフを堕とせる」と判断し勝利記事まで書かせたプーチンに通ずるものがあります)。しかしフィンランド軍の抵抗はすさまじく、十分な兵站を確保していなかったソ連軍は大きな被害をこうむります(これも同じですね)。

 けれどスターリンは諦めず、司令官を取り換えて、大量の装備を整えて再び猛攻を仕掛けます。これにはさすがのフィンランド軍も耐え切れず、マンネルハイム線の突破を許してしまいます。その後ソ連側の提案で停戦交渉が進められ、フィンランドは国土の10%を失う過酷な条件をのむことになりました。

 その後フィンランドソ連と対抗するために当時ナチス政権だったドイツに接近し、枢軸国側として戦うことになりました。フィンランドでは冬戦争の続きとして継承戦争と呼んでいます。その結果は「枢軸国」ということからもわかるように、フィンランドは敗戦国になるわけですが、この戦争においてもソ連軍に大きな被害を出します。その結果スターリンフィンランド支配の興味を失い攻勢を断念。フィンランド独力で戦後処理を行い、表向きは東側の親露政権として、メディアの自主規制などを行いました。これが所謂「フィンランド化」と呼ばれる状態で、1991年のソ連崩壊まで続きました。

 これを今のウクライナに当てはめてみれば、確かに類似点は多くあります。と言っても有事前に「フィンランド化」を提唱した人は、まさかロシアの全面侵攻を受けろとまで言ったつもりなかったでしょう。フィンランドの人からしても多くのソ連兵士を殺したにも拘らず、領土を失い、ロシアの影響下に置かれたことはかなりの屈辱だったはずです。実際、ソ連崩壊後は堰を切ったように欧米へ接近し、欧州連合EU)に加盟しております。そうした経緯を鑑みずにフィンランドがとった政策を大国との戦争を避ける小国の処世術のように語るのは浅学というものです。

 また仮にゼレンスキー政権がクリミアやドネツク、ルガンスク、加えてロシア軍が武力制圧した地域を放棄するという苦渋の決断をしたとしても、プーチンキエフを諦める決断をしなければ休戦は成立しません。というのも冷戦時のフィンランドと異なり、ウクライナNATOの一員であるポーランドと国境を接しているため地政学的に孤立しておらず、ワルシャワ条約機構と言ったロシアを中心とした大きな組織もありません(あるのはユーラシア経済連合というロシアと数国の小さな共同体です)。現在ゼレンスキー政権は欧州連合EU)への加入を申請しており、それが通れば一見中立のように見えながらも実際は欧州の一員という、“”のフィンランドスウェーデンのような立ち位置になれるのです。しかし、それは「キエフはロシア発祥の地」と論文で書くプーチンには到底受け入れられないでしょう。

 危険な甘いトリックスターにご用心

 ウクライナの「非軍事化(無条件降伏)」と「非ナチ化(非欧米化のための占領統治)」という要求が降ろされない以上、停戦合意は成立しません。つまり

  1. ロシア軍がウクライナの全てを焦土にする
  2. ゼレンスキー大統領が無条件降伏する
  3. ロシア経済が完全に崩壊してプーチン政権が倒れる

のいずれかとなります。3にならない為にプーチンは国境に控えていたすべての兵を投入し、何が何でもキエフを包囲して、ゼレンスキーさんに降伏を迫るつもりです。必要なら核の使用も辞さないでしょう。如何に国の為に戦う指導者でも、いえ、国のために戦う指導者だからこそ1の事態は受け入れられません。これは人民の命をないがしろにできる独裁国家が民主国家に対して唯一持てる優位性(人道的非対称性)です。これがまかり通った瞬間、世界は混沌の時代に突入します。

 ここで破局的な結末を回避するかもしれないシナリオが一つ存在します。それはある国の介入です。前の記事で「三者が折版案を模索しようとしても無駄」と書きました。それに変わりはありません。独仏首脳がいくら語り掛けても馬耳東風ですし、トルコが仲介した外相対談も進展なしです。安倍さんがモスクワへ飛んでも無駄でしょう。

 ですがもしプーチンウクライナ征服を一時断念する決断をした場合、ある人物に頼るでしょう。中国の独裁者、習近平です。

 今メディアでは習近平プーチンに出し抜かれたとか、立ち位置に戸惑っていると報じられていますが、事前にウクライナ侵略計画は聞いていると思います。何故なら、戦争は北京五輪が終わった直後、7日の間も置かずに始められたのですから。「平和の祭典」として掲げられる五輪の期間とその前後は「戦闘を行ってはいけない」として国連で加盟国が共同提案し無投票で休戦決議を採択しております。その共同提案に今回は日米豪印が中国の人権問題を理由に参加してないものの、ロシアは参加しているわけです。もし本当に寝耳に水なら習近平のメンツに関わるので烈火のごとく怒るはずです。しかし事前に聞かされていたなら話は別です。そしてもしもの時の仲介役として“第三者”の立ち位置を求められていたとしたら、非難決議の棄権も不思議ではありません。

 中国がウクライナとロシアに提示する仲介案として以下のものと予想します。

  1. クリミア半島アゾフ海沿岸地域のロシア主権の承認とドネツク・ルガンスク両人民共和国の独立承認
  2. 今後50年間のNATO及びEU加入政策の凍結、NATO軍および米軍の通過・駐留の禁止
  3. 前項1を除くウクライナ国土からのロシア軍の撤収
  4. 中国がウクライナの安全を保障する

 1はロシアへの領土割譲です。ウクライナにとっては過酷な条件です。2はプーチンが侵略の理由として掲げていた「中立化」です。3がウクライナ側が求めるロシア軍の撤退。ここに「非軍事化」と「非ナチ化」は含まれていません。

 ここで4が肝となってきます。これは中国によるウクライナの安全保障協力であり、具体的に言えばウクライナへの中国軍の駐留です。これがプーチンが妥協するキーポイントになります。

 プーチンが恐れているのはウクライナの欧米化、非ロシア化です。故に同国をロシアの影響下に置きたかったわけですが、中国の影響下に置いてしまえば欧米化は防げます。中国はロシアの事実上の同盟国であり、中国軍とロシア軍の連携も進んでおります。また中国の一帯一路はロシアを中心とするユーラシア経済連合とも連携しているので、ウクライナの中国依存が高まれば、中国を通してロシアとの一体性も実現できるでしょう。

 さらに今は西側のヒーロー的存在になっているゼレンスキーさんですが、中国との関係が深まれば、例えばウイグルの人権問題や香港問題について中国側に立った発言をするようになるでしょう。そうなると今までの熱が嘘のように冷め、世界の孤児になりかかっているロシアの国際的地位も回復するという寸法です。そしてウクライナへの関心が薄くなった隙に、キエフで政変を起こして親露政権を樹立する。かくしてプーチンの願いは実現したのであった……という筋書きです。

 さらにこれには続きがあります。中国の介入によって欧州の危機を脱したことにバイデン政権と欧州首脳陣はいたく感謝。中国の人道問題は譲らないが、台湾の東沙諸島や日本の尖閣諸島への侵攻程度は許容する……なんてことになりかねません。

 私のシナリオが外れることを望みます。

 

[補足]平和憲法ウクライナには外国軍の駐留はない

 無知なのは私も同じで、何とウクライナ憲法には「外国軍の非駐留」があります。つまり私のシナリオは100%外れるフィクションだということがわかりました(嬉しい)。

На території України не допускається розташування іноземних військових баз.
ウクライナの領土では、外国の軍事基地の設置を許可されていません。)
──ウクライナ最高議会HP(https://zakon.rada.gov.ua/cgi-bin/laws/main.cgi?nreg=254%EA%2F96-%E2%F0#Text)より第17条の一部を抜粋

 同時にこれは「ウクライナNATOに加盟すると、ロシアを狙う核ミサイルが配備される」というロシア擁護派の論理を粉砕する物でもあります。ロシア擁護派が観念論に陥って右翼化する日も近いです(というか既に右翼と言えますね私的には)。

 

 最後にウクライナの方々の御健闘を祈りつつ、此度の戦争で亡くなったウクライナの民間人とウクライナとロシア双方の兵士達のご冥福をお祈り申し上げます。我ら日本国民はウクライナと共にあります。

 

 混沌化する世界に取り残された日本と世界の未来(ちょっとロシアがおとなしすぎるシナリオです)。

hatoyabu01.hatenablog.com

混沌化する世界で食い荒らされる日本と世界の未来(ロシアをアグレッシブにした手直し版。かなりエグイ内容です)※現在制作途中

hatoyabu01.hatenablog.com

(2022/3/30 本文一部修正、5/19 補足追加)

韓国の渡ったルビコン川に帰還路はない

 皆さんこんにちは、ウクライナ戦争は膠着状態でありますが、ウクライナは諦めず、ロシアも諦めない状況が続いています。敗戦史観の我が国においては「早く降伏しろ」とか「攻撃を止めろ」という感情しかないでしょうが、互いに譲れるものがないという状況で戦争は続くものです。いいか悪いかでなく、これが人の集まりし共同体である「」なのですね。それぞれに異なる「平和の形」があり、それが合わないから「戦い」が生まれる。この場合「ウクライナの完全独立」がウクライナの平和、「ロシア帝国ウクライナ全土を含む)の完全復活」がロシアの平和という不一致が生じています。故に簡単に折半できぬというわけです。だた物理的に戦闘が不可能になれば話は別ですが、それは後ほどの記事で。

 今回は韓国大統領選の結果についてです。と言っても私はほとんど関心がなかったので、詳しい内容は他のメディアやブロガーさんに頼みます。本記事ではシンプルに一点だけの予測をあげるとします。

 日韓改善の兆しだって?

 今回当選したのは尹錫悦候補で反文在寅の中心的人物です。彼の元には保守派と中道派が結集し、与党である左派「共に民主党」を圧倒する勢いである事が報じられていました。前の記事で韓国でさえ「青瓦台の中国寄りを正すべき」といった主張が出たという話を書きましたが、それを言ったのがこの人です。

国保守系野党「国民の力」の大統領候補、尹錫悦(ユン・ソクヨル)前検察総長は12日、ソウル市で外国メディアと会見し、北朝鮮の脅威に対応するため日米韓3カ国の安全保障協力を強めるべきだとの認識を示した。悪化した日韓関係の改善に向け「歴史問題と経済、安保協力を網羅した包括的解決を模索する」と述べた。(出典:日米韓で「安保協力を強化」 韓国大統領選の野党候補,日本経済新聞電子版,2021.11.12.,

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM129PO0S1A111C2000000/

 至極まっとうな主張で、彼が当選したことにより「ああ、これで日韓関係は改善するんだ」という主張がこれから出てくるでしょう。

 結論から言いましょう。違います!日韓関係は改善するどころか、より複雑化し場合によっては悪化する可能性さえあるでしょう。

 尹新大統領で日韓関係が改善しない三大理由

 これは別に嫌韓とかそういうのはないです。むしろ私は元来韓国には無関心であり、彼らの反日言動も「民族の自尊心」よるものと理解しており、それを全否定する立場でもありません。彼らには彼らの歩む「」があり、その先が我が国との「敵対」であったなら、別に構わないと思っております。何せ彼らは「独立国」ですから。

 逆に何かと我が国に粘着してくるのが鬱陶しいと感じてますし、それに対して同じように粘着している嫌韓日本人も、姑息に懐柔しようとする親韓日本人にも呆れております。日本と朝鮮半島の歴史を見ればわかりますが、交流が盛んな時期もあれば絶っていた時期もあるんですね。だからどういう関係が「正しい」かなんてものはなく、潮時だとみてこのまま冷却した関係が続いた方が双方の為だと思うんですね。コリアンのアイデンティティは非常に強固なので、中国の属国になったところで滅ぶことはありません。歴史が証明しています。

 私見はともかく、なぜ新大統領でも韓国と日本の関係がよくならないのかと言うと、大きく三つの理由があるからです。それは

  1. 保守政治家ではない
  2. 反日に左右無し
  3. 安保を歴史問題の取引に

 という事情があるからです。順を追って解説していきましょう。

 保守政治家ではない

 まず、尹氏ですが前は検事総長でした。それも文在寅氏の指名を受けた。そう、弾劾された朴槿恵元大統領を裁いた当事者です。それが紆余曲折あって文氏と対立し、反文在寅の中心的人物となりました。韓国大統領制は一期五年の再選無しなので、任期中は親族の利益誘導など滅茶苦茶やってしまうわけです。それで退任後本人や親族が逮捕される例が後を絶たず、「事実上の王朝交代」と言われているほど。だから尹氏が大統領に就任した暁は文氏とその取り巻きたちは窮地に陥ります。中国辺りに「亡命」する可能性もありますね。

 そんな経緯があるので彼は政治家じゃない故にその手腕は未知数となっています(もっともこれは大統領制の強みであり、米国のトランプさんやウクライナのゼレンスキーさんのように異業種出身が活躍することは珍しくないです)。文氏に対抗する過程で「保守」となったわけで、今主張したことが全て実現されるとは考えない方がいいです。そもそも韓国が米国から離れて中国に接近しだしたのは保守派と言われた朴槿恵時代からなので、いわんや新政権で変わる保証はどこにもないのです。

2015年 リッパート駐韓大使襲撃事件
(同年) アジアインフラ投資銀行参加
2016年 南シナ海判決に対し米国と歩調を合わせず
2017年 一帯一路サミット参加
(同年) 環境影響評価を理由にTHAAD配備を遅延
(同年) THAAD追加配備拒否を含む「3NO」を宣言
(同年) 米韓国防相の共同声明を一部否認した中韓合意文を発表
(同年) 米韓首脳会談の翌日、共同発表文の一部を否認・削除
2018年 平昌五輪に乗じて南北親善を演出
(同年) 圧力姿勢の米国を出し抜いて南北首脳会談

ルビコン川の対岸で足踏みする文政権 - 未来に予想される戦争と敗戦
 反日に左右無し

 尹氏に限らず韓国では保守も左翼同様に反日です。というより反日している自覚がありません。韓国の人に「反日を止めろ!」と言っても「反日なんてしてないよ?」と返されます。彼らの中では「悪魔国家日本」は世界の常識であり、断罪したり諭して見せたり、ついには命令したりするのが「普通の事」なのです。

 そして政治の世界において親日汚職や犯罪と同じくらいにスキャンダラスなカテゴリーであり、主に左翼が保守を攻撃する常套句が「親日疑惑」です。これは1930年代のドイツの「ユダヤ疑惑」に近いレベルと言えるでしょう。親日と見なされると社会的に滅されます。

 尹氏は慰安婦問題について強硬になる兆候を紹介します。韓国のことについて日夜詳しく情報発信して下さっているシンシアリーさんのブログによれば、尹氏は元慰安婦(と言われている)イ・ヨンス氏と会って「日本から必ず謝罪を引き出して見せる」と誓ったそうです。

sincereleeblog.com そんな彼が2015年の日韓合意での「最終活不可逆的な合意」を守れるはずがありません。文氏同様に謝罪と賠償を求めてきます。それも日本の過去の談話の「謝罪」では物足りないというわけですから、韓国国会議長をしていた文喜相氏のように「天皇の謝罪要求」もあり得るわけです。そうなると如何に譲歩大好きな日本の親韓政治家でも受け入れられないでしょう。民主党政権の時でさえそうだったのですから。

 安保を歴史問題の取引に

 さらに厄介なのは尹氏が昨年の6月末の出馬表明の際、こんなことを言っているからです。

尹氏は「慰安婦や徴用工の問題、安保協力や経済の懸案をすべて一つのテーブルにのせ、グランドバーゲンするアプローチが必要だ」と語った。グランドバーゲンとは過去の対北朝鮮交渉で使った一括妥結方式を意味する表現だ。日韓の外交・国防担当閣僚会議(2プラス2)の開催も提案した。(出典:韓国大統領選、「反文在寅」の最有力候補が出馬表明,日本経済新聞電子版,2021.6.29.,

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM283TF0Y1A620C2000000/

 慰安婦どころか所謂徴用工の問題まで安保と経済のテーブルに挙げてアプローチするというのです。要は安保協力と引き換えに歴史問題で譲歩を引き出す狙いが見え見えです。経済についてはホワイト国指定復帰も含まれるでしょうし、そもそも日韓請求権協定に反した所謂徴用工の件も持ち出すあたりに暗雲が垣間見れます。

 尹氏の当選に関しては経済関係に詳しいブロガーの新宿会計士さんも注目しており、必ずしも日韓関係改善にはならないと警戒感を表しております。

shinjukuacc.com

 なお新宿会計士さんは日韓問題について「落としどころ」をわかりやすく提示していらしてまして、それが以下の三つです。

  1. 韓国が国際法に照らし、自力で解決する
  2. 日本が韓国に譲歩する
  3. 日韓関係が行き詰まる

(ブログ「新宿会計士」さんhttps://shinjukuacc.com/より引用)

 1が国際儀礼上正常ですが、韓国がそれをやらないのは誰もが知るところです。問題は2ですが、私はこれは「落としどころ」ではないと考えます。これは感情論ではなく、行き着く先を考えた結果です。

 これまでの日韓問題は韓国側が問題を提示し、日本が譲歩するというのが繰り返されています。ただ繰り返すだけならいいのですが、今回は所謂徴用工と言ったものが含まれています。これは1965年に締結された「財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定(通称 日韓請求権協定)」で解決済みとしたはずのものであり、これを譲ってしまうとなると協定は事実上空文化し、日韓併合時代(韓国側からすれば植民地時代)のもろもろについても賠償要求ができると彼らは判断します。よしんばそれに全て応じたとしても、ついには独島(韓国が勝手に読んで不法占拠している島根県竹島)の放棄や、長崎県対馬の割譲さえ要求するほどにエスカレートするでしょう。そうなると如何に日本に売国政権が立っていたとしても譲れず、最悪日韓版のフォークランド紛争に発展する可能性があります。

 つまり全て韓国側に対立を解消する気がない限り「落としどころ」はありません。冒頭のロシアとウクライナと同じです。日本をトコトンやり込めてあわよくば隷属させたい韓国の「平和」と、1965年に結んだ協定といくつかの妥協で手落ちにしたい日本の「平和」が一致してないのです。これからも一致することはないでしょう。

 

 韓国が渡ったルビコン川には帰還するための橋はありません。無理に戻そうとすればまた将来にいらぬ禍根を残すことになるでしょう。安易な妥協には反対です。